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令和2年版
地方財政白書
(平成30年度決算)

2 令和2年度の地方財政

(1)令和2年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「令和2年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、令和元年12月18日閣議了解、令和2年1月20日閣議決定された。この中で、以下の令和元年度の経済動向、令和2年度の経済見通し及び令和2年度の経済財政運営の基本的態度が示された。

(ア)令和元年度の経済動向

令和元年度の我が国経済は、海外経済の減速等を背景に外需が弱いものの、雇用・所得環境の改善等により、内需を中心に緩やかに回復している。令和元年10月に実施した消費税率の引上げに当たっては、経済の回復基調に影響を及ぼさないといった観点から、軽減税率制度や臨時・特別の措置など各種の対応策を実施している。

今後についても、緩やかな回復が続くことが期待されるものの、消費税率引上げ後の経済動向を引き続き注視するとともに、台風等の被害からの復旧・復興の取組を更に加速し、あわせて米中貿易摩擦など海外発の下方リスクによる悪影響に備える必要がある。

こうした中、政府は、「15か月予算」の考え方で、災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上を柱とし策定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(令和元年12月5日閣議決定。以下「総合経済対策」という。)に基づき、予備費を含めた令和元年度予算、令和元年度補正予算及び令和2年度の臨時・特別の措置を適切に組み合わせることにより、機動的かつ万全の対策を講じ、当面の需要喚起にとどまらず、民需主導の持続的な経済成長の実現につなげていくこととしている。

物価の動向をみると、原油価格の下落の影響等により、消費者物価(総合)は前年比で伸びが低下している。

この結果、令和元年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は0.9%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は1.8%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.6%程度の上昇と見込まれる。

(イ)令和2年度の経済見通し

令和2年度については、「総合経済対策」を円滑かつ着実に実施するなど、「令和2年度の経済財政運営の基本的態度」の政策効果もあいまって、我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で、内需を中心とした景気回復が見込まれる。

物価については、景気回復により、需給が引き締まる中で緩やかに上昇し、デフレ脱却に向け前進が見込まれる。

この結果、令和2年度の実質GDP成長率は1.4%程度、名目GDP成長率は2.1%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.8%程度の上昇と見込まれる。

なお、先行きのリスクとして、通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱、中東地域を巡る情勢等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

(ウ)令和2年度の経済財政運営の基本的態度

今後の経済財政運営に当たっては、「経済再生なくして財政健全化なし」の基本方針の下、デフレ脱却・経済再生と財政健全化に一体的に取り組み、2020年頃の名目GDP600兆円経済と2025年度の財政健全化目標の達成を目指す。

総合経済対策の円滑かつ着実な実施により、自然災害からの復旧・復興を加速するとともに、経済の下振れリスクを確実に乗り越え、我が国経済の生産性の向上や成長力の強化を通じて民需中心の持続的な経済成長の実現につなげていく。

潜在成長率の引上げによる成長力の強化を目指し、Society 5.0時代に向けた人材・技術などへの投資やイノベーションを企業の現預金も活用して喚起し、生産性の飛躍的向上に取り組む。

また、成長と分配の好循環の拡大に向け、企業収益を拡大しつつ、下請中小企業の取引適正化等を進め、賃上げの流れを継続して消費の拡大を図るとともに、外需の取り込みを進める。

さらに、少子高齢化に真正面から立ち向かい、若者も高齢者も女性も障害や難病のある方も皆が生きがいを持ち活躍できる一億総活躍社会の実現に取り組む。このため、希望出生率1.8、介護離職ゼロ、「人づくり革命」及び「働き方改革」のための対策を推進しつつ、就職氷河期世代の人々の社会への参画機会を拡大していく。全世代型社会保障の構築に向け、社会保障全般にわたる持続可能な改革を進める。

加えて、自然災害からの復興や国土強靱化、観光・農林水産業をはじめとした地方創生、地球温暖化などSDGsへの対応を含むグローバル経済社会との連携など重要課題への取組を行う。

財政健全化に向けては、新経済・財政再生計画に沿って着実に取組を進め、2025年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。令和2年度予算については、「骨太方針2018」及び「経済財政運営と改革の基本方針2019」(令和元年6月21日閣議決定。以下「骨太方針2019」という。)に基づき、歳出改革等に着実に取り組む。

日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

イ 国の予算

「令和2年度予算編成の基本方針」(令和元年12月5日閣議決定)及び「令和2年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて、令和元年12月20日、令和2年度一般会計歳入歳出概算が閣議決定された。

令和2年度予算は、以下のような基本的な考え方により編成された。

(ア)令和2年度予算の基本的な考え方

a アベノミクスの推進により、デフレではない状況を作り出す中で、我が国経済は、長期にわたる回復を持続させており、GDPは名目・実質ともに過去最大規模に達した。また、雇用・所得環境も改善し、2000年代半ばと比べて景況感の地域間のばらつきも小さくなっているなど、地方における経済は厳しいながらも、好循環の前向きな動きが生まれ始めている。

b 経済の先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待されるものの、消費税率引上げ後の経済動向を注視するとともに、台風等の被害からの復旧・復興の取組を更に加速し、あわせて米中貿易摩擦など海外発の下方リスクによる悪影響に備える必要がある。

c 我が国財政は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれ、また、国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど、引き続き、厳しい状況にある。

d 政府は、「経済再生なくして財政健全化なし」の基本方針の下、デフレ脱却・経済再生と財政健全化に一体的に取り組み、2020年頃の名目GDP600兆円経済と2025年度の財政健全化目標の達成を目指す。

e 地球環境と両立した持続的かつ包摂的な経済成長の実現と財政健全化の達成に向けて、「骨太方針2019」に基づき、以下の視点から取組を推進する。

潜在成長率の引上げによる成長力の強化を目指し、Society 5.0時代に向けた人材・技術などへの投資やイノベーションを企業の現預金も活用して喚起し、生産性の飛躍的向上に取り組む。

また、成長と分配の好循環の拡大に向け、企業収益を拡大しつつ、下請中小企業の取引適正化等を進め、賃上げの流れを継続して消費の拡大を図るとともに、外需の取り込みを進める。

さらに、少子高齢化に真正面から立ち向かい、若者も高齢者も女性も障害や難病のある方も皆が生きがいを持ち活躍できる一億総活躍社会の実現に取り組む。このため、希望出生率1.8、介護離職ゼロ、「人づくり革命」及び「働き方改革」のための対策を推進しつつ、就職氷河期世代の人々の社会への参画機会を拡大していく。全世代型社会保障の構築に向け、社会保障全般にわたる持続可能な改革を進める。

加えて、自然災害からの復興や国土強靱化、観光・農林水産業をはじめとした地方創生、地球温暖化などSDGsへの対応を含むグローバル経済社会との連携など重要課題への取組を行うとともに、昨今の国際情勢を踏まえ、我が国として、外交・安全保障の強化に取り組む。

f 財政健全化に向けては、新経済・財政再生計画に沿って着実に取組を進め、2025年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。

(イ)令和2年度予算編成についての考え方

a 令和2年度予算編成に向けては、引き続き、デフレ脱却に向け、構造改革はもとより、金融政策に成長指向の財政政策をうまく組み合わせることに留意する必要がある。

財政健全化への着実な取組を進める一方、上記の基本的考え方に沿って、賃上げの流れと消費拡大の好循環、外需の取り込み、設備投資の拡大を含めた需要拡大に向けた取組や、Society 5.0時代に向けた人材・技術などへの投資やイノベーションの促進、次世代型行政サービス等の抜本強化といった生産性の向上に向けた取組など、重要な政策課題への対応に必要な予算措置を講じるなど、メリハリの効いた予算編成を目指す。

あわせて、「15か月予算」の考え方で、災害からの復旧・復興と安全・安心の確保、経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援、未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上を柱とし策定された「総合経済対策」に基づき、令和元年度補正予算を新たに編成するとともに、予備費を含めた令和元年度予算、令和2年度の臨時・特別の措置を適切に組み合わせることにより、機動的かつ万全の対策とする。こうした取組により、当面の需要喚起にとどまらず、民需主導の持続的な経済成長の実現につなげていく。

b 東日本大震災、熊本地震をはじめ、各地の災害からの復興や防災対応の強化を現場との連携を密に着実に進める。

令和元年度予備費により台風等の被災者の生活・生業を再建するとともに、令和元年度補正予算により切れ目のない対策を講じ、復旧・復興を加速する。あわせて、3年間集中の防災・減災、国土強靱化の緊急対策を着実に実行するとともに、台風被害を踏まえた課題を検証し、水害対策を中心に防災・減災、国土強靱化を更に強力に進め、インフラ老朽化対応を含め、国民の安全・安心を確保する。

c 令和2年度予算は、「骨太方針2018」及び「骨太方針2019」に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進するとともに、引き続き、2025年度の財政健全化目標の達成を目指し、新経済・財政再生計画で定める目安に沿った予算編成を行う。改革工程表を十分に踏まえて歳出改革を着実に推進するとの基本的考え方に立ち、その取組を的確に予算に反映する。

また、予算編成に当たっては、我が国財政の厳しい状況を踏まえ、引き続き、歳出全般にわたり、聖域なき徹底した見直しを推進する。地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める。

d 次世代型行政サービスの実現に向けて、国が主導して国及び地方自治体等の情報システムやデータの標準化を推進する等デジタル・ガバメントの早期実現を図るとともに、2020年3月までに行政手続コストを2割以上削減し、行政手続の簡素化・効率化を推進する。また、各府省は行政事業レビューを徹底的に実施するとともにEBPM(Evidence-based Policymaking)を推進し、予算の質の向上と効果検証に取り組む。

e 新経済・財政再生計画の改革工程表を改定し、継続して取り組むべき歳出改革等を盛り込むほか、「骨太方針2019」に盛り込まれた主要分野ごとの重要課題への対応について改革工程を具体化する。また、見える化、先進・優良事例の全国展開、インセンティブ改革、公的サービスの産業化などの広く国民各層の意識改革や行動変容に働きかける取組を引き続き加速・拡大する。さらに、政策効果の高い歳出に転換するワイズスペンディングの仕組みを強化し、民需主導の持続的な経済成長の実現につながる施策を喚起する。

このような方針に基づいて編成された令和2年度一般会計歳入歳出概算の規模は102兆6,580億円で、前年度当初予算と比べると1兆2,009億円増加(1.2%増)となった。

また、東日本大震災復興特別会計の予算規模は2兆739億円で、前年度当初予算と比べると608億円減少(2.8%減)となっている。

財政投融資計画の規模は13兆2,195億円で、前年度計画額と比べると1,001億円増加(0.8%増)となっている。

(2)地方財政計画

令和2年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、人づくり革命の実現や地方創生の推進、地域社会の維持・再生、防災・減災対策等に対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととする。また、歳入面においては、「骨太方針2018」で示された「新経済・財政再生計画」を踏まえ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、令和元年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとする。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとする。

なお、地方財政審議会からは、令和元年6月10日に「時代を越えて多様な地域を支えるための地方税財政改革についての意見」及び令和元年12月13日に「今後目指すべき地方財政の姿と令和2年度の地方財政への対応についての意見」(附属資料参照)が提出された。

以上を踏まえ、次の方針に基づき令和2年度の地方財政計画を策定している。

ア 通常収支分

(ア)地方税制については、令和2年度地方税制改正では、所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題に対応するため、所有者情報の円滑な把握や課税の公平性の確保の観点から、税制上の措置を講じることとしている。また、個人住民税における未婚のひとり親に対する所得控除の適用及び寡婦(寡夫)控除の見直し並びに電気供給業に係る法人事業税の課税方式の見直しなどの税制上の措置を講じることとしている。

(イ)財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとし、所要の法律改正を行う。

a 地方交付税法第6条の3第2項に基づく制度改正として、令和2年度から令和4年度までの間は、令和元年度までと同様、財源不足が建設地方債(財源対策債)の増発等によってもなお残る場合には、この残余を国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b 令和2年度の財源不足見込額4兆5,285億円については、上記の考え方に基づき、従前と同様の例により、次の補填措置を講じる。その結果、国と地方が折半して補填すべき額は生じないこととなる。

(a)建設地方債(財源対策債)を7,700億円増発する。

(b)地方交付税については、国の一般会計加算により5,187億円(地方交付税法附則第4条の2第1項の加算額154億円及び同条第3項の加算額2,533億円並びに平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)及び平成28年12月19日付け総務・財務両大臣覚書第8項に定める令和2年度における「乖離是正分加算額」2,500億円)増額する。

また、交付税特別会計剰余金1,000億円を活用する。

(c)地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を3兆1,398億円発行する。

c 交付税特別会計借入金の償還については、特別会計に関する法律附則第4条第1項に基づき、5,000億円の償還を実施する。

d 上記の結果、令和2年度の地方交付税については、16兆5,882億円(前年度比4,073億円増、2.5%増)を確保する。

(ウ)地方債については、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方団体が防災・減災対策、公共施設等の適正管理及び地域の活性化への取組等を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

この結果、地方債計画(通常収支分)の規模は、11兆7,336億円(普通会計分9兆2,783億円、公営企業会計等分2兆4,553億円)とする。

(エ)人づくり革命の実現、地方創生の推進、地域社会の維持・再生、防災・減災対策の推進、住民に身近な社会資本の整備、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 地方法人課税の偏在是正措置により生じる財源を活用して、地方団体が地域社会の維持・再生に向けた幅広い施策に自主的・主体的に取り組むため、一般行政経費に新たに「地域社会再生事業費」を4,200億円計上する。

b 「まち・ひと・しごと創生事業費」については、引き続き1兆円(前年度同額)計上する。

c 地方団体が地方単独事業として実施する河川等の浚渫を推進するため、維持補修費に新たに「緊急浚渫推進事業費」を900億円計上する。

d 災害防止・国土保全機能強化等の観点から、森林整備を一層促進するため、地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を活用し、交付税特別会計における譲与税財源の借入れを行わないこととした上で、森林環境譲与税の譲与額を前倒しで増額する。

e 投資的経費に係る地方単独事業費については、防災・減災対策を推進するため、「緊急防災・減災事業費」及び「緊急自然災害防止対策事業費」について対象事業を拡充した上で、それぞれ5,000億円(前年度同額)、3,000億円(前年度同額)を計上することとしており、全体で前年度に比し0.1%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

f 「人づくり革命」として、幼児教育・保育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

g 社会保障・税一体改革による「社会保障の充実」として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革等に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

h 一般行政経費に係る地方単独事業費については、社会保障関係費の増加や会計年度任用職員制度の施行に伴う経費の増加等を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

i 消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策に対し所要の財政措置を講じる。

j 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ)地方公営企業の経営基盤の強化を図るとともに、水道、下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(カ)地方行財政運営の合理化を図ることとし、適正な定員管理、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、直轄・補助事業に係る地方負担分等を措置するため、3,742億円を確保する。また、一般財源充当分として86億円を計上する。

b 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

この結果、地方債計画(東日本大震災分)における復旧・復興事業の規模は、24億円(普通会計分15億円、公営企業会計等分9億円)とする。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、地方自治法に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費並びに地方税法等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費8,984億円を計上する。

(イ)全国防災事業

全国防災事業については、地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜令和5年度)による地方税の収入見込額として756億円を計上するとともに、一般財源充当分として335億円を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した令和2年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は90兆7,397億円で、前年度と比べると1兆1,467億円増加(1.3%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が8,984億円で、前年度と比べると2,003億円減少(18.2%減)、全国防災事業が1,092億円で、前年度と比べると34億円増加(3.2%増)となっている。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は40兆9,366億円で、前年度と比べると7,733億円増加(1.9%増)(道府県税4.0%増、市町村税0.2%増)、地方譲与税は2兆6,086億円で、前年度と比べると1,037億円減少(3.8%減)、地方特例交付金は2,007億円で、前年度と比べると2,333億円減少(53.8%減)、地方交付税は16兆5,882億円で、前年度と比べると4,073億円増加(2.5%増)、国庫支出金は15兆2,157億円で、前年度と比べると4,983億円増加(3.4%増)、地方債(普通会計分)は9兆2,783億円で、前年度と比べると1,500億円減少(1.6%減)となっている。

歳出では、給与関係経費は20兆2,876億円で、前年度と比べると431億円減少(0.2%減)となっている。なお、地方財政計画における職員数については、2,625人の増としている。一般行政経費は40兆3,717億円で、前年度と比べると1兆9,520億円増加(5.1%増)となり、このうち一般行政経費に係る地方単独事業費は14兆7,510億円で、前年度と比べると3,006億円増加(2.1%増)となっている。公債費は11兆6,979億円で、前年度と比べると2,109億円減少(1.8%減)、投資的経費は12兆7,614億円で、前年度と比べると2,539億円減少(2.0%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は6兆1,137億円で、前年度と比べると61億円増加(0.1%増)となっている。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は3,742億円で、前年度と比べると307億円減少(7.6%減)、国庫支出金は5,065億円で、前年度と比べると1,703億円減少(25.2%減)などとなっている。歳出では、一般行政経費は1,748億円で、前年度と比べると674億円減少(27.8%減)、投資的経費は7,075億円で、前年度と比べると1,269億円減少(15.2%減)などとなっている。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では地方税は756億円で、前年度と比べると11億円増加(1.5%増)などとなっている。歳出では公債費は1,092億円で、前年度と比べると34億円増加(3.2%増)となっている。

また、令和2年度の地方債計画の規模は、通常収支分が11兆7,336億円(普通会計分9兆2,783億円、公営企業会計等分2兆4,553億円)で、前年度と比べると2,721億円減少(2.3%減)となっている。東日本大震災分は、復旧・復興事業が24億円(普通会計分15億円、公営企業会計等分9億円)で、前年度と比べると4億円減少(14.3%減)となっている。

(3)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

(ア)通常収支分

地方公営企業については、経営基盤の強化を図るとともに、水道、下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

このため、令和2年度においては、次のような措置を講じることとしている。

公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆4,942億円(前年度2兆5,394億円)を計上する。

地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆4,553億円(前年度2兆5,774億円)を計上する。

各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 地方公営企業を取り巻く経営環境が厳しさを増すことを踏まえ、経営戦略の策定・改定や抜本的な改革等の取組を通じ、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図るため、経営戦略の策定・改定に要する経費については、令和2年度までを期限として特別交付税措置を講じる。この措置においては、水道事業及び下水道事業の広域化等の調査・検討に要する経費について、当該特別交付税措置の対象とした上で、上限額を引き上げることとしている。なお、水道事業における高料金対策及び下水道事業における高資本費対策に係る地方交付税措置並びに水道管路耐震化事業に係る地方財政措置については、経営戦略を策定していることを要件としている。

b 公営企業会計の更なる適用の推進について、重点事業としている下水道事業及び簡易水道事業について、人口3万人未満の地方公共団体においても令和5年度までに公営企業会計に移行するなど、公営企業会計の適用が円滑に実施されるよう、適用に要する経費や、市町村に対して都道府県が行う支援に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じる。

c 水道事業については、多様な広域化を推進するため、「水道広域化推進プラン」の策定に要する経費や、広域化に伴う施設の整備費等について、引き続き地方財政措置を講じる。

また、上水道事業の旧簡易水道区域における施設整備や、土砂流入防止壁、防水扉等の整備に要する経費について、所要の地方財政措置を講じる。

d 下水道事業については、「広域化・共同化計画」の策定に要する経費や、広域化・共同化に伴う施設の整備費等について、引き続き地方財政措置を講じる。

e 病院事業については、引き続き、再編・ネットワーク化に伴う施設・設備の整備費等について地方財政措置を講じるほか、不採算医療・特殊医療等に対しても地方交付税措置を講じる。

また、地域医療構想の更なる推進に向け、過疎地等で経営の厳しい地域において、二次救急や災害時等の拠点となる不採算地区の中核的な公立病院に対し、その機能を維持するための繰出しに対して新たに特別交付税措置を講じるなど、地方交付税措置について所要の見直しを行う。

(イ)東日本大震災分

地方公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対しては、その全額(復興事業のうち東日本大震災復興交付金(効果促進事業)は95%)を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において15億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分9億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険制度については、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第31号)に基づき、平成30年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となったが、国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)都道府県が、都道府県内の市町村の財政の状況その他の事情に応じた財政調整を行うため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第72条の2に基づき、一般会計から当該都道府県の国民健康保険に関する特別会計に繰り入れられる都道府県繰入金(給付費等の9%分)については、その所要額(6,423億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,400億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(2,579億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(1,290億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)高額医療費負担金(3,767億円)については、都道府県国保に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、都道府県国保1/2)を負担することとし、地方負担(942億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(カ)国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国保被保険者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(517億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、都道府県国保1/3)を負担することとし、地方負担(172億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)ため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(3,058億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)高額医療費負担金(3,476億円)については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)を負担することとし、地方負担(869億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金(193億円)に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)を負担することとし、地方負担(64億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。

エ 公営競技納付金制度の延長

公営競技納付金制度は、公営競技(地方競馬、競輪、オートレース、ボートレース)施行団体のうち、一定の黒字団体が、収益の一部を地方公共団体金融機構に納付し、同機構において基金に積み立て、その運用益等を活用することにより、地方公共団体向け貸付金の金利を引き下げる仕組みである。

公営競技施行団体に偏在する収益金の全国的な均てん化を図る目的で昭和45年度に創設され、累次の見直しを経て、現行の公営競技納付金制度は令和2年度までとなっている。

今般、制度を活用している地方公共団体からの要望等を受け、現行制度と同内容で、令和7年度までの延長を図ることとし、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第201回通常国会に提出している。

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