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令和2年版
地方財政白書
(平成30年度決算)

5 地方行政サービス改革の推進等

(1)地方行政サービス改革の推進

ア 地方行政サービス改革の動向

地方公共団体においては、人口減少・高齢化の進行、行政需要の多様化など社会経済情勢の変化に一層適切に対応することが求められており、国・地方を通じた厳しい財政状況下においても、質の高い行政サービスを引き続き効果的・効率的に提供する必要がある。

そのためには、地方公共団体において、窓口業務を含む定型的業務を中心とした事務・事業の民間委託の推進、指定管理者制度等の活用、給与・旅費等に関する庶務業務の集約化、自治体クラウドの導入、PPP/PFIの推進等の積極的な業務改革の推進に努めることが必要である。

こうした観点から、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)等を踏まえ、「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について」(平成27年8月28日付け総務大臣通知)等により、各地方公共団体に対し、より積極的な業務改革の推進に努めるよう要請している。

今後も、業務改革を推進するため、民間委託やクラウド化等の各地方公共団体における取組状況・方針について毎年度フォローアップし、その結果を統一様式による見える化や比較可能な形で整理した上で、広く公表することとしている。

また、地方公共団体が行政の高度化・効率化を実現し、持続可能な行政サービスを確保するため、令和2年度、RPA、共同オンライン申請システム、インフラ点検に必要なドローン等及び地方公務員向けテレワークの導入に要する経費について、特別交付税措置を講じることとしている。

イ 地方公共団体の情報システム及び業務プロセスの標準化

情報システムと業務プロセスは密接不可分であり、地方行政サービス改革の推進に当たっては、これら双方の標準化を進める必要がある。なお、情報システムと業務プロセスには重複する部分もあるが、システム処理については、入力するデータの形式など業務プロセスに直接関わらない部分もあり、また逆に、業務プロセスにはシステム処理に直接関わらない部分もあることから、全体を見据えつつ情報システムの標準化と業務プロセスの標準化の双方に取り組む必要がある。

地方公共団体の情報システムについては、重複投資をなくして行政のデジタル化に向けた基盤を整備していく観点から標準化・共同化を推進しており、具体的には、「自治体システム等標準化検討会」において住民記録システムの標準化について検討を行い、令和2年夏頃までに標準仕様書の作成等を行うこととしている。基幹税務システムについては、令和2年度から標準仕様書の作成を進めることとしており、その他の情報システムについても、標準化に向けた調査・課題整理の結果に応じて、順次、標準的なクラウドシステムへの移行に向けた技術的作業に着手することとしている。

また、令和元年度から、地方公共団体の基幹的な業務(住民基本台帳業務、税務業務等)について、人口規模ごとに複数団体による検討グループを組み、そのグループ内で、業務プロセスの団体間比較を実施することで、ICTを活用した業務プロセスの標準モデルを構築することを目的とした「自治体行政スマートプロジェクト」を開始した。本事業により、情報システムやICTの共同利用の推進等が期待される。令和元年度は、8つの検討グループが採択され、それぞれのグループにおいて、住民基本台帳業務、税務業務等における業務プロセスの標準モデルを構築し、令和2年度以降、ICTの具体的活用方法も含めた業務プロセスの標準化モデルを全国展開することとしている。

ウ 自治体クラウドの導入の推進

地方公共団体の基幹系の情報システム等について、<1>情報システムコストの削減、<2>情報セキュリティ水準の向上、<3>災害時の業務継続体制の強化、<4>参加団体間における業務の共通化・標準化等を進める観点から、複数の地方公共団体が共同でサービス調達を行う「自治体クラウド」の導入を積極的に推進している。

地方公共団体におけるクラウド導入を促進するため、各地方公共団体が「官民データ活用推進基本法」(平成28年法律第103号)に基づき策定した「クラウド導入等に関する計画」の策定状況等の公表を引き続き行い、計画の進捗管理を行うこととしている。また、各市区町村の情報システム経費を調査・公表することを通じて、コストの見える化にも取り組むこととしている。

(2)マイナンバーシステムの積極的な活用

ア マイナンバー制度の意義

マイナンバー制度は、平成25年5月に成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号。以下「マイナンバー法」という。)等の関連4法により導入され、平成27年10月5日に施行された。この制度は、より公平な社会保障制度や税制の基盤となるとともに、安心・安全なデジタル社会のインフラとして国民の利便性の向上や行政の効率化に資するものである。すなわち、所得把握の精度が向上し、真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障の充実、負担・分担の公平性がより一層確保されることや、行政の効率化が図られ、限られた行政資源を住民サービスの充実のために、より重点的に配分することが可能となる(第131図第132図)。

第131図 マイナンバー制度の意義について
第132図 「マイナンバーカード」は、これからの時代の本人確認ツール

今後、各地方公共団体において業務のICT化などを進め、質の高い行政サービスを効果的・効率的に提供する業務改革に取り組んでいくに当たっては、マイナンバーシステム(マイナンバー制度と関連の各システム)が提供する様々な機能を積極的に活用していくことが不可欠である。

イ マイナンバーを活用した情報連携の円滑な運用

マイナンバー制度の重要な根幹が情報連携である。マイナンバー法に基づき総務省が設置・管理する情報提供ネットワークシステムを用いて、機関を超えた情報のバックヤード連携、すなわち、国の行政機関や地方公共団体がそれぞれ管理している同一個人の情報をオンラインで情報連携し、相互に活用することが可能となった。これにより、各種行政手続を行う際、行政機関等に提出する必要があった住民票の写しや課税証明書等の書類の省略が可能となり、また、そのために複数の行政機関に出向く手間が不要となるなど、行政手続のペーパレス化やワンストップ化が進展することが期待される。

平成29年11月から本格運用が開始され、令和2年1月時点で児童手当の申請など2,080の事務手続で情報連携による提出書類等の削減が実現しており、今後も順次、対象事務が増えていくことが予定されている。

ウ マイナポータルの利用拡大

政府が運営するオンラインサービスとして、国民一人一人に用意されたポータルサイトがマイナポータルである。自身のマイナンバー付きの個人情報が情報連携された履歴を確認する「情報提供等記録表示」機能のほか、運用開始以降、利用可能なサービスが着実に拡大している。

市町村の子育てや介護、被災者支援関係などの手続について、サービス検索やオンライン申請を可能とするワンストップサービス(ぴったりサービス)が提供可能となっており、行政機関からのお知らせ(プッシュ型)サービスの活用も含め、手続のオンライン化による行政サービスの効果的・効率的な提供に向けて、各地方公共団体の積極的な利用が期待される。

エ マイナンバーカード(公的個人認証サービス等)の普及と利活用の促進

マイナンバーカードは、券面による身分証明機能に加え、ICチップに標準搭載された公的個人認証サービスによってオンラインでの確実な本人確認を可能とするものである。国民にマイナンバー制度のメリットをより実感してもらえるデジタル社会を早期に実現するため、安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤となるマイナンバーカードの普及とその利便性の向上を図る必要がある。

令和元年6月4日のデジタル・ガバメント閣僚会議において、「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」が決定され、令和2年度にマイナンバーカードを活用した消費活性化策(マイナポイント事業)を実施することや、令和3年3月からマイナンバーカードの健康保険証としての利用を開始することなど様々なマイナンバーカード普及策が決定された。

また、令和元年9月3日の同会議においては、医療機関等におけるマイナンバーカードの健康保険証利用の環境整備とマイナンバーカードの交付枚数(想定)に関する全体スケジュールが決定されるとともに、令和元年12月20日には、同会議においてマイナンバーカードの利活用シーンの拡大に関する様々な施策に関する工程表が決定された。今後、この工程表に基づき、取組を着実に進めることとされている。

(3)給与の適正化及び適正な定員管理の推進

地方公共団体においては、現下の厳しい財政状況において、計画的に行政改革を推進するとともに住民への説明責任を果たす見地から、目標の数値化や分かりやすい指標の活用を図りつつ、給与情報等公表システムにより給与及び定員の公表を行うなど、給与の適正化や適正な定員管理などの取組を行っている。

平成31年4月1日時点のラスパイレス指数は、全地方公共団体平均で99.1となっており、平成24年及び平成25年の国家公務員の給与減額支給措置の影響を除き、平成16年以降、16年連続で100を下回っている。地方公共団体の総職員数については、第54表のとおり、平成31年4月1日の対前年比で、都道府県0.3%増、政令指定都市0.1%減、政令指定都市を除く市区町村0.0%減となっており、全地方公共団体においては0.1%の増加となった。

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