5 地方経費の構造

性質別の歳出決算額の状況をみると、以下のとおりである。

(1)義務的経費

ア 人件費

(ア)人件費の状況

人件費は、職員給、地方公務員共済組合等負担金、退職金、議員報酬等、委員等報酬等からなっている。

人件費の決算額は、23兆283億円で、会計年度任用職員制度の施行等により、前年度と比べると2.5%増となっている。近年の人件費の歳出総額に占める割合及び人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合の推移は、第45図のとおりである。令和2年度の人件費の決算額は増加したものの、他の費目である補助費等、貸付金等がより大きく増加したことにより、人件費の歳出総額に占める割合は、前年度から4.1ポイント低下の18.4%となっている。推移としては、平成26年度以降、横ばいとなっていたが、令和元年度及び令和2年度は減少している。

人件費の歳出総額に占める割合を団体区分別にみると、都道府県が、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費(平成28年度以前は政令指定都市分も負担)を負担していることなどから、市町村を上回っている。

また、国家公務員の給与水準を100としたときの、地方公務員の給与水準を指すラスパイレス指数(*)の推移は、第46図のとおりであり、令和2年4月1日現在のラスパイレス指数は99.1(対前年度比同率)となっている。

人件費の主な内訳をみると、第47図のとおりであり、職員給が最も大きな割合を占め、次いで地方公務員共済組合等負担金となっている。

各費目の決算額を前年度と比べると、職員給が0.2%増、地方公務員共済組合等負担金が0.6%増となっている。

職員給の決算額は15兆9,812億円で、国家公務員の給与改定に準じた措置等により、前年度と比べると0.2%増となっている。平成11年度以来15年連続で減少してきたが、平成26年度から上昇に転じた。なお、ピーク時の平成10年度と比較すると約8割まで減少している。

職員給の部門別構成比は、第48図のとおりであり、教育関係が最も大きな割合を占め、以下、警察関係、議会・総務関係の順となっている。

また、職員給の部門別構成比を団体区分別にみると、都道府県においては、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることから、教育関係が最も大きな割合を占め、警察関係と合わせて全体の83.2%を占めている。市町村においては、教育関係が最も大きな割合を占め、以下、議会・総務関係、民生関係、消防関係の順となっている。

職員給の部門別構成比の推移は、第49図のとおりであり、近年は、警察関係や民生関係が上昇傾向にある。

人件費に充当された財源の内訳をみると、第50図のとおりであり、一般財源等が最も大きな割合を占めている。

なお、国庫支出金の構成比について、都道府県が10%を超え、市町村を上回っているのは、都道府県が負担している政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費について、国庫負担制度(義務教育費国庫負担金)が設けられていること等によるものである。

(イ)地方公務員の数

地方公共団体の職員数(普通会計分)は、事務事業の見直し、組織の合理化、民間委託等の取組が行われたことなどから、平成7年以降21年連続して減少し、平成27年4月1日現在の職員数は237万9,387人となったが、平成28年に増加に転じ、令和2年4月1日現在の職員数は240万8,669人で、前年同期と比べると1万9,018人増加(0.8%増)している。

職員の部門別構成比は、第51図のとおりであり、教育関係職員が最も大きな割合を占め、以下、一般行政関係職員、警察関係職員の順となっている。なお、職員構成比を団体区分別にみると、都道府県においては教育関係職員が59.0%、警察関係職員が21.9%、一般行政関係職員が17.6%を占め、市町村においては一般行政関係職員が63.7%、教育関係職員が23.1%、消防関係職員が13.2%を占めている。

イ 扶助費

扶助費は、社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、障害者等を援助するために要する経費である。

扶助費の決算額は15兆4,222億円で、ひとり親世帯臨時特別給付金給付事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業や幼児教育・保育の無償化に伴う児童福祉費の増加等により、前年度と比べると3.2%増となっており、20年連続で増加している。

令和2年度決算の扶助費の目的別の内訳をみると、児童福祉費が最も大きな割合を占め、以下、社会福祉費、生活保護費の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、児童福祉費が4.3%増、社会福祉費が4.4%増、生活保護費が1.7%減となっている。

扶助費の目的別内訳の推移は、第52図のとおりであり、児童手当制度の拡充、幼児教育・保育の無償化、自立支援給付費の増加等により、特に、児童福祉費や社会福祉費が増加している。

なお、扶助費に充当された財源の内訳をみると、生活保護費負担金及び児童手当等交付金等の国庫支出金が8兆2,672億円(扶助費総額の53.6%)が最も大きな割合を占め、以下、一般財源等が6兆7,782億円(同44.0%)となっている。

ウ 公債費

公債費は、地方債元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費である。

公債費の決算額は12兆342億円で、地方債利子の減少により、前年度と比べると0.7%減となっている。

公債費の内訳をみると、地方債元金償還金が11兆1,276億円(公債費総額の92.5%)で最も大きな割合を占めており、前年度と比べると、0.6%増となっている。また、地方債利子は9,058億円(同7.5%)となっており、前年度と比べると、13.8%減となっている。

なお、公債費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が11兆5,250億円(公債費総額の95.8%)となっており、使用料・手数料等の特定財源が5,091億円(同4.2%)となっている。

(2)投資的経費

ア 普通建設事業費

普通建設事業費は、公共又は公用施設の新増設等に要する経費である。

普通建設事業費の決算額は15兆8,663億円で、補助事業費の増加等により、前年度と比べると2.9%増となっている。

なお、普通建設事業費のうち更新整備*10に要した経費は、都道府県においては3兆886億円、市町村においては4兆4,929億円となっている。一方、新規整備*11に要した経費は、都道府県においては2兆6,423億円、市町村においては2兆3,120億円となっている。更新整備と新規整備に要する経費の合計額に占める更新整備に要する経費の割合は、都道府県では53.9%、市町村では66.0%となっている。

近年の普通建設事業費の推移は、第22表及び第53図のとおりである。

東日本大震災からの復興事業や防災・減災、国土強靱化対策に基づく事業の増加等により、近年補助事業費が増加傾向にある。

(ア)普通建設事業費の目的別内訳

普通建設事業費の目的別の内訳をみると、第54図のとおりであり、土木費が最も大きな割合を占め、以下、教育費、農林水産業費の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が6.3%増、教育費が5.7%減、農林水産業費が2.5%増となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合を占め、以下、都市計画費、河川海岸費の順となっている。

(イ)補助事業費

補助事業費の決算額は8兆2,416億円で、前年度と比べると8.6%増となっている。

補助事業費の目的別の内訳をみると、第55図のとおりであり、土木費が最も大きな割合を占め、以下、農林水産業費、教育費の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が9.0%増、農林水産業費が2.9%増、教育費が7.4%増となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合を占め、以下、都市計画費、河川海岸費の順となっている。

(ウ)単独事業費

単独事業費の決算額は6兆7,074億円で、前年度と比べると4.3%減となっている。

単独事業費の目的別の内訳をみると、第56図のとおりであり、土木費が最も大きな割合を占め、以下、教育費、総務費の順となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が0.3%減、教育費が12.4%減、総務費が6.8%減となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合を占め、次いで都市計画費となっている。

(エ)国直轄事業負担金

国直轄事業負担金の決算額は9,173億円で、前年度と比べると11.5%増となっている。

国直轄事業負担金の目的別の内訳をみると、土木費が最も大きな割合を占め、次いで農林水産業費となっている。各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が12.8%増、農林水産業費が0.1%増となっている。

さらに、これらの費目を主要項目別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合を占め、以下、河川海岸費、港湾費の順となっている。

(オ)普通建設事業費の充当財源

普通建設事業費の財源構成比の推移は、第57図のとおりである。

普通建設事業費に充当された主な財源の内訳をみると、地方債が最も大きな割合を占め、以下、国庫支出金、一般財源等の順となっている。

また、これを補助事業費と単独事業費に分けてみると、補助事業費については、国庫支出金、地方債、一般財源等の順となっており、単独事業費については、地方債、一般財源等の順となっている。

(カ)用地取得費

地方公共団体が社会資本整備を推進するための用地取得に要する経費である用地取得費の決算額は9,078億円で、前年度と比べると3.3%減となっている。

用地取得費の推移は、第58図のとおりである。

イ 災害復旧事業費

災害復旧事業費は、地震、豪雨、台風等の災害によって被災した施設を原形に復旧するために要する経費である。

災害復旧事業費の決算額は1兆45億円で、前年度と比べると0.3%減となっている。

災害復旧事業費の内訳及び推移は、第59図及び第60図のとおりである。

決算額を前年度と比べると、補助事業費が0.3%増、単独事業費が5.0%減となっている。

ウ 失業対策事業費

失業対策事業費は、失業者に就業の機会を与えることを主たる目的として、道路、河川、公園の整備等を行う事業に要する経費である。

失業対策事業費の決算額は0.2億円で、前年度と比べると、12.5%減となっている。

失業対策事業費は、全て単独事業費となっており、その財源としては全て一般財源等が充当されている。

(3)その他の経費

その他の経費には、物件費、維持補修費、補助費等、繰出金、積立金、投資及び出資金、貸付金並びに前年度繰上充用金がある。

その決算額は58兆1,033億円で、特別定額給付金事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業の増加等による補助費等の増加、新型コロナウイルス感染症対策に係る制度融資の増加等による貸付金の増加等により前年度と比べると72.1%増となっている。

その他の経費の内訳をみると、第23表のとおりである。

なお、その他の経費のうち公営企業会計に対する繰出しの状況についてみると、法適用企業(「地方公営企業法」(昭和27年法律第292号)の規定の全部又は一部を適用している事業。以下同じ。)の公営企業会計に対する繰出し(補助費等、投資及び出資金、貸付金)は2兆6,298億円、法非適用企業(地方公営企業法の規定を適用していない事業。以下同じ。)の公営企業会計に対する繰出し(繰出金)は3,227億円で、合計2兆9,525億円となっており、前年度と比べると0.8%増となっている。

ア 物件費

旅費、備品購入費、需用費、役務費、委託料等の経費である物件費の決算額は10兆6,774億円で、新型コロナウイルス感染症対策に係る事業の委託費や児童生徒向けの1人1台端末の整備等のGIGAスクール構想の推進に伴う事業費の増加等により、前年度と比べると7.0%増となっている。

物件費の内訳の推移は、第61図のとおりである。

各費目の内訳をみると、委託料が最も大きな割合を占め、次いで需用費となっている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、委託料が10.8%増、需用費が9.4%増となっている。

また、物件費の目的別の内訳をみると、第62図のとおりである。

イ 維持補修費

地方公共団体が管理する施設等の維持に要する経費である維持補修費の決算額は1兆3,715億円で、道路除雪事業による土木費の増加等により、前年度と比べると12.4%増となっている。

維持補修費の目的別の内訳をみると、第63図のとおりであり、土木費が最も大きな割合を占めている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が17.2%増となっている。

ウ 補助費等

公営企業会計(うち法適用企業)に対する負担金、市町村の公営事業会計に対する都道府県の負担金、様々な団体等への補助金、報償費、寄附金等の補助費等の決算額は28兆7,853億円で、特別定額給付金事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業の増加等により、前年度と比べると199.0%増となっている。

補助費等の目的別内訳の推移は、第64図のとおりである。

各費目の目的別の内訳をみると、総務費が最も大きな割合を占め、以下、民生費、衛生費の順となっている。

また、各費目の決算額を前年度と比べると、総務費が特別定額給付金事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業の増加等により1,375.8%増、民生費が生活福祉資金の貸付事業、ひとり親世帯臨時特別給付金給付事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業の増加等により50.5%増、衛生費が医療提供体制の確保等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業の増加等により196.1%増となっている。

補助費等のうち、経費負担区分の原則により、一般会計等が負担する法適用企業に対する負担金及び補助金は2兆2,303億円で、前年度と比べると19.3%増となっている。

事業別にみると、下水道事業に対するものが1兆3,110億円で最も大きな割合を占め、次いで病院事業に対するものが6,775億円となっている。

エ 繰出金

普通会計から他会計、基金に支出する経費である繰出金の決算額は5兆6,412億円で、法非適用企業の事業数が減少したこと等により、前年度と比べると6.1%減となっている。

繰出金の繰出先内訳の推移は、第65図のとおりである。

繰出金の繰出先内訳をみると、国民健康保険事業会計に対するものが最も大きな割合を占めており、以下、介護保険事業会計に対するもの、後期高齢者医療事業会計に対するものの順となっている。

また、各費目の決算額を前年度と比べると、国民健康保険事業会計に対するものが4.3%減、介護保険事業会計に対するものが5.6%増、後期高齢者医療事業会計に対するものが1.3%増となっている。

公営企業会計(うち法非適用企業)に対する繰出金は、経費負担区分の原則により、一般会計等が負担するものであり、決算額は3,227億円で、前年度と比べると3,815億円減少し、近年減少傾向となっている。その内訳を事業別にみると、下水道事業に対するものが1,545億円で最も大きな割合を占めており、次いで宅地造成事業に対するものが564億円となっている。

オ 積立金

特定の目的のための財産を維持し、又は資金を積み立てるための経費である積立金(歳計剰余金処分による積立金を含む。)の決算額は3兆2,528億円で、前年度と比べると899億円増(2.8%増)となっている。

一方、積立金取崩し額の決算額は3兆5,905億円で、前年度と比べると1,168億円増(3.4%増)となっている。

その結果、令和2年度末における積立金現在高は22兆5,981億円で、前年度と比べると3,377億円減(1.5%減)となっている。

積立金及び積立金取崩し額の状況は、第66図のとおりであり、その内訳を基金の種類別にみると、いずれも、その他特定目的基金、財政調整基金、減債基金の順となっている。

カ 投資及び出資金

国債・地方債の取得や第三セクター等への出えん、出資等のための経費である投資及び出資金の決算額は4,428億円で、下水道事業等の公営企業への出資金の増加や財団等への出えん金の増加等により、前年度と比べると17.4%増となっている。

投資及び出資金の目的別の内訳をみると、第67図のとおりであり、土木費が最も大きな割合を占め、次いで衛生費の順となっている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、土木費が15.2%増、衛生費が1.0%増となっている。

投資及び出資金のうち、公営企業会計(うち法適用企業)に対するものは3,341億円で、前年度と比べると13.7%増となっている。事業別にみると、下水道事業に対するものが最も大きな割合を占めており、以下、上水道事業、病院事業の順となっている。

令和2年度末における投資及び出資金の現在高は16兆8,188億円で、前年度末と比べると2.1%増となっている。その内訳をみると、観光・交通関係に係るものが最も大きな割合を占めている。

キ 貸付金

地方公共団体が様々な行政施策上の目的のために地域の住民、企業等に貸し付ける貸付金の決算額は8兆1,723億円で、新型コロナウイルス感染症対策に係る制度融資の増加等により商工費が大幅な増加となったこと等により、前年度と比べると126.4%増となっている。

貸付金の目的別の内訳をみると、第68図のとおりであり、商工費が最も大きな割合を占めている。また、各費目の決算額を前年度と比べると、商工費が149.0%増となっている。

公営企業会計(うち法適用企業)に対する貸付金は654億円で、前年度と比べると4.9%増となっている。

令和2年度末の貸付金の現在高は6兆233億円で、前年度末と比べると3.6%増となっている。その内訳をみると、商工関係に係るものが1兆5,472億円で最も大きな割合を占め、次いで観光・交通関係が8,931億円となっている。



*10 既存の公共施設等の建替え等(移転、集約化、複合化を含む。)の更新や機能強化等(長寿命化改修、耐震改修、バリアフリー改修、太陽光パネルの設置等)をいう。建替え等に伴い行われる既存の公共施設等の除却も含まれる。

*11 新たな公共施設等の建設、既存の公共施設等の別棟の増築、道路や下水管の新規区間開設等の新規公共施設等の整備をいう。

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