第1部 令和2年度の地方財政の状況

1 地方財政の役割

地方公共団体は、その自然的・歴史的条件、産業構造、人口規模等がそれぞれ異なっており、これに応じて様々な行政活動を行っている。

地方財政は、このような地方公共団体の行政活動を支えている個々の地方公共団体の財政の集合であり、国の財政と密接な関係を保ちながら、国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。

(1)国・地方を通じた財政支出の状況

国・地方を通じた財政支出について、令和2年度の国(一般会計と交付税及び譲与税配付金、公共事業関係等の6特別会計の純計)と地方(普通会計(*))の財政支出の合計から重複分を除いた歳出純計額は222兆5,076億円で、前年度と比べると、新型コロナウイルス感染症対策に係る産業経済費、機関費の増加等により、29.2%増となっている。

目的別歳出純計額の構成比の推移は、第1図のとおりであり、社会保障関係費が最も大きな割合を占め、以下、産業経済費、公債費、機関費の順となっている。

この歳出純計額を最終支出の主体に着目して国と地方とに分けてみると、国が98兆48億円(全体の44.0%)、地方が124兆5,029億円(同56.0%)で、前年度と比べると、国が33.5%増、地方が26.0%増となっている。

また、目的別歳出純計額の状況について、国と地方に分けて示したものが第2図である。これによると、防衛費、民生費のうち年金関係のように国のみが行う行政に係るものは別として、民生費(年金関係を除く。)、衛生費、学校教育費等、国民生活に直接関連する経費については、最終的に地方公共団体を通じて支出される割合が高いことがわかる。

(2)国民経済と地方財政

国内総生産(支出側、名目。以下同じ。)のうち、中央政府、地方政府、社会保障基金及び公的企業からなる公的部門は、家計部門に次ぐ経済活動の主体として、資金の調達及び財政支出等を通じ、資源配分の適正化、所得分配の公正化、経済の安定化等の重要な機能を果たしている。その中でも、地方政府は、中央政府を上回る最終支出主体であり、国民経済上、大きな役割を担っている。

ア 国内総生産(支出側)と地方財政

令和2年度において、国民経済の中で地方政府が果たしている役割を国内総生産に占める割合でみると、第3図のとおりである。地方政府は国内総生産のうちの11.9%を占め、中央政府の約2.5倍となっている。

イ 公的支出の状況

公的部門による公的支出*1の推移は、第4図のとおりである。令和2年度の公的支出は、前年度と比べると2.4%増の144兆5,894億円となっており、平成23年度以降増加傾向にある。

公的支出の内訳をみると、第5図のとおり、政府最終消費支出は113兆7,060億円で、前年度と比べると1.7%増、公的総資本形成は30兆8,835億円で、前年度と比べると5.4%増となっている。

地方政府による支出は、公的支出の43.9%(前年度と同率)を占め、最も大きな割合となっている。

また、政府最終消費支出及び公的総資本形成に占める地方政府の割合をみると、政府最終消費支出においては前年度と比べると0.2ポイント上昇の42.2%、公的総資本形成においては前年度と比べると0.9ポイント低下の50.3%となっている。



*1 公的支出には、国・地方の歳出に含まれる経費の中で、移転的経費である扶助費、普通建設事業費のうち所有権の取得に要する経費である用地取得費、金融取引に当たる公債費及び積立金等といった付加価値の増加を伴わない経費などは除かれている。したがって、公的支出に占める中央政府及び地方政府の割合と歳出純計額に占める国と地方の割合は一致していない。

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