携帯電話不正利用防止法とは、正式名称を「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」といいます。振り込め詐欺が社会問題となっていたことを受けて、平成17年4月8日に成立し、平成18年4月1日より全面施行されたものです。
携帯音声通信事業者に対して契約締結時及び譲渡時の本人確認を義務付けることにより、契約者の管理体制の整備を促進して契約者を特定できない携帯電話等の流通を防止するとともに、携帯電話等の不正な譲渡及び貸与並びにこれらの勧誘、誘引行為等を処罰することを定めたものです。
なお、平成20年6月に、SIMカードの無断譲渡禁止、レンタル事業者による契約時の本人確認の厳格化等を内容とする法改正が行われ、同年12月1日より施行されています。
携帯電話不正利用防止法は、その法律の性格上、電気通信を所管している総務省及び振り込め詐欺等の取り締まりを行っている警察庁(国家公安委員会)がその事務について担当しています。本人確認の具体的な方法については、総務省令で定められています。
携帯電話不正利用防止法では、「携帯音声通信事業者(媒介業者等を含む)」及び「貸与業者」が法の対象となります。「携帯音声通信事業者」とは「電気通信事業法第二条第五号に規定する電気通信事業者のうち携帯音声通信役務を提供するもの」をいい、MNOやMVNOをいいます。
また、令和5年8月の総務省令改正により、新たにいわゆる「050アプリ電話」を提供する電気通信事業者についても、法の対象として追加されました(令和6年4月施行予定)。
「媒介業者等」とは「携帯音声通信事業者のために役務提供契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理を業として行う者」をいい、販売代理店などが該当します。
「貸与業者」とは「通話可能端末設備等を有償で貸与することを業とする者」をいい、「通話可能端末設備等」を、空港等において旅行者向けにレンタルするサービスなどがこれに該当します。
データ通信専用SIMカードは、通話可能ではなく、携帯音声通信役務の提供を受けることができないため、法の対象外です。
いわゆる「白ロム」とは、SIMカードが挿入されておらず、それだけでは通話が可能でない携帯電話を指します。したがって「白ロム」のみの販売では、携帯音声通信役務の提供にはあたらないため、法の対象外です。
海外の事業者が発行しているSIMカードについては、国際ローミング等に対応した白ロムに取り付けることや、国際ローミングサービスを申し込むことによって、国内で通話が可能となる可能性もありますが、日本の事業者が提供するSIMカードでなければ、法の対象となりません。
令和5年8月に公布した改正省令施行後の施行規則第2条において、携帯音声通信役務は、「携帯電話端末又はPHS端末と接続される端末系伝送路設備に接続される移動端末設備を用いることにより通話することを可能とするために音声伝送携帯電話番号又は特定IP電話番号を使用して提供される電気通信役務」と定義されています。
このうち、いわゆる「050アプリ電話」とは、電気通信事業者が、自ら携帯電話端末、タブレット端末等において動作するアプリケーション等の機能を提供し、携帯電話端末、タブレット端末等において通話することを可能とするために、特定IP電話番号(050番号)を使用して提供される電気通信役務のことを指します。
したがって、当該電気通信事業者が、自ら携帯電話端末、タブレット端末等において動作するアプリケーション等の機能を提供せず、携帯電話端末、タブレット端末等において通話することを可能としていないと考えられる場合は、今回の改正後の「携帯音声通信役務」の対象外であると考えられます。
個人については、氏名、住居、生年月日を、法人については名称、所在地をそれぞれ総務省令で定める方法で確認することとなっています。具体的な方法については、4以下で解説しています。
3-3のように本人確認書類の写しが送付されたときは、その写しを本人確認記録と関連づけて保存する必要があります。
「送付」は、FAXやEメールによる方法も含みます。
本人確認の際は、第三者が入手できない身分証明書の提示を受ける必要があります(第三者が入手できない身分証明書については、8−1を参照ください)。第三者が入手できない身分証明書の提示が受けられない場合には、非対面時と同様の方法をとる必要があります(4−2参照)。
契約者本人と対面で取引を行わない場合においては、本人確認書類もしくはその写しに記載された住居に、携帯電話本体や契約確認の文書等を書留郵便等により転送不要郵便等で送付すること、もしくは、契約者の容貌及び写真付き本人確認書類の画像(厚みその他特徴も含む)の送信を受けること等(オンライン完結型本人確認手続)が必要になります。
オンライン完結型本人確認手続の方法については、7-3を参照ください。
なお、特定事項伝達型本人限定受取郵便等により携帯電話等を送付することによって本人確認を行うことも可能です。この場合は、本人確認書類又はその写しを、郵送等で受け取る必要はありません。
書留郵便、配達記録郵便、宅急便などの、配達されたことが記録され、それを事業者が確認できる方法で、転送をしない扱いで送付することを指します。
特定事項伝達型本人限定受取郵便等とは、本人確認を差出人に代わって配達業者が行い、本人確認事項を差出人に対して伝達するタイプの本人限定受取郵便等をいいます。本人限定受取郵便等とは、日本郵便が提供している本人限定受取郵便などの、本人以外が受け取ることができないタイプの郵便物をいいます。
訪日外国人旅行者については、その取引の性質上、対面でのパスポートの提示を受ける方法が基本となります。パスポートにより本人確認を行う場合には、別途住居の記載のある補完書類を用いるか、住居欄等に住居(本国の住所等)を自署してもらう必要があります。
法人に対する本人確認も、対面と非対面の2種類の方法があります。
法人の本人確認書類の提示を受ける必要があります。(法人の本人確認書類については8−5参照)
法人の本人確認書類(写しでも可)を郵送等で受けた場合は、本人確認書類に記載された所在地に対して携帯電話本体や契約確認の文書等を書留郵便等により転送不要郵便等で送付する必要があります。)
また法人との契約の場合は、契約担当者に対する本人確認も一緒に行う必要があります。
基本的には4と同様の方法で行うこととなります。
※ 国等とは、国・地方公共団体・独立行政法人・人格のない社団・海外政府等(大使館等)をいいます。
国等については、法人ではありますが、登記事項証明書のような証明書が存在しません。そこで、契約担当者の本人確認のみを行えばよいこととなっています(4参照)。
職員が直接本人確認書類に記載されている所在地に出向いて直接交付することも可能です。
既に契約を締結している者と新たに契約を締結する場合については、簡易な方法による本人確認が認められています。(施行規則第3条第3項・第4項)
まず、新たに契約を締結する相手方が、既に契約を締結している者と同一人格であることを、本人しか知り得ない事項(ID・パスワードなど)の提示を受ける方法等により確認を行う必要があります。
その上で、相手方から示された本人特定事項(※1)を、過去の本人確認記録及び料金請求書等の文書の送付先(※2)と照合することにより、本人確認を行うことができます。
ただし、法人契約における契約担当者の本人確認については、この方法は適用できないため、別途原則どおり4に規定する方法で本人確認を行う必要があります。
運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、乗員手帳、在留カード、各種保険証、国民年金手帳・身体障害者手帳などがこれに該当します。
印鑑登録証明書、戸籍謄本又は抄本、住民票の写し又は記載事項証明書、その他官公庁から発行された氏名・住居・生年月日の記載がある書類がこれに該当します。
別途、現在の住居を証明する書類の提示又は送付若しくは、写しの送付を受けることで本人確認書類の記載を補うことができます。
現在の住居を証明する書類としては、本人確認書類のほか官公庁の発行した書類等でも構いません。なお、発行年月日等は、提示又は送付を受ける日前6か月以内である必要があります。
国税又は地方税の領収証書又は納税証明書や公共料金の領収証書などをいいます。公共料金とは、電気、ガス、水道、NHKの受信料など、その公共性などにかんがみ、政府等が料金水準の決定や改定に直接関わっている料金を指します。
登記事項証明書、印鑑登録証明書などが該当します。
携帯電話不正利用防止法において、本人確認時には住居を確認しなければならないこととなっており、クレジットカードを用いて住居を確認することができない上、官公庁が発行しているものではないため、本人確認書類として認めておりません。
そのような義務はありません。各社の事情によって、本人確認方法、本人確認書類については選択することとなります。
本人確認記録には、次に掲げる事項を記録する必要があります。
本人確認記録の作成に際して、紙ではなく、電子的・電磁的な方法で作成することも可能です。
9−1で記載されているような事項の記載がなされていれば、本人確認書類の写しを本人確認記録として用いることも可能です。
本人確認書類の提示を直接受けたのであれば、その日が該当します。写し等の送付を受けて本人確認を行ったのであれば、携帯電話本体又は契約確認の文書等が相手方に届けられた日が該当します。郵送等に代えて、直接交付した場合は、携帯電話本体又は契約確認の文書等を交付した日が該当します。
具体的な期限は定められていませんが、本人確認終了後からできるだけ早く作成することが求められています。
契約終了後3年間の保存が義務づけられています。保存方法については、ハードディスク、CD−R等の方法により電磁的に保存することも可能です。
契約者確認の求めとは、警察署長が、携帯音声通信事業者に対し、特定の通話可能端末設備等に係る契約者について確認を求めることをいいます。
これは、特定の通話可能端末設備等が一定の犯罪に利用されていると認めるに足りる相当の理由がある場合等において、当該通話可能端末設備等が将来の犯罪に利用されることを未然に防止するために行うものです。
実際に警察署長が契約者確認を行う場合は、契約者確認要求書が携帯音声通信事業者あてに送付されます。
契約者に対してSMS等により、相当な期間を定めて公的証明書等の提示又は送付をするよう通知することができます。
なお、契約者から、第三者が入手できる公的証明書の提示又は公的証明書の写し等の送付を受けた場合には、当該公的証明書等に記載されている契約者の住所に宛てて確認書類を書留郵便等により転送不要郵便物等として送付し確認する必要があります。
契約者が本人特定事項の確認に応じない場合には、これに応じるまでの間、役務提供拒否ができることになります。
携帯音声通信事業者が、本人確認を媒介業者等に行わせる場合には、それが確実に行われるように媒介業者等に対して必要かつ適切な監督を行わなければならないとされています。
監督義務として具体的な基準は、以下のように定められています。