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特集 騒音事件に関する研究会の取組について(騒音問題の現状について)

公害等調整委員会事務局

「騒音事件に関する研究会」ページ

 令和4年度報告書(令和5年3月)PDF【10 MB】


騒音事件に関する研究会の目的と令和4年度の概要


 近年、地方自治体における公害苦情・相談の中で、騒音・低周波音・振動を原因とした苦情や相談の割合は高まっており、これと並行して公害等調整委員会(以下「公調委」という。)でも騒音・低周波音・振動を原因とした事件の申請が増加している。
 これらの騒音・低周波音・振動の問題(以下「騒音問題」という。)については公調委に申請のなされた事件について知見が蓄積していることから、こういった事件への対応や地方自治体における騒音問題に係る苦情処理の動向を解析し、騒音紛争事案への対応の要点等を取りまとめることを目的として、令和4年度に公調委に「騒音問題に関する研究会」(以下「研究会」という。)を発足させ専門的な検討を行った。騒音紛争事案への対応については、今後、引き続き検討することとした。

  ・倉片 憲治(座長) 早稲田大学 人間科学学術院 教授
  ・落合 博明     一般財団法人 小林理学研究所 協力研究員
  ・佐野 泰之     愛知工業大学 工学部建築学科 教授

 注:本内容は、騒音問題に関する研究会における令和4年度の活動をまとめた報告書の内容を抜粋したものである。

 

騒音事件、騒音公害苦情相談の現状と課題

1.公調委が扱った近年の騒音事件の状況

 平成23年4月から令和5年3月までの間に公調委が受け付けた騒音事件103件(デジタル化されていない22件は除いた。)を対象に、事実調査報告書、測定調査結果、専門委員意見書、裁定書・調停内容等をもとに事件の概要を分析し、近年の騒音事件の状況をみた。
 12年間の年度ごとの騒音事件の受付件数は図II-1のとおりであった。
 騒音事件の受付件数
(1)騒音事件の処理状況

 対象とした騒音事件の内容は図II-2のとおりであった。

 騒音事件の内容

 騒音事件の処理状況(令和5年3月時点)

 令和5年3月時点での103件の処理状況は表II-1及び図II-3のとおりで、裁定に至った32件中一部認容は4件で、棄却が28件(87.5%)であった。

 騒音事件の処理状況(令和5年3月時点)
 低周波音被害を申し出て終結した18件(他の被害と重複した件数を含む。)の結果は図II-4のとおりで、振動被害を申し出て終結した32件(他の被害と重複した件数を含む。)の結果は図II-5のとおりであった。両者を比較すると、低周波音事件では調停成立事件の比率が高いが、取下事件の比率も高く、振動事件では裁定で棄却となった事件の比率が高いなどの点で結果の構成割合はかなり異なっていた。
 低周波音事件の結果、振動事件の結果

 騒音源として、エアコン室外機、ヒートポンプ等室外給湯器、キュービクル等室外変圧器等の室外装置によるものは26件、建築物・土木作業地の建設・解体工事を騒音源とした事件は16件あった(表II-2)。室外装置事件のうち係属中の事件を除いた19件中、調停成立は6件(32%)、裁定で棄却は8件(42%)、建設・解体工事関連事件のうち係属中の事件を除いた14件中、調停成立は5件(36%)、裁定で棄却は5件(36%)であった。

 騒音源別にみた結果

 被申請人が事業者の場合と住民の場合の結果をみたものが表II-3並びに図II-6及びII-7である。騒音源が事業用地、道路、鉄道等の場合を事業者とした。また、住民には同一マンション内居住者間事件3件と隣地マンションの住宅駐車場を騒音源とした1件を含めた。事業者が被申請人の事件では係属中を除く63件中調停成立は15件(24%)、裁定で棄却が26件(41%)であったのに対して、住民が被申請人の場合は係属中を除く8件中調停成立が5件(63%)、裁定で棄却は2件(25%)で、事業者が被申請人の場合よりも調停が成立している比率がかなり高かった。
 被申請人が事業者か住民か別にみた結果


 事業者が被申請人の場合の結果、住民が被申請人の場合の結果
 申請人に代理人弁護士がいた場合といなかった場合の結果をみたものが表II-4及び図II-8、さらにそれぞれの場合に被申請人に代理人弁護士がいた場合といなかった場合の結果をみたものが図II-9である。申請人に代理人弁護士がいた場合に調停成立の割合が高くなっている。

 申請人代理人弁護士の有無と終結結果

 申請人代理人弁護士あり・なし事件の終結結果

 申請人及び被申請人の代理人弁護士の有無別にみた結果
(2)騒音事件処理における調査の実施状況

 次に、騒音等の調査の実施状況をみた。令和5年3月時点で継続中の33件を除いた70件中、公調委として現地調査や測定が行われたのは54件(77%)であった。実施した調査や測定別に結果をみたものが図II-10である。

 実施調査別にみた結果

 申請人又は被申請人が測定データ(地方自治体が実施したものを含む。)を提出した(「自主測定」という。)事件は70件中49件(70%)にのぼった。このうち、終結した事件中、自主測定データのみで終結したのは8件(11%)であった。これを結果別にみると、件数は少ないが、取下げは3件と割合が高かった。

 測定データを環境基準に照らした結果と終結の結果を表II-5に示す。測定結果が環境基準以下の場合には裁定で棄却となる場合が多いが、調停が成立しているケースもある。

 結果と環境基準判定結果

 訴えた被害類型別に結果を表II-6及び図II-12に示す。「健康被害」が最も多く、次に「建物・事業被害」、「生活環境被害」の順であった。

 被害類型別にみた結果


 被害類型別にみた結果
 
(3)地方自治体の対応との関係

 地方自治体の関与の状況を以下に示す(図II-13、表II-7、図II-14)。
 地方自治体の関与した件数は71件であるのに対して、地方自治体が関与していない事件は32件であった(図II-13)。地方自治体が関与しなかった事件には、直接裁定を申請した事件、地方自治体で受付されなかった事件、裁判所からの事件などがある。
 地方自治体としての関与の内容は表II-7のとおりであった。
 地方自治体の関与があった事件の公調委における終結の結果は図II-14のとおりであった。

 地方自治体の関与の状況

 地方自治体及び都道府県審査会の関与

 地方自治体の関与のあった事件における結果の構成割合
(4)ヒアリング:神奈川県環境科学センターの横島潤紀氏(略)

(5)公害苦情相談アドバイザーへのアンケート(略)

(6)市区町村・都道府県における公害苦情処理の動向

○1 地方自治体の相談受付の状況
 公調委が実施している公害苦情調査では、毎年度の地方自治体の相談対応状況をみることができる。この調査によると、苦情受付件数は平成30年度が66,803件だったのに対し、令和元年度70,458件、令和2年度81,557件と増加した。令和2年度は、全体が対前年度比15.8%であったのに対して、騒音事件は28.1%、振動事件は24.7%の増加と、全体に比べて騒音振動事件が増加している。令和3年度に公害苦情調査に併せて実施した地方自治体アンケートによると、在宅時間の増加を理由として苦情(昼間に新たに気付いた騒音・振動・低周波音など)が大幅に増加したとの回答が多かった。
 以下、公害苦情調査から騒音問題に関するデータを抜粋紹介する。

 騒音・振動・低周波音苦情受付件数

 受付件数と処理内容の年次比較

○2 地方自治体における公害苦情担当職員の状況
 対応する現場の苦情処理担当者は兼務が多く、減員の傾向もあり(図II-15参照)、さらに、一般的に行政機関における職員は概ね2年〜数年で異動するため、経験を蓄積することが難しい(図II-10参照)。こうしたことが、前述した公害苦情相談アドバイザーへのアンケートでも示された現場の声の原因の一つとみることができる。

 公害苦情担当職員数の年次比較

 公害苦情担当職員の業務経験年数
(7)市区町村、都道府県、公調委の役割分担と支援のあり方

 地方自治体の公害苦情相談対応は地方自治体によって大きく異なる。
 いくつかの地方自治体ホームページから公害苦情処理に関する広報部分の情報を収集してみると、町村レベルではホームページもないところが多く、市レベルでも全く掲載がない、又は簡略な記載にとどまっている市もある一方、都道府県審査会と同等かそれ以上の機能をそなえ、広報も十分行っているところもあった。
 公調委ではこれまでも地方自治体における公害苦情処理が円滑に進むよう広報・情報提供に努めてきたが、さらに改善拡張する必要がある。本研究会での3回にわたる意見交換から、市区町村、都道府県、公調委の役割分担と支援のあり方に関する発言要旨等を以下のとおり課題ごとにまとめた。
○1 技術的な情報の提供
  ・ 機器の使い方、測定のポイント、測定実施判断等に関する研修
  ・ 市区町村への都道府県の支援の優良事例(低周波音の測定の実施、測定器の貸出し等)の紹介
  ・ 広域自治体と基礎自治体間、及び市区町村相互の測定器の相互貸借や機器使用情報共有の促進
  ・ 複雑な測定や計算を行うことなく騒音発生機器の規模、設置位置等から苦情発生場所の騒音レベルを推測する方法等に関する情報の提供
○2 紛争解決手法に関する情報の提供
  ・ 調停に向けた調整手法の研修
  ・ 調停条項の例示
  ・ 地方自治体での調停成立等による紛争 解決事例の紹介
○3 横断的な連携、情報交換の促進
  ・ ブロック会議の活用
○4 個別事件における公調委と地方自治体との協働の促進
  ・ 都道府県審査会を経由した事件については、審査会へのフィードバックや関係地方自治体によるフォローアップに資するよう、審査会や関係地方自治体に対し、事件の終結結果の通知のほか、それが調停成立である場合には、調停条項の内容等に関する情報提供をすべきではないか。
  ・ 都道府県審査会で不調となった調停事件のうち、公調委による解決に相応しい事件については、都道府県審査会における測定そのほか手続の成果を活かしつつ公調委への申立てにつなぐような仕組みも検討すべきではないか。


注:図中の構成比の数値は、四捨五入しているため、個々の値の合計は必ずしも100%とならない場合がある。

おわりに

 今後、騒音事件に関する研究会の結果をまとめた報告概要を掲載予定です。また、公害等調整委員会ホームページにおいても掲載をする予定です。ぜひ併せてご覧ください。

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