5　地方経費の構造

地方公共団体の経費を経済的な性質に着目して分類すると、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別されるが、これらの状況をみると、以下のとおりである。

（1）義務的経費

人件費、扶助費及び公債費からなる義務的経費の決算額は49兆1,064億円で、前年度と比べると0.6％減となっている。また、義務的経費の歳出総額に占める割合は50.1％で、前年度と比べると0.3ポイントの低下となっている。

このうち通常収支分は49兆341億円で、公共事業等債の元利償還額の減少等による公債費の減少により、前年度と比べると0.6％減となっており、東日本大震災分は723億円で、公債費の増加により、前年度と比べると3.2％増となっている。

義務的経費の内訳をみると、人件費が22兆4,660億円で、義務的経費に占める割合は45.7％（前年度45.5％）、扶助費が14兆2,997億円で、義務的経費に占める割合は29.1％（同28.9％）、公債費が12兆3,407億円で、義務的経費に占める割合は25.1％（同25.6％）となっている。

ア　人件費［資料編：第76表］

人件費は、職員給、地方公務員共済組合等負担金、退職金、議員報酬等、委員等報酬等からなっている。

人件費の決算額は22兆4,660億円で、前年度と比べると0.0％増（前年度0.0％減）となっている。近年の人件費の歳出総額に占める割合及び人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合の推移は、第51図のとおりである。人件費の歳出総額に占める割合は、前年度と同率の22.9％となっており、平成19年度以降、6年連続で低下してきたが、平成26年度以降は、ほぼ横ばいとなっている。

このうち通常収支分は22兆4,392億円で、職員給の増加等により、前年度と比べると0.0％増となっており、東日本大震災分は269億円で、災害派遣職員の減少等により、前年度と比べると9.7％減となっている。

人件費の歳出総額に占める割合を団体区分別にみると、都道府県（25.7％）が、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の給与（平成28年度以前においては、政令指定都市分も負担。）を負担していることなどから、市町村（17.1％）を上回っている。

人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合は、前年度と比べると0.2ポイント低下して28.7％となっており、平成25年度以降は、ほぼ横ばいとなっている。

人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合を団体区分別にみると、都道府県においては30.1％となっており、市町村においては23.4％となっている。

また、国家公務員の給与水準を100としたときの、地方公務員の給与水準を指すラスパイレス指数の推移は、第52図のとおりであり、平成31年4月1日現在のラスパイレス指数は99.1（対前年度比0.1ポイント低下）となっている。

ラスパイレス指数を団体区分別にみると、都道府県99.8、政令指定都市99.9、都市98.9、町村96.3となっている。

人件費の費目別の主な内訳をみると、第53図のとおりであり、職員給が最も大きな割合（人件費総額の70.9％）を占め、以下、地方公務員共済組合等負担金（同14.8％）、退職金（同8.3％）の順となっている。

各費目の決算額を前年度と比べると、職員給が0.0％増、地方公務員共済組合等負担金が0.7％減、退職金が0.0％増となっている。

人件費に充当された財源の内訳をみると、第54図のとおりであり、一般財源等が最も大きな割合（人件費総額の88.7％）を占め、以下、国庫支出金（同7.5％）、使用料・手数料（同2.5％）の順となっている。

財源の内訳を団体区分別にみると、一般財源等の構成比は、市町村（90.4％）が都道府県（85.8％）を上回っており、国庫支出金の構成比は、都道府県（10.5％）が市町村（3.4％）を上回っている。これは、都道府県が負担している政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費について、国庫負担制度（義務教育費国庫負担金）が設けられていること等によるものである。

（ア）職員給［資料編：第77表］

職員給の決算額は15兆9,267億円で、国家公務員の給与改定に準じた措置等により、前年度と比べると0.0％増となっている。平成11年度以来15年連続で減少してきたが、平成26年度から上昇に転じた。なお、ピーク時の平成10年度と比較すると約8割まで減少している。

このうち通常収支分は15兆9,069億円で、前年度と比べると0.1％増となっており、東日本大震災分は197億円で、前年度と比べると10.1％減となっている。

職員給の主な内訳をみると、基本給が最も大きな割合（職員給総額の65.5％）を占め、次いでその他の手当（同34.5％）となっている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、基本給が0.3％減、その他の手当が0.6％増となっている。

職員給の部門別構成比は、第55図のとおりであり、教育関係が最も大きな割合（職員給総額の45.8％）を占め、以下、警察関係（同13.0％）、議会・総務関係（同11.7％）、民生関係（同8.6％）、消防関係（同6.7％）、衛生関係（同5.3％）の順となっている。

また、職員給の部門別構成比を団体区分別にみると、都道府県においては政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることから、教育関係が最も大きな割合（60.8％）を占め、警察関係（22.4％）と合わせて全体の83.2％を占めており、市町村においては教育関係が最も大きな割合（25.3％）を占め、以下、議会・総務関係（21.9％）、民生関係（18.0％）、消防関係（13.8％）、衛生関係（9.5％）の順となっている。

次に、平成31年4月1日現在における地方公務員（普通会計分）1人当たりの平均給料月額を主な職種別及び団体区分別にみると、第56図のとおりである。職種により平均給料月額に差があるのは、主として、職種別の年齢構成、給料表の構造等の違いによるものである。

（イ）地方公務員の数［資料編：第78表］

地方公共団体の職員数（普通会計分）は、事務事業の見直し、組織の合理化、民間委託等の取組が行われたことなどから、平成7年以降21年連続して減少していたが、28年に増加に転じ、31年4月1日現在の職員数は238万9,651人で、前年同期と比べると6,415人増加（0.3％増）している。

職員の部門別構成比は、第57図のとおりであり、教育関係職員が最も大きな割合（全地方公務員数の42.6％）を占め、以下、一般行政関係職員（同38.5％）、警察関係職員（同12.1％）、消防関係職員（同6.8％）の順となっている。なお、職員構成比を団体区分別にみると、都道府県においては教育関係職員が58.8％、警察関係職員が22.1％、一般行政関係職員が17.7％を占め、市町村においては一般行政関係職員が63.8％、教育関係職員が22.9％、消防関係職員が13.3％を占めている。

部門別職員数を前年同期と比べると、一般行政関係職員が3,914人、教育関係職員が1,804人、消防関係職員が464人、警察関係職員が233人増加している。一般行政関係職員の増減の内訳をみると、議会・総務関係職員が2,668人、民生関係職員が1,683人、商工関係職員が699人、土木関係職員が54人増加し、一方、衛生関係職員が656人、税務関係職員が276人、農林水産関係職員が270人減少している。

また、部門別職員数の推移は、第58図のとおり、近年は、教育関係職員が減少傾向にあり、一般行政関係職員、警察関係職員、消防関係職員が増加傾向にある。

さらに、10年前（平成21年4月1日現在）と比較した一般行政関係職員の部門別、団体区分別増減状況は、第59図のとおりである。

（ウ）地方議会議員の数

平成30年12月31日現在で、都道府県議会議員の定数は2,687人（対前年度同期比同数）、市区町村議会議員の定数は3万399人（同166人減少（0.5％減））となっている。

イ　扶助費［資料編：第81表］

扶助費は、社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、障害者等を援助するために要する経費である。

扶助費の決算額は14兆2,997億円で、前年度と比べると0.1％増となっており、18年連続で増加している。また、扶助費の歳出総額に占める割合は14.6％で、前年度と同率となっている。

このうち通常収支分は14兆2,955億円で、保育所運営費の増加等により、前年度と比べると0.1％増となっており、東日本大震災分は42億円で、前年度と比べると6.0％減となっている。

扶助費の目的別の内訳をみると、児童福祉費が6兆2,168億円で最も大きな割合（扶助費総額の43.5％）を占め、以下、生活保護費の3兆6,521億円（同25.5％）、社会福祉費の3兆4,117億円（同23.9％）の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、児童福祉費が2.6％増、生活保護費が1.5％減、社会福祉費が3.2％減となっている。

扶助費の目的別内訳の推移は、第60図のとおりである。

なお、扶助費に充当された財源の内訳をみると、生活保護費負担金及び子どものための金銭の給付交付金等の国庫支出金が7兆2,153億円（扶助費総額の50.5％）、次いで一般財源等が6兆5,267億円（同45.6％）となっている。

ウ　公債費［資料編：第98表〜第99表］

公債費は、地方債元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費である。

公債費の決算額は12兆3,407億円で、前年度と比べると2.4％減となっている。また、公債費の歳出総額に占める割合は12.6％で、前年度と比べると0.3ポイントの低下となっている。

このうち通常収支分は12兆2,995億円で、前年度と比べると2.5％減となっており、東日本大震災分は412億円で、前年度と比べると15.2％増となっている。

公債費の内訳をみると、地方債元金償還金が11兆1,368億円（公債費総額の90.2％）、地方債利子が1兆2,033億円（同9.8％）、一時借入金利子が6億円（同0.0％）となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、地方債元金償還金が1.0％減、地方債利子が13.7％減、一時借入金利子が32.1％減となっている。

公債費を団体区分別にみると、都道府県においては6兆7,851億円で、前年度と比べると3.9％減、市町村においては5兆5,880億円で、前年度と比べると0.6％減となっている。また、歳出総額に占める割合を団体区分別にみると、都道府県においては13.9％で、前年度と比べると0.4ポイントの低下となっており、市町村においては9.6％で、前年度と比べると0.1ポイントの低下となっている。

なお、公債費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が11兆7,712億円（公債費総額の95.4％）となっており、使用料・手数料等の特定財源が5,694億円（同4.6％）となっている。

（2）投資的経費

投資的経費は、道路・橋りょう、河川、公園、学校、公営住宅の建設等社会資本の整備に要する経費であり、普通建設事業費、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっている。

投資的経費の決算額は15兆8,037億円で、前年度と比べると4.2％増となっている。また、投資的経費の歳出総額に占める割合は16.1％で、前年度と比べると0.6ポイントの上昇となっている。

このうち通常収支分は14兆5,955億円で、前年度と比べると6.3％増となっており、東日本大震災分は1兆2,082億円で、前年度と比べると15.8％減となっている。

投資的経費の内訳をみると、普通建設事業費は14兆7,644億円で、投資的経費に占める割合は93.4％（前年度94.4％）、災害復旧事業費は1兆392億円で、投資的経費に占める割合は6.6％（同5.6％）、失業対策事業費は0.3億円で、投資的経費に占める割合は0.0％（同0.0％）となっている。

ア　普通建設事業費［資料編：第83表］

普通建設事業費は、公共又は公用施設の新増設等に要する経費である。

普通建設事業費の決算額は14兆7,644億円で、前年度と比べると3.1％増となっている。

このうち通常収支分においては13兆8,594億円で、単独事業費の増加等により、前年度と比べると4.3％増となっており、東日本大震災分においては9,050億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると12.9％減となっている。

なお、普通建設事業費のうち「更新整備」（注1）に要した経費は、都道府県においては2兆7,212億円で、市町村においては3兆9,205億円となっている。一方、「新規整備」（注2）に要した経費は、都道府県においては2兆4,193億円、市町村においては2兆1,846億円となっている。「更新整備」と「新規整備」に要する経費の合計額に占める「更新整備」に要する経費の割合は、都道府県では52.9％、市町村では64.2％となっている。

（注1）建替え等（移転、集約化、複合化を含む。）の既存の公共施設等の更新や機能強化等（長寿命化改修、耐震改修、バリアフリー改修、太陽光パネルの設置等）をいう。建替え等に伴い行われる既存の公共施設等の除却も含まれる。

（注2）新たな公共施設等の建設、既存の公共施設等の別棟の増築、道路や下水管の新規区間開設等の新規公共施設等の整備をいう。

普通建設事業費の内訳をみると、補助事業費が7兆252億円（普通建設事業費総額の47.6％）、単独事業費が7兆208億円（同47.6％）、国直轄事業負担金が7,184億円（同4.9％）となっている。

また、各費目の決算額を前年度と比べると、補助事業費が3.8％減（前年度2.5％増）、単独事業費が11.5％増（同1.6％減）、国直轄事業負担金が0.5％減（同7.7％減）となっている。

普通建設事業費の推移は、第15表及び第61図のとおりである。

（ア）普通建設事業費の目的別内訳［資料編：第83表〜第87表］

普通建設事業費の目的別の内訳をみると、第62図のとおりであり、土木費が最も大きな割合（普通建設事業費総額の49.5％）を占め、以下、教育費（同13.4％）、農林水産業費（同11.0％）の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が0.1％減（前年度1.6％減）、教育費が4.2％減（同2.9％増）、農林水産業費が2.7％減（同8.0％増）となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、土木費のうちの道路橋りょう費が最も大きな割合（普通建設事業費総額の21.6％）を占め、以下、都市計画費（同12.6％）、河川海岸費（同8.7％）の順となっている。

また、これを団体区分別にみると、都道府県においては道路橋りょう費（普通建設事業費の25.5％）、河川海岸費（同15.2％）、農地費（同9.8％）、都市計画費（同7.9％）、林業費（同4.3％）の順で、市町村においては都市計画費（同17.0％）、道路橋りょう費（同16.1％）、小学校費（同7.8％）、清掃費（同7.4％）、児童福祉費（同5.0％）、の順となっている。

次に、補助事業費及び単独事業費の構成比をみると、衛生費、農林水産業費及び土木費においては補助事業費が単独事業費の割合を上回っているのに対し、総務費、民生費、労働費、商工費、消防費及び教育費においては単独事業費が補助事業費の割合を上回っている。

なお、普通建設事業費の目的別内訳の10年前（平成20年度）の決算額との比較については、第63図のとおりである。

（イ）補助事業費［資料編：第84表］

補助事業費は、地方公共団体が国からの負担金又は補助金を受けて実施する事業に要する経費である。

補助事業費の決算額は7兆252億円で、前年度と比べると3.8％減となっている。

このうち通常収支分においては6兆2,844億円で、前年度と比べると2.4％減となっており、東日本大震災分においては7,408億円で、前年度と比べると14.2％減となっている。

これを団体区分別にみると、都道府県においては3兆9,474億円で、前年度と比べると0.9％減、市町村においては3兆3,218億円で、前年度と比べると8.0％減となっている。

補助事業費の目的別の内訳をみると、第64図のとおりであり、土木費が最も大きな割合（補助事業費総額の58.8％）を占め、以下、農林水産業費（同17.4％）、教育費（同8.4％）、衛生費（同5.9％）の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が1.7％減、農林水産業費が3.5％減、教育費が18.3％減、衛生費が14.9％増となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合（補助事業費総額の23.4％）を占め、以下、都市計画費（同15.5％）、河川海岸費（同11.0％）の順となっている。これを団体区分別にみると、都道府県においては道路橋りょう費（補助事業費の27.7％）、河川海岸費（同18.6％）、農地費（同15.9％）の順で、市町村においては都市計画費（同24.2％）、道路橋りょう費（同16.6％）、清掃費（同10.1％）の順となっている。

（ウ）単独事業費［資料編：第86表］

単独事業費は、地方公共団体が国の補助等を受けずに自主的・主体的に地域の実情等に応じて実施する事業に要する経費である。

単独事業費の決算額は7兆208億円で、前年度と比べると11.5％増となっている。

このうち通常収支分においては6兆9,239億円で、前年度と比べると11.7％増となっており、東日本大震災分においては969億円で、前年度と比べると0.3％減となっている。

これを団体区分別にみると、都道府県においては3兆1,632億円で、前年度と比べると27.9％増、市町村においては4兆1,264億円で、前年度と比べると1.4％増となっている。

単独事業費の目的別の内訳をみると、第65図のとおりであり、土木費が最も大きな割合（単独事業費総額の36.4％）を占め、以下、教育費（同19.7％）、総務費（同11.4％）の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が2.8％増（前年度2.9％増）、教育費が3.3％増（同6.2％減）、総務費が4.0％増（同3.2％減）となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合（単独事業費総額の16.9％）を占め、以下、都市計画費（同10.9％）、小学校費（同5.2％）の順となっている。これを団体区分別にみると、都道府県においては道路橋りょう費（単独事業費の17.8％）、都市計画費（同9.9％）、河川海岸費（同8.9％）の順で、市町村においては道路橋りょう費（同15.4％）、都市計画費（同11.3％）、小学校費（同8.8％）の順となっている。

（エ）国直轄事業負担金［資料編：第85表］

国直轄事業負担金は、国が道路、河川、砂防、港湾等の土木事業等を直轄で実施する場合において、法令の規定により、地方公共団体がその一部を負担するものである。

国直轄事業負担金の決算額は7,184億円で、前年度と比べると0.5％減となっている。

このうち通常収支分においては6,511億円で、前年度と比べると1.1％増となっており、東日本大震災分においては672億円で、前年度と比べると13.6％減となっている。

国直轄事業負担金の目的別の内訳をみると、土木費が最も大きな割合（国直轄事業負担金総額の87.2％）を占め、次いで農林水産業費（同12.8％）となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が0.9％減、農林水産業費が3.0％増となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合（国直轄事業負担金総額の49.7％）を占め、以下、河川海岸費（同22.3％）、港湾費（同11.7％）の順となっている。

（オ）普通建設事業費の充当財源［資料編：第83表〜第86表］

普通建設事業費に充当された主な財源の内訳をみると、地方債が最も大きな割合（普通建設事業費総額の38.7％）を占めており、以下、一般財源等（同24.8％）、国庫支出金（同22.7％）の順となっている。普通建設事業費に充当された主な財源の構成比を前年度と比べると、地方債は0.6ポイントの低下、国庫支出金は1.2ポイントの低下、一般財源等は1.6ポイントの上昇となっている。

また、これを補助事業費と単独事業費に分けてみると、補助事業費については、国庫支出金が47.7％、地方債が32.4％、一般財源等が8.4％となっており、単独事業費については、地方債が41.5％、一般財源等が41.5％となっている。

普通建設事業費の財源構成比の推移は、第66図のとおりである。

（カ）用地取得費［資料編：第88表〜第90表］

地方公共団体が社会資本整備を推進するための用地取得に要する経費である用地取得費の決算額は1兆4,625億円で、前年度と比べて56.7％増となっている。

これを団体区分別にみると、都道府県においては9,675億円で、前年度と比べると146.8％増、市町村においては4,950億円で、前年度と比べると8.6％減となっている。

用地取得費の目的別の主な内訳をみると、第67図のとおりであり、土木関係が用地取得費総額の中で最も大きな割合（用地取得費総額の49.0％）を占め、次いで教育関係（同3.7％）となっている。

さらに、これらを主要項目別にみると、用地取得費総額で最も大きな割合を占めるのが都市計画で25.2％（都道府県17.0％、市町村41.1％）であり、次いで道路橋りょう17.5％（都道府県16.9％、市町村18.8％）となっている。

また、用地取得費のうち用地を取得するために要した移転等の補償費又は賠償費は3,362億円で、用地取得費に占める割合は前年度と比べると12.2ポイント低下の23.0％（都道府県21.9％、市町村25.1％）となっている。

取得用地面積（債務負担行為等に係るものを含む。）は5,704万6千m²（都道府県2,637万2千m²、市町村3,067万4千m²）で、前年度と比べると26.2％減となっている。

用地取得費の推移は、第68図のとおりである。

また、普通建設事業費に占める用地取得費の割合の推移は、第16表のとおりであり、平成30年度は9.5％（都道府県12.5％、市町村6.5％）となっている。

イ　災害復旧事業費［資料編：第91表］

災害復旧事業費は、地震、豪雨、台風等の災害によって被災した施設を原形に復旧するために要する経費である。

災害復旧事業費の決算額は1兆392億円で、前年度と比べると23.0％増となっている。

このうち通常収支分においては7,361億円で、前年度と比べると64.1％増となっており、東日本大震災分においては3,032億円で、前年度と比べると23.5％減となっている。

災害復旧事業費の内訳をみると、第69図のとおりであり、補助事業費が7,794億円で、前年度と比べると13.5％増、単独事業費が2,304億円で、前年度と比べると58.4％増、国直轄事業負担金が294億円で、前年度と比べると131.8％増となっている。

また、目的別内訳の構成比をみると、道路、河川、海岸、港湾、漁港等の公共土木施設関係（災害復旧事業費総額の66.1％）と農地、農業用施設等の農林水産施設関係（同16.5％）で全体の82.6％を占めている。

災害復旧事業費に充当された財源の内訳をみると、国庫支出金が最も大きな割合（災害復旧事業費総額の54.6％）を占め、次いで地方債（同25.6％）となっており、これらで充当された財源総額の80.2％を占めている。

災害復旧事業費の推移は、第70図のとおりである。

ウ　失業対策事業費［資料編：第92表］

失業対策事業費は、失業者に就業の機会を与えることを主たる目的として、道路、河川、公園の整備等を行う事業に要する経費である。

失業対策事業費の決算額は0.3億円で、前年度と比べると、33.3％減（前年度15.0％減）となっている。

失業対策事業費は、全て単独事業費となっており、その財源としては全て一般財源等が充当されている。

（3）その他の経費

その他の経費には、物件費、維持補修費、補助費等、繰出金、積立金、投資及び出資金、貸付金並びに前年度繰上充用金があり、その決算額は33兆1,105億円で、前年度と比べると1.0％減となっている。

その他の経費の歳出総額に占める割合は33.8％で、前年度と比べると0.3ポイントの低下となっている。

その他の経費の内訳をみると、第17表のとおりである。

その他の経費の内訳別に歳出総額に対する割合をみると、物件費が9.8％、補助費等が9.5％、繰出金が6.1％、貸付金が3.9％、積立金が2.9％の順となっている。

なお、その他の経費のうち地方公営企業会計に対する繰出しの状況についてみると、法適用企業（「地方公営企業法」（昭和27年法律第292号）の規定の全部又は一部を適用している事業。以下同じ。）の地方公営企業会計に対する繰出し（補助費等）は2兆1,445億円、法非適用企業（地方公営企業法の規定を適用していない事業。以下同じ。）の地方公営企業会計に対する繰出し（繰出金）は8,507億円で、合計2兆9,952億円となっており、前年度と比べると0.2％減となっている。

ア　物件費［資料編：第79表］

賃金、旅費、備品購入費、需用費、役務費、委託料等の経費である物件費の決算額は9兆5,696億円で、前年度と比べると1.6％増となっている。

このうち通常収支分は9兆4,367億円で、前年度と比べると2.1％増となっており、東日本大震災分は1,330億円で、23.1％減となっている。

その内訳をみると、委託料が最も大きな割合（物件費総額の58.2％）を占め、次いで消耗品の取得等に要する需用費（同17.3％）となっており、これらの経費で物件費総額の75.5％を占めている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、委託料が1.2％増、需用費が1.1％増となっている。

なお、物件費の内訳の推移は、第71図のとおりである。

イ　維持補修費［資料編：第80表］

地方公共団体が管理する施設等の維持に要する経費である維持補修費の決算額は1兆2,691億円で、前年度と比べると0.8％減となっている。

このうち通常収支分は1兆2,646億円で、前年度と比べると0.9％減となっており、東日本大震災分は45億円で、17.7％増となっている。

維持補修費の目的別の内訳をみると、第72図のとおりであり、土木費（維持補修費総額の68.9％）、教育費（同9.7％）、衛生費（同9.5％）の順となっており、道路・橋りょう、公営住宅等の土木関係施設、小・中学校等の教育関係施設及び清掃施設等の衛生関係施設に係るものの合計で維持補修費総額の88.1％を占めている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が3.3％減、教育費が7.1％増、衛生費が2.3％増となっている。

ウ　補助費等［資料編：第82表］

地方公営企業会計（うち法適用企業）に対する負担金、市町村の地方公営事業会計に対する都道府県の負担金、様々な団体等への補助金、報償費、寄附金等の補助費等の決算額は9兆3,108億円で、前年度と比べると5.4％減となっている。

このうち通常収支分は9兆1,570億円で、前年度と比べると5.6％減となっており、東日本大震災分は1,538億円で、14.9％増となっている。

補助費等の目的別の内訳をみると、民生費が3兆2,646億円で最も大きな割合（補助費等総額の35.1％）を占め、以下、教育費の1兆6,551億円（同17.8％）、衛生費の1兆1,515億円（同12.4％）、土木費の1兆793億円（同11.6％）、総務費の8,836億円（同9.5％）、商工費の5,586億円（同6.0％）、農林水産業費の4,707億円（同5.1％）の順となっている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、民生費が16.4％減、教育費が0.9％増、衛生費が1.4％増、土木費が7.9％増、総務費が1.4％増、商工費が2.1％増、農林水産業費が1.9％減となっている。

補助費等のうち、経費負担区分の原則により、一般会計等が負担する法適用企業に対する負担金及び補助金は1兆7,904億円で、前年度と比べると4.3％増となっている。

事業別にみると、下水道事業に対するものが9,376億円で最も大きな割合（地方公営企業会計（うち法適用企業）に対する負担金及び補助金総額の52.4％）を占め、次いで、病院事業の6,289億円（同35.1％）となっており、これら2事業で総額の87.5％を占めている。以下、交通事業の1,029億円（同5.7％）、上水道事業の929億円（同5.2％）の順となっている。

なお、補助費等の内訳の推移は、第73図のとおりである。

エ　繰出金［資料編：第93表］

普通会計から他会計、基金に支出する経費である繰出金の決算額は6兆35億円で、前年度と比べると11.8％増となっている。

このうち通常収支分は5兆9,615億円で、前年度と比べると11.7％増となっており、東日本大震災分は420億円で、15.2％増となっている。

繰出金の繰出先内訳をみると、国民健康保険事業会計に対するものが1兆9,280億円（繰出金総額の32.1％）で最も大きな割合を占めており、以下、後期高齢者医療事業会計に対するものが1兆6,095億円（同26.8％）、介護保険事業会計に対するものが1兆5,760億円（同26.3％）、地方公営企業会計（うち法非適用企業）に対するものが8,507億円（同14.2％）の順となっている。

また、各費目の決算額を前年度と比べると、国民健康保険事業会計に対するものが52.3％増、後期高齢者医療事業会計に対するものが2.0％増、介護保険事業会計に対するものが1.6％増、地方公営企業会計（うち法非適用企業）に対するものが9.2％減となっている。

なお、繰出金のうち、地方公営企業会計（うち法非適用企業）に対する繰出金は、経費負担区分の原則により、一般会計等が負担するものであり、その内訳を事業別にみると、下水道事業に対するものが6,495億円で最も大きな割合（地方公営企業会計（うち法非適用企業）に対する繰出金総額の76.3％）を占めている。また、その下水道事業に対する繰出金を目的別にみると、公債費財源繰出が4,644億円（下水道事業に対する繰出金総額の71.5％）、建設費繰出が765億円（同11.8％）で、これらの繰出しで全体の83.3％を占めている。

なお、繰出金の繰出先内訳の推移は、第74図のとおりであり、地方公営企業会計（うち法非適用企業）に対するものは減少の傾向にある。

オ　積立金［資料編：第94表］

特定の目的のための財産を維持し、又は資金を積み立てるための経費である積立金（歳計剰余金処分による積立金を含む。）の決算額は3兆428億円で、前年度と比べると8.8％減となっている。

積立金の状況は、第75図のとおりであり、その内訳を基金の種類別にみると、財政調整基金に対するものは9,446億円で、前年度と比べると1,467億円増加（18.4％増）、減債基金に対するものは2,032億円で、前年度と比べると156億円増加（8.3％増）、その他特定目的基金に対するものは1兆8,950億円で、前年度と比べると4,565億円減少（19.4％減）している。

一方、積立金取崩し額は3兆2,881億円で、前年度と比べると775億円増加（2.4％増）している。

その内訳をみると、財政調整基金の取崩し額が7,961億円で、前年度と比べると1,234億円減少（13.4％減）、減債基金の取崩し額が3,101億円で、前年度と比べると497億円増加（19.1％増）、その他特定目定基金の取崩し額が2兆1,819億円で、前年と比べると1,511億円増加（7.4%増）している。

この結果、平成30年度末における積立金現在高は、2,453億円減少（1.0％減）し、23兆2,607億円となっている。積立金現在高については、「2　地方財政の概況（6）将来の財政負担　ウ　積立金現在高」を参照されたい。

カ　投資及び出資金［資料編：第95表］

国債・地方債の取得や第三セクター等への出えん、出資等のための経費である投資及び出資金の決算額は3,426億円で、前年度と比べると6.2％増となっている。

このうち通常収支分は3,406億円で、前年度と比べると6.3％増となっており、東日本大震災分は20億円で、9.3％減となっている。

投資及び出資金の目的別の内訳をみると、第76図のとおりであり、土木費が1,445億円で最も大きな割合（投資及び出資金総額の42.2％）を占め、次いで衛生費が1,237億円（同36.1％）となっている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が5.6％増、衛生費が5.6％減となっている。

投資及び出資金のうち、地方公営企業会計（うち法適用企業）に対するものは2,848億円で、前年度と比べると111億円増加（4.0％増）している。事業別にみると、下水道事業に対するものが1,367億円で、最も大きな割合（地方公営企業会計（うち法適用企業）に対する投資及び出資金総額の48.0％）を占め、以下、病院事業の618億円（同21.7％）、上水道事業の561億円（同19.7％）、交通事業の232億円（同8.1％）の順となっている。

平成30年度末における投資及び出資金の現在高は16兆2,228億円で、前年度末と比べると771億円減少（0.5％減）している。その内訳をみると、観光・交通関係に係るものが3兆7,891億円で最も大きな割合（投資及び出資金残高の23.4％）を占め、以下、開発関係の1兆2,237億円（同7.5％）、商工関係の1兆930億円（同6.7％）の順となっている。

キ　貸付金［資料編：第96表］

地方公共団体が様々な行政施策上の目的のために地域の住民、企業等に貸し付ける貸付金の決算額は3兆8,008億円で、前年度と比べると7.1％減となっている。

このうち通常収支分は3兆6,122億円で、前年度と比べると6.9％減となっており、東日本大震災分は1,886億円で、10.5％減となっている。

貸付金の目的別の内訳をみると、第77図のとおりであり、商工費が3兆1,842億円で最も大きな割合（貸付金総額の83.8％）を占め、次いで、土木費が1,843億円（同4.8％）となっている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、商工費が6.1％減、土木費が12.7％減となっている。

地方公営企業会計（うち法適用企業）に対する貸付金は694億円で、前年度と比べると42億円減少（5.7％減）しており、貸付金総額に占める割合は1.8％となっている。

平成30年度末の貸付金の現在高は5兆9,365億円で、前年度末と比べると1,728億円減少（2.8％減）している。その内訳をみると、商工関係に係るものが1兆1,821億円（貸付金現在高の19.9％）、観光・交通関係が9,761億円（同16.4％）、住宅関係が6,220億円（同10.5％）等となっている。