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令和2年版
地方財政白書
(平成30年度決算)

8 地方分権改革の推進

住民に対する行政サービスの向上や行政の効率化を図るとともに、地方が特色を持った地域づくりや地域に合った行政を展開することができるよう、国と地方の役割分担を見直し、地域の自主性・自立性を高めるため、地方分権改革を積極的に推進することとされている。

地方分権改革の推進は、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生における極めて重要なテーマである。

(1)地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和に係る取組

地方分権改革については、「地方分権改革推進法」(平成18年法律第111号)による地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。いわゆる「第1次地方分権一括法」。)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第51号。いわゆる「第4次地方分権一括法」。)までの4次にわたる一括法により、地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)について、具体的な改革が積み重ねられてきた。

平成26年には、これまでの成果を基盤とし、地方の発意に根差した新たな取組を推進することとして、「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成26年4月30日地方分権改革推進本部決定。)により地方分権改革に関する「提案募集方式」を導入し、地方に対する事務・権限移譲や規制緩和に関する地方からの提案を受け付けている。これまで、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成27年法律第50号。いわゆる「第5次地方分権一括法」。)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和元年法律第26号。いわゆる「第9次地方分権一括法」。)までの一括法により、地方側の長年の懸案であった農地転用許可の権限移譲や地方版ハローワークの創設をはじめとする更なる事務・権限の移譲等を行うなど、国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革が推進されている。

また、政府の地方分権改革の推進体制としては、内閣総理大臣を本部長とする地方分権改革推進本部が政策決定機能を担い、地方分権改革担当大臣の下に開催されている地方分権改革有識者会議が調査審議機能を担っている。さらに、地方分権改革有識者会議の下で、提案募集検討専門部会等を開催し、専門的な見地から検討が行われている。

これまでの地方分権改革における主な取組は以下のとおりである。

ア 事務・権限移譲

地方分権改革においては、地方公共団体、特に住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、地方公共団体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担うことができるようにすることが必要不可欠である。

これまでの地方分権一括法等により、国から地方公共団体への事務・権限の移譲については、看護師など各種資格者の養成施設等の指定・監督等の国(地方厚生局)の事務・権限を都道府県へ移譲する改正や、自家用有償旅客運送の登録、監督等の国(地方運輸局)の事務・権限を希望する市町村へ移譲する改正等が、都道府県から基礎自治体への事務・権限の移譲については、都市計画に関する事務を市町村へ移譲する改正や、県費負担教職員の給与等の負担、定数の決定等に係る権限を道府県から政令指定都市へ移譲する改正等が行われた。

以上のような事務・権限の移譲により、窓口の一本化等による住民の利便性向上、地域課題の解決に資する独自の取組、総合行政の展開による行政の効果的・効率的な運営が進んでいる。

イ 地方に対する規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)

地方分権を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けを行ってきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施することができるように改めていく必要がある。

義務付け・枠付けの見直しについては、累次にわたる地方分権一括法等により、これまで法令により全国画一的に定められていた保育所や放課後児童クラブの設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任すること等により、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

(2)令和元年の地方からの提案等に関する対応方針

令和元年12月、地方分権改革推進本部及び閣議において、「令和元年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和元年12月23日閣議決定。以下「令和元年対応方針」という。)が決定された。

「令和元年対応方針」においては、地方創生や子ども・子育て支援に資する提案をはじめとする、現場の課題に基づく地方からの提案等にきめ細かく対応し、都道府県から市町村への事務・権限の移譲、規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)等を推進することとされている。

「令和元年対応方針」に盛り込まれた事項のうち、主なものは第134図 のとおりである。

第134図 令和元年の地方からの提案等に関する対応方針(概要)

令和元年対応方針に盛り込んだ事項のうち、法律の改正により措置すべき事項については、所要の一括法案等を第201回通常国会に提出することを基本とし、現行規定で対応可能な提案については、地方公共団体に対する通知等により明確化することとされている。

また、地方公共団体において、移譲された事務・権限を円滑に執行できるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講じるとともに、マニュアルの整備や技術的助言、研修や職員の派遣などの必要な支援を実施することとされている。

今後とも、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革を着実かつ強力に進めていくこととされている。

(3)地方税財源の充実確保

各地方公共団体が自らの発想で特色を持った地域づくりを進めていくためには、その基盤となる地方税財源の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を進めることが重要である。

また、令和元年11月19日に、地方財政審議会から、所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応、法人事業税の収入金額課税を含む「令和2年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」(附属資料参照)が提出されるとともに、同年12月20日に「令和2年度税制改正の大綱」が閣議決定された。

以上を踏まえ、地方税制において主に以下の事項について改正を行うため、「地方税法等の一部を改正する法律案」を第201回通常国会に提出している。

ア 所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応

所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題に対応するため、所有者情報の円滑な把握や課税の公平性の確保の観点から、登記名義人等が死亡している場合における現所有者に賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる制度の創設及び固定資産の使用者を所有者とみなして課税することができる制度の拡大を行うこととしている。

イ 未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し等

全てのひとり親家庭に対して公平な税制を実現する観点から、「婚姻歴の有無による不公平」と「男性のひとり親と女性のひとり親の間の不公平」を同時に解消するため、未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し等を行うこととしている。

ウ 法人事業税の収入金額課税

電気供給業に係る法人事業税について、令和2年の送配電部門の法的分離、新規参入の状況とその見通し、行政サービスの受益に応じた負担の観点、地方財政や個々の地方公共団体の税収に与える影響等を考慮の上、一定の代替財源を確保しつつ、発電・小売電気事業に係る課税方式を見直すこととしている。

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