2025年12月24日 掲載
近畿総合通信局と近畿情報通信協議会は、近畿ワイヤレス研究者ネットワークと共催で、2025年12月5日、大阪市内及びオンラインにおいて、電波有効活用セミナーを開催し、現地参加100名、オンライン参加136名の計236名の方々にご参加いただきました。
本セミナーは、大阪・関西万博において、パビリオンやイベントで最新の電波利用技術を用いたシステムが活躍したことを踏まえ、これらの電波利用システムの導入・活用の促進を目的として開催したものです。ローカル5Gによるロボット遠隔制御や多接続通信、長距離ワイヤレス給電及び国内初利用となった次世代ワイヤレスマイク等、万博で用いられた電波利用技術について、その概要や万博で得られた知見、将来の利活用に向けた取組等を説明するとともに、万博で使用された機器を展示しました。
会場の模様
開会にあたり、主催者を代表し近畿総合通信局の野水局長が、「大阪・関西万博は、イノベーションを誘発し社会実装することを目指して新たな技術・システム等が実証される『未来社会の実験場』として開かれたが、中でも電波利用技術は今後ますます発展が期待される重要な技術である。万博は大盛況のうちに閉幕したが、この万博の効果を一過性のものとせず活かしていくことが重要である。本セミナーが、万博で活躍した電波利用技術が社会実装されていく契機となり、万博のテーマである『いのち輝く未来社会のデザイン』実現の一助となれば幸い。」と挨拶しました。
近畿総合通信局 野水局長
講演1:「大阪・関西万博における総務省の主な取組と今後の電波政策」
はじめに、総務省 総合通信基盤局 電波部 小川 裕之電波政策課長が、「大阪・関西万博における総務省の主な取組と今後の電波政策」と題して講演しました。万博における無線通信等の電波活用例や運営上の対応をはじめ、「Beyond 5G ready ショーケース」の実施概要や多言語翻訳技術等の研究開発等、「未来社会の実験場」としての万博における総務省の取組を紹介しました。また、会場で用いられた様々な無線システムを紹介しつつ、その課題や実装支援等、今後の取組について説明しました。
総務省 小川電波政策課長
講演2:「ローカル5Gを活用した多接続通信で支える大阪・関西万博と位置測位の可能性について」
次に、京セラコミュニケーションシステム株式会社 技術開発センター ネットワーク技術開発部 エキスパート 赤嶺 維彦 氏から、「ローカル5Gを活用した多接続通信で支える大阪・関西万博と位置測位の可能性について」と題してご講演いただきました。同社のローカル5G技術を活用した「いのちの未来」パビリオンの概要の紹介後、同社の多接続通信・位置測定技術をご説明され、ローカル5Gの最大の魅力は利用環境に最適化できるカスタマイズ性であるとの認識を示されました。

京セラコミュニケーションシステム株式会社
赤嶺 維彦 氏

ローカル5Gデバイス バイタル内蔵骨伝導イヤホン
講演3:「ローカル5Gを活用した通信とロボットで支える大阪・関西万博」
次に、「ローカル5Gを活用した通信とロボットで支える大阪・関西万博」と題して、前半にNECネッツエスアイ株式会社 主席主幹 織田 和彦 氏から、同社のローカル5Gシステムである「HYPERNOVAシステム」の概要や、万博をはじめ様々な場面での実証例をご紹介いただき、その有効性についてもご説明いただきました。そして新たなローカル5Gシステムの開発への取組みなど、将来的な展望を述べられました。

NECネッツエスアイ株式会社 織田 和彦 氏

ローカル5Gシステム「HYPERNOVA」
後半には、avatarin株式会社ソーシャル・ソリューション部 部長 筒 雅博 氏から、同社の遠隔AIロボット「newme」の紹介をはじめ、万博会場におけるIOWNやローカル5G等の電波利用技術の活用事例を踏まえてご説明いただきました。また、「これから様々なシーンでロボット需要が増えていくことから、ローカル5Gのポテンシャルは高い。AI・ロボット・通信を融合させることが次世代のロボットプラットフォームの基本になるだろう。」との認識を示されました。

avatarin株式会社 筒 雅博 氏

遠隔AIロボット「newme」(右)
講演4:「長距離ワイヤレス給電の万博展示と将来の利活用シーン」
次に、株式会社Space Power Technologies 代表取締役 古川 実 氏から、「長距離ワイヤレス給電の万博展示と将来の利活用シーン」と題して、同社が開発するワイヤレス電力伝送(WPT)についてご講演いただきました。WPTの概要説明後、万博での出展内容と、同システムの想定利用シーンを有人・無人エリアに分けてご説明されました。特に有人エリアでの利用に向けて実用化を追求されており、電波干渉、安全性、電送効率の諸課題についてもお話されました。

株式会社Space Power Technologies 古川 実 氏

万博でのWPTを用いた展示物
講演5:「大阪・関西万博における次世代ワイヤレスマイクの実証と活用」
最後に、「大阪・関西万博における次世代ワイヤレスマイクの実証と活用」と題し、デジタル広域伝送技術を使用した新たな無線オーディオ伝送システム「WMAS」とその活用例について、前半にゼンハイザージャパン株式会社 プロオーディオ テクニカルアプリケーションエンジニア 藤井 宏幸 氏から、近年のワイヤレスマイクの需要増加の背景を踏まえ、特定ラジオマイク(A型)の重要性とWMASの概要についてご説明され、同社のWMAS投資製品「Spectra」の万博における運用事例が紹介されました。

ゼンハイザージャパン株式会社 藤井 宏幸 氏

WMAS搭載製品「Spectra」
後半には、シュア・ジャパン株式会社 マーケット・デベロップメント部 マネージャー 井上 直行 氏から、ライブ・エンターテインメント事業拡大とそれに伴うワイヤレスマイクの需要増加の背景に触れつつ、電波利用のさらなる有効活用手段としてWMASの重要性についてお話され、同社のWMAS搭載製品「AXT Digital PSM」の万博会場における運用事例について紹介されました。
WMASは、現在日本では制度化されていないことから、両氏は、国内における早期実用化への期待を述べられました。

シュア・ジャパン株式会社 井上 直行 氏

WMAS搭載製品「AXT Digital PSM」
また、セミナー開始前と終了後には、万博で使用され、各講演で紹介された機器等の展示を行いました。多くの参加者が関心を示し、展示をご覧いただくとともに、担当者による説明に耳を傾けていました。
展示の模様
近畿総合通信局は、今後も関係の方々と協力し、大阪・関西万博で活躍した電波利用技術・システムの将来的な利活用や発展に向けた取組を行ってまいります。
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連絡先
近畿総合通信局 無線通信部 電波利用企画課
電話:06-6942-8543