調停って何ですか?

ちょうせい第7号(平成8年11月)より

わかりやすい公害紛争処理制度 ‐第7 回 あっせん、調停、仲裁、裁定って何?

 公害紛争処理制度には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の4つの手続が設けられています。今回は、それぞれの手続の概要について説明します。

1 あっせん

 あっせんとは、あっせん委員が紛争の当事者間に入って、交渉が円滑に行われるよう仲介することにより、当事者間の自主的解決を援助、促進するための手続です。
 あっせんの申請がなされると、3人以内のあっせん委員が指名されます。あっせん委員は、当事者双方の主張の要点を確かめ、当事者間の話合いが円滑に進むようにその間を仲介し、当事者間に合意が成立するように努めます。あっせんの結果、当事者間に合意が成立すると、民法上の和解契約の効力を有することになります。

2 調停

 調停とは、調停委員会が紛争の当事者を仲介し、双方の互譲による合意に基づいて紛争の解決を図る手続です。あっせんと類似していますが、調停委員会が積極的に当事者間に介入し、手続をリードしていく点が異なります。
 調停の申請がなされると、3人の調停委員で構成される調停委員会が設けられ、手続を進めていきます。調停委員会は調停期日を開催して、当事者から意見を聴取し、資料の提出を求め、また、現地調査を行う等により、事実関係を明らかにして当事者間の話合いを進めます。さらに、必要に応じて調停案の提示や、調停案の受諾の勧告を行います。当事者間に合意が成立すると、民法上の和解契約としての効力を有することになります。

3 仲裁

 仲裁とは、紛争の当事者双方が裁判所において裁判を受ける権利を放棄し、紛争の解決を仲裁委員会にゆだね、その判断に従うことを約束(仲裁契約)することによって紛争の解決を図る手続です。
 仲裁の申請がなされると、当事者の合意に基づき選定された3人の仲裁委員が仲裁委員会を構成し、手続を進めます。仲裁委員会は、当事者を審尋し、必要があると認めるときは事実の調査等を行い、仲裁判断を行います。仲裁判断は、当事者間において確定判決と同一の効力を有します。

4 裁定

 裁定とは、当事者間の紛争について裁定委員会が所定の手続により、法律的判断を下すことによって、紛争の解決を図る手続です。裁定には、責任裁定と原因裁定の2種類があり、いずれも公害等調整委員会のみが行う手続です。

(1) 責任裁定
 責任裁定は、裁定委員会が損害賠償責任の存否及び賠償すべき損害額を判断することにより、紛争を解決する手続です。責任裁定の対象となる紛争は、公害に係る被害についての損害賠償に関する紛争に限られており、また、申請を行うことができるのは、被害者(損害賠償の請求者)だけです。なお、被害の態様及び規模、紛争の実情その他一切の事情を考慮して責任裁定をすることが相当でないと認めるときは、申請を受理しないことができるとされています(裁量不受理)。
 責任裁定の申請がなされると、3人又は5人の裁定委員で構成される裁定委員会が設けられ、手続を進めます。裁定委員会は、審問期日を開催して、当事者による意見陳述、証拠調べ、事実調査等を行って事実を認定し、その認定した事実に基づいて裁定を行います。責任裁定があった場合において、裁定書の正本が当事者に送達された日から30日以内に当該責任裁定に係る損害賠償に関する訴えが提起されないとき、又はその訴えが取り下げられたときは、その損害賠償に関し、当事者間に当該責任裁定と同一の内容の合意が成立したものとみなされます(合意擬制)。

(2) 原因裁定
 原因裁定は、裁定委員会が加害行為と被害の発生との間の因果関係の存否について判断する手続です。原因裁定は当事者の権利義務関係について判断するものではありませんが、公害紛争においては、当事者間で因果関係が最も大きな争点となる場合が多くみられ、当事者は、原因裁定によって明らかにされた因果関係についての判断を基礎として、紛争の実情に応じて適当な方法(直接交渉、あっせん、調停、仲裁、責任裁定、訴訟等)を選択し、紛争の解決を図ることができます。
 原因裁定の手続は、基本的には責任裁定の場合と同じです。なお、責任裁定の場合と同様に、裁量不受理の制度があります。

公害等調整委員会事務局

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