公害等調整委員会委員長挨拶

荒井委員長

 公害等調整委員会委員長の荒井でございます。
 今年は、公害等調整委員会が公害紛争の処理と鉱業等と一般公益等との土地利用の調整という2つの任務を担って設立されてから50周年という大きな節目を迎えます。

 この50年という年月を振り返りますと、当委員会が設立された昭和47年は、高度経済成長期における経済・社会活動などの結果大きな社会問題となっていた公害に対して、わが国が抜本的な対策を取り始めた時期でした。
 まず、公害紛争についてみますと、当委員会は、設立以来、多くの大規模な事案をはじめとする様々な公害紛争に真摯に向き合いながら、その適正な解決を模索し、国民の皆様の生活環境の保全に向けて尽力してまいりました。
 この間、かつて深刻であった四大公害に代表されるような産業型の公害による被害は、企業や地方公共団体、国民の皆様のご努力によって、大幅に減少いたしました。
 一方で、環境をめぐる意識の高まりや経済・社会構造の変化等を反映し、近年では、近隣の住宅や店舗の室外機からの騒音や飲食店からの悪臭など、人口・住宅が密集している都市部における比較的小規模な公害紛争が増加し、最近ではほとんどがこうした都市型・生活環境型の公害紛争となっております。
 また、最近の新型コロナウイルス感染症の拡大など国民の皆様の生活環境の変化などによって、令和2年度においては、地方公共団体に寄せられる公害苦情の相談件数が、前年度に比べ大幅に増加いたしました。
 このように、公害紛争はその時々の社会情勢を反映してその在り様を変化させてきており、公害紛争処理を担う当委員会としても、同じく公害に関する調停や苦情相談を運営する地方公共団体との連携・協力を図りながら、そうした公害の実情に即した的確な対応をすることが求められております。
 土地利用調整の関係をみましても、近年は採石業等に対する行政の対応に環境の保全を重視する傾向がみられ、不服裁定の審査において、その判断や調整に苦慮する事案が増えていると感じられるところです。

 当委員会は、引き続き国民の皆様のご期待に応え、公害紛争や土地利用を巡る紛争を迅速かつ適正に解決していくため、社会の変化を踏まえつつ、求められる諸課題に取り組んでまいりたいと存じます。
 50周年という大きな節目に当たり、これまでの取り組みを振り返るとともに、新たな歴史に向けて、その役割を果たすため一層の努力を重ねて行く所存です。
 今後とも皆様のご理解とご支援をお願いし、私からのご挨拶とさせていただきます。
 
公害等調整委員会委員長
荒井 勉

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