【青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関する緊急インタビュー】

「長期間の休校と外出自粛による子どもたちのインターネット長時間利用の問題点について」

 スマホ連絡会(近畿)の座長として、当局の青少年のインターネット利用環境整備に関する施策についてご指導いただいている兵庫県立大学環境人間学部准教授竹内和雄先生にお伺いしました。

 学校が休校になり、更に緊急事態宣言により外出も控えなければならない状況で、青少年のインターネットを利用する時間が大幅に増加していると思われます。この状況を、どのようにお考えでしょうか。

写真:兵庫県立大学環境人間学部准教授竹内和雄先生

 外出できない、テレビは主婦や高齢者用、図書館に本を借りにいけない等、子どもたちの生活はかなり制限されています。彼らの多くにとって、SNSや動画視聴、オンラインゲーム等が日々の癒し、逃げ場になっている側面もあります。この時代、禁止することは不可能ですので、過度な使い方等、弊害をなくす方策を考える必要があります。各地の子どもたちと「スマホサミット」等を実施すると中高生自身も自分たちの使い方がよくないことはわかっていて、改善策を自分たちで考えます。大人が頭ごなしに注意したり、勝手に制限したりすることは、思春期・反抗期の彼らには逆効果な場合も珍しくありません。現状をしっかり話し合い、課題を見つけて、対策を考える。幸い、多くの場合、保護者にも子どもにも有り余る時間があります。ピンチをチャンスにするためにも、じっくりと「ネットと自分」について話し合う時間を作るべきでしょう。ここでポイントは、保護者も一緒に考えることです。子どもは子どもなりに「お母さんの方がやってる」「お父さんのゲームはどうなのよ」と言い分があります。大人が子供と話すのですから、大人も子供と一緒に自分を見つめなおす姿勢は必要です。大切なポイントです。

 そのことについて、どのように対処すればいいでしょうか。

 子どもが勝手に対策はしません。また、自分で自分のネット使用に疑問を持ちません。私が毎年姫路港沖の離島で行っている「オフラインキャンプ」では、最初に子どもたち自身に自分のネット利用を振り返らせます。ネット利用の「多い日」と「少ない日」に分けて、自分のタイムスケジュールをグラフに記入させます。その合計時間を見て、「え? 俺、8時間もやってる」「やりすぎかもな」と初めて客観的に自分を見つめることができます。そこではじめて何とかしなければという思いが出てきます。
 また、「リアルの生活の目標」を考えさせることも有効です。「志望校合格」「スイミングスクールで3級合格」等、できるだけ具体的なことが良いです。その目標から逆算して、ふだんの生活を見つめなおすと効果的です。目標のためなら自分の生活を改善することができます。インターネットの問題の答えは、実はインターネット上にはなく、リアルの生活の中にこそあります。

 「子どもと約束してもすぐに約束を破られる」という言葉をよく聞きます。どうすればよいでしょうか。

 まずネットのシステムを使うことです。今、便利な機能がたくさんあります。iPhoneの機能「スクリーンタイム」は、スマホ本体から休止時間の設定ができます。お子さんのスマホに保護者がパスワード管理をして例えば21時から翌朝6時までスマホを使えなくすることができます。この時間は任意に設定でき、さらに「常に使う」アプリを選択できます。子どもに求められたらパスワードを使って「15分解除」「1時間解除」「終日解除」を選べます。android端末には「ファミリーリンク」機能という同様の機能があります。こういう便利な機能について、保護者がまずしっかりと理解し、子どもと相談しながらルールをきめることが重要です。その際、前述の通り、勝手に保護者が設定してもうまくいきません。例えばこういうやりとりが良いです。

保護者 8時までよ
子ども いや10時にして
保護者 じゃ、買わない
子ども お願い9時半
保護者 だめ、買わない
子ども じゃせめて9時!
保護者 わかった、9時ね
子ども お母さん、ありがとう
保護者 スクリーンタイムするね
子ども うん、わかった

QRコード

 こういうやりとりを経たルールなら子どもは守ります。勝ち取った一時間です。話し合うとはこういうことです。保護者として事前に方針を決めて子どもと向き合う。あやふやな態度では、必死でインターネットと向き合っている子どもたちには太刀打ちできません。大人がまずは賢くなることです。右はソーシャルメディア研究会の学生たちが作っているYouTubeチャンネルのQRコードです。スクリーンタイムの設定方法の丁寧な説明があります。手前味噌ですが、なかなかよくできているので好評です。(URLはhttps://bit.ly/3axDXJ6

 最後に、通学や外出など日常生活がもとにもどったときに備えて、今、子どもたちのインターネット利用について注意すべきことはありますでしょうか。

 インターネットの時間を制限したり、禁止したりする姿勢だけでなく、インターネット以外の楽しいことを保護者と子どもで一緒にしたり、インターネット上でも子どもが日々やっている、ゲームや動画視聴以外の情報を子どもに提示したりすることが重要です。
子どもたちは高度情報化社会を生き抜いていかなければなりません。基本的な考え方として、インターネットとの付き合い方は、「正しく怖がり、賢く使う」です。今回は今、日本中の子どもたちが直面している「ネット依存」を中心にお答えしましたが、インターネット上では「ネットいじめ」「ネットの出会い」等のトラブル事例が後を絶ちません。インターネット上は楽しいこと、勉強になることもたくさんありますが、一方で危険なこともあります。子どもたちは、楽しい、勉強になる、と思い込んでいるので、大人がいくら危険を強調しても耳に入りません。大人もまずは子どもたちの声に耳を傾けてください。楽しい、勉強になる、素晴らしい道具と認めたうえで、しかし危険もある。そういう順番で子どもと話すと子どもも聞く耳を持つようになります。試されているのは実は私たち大人です。

 ありがとうございました。

 

 総務省では、日頃から青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に取り組んでいます。その中で、先日、インターネットトラブル事例集(2020年版)を公開しております。青少年に起こりえる様々なインターネットトラブルの事例を挙げ、その予防法等を紹介していますので、ご活用ください。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/jireishu.html

 また、スマホ連絡会(近畿)の活動にご協力いただいている京都府警察本部から休校期間中の自宅学習のために、インターネットの危険性やスマートフォンの使い方等について、児童・生徒が自ら考え、家庭内で話し合うことができる「インターネット利用自主学習教材」が公開されています。こちらもあわせてご活用ください。
https://www.pref.kyoto.jp/fukei/anzen/cyber/index.html


竹内和雄
兵庫県立大学環境人間学部准教授
 平成24年総務省近畿総合通信局が立ち上げたスマホ連絡会(近畿)の座長として、同連絡会及び近畿総合通信局の青少年のインターネット利用環境の整備推進にご尽力をいただいております。

スマホ連絡会(近畿)
 近畿管内の青少年のインターネット・リテラシー向上に資する情報共有や啓発活動等を行うために、近畿2府4県の関係団体(自治体、警察、PTA、学校関係者、有識者)等で構成された広域的な連携組織。正式名称:「スマートフォン時代に対応した青少年のインターネット利用に関する連絡会」(令和2年4月現在の構成・協力団体81団体)

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