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令和2年版
地方財政白書
(平成30年度決算)

8 東日本大震災の影響

(1)普通会計

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、死者19,689人、行方不明者2,563人(平成31年3月8日、総務省消防庁発表)、被害総額(推計)約16兆9千億円(平成23年6月24日、内閣府(防災担当)発表)にのぼる被害をもたらすとともに、全国的にも生産、消費、物流等の経済活動に大きな影響を与えた。

政府は、東日本大震災発生直後から、被災者の生活の支援や被災地の復旧・復興対策に当たってきており、平成30年度においても前年度に引き続き、被災地の地方公共団体を中心に復旧・復興事業など多額の東日本大震災関連経費が支出された。その状況は次のとおりである。

ア 東日本大震災分の歳入及び歳出の状況

(ア)歳入[資料編:第136表

東日本大震災分の歳入は2兆3,690億円で、国庫支出金の減少等により、前年度と比べると15.6%減となっている。これを団体区分別にみると、都道府県においては1兆4,338億円で、国庫支出金の減少等により、前年度と比べると21.5%減となっており、市町村においては1兆1,025億円で、都道府県支出金の減少等により、前年度と比べると9.3%減となっている。

歳入の構成比は、国庫支出金が30.4%(前年度31.9%)、繰入金が23.9%(同25.1%)、一般財源が21.8%(同20.1%)、地方債が1.4%(同1.3%)等となっている。

国庫支出金は7,209億円で、放射線量低減対策特別緊急事業費補助金の減少等により、前年度と比べると19.6%減となっている。

繰入金は5,661億円で、東日本大震災復興関連基金からの繰入金の減少等により、前年度と比べると19.7%減となっている。

一般財源は5,165億円で、震災復興特別交付税の減少等により、前年度と比べると8.3%減となっている。

地方債は323億円で、公営住宅建設事業債等に係る地方債の減少等により、前年度と比べると12.7%減となっている。

(イ)歳出[資料編:第137表第138表

東日本大震災分の歳出は2兆865億円で、積立金の減少等により、前年度と比べると16.3%減となっている。これを団体区分別にみると、都道府県においては1兆2,473億円で、積立金の減少等により、前年度と比べると22.3%減となっており、市町村においては9,819億円で、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると10.2%減となっている。

a 目的別歳出

目的別歳出の構成比は、土木費が31.1%(前年度31.9%)、災害復旧費が14.5%(同15.9%)、民生費が7.0%(同10.8%)等となっている。

土木費は6,490億円で、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると18.3%減となっている。

災害復旧費は3,033億円で、各種災害復旧事業の減少等により、前年度と比べると23.5%減となっている。

民生費は1,458億円で、除染関連基金への積立金の減少等により、前年度と比べると46.0%減となっている。

b 性質別歳出

性質別歳出の構成比は、普通建設事業費が43.4%(前年度41.7%)、積立金が13.5%(同17.1%)、災害復旧事業費が14.5%(同15.9%)、物件費が6.4%(同6.9%)等となっている。

普通建設事業費は9,050億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると12.9%減となっている。

積立金は2,822億円で、除染関連基金への積立金の減少等により、前年度と比べると33.9%減となっている。

災害復旧事業費は3,032億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると23.5%減となっている。

物件費は1,330億円で、除染関連事業の減少等により、前年度と比べると23.1%減となっている。

イ 特定被災地方公共団体等における決算の状況[資料編:第139表

(ア)特定被災県

a 歳入

特定被災県(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号。以下「東日本大震災財特法」という。)第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である県をいう。)9県の歳入総額は9兆5,677億円で、前年度と比べると4.3%減(全国では1.0%減)となっている。

このうち通常収支分は8兆1,533億円で、前年度と比べると0.4%減(全国では0.3%減)、東日本大震災分は1兆4,144億円で、前年度と比べると21.6%減(同21.5%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が0.5%増(全国では0.4%増)、地方交付税が2.0%減(同1.1%減)、国庫支出金が10.4%減(同6.0%減)等となっている。

b 歳出

特定被災県の歳出総額は9兆2,148億円で、前年度と比べると3.9%減(全国では1.0%減)となっている。

このうち通常収支分は7兆9,848億円で、前年度と比べると0.2%減(全国では0.3%減)、東日本大震災分は1兆2,300億円で、前年度と比べると22.4%減(同22.3%減)となっている。なお、特定被災県の東日本大震災分の歳出は、全国の都道府県における東日本大震災分の歳出の98.6%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が9.4%増(全国では2.3%減)、民生費が除染関連基金への積立金の減少等により11.8%減(同3.5%減)、災害復旧費が19.7%減(同14.7%増)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が3.9%減(全国では9.1%増)、災害復旧事業費が19.7%減(同14.7%増)、積立金が14.7%減(同23.5%減)等となっている。

c 決算収支

特定被災県の実質収支は822億円の黒字で、前年度と比べると67億円減少(全国では53億円増加)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災県の地方債現在高は15兆7,750億円で、前年度と比べると0.7%減(全国では0.7%減)となっている。債務負担行為額は1兆2,823億円で、前年度と比べると11.0%減(同8.1%減)となっている。積立金現在高は1兆7,870億円で、前年度と比べると0.3%減(同3.5%減)となっている。

(イ)特定被災市町村等

a 歳入

特定被災市町村等(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」(平成23年政令第127号)の別表第1に定める特定被災地方公共団体である市町村並びに同令の別表第2及び別表第3に定める市町村のうち特定被災地方公共団体以外のものをいう。)227市町村の歳入総額は7兆4,892億円で、前年度と比べると2.1%減(全国では0.1%増)となっている。

このうち通常収支分は6兆4,311億円で、前年度と比べると0.8%減(全国では0.3%増)、東日本大震災分は1兆581億円で、前年度と比べると9.8%減(同9.3%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が2.7%増(全国では4.0%増)、地方交付税が2.2%減(同1.6%減)、国庫支出金が5.0%減(同2.8%減)等となっている。

b 歳出

特定被災市町村等の歳出総額は7兆1,395億円で、前年度と比べると1.7%減(全国では0.1%増)となっている。

このうち通常収支分は6兆2,014億円で、前年度と比べると0.2%減(全国では0.3%増)、東日本大震災分は9,382億円で、前年度と比べると10.7%減(同10.2%減)となっている。なお、特定被災市町村等の東日本大震災分の歳出は、全国の市町村における東日本大震災分の歳出の95.5%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が2.1%減(全国では3.0%増)、民生費が除染関連事業の減少等により1.4%減(同0.4%減)、災害復旧費が22.7%減(同41.8%増)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が補助事業費の減少等により9.5%減(全国では2.8%減)、災害復旧事業費が22.8%減(同41.8%増)、積立金が10.6%減(同0.4%減)等となっている。

c 決算収支

特定被災市町村等の実質収支は2,120億円の黒字で、前年度と比べると140億円減少(全国では604億円減少)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災市町村等の地方債現在高は6兆4,787億円で、前年度と比べると0.1%増(全国では0.0減)、債務負担行為額は1兆4,604億円で、前年度と比べると0.1%減(同5.0%増)、積立金現在高は2兆3,626億円で、前年度と比べると7.7%減(同0.2%増)となっている。

(2)公営企業会計

地方公営企業については、東日本大震災財特法第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である9県及び東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令の別表第1に定める特定被災地方公共団体である178市町村(当該団体が加入する一部事務組合等を含む。以下「特定被災地方団体」という。)を対象として、東日本大震災の災害復旧事業に係る一般会計からの繰出基準の特例等を講じている。

特定被災地方団体における地方公営企業の決算状況は次のとおりである。

ア 特定被災地方団体における公営企業全体の経営状況[資料編:第140表

特定被災地方団体における法適用企業と法非適用企業(建設中のものを除く。)を合わせた収支の状況は、黒字事業が814事業(事業数全体の90.6%)で、前年度と比べると10事業減少(1.2%減)している。黒字額は1,219億円で、前年度と比べると21億円増加(1.7%増)している。また、赤字事業は84事業(事業数全体の9.4%)で、前年度と比べると2事業増加(2.4%増)している。赤字額は234億円で、前年度と比べると81億円減少(25.9%減)している。

特定被災地方団体における地方公営企業の総収支は985億円の黒字で、前年度と比べると102億円増加(11.6%増)している。

前年度に比べ収支が改善した事業は10事業あり、宅地造成事業で187億円(対前年度比6,181.2%増)と最も大きく改善し、次いで工業用水道事業で13億円(同27.7%増)、下水道事業で12億円(同5.2%増)改善している。一方、前年度に比べ収支が悪化した事業は4事業あり、水道事業で96億円(対前年度比16.6%減)と最も大きく悪化し、次いで病院事業で29億円(同41.3%減)悪化している。

また、前年度に比べ黒字額が減少し、赤字額が増加した事業は2事業あり、水道事業においては、黒字額が72億円減少、赤字額が24億円増加している。

イ 特定被災地方団体における公営企業の料金収入[資料編:第141表

料金収入は1兆615億円で、前年度と比べると29億円増加(0.3%増)している。

前年度に比べ料金収入が増加した事業は10事業あり、病院事業で28億円(対前年度比0.7%増)と最も大きく増加し、次いでガス事業で20億円(同5.5%増)、水道事業で5億円(同0.1%増)増加している。一方、前年度に比べ料金収入が減少した事業は5事業あり、宅地造成事業で34億円(対前年度比6.5%減)と最も大きく減少している。

ウ 特定被災地方団体における公営企業の他会計繰入金[資料編:第142表

他会計からの繰入金は3,929億円で、前年度と比べると25億円減少(0.6%減)している。

この内訳をみると、収益的収入として2,323億円(収益的収入に対する繰入金の割合14.7%)、資本的収入として1,606億円(資本的収入に対する繰入金の割合29.6%)となっており、前年度に比べ収益的収入への繰入れは8億円増加(0.3%増)し、資本的収入への繰入れは33億円減少(2.0%減)している。

前年度に比べ他会計繰入金が増加した事業は4事業あり、下水道事業で55億円(対前年度比2.7%増)と最も大きく増加している。一方、前年度に比べ他会計繰入金が減少した事業は11事業あり、宅地造成事業で47億円(対前年度比17.5%減)と最も大きく減少し、次いで港湾整備事業で11億円(同20.7%減)減少している。

エ 特定被災地方団体における法適用企業の経営状況[資料編:第143表

特定被災地方団体における法適用企業の純損益の状況をみると、黒字事業は276事業(対前年度比12事業増加、4.5%増)で、全事業数(建設中のものを除く。)の77.5%となっており、赤字事業は80事業(前年度同数)で、同22.5%となっている。

総収益(経常収益+特別利益)は1兆3,153億円で、前年度と比べると208億円増加(1.6%増)、総費用(経常費用+特別損失)は1兆2,483億円で、前年度と比べると195億円増加(1.6%増)し、この結果、純損益は670億円の黒字となっており、前年度と比べると12億円増加(1.9%増)している。また、総収支比率は105.4%と前年度と同水準となっている。

なお、総収益に占める料金収入の割合は73.2%(前年度73.7%)と前年度と比べると0.5ポイント低下している。

経常損益(純損益―特別損益)の状況をみると、経常利益を生じた事業数は275事業(対前年度比9事業増加、3.4%増)で、経常損失を生じた事業数は81事業(同3事業増加、3.8%増)となっている。経常損失を生じた事業数の全事業数(建設中のものを除く。)に占める割合は22.8%と前年度と比べると0.1ポイント上昇している。

経常収益(営業収益+営業外収益)は1兆3,034億円で、前年度と比べると231億円増加(1.8%増)しており、経常費用(営業費用+営業外費用)は1兆2,348億円で、前年度と比べると204億円増加(1.7%増)している。なお、経常損益は687億円の黒字で、前年度と比べると27億円増加(4.1%増)している。また、経常収支比率は105.6%と前年度と比べると0.2ポイント上昇している。

オ 特定被災地方団体における法非適用企業の経営状況[資料編:第144表

特定被災地方団体における法非適用企業全体の実質収支は315億円の黒字であり、前年度と比べると90億円増加(40.0%増)している。

実質収支で黒字を生じた事業は538事業で、全事業数(建設中のものを除く。)の99.3%、赤字を生じた事業は4事業で、同0.7%となっている。黒字事業の実質黒字額は322億円で、前年度と比べると96億円増加(42.4%増)している。また、赤字事業の実質赤字額は6億円で、前年度と比べると6億円増加(1,225.5%増)しており、営業収益(受託工事収益を除く。)に対する実質赤字額(赤字比率)は0.4%(前年度0.0%)となっている。

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