3 地方財源の状況

令和2年度における国税と地方税を合わせた租税の状況及び地方歳入の状況は、次のとおりである。

(1)租税の状況

国税と地方税を合わせた租税として徴収された額は105兆7,586億円で、前年度と比べると2.3%増となっている。

国民所得に対する租税総額の割合である租税負担率をみると、令和2年度においては、前年度と比べると2.4ポイント上昇の28.2%となっている。なお、主な諸外国の租税負担率をみると、アメリカ23.4%(2018暦年計数)、イギリス37.0%(同)、ドイツ32.1%(同)、フランス42.7%(同)となっている。

次に、租税を国税と地方税の別でみると、第22図のとおりであり、租税総額に占める割合は、国税61.4%(前年度60.1%)、地方税38.6%(同39.9%)となっている。また、地方交付税、地方譲与税及び地方特例交付金を国から地方へ交付した後の租税の実質的な配分割合は、国43.0%(同41.0%)、地方57.0%(同59.0%)となっている。なお、国税と地方税の推移は、第23図のとおりである。地方税は、平成24年度以降増加傾向にあったが、令和2年度は、法人関係二税の減少等により減少に転じている。

(2)地方歳入

ア 地方税

地方税の決算額は40兆8,256億円で、前年度と比べると、0.9%減となっている。

団体区分別にみると、都道府県においては20兆5,246億円で、前年度と比べると0.9%減となり、歳入総額の33.2%(前年度40.7%)を占めており、市町村においては20兆3,010億円で、前年度と比べると1.0%減となり、歳入総額の26.0%(同33.4%)を占めている。歳入総額に占める割合が全国平均(31.4%)より低い団体数は、全体の86.4%を占める1,545団体となっている。

地方税収入額の62.4%を占める住民税、事業税及び地方消費税の収入状況は、第17表のとおりであり、住民税が最も大きな割合を占め、以下、地方消費税、事業税の順となっている。住民税は、法人分の減少により、前年度と比べると3.9%減となっている。事業税は、法人分の減少により、前年度と比べると6.5%減となっている。地方消費税は、令和元年10月の地方消費税率の引上げの影響により、前年度と比べると13.1%増となっている。なお、法人関係二税(法人住民税及び法人事業税)は6兆4,429億円で、前年度と比べると15.2%減となっている。

地方税収(超過課税及び法定外税等を除き、地方消費税清算後の数値)について、全国平均を100として、都道府県別に人口1人当たり税収額を比較してみると、第24図のとおりであり、地方税計については、最も大きい東京都が159.7、最も小さい長崎県が72.2で、約2.2倍の格差となっている。

個別の税目ごとに比較してみると、個人住民税については、最も大きい東京都が162.4、最も小さい秋田県が65.0で、約2.5倍の格差となっている。法人関係二税については、最も大きい東京都が245.0、最も小さい奈良県が45.0で、約5.4倍の格差となっている。地方消費税については、最も大きい東京都が108.5、最も小さい奈良県が87.1で、約1.2倍の格差となっている。固定資産税については、最も大きい東京都が156.8、最も小さい長崎県が69.3で、約2.3倍の格差となっている。

このように、地方税収については、各税目とも都道府県ごとに偏在性があるが、その度合いについては、法人関係二税の格差が特に大きく、地方消費税の偏在性は比較的小さくなっている。

(ア)道府県税の収入状況

都道府県の地方税の決算額から東京都が徴収した市町村税相当額を除いた道府県税の収入額は18兆3,687億円で、法人関係二税(道府県民税の法人分及び法人事業税)が減少したものの、地方消費税の増加等により、前年度と比べると、0.1%増となっている。

道府県税収入額の税目別内訳は、第25図のとおりであり、道府県民税が最も大きな割合を占め、以下、地方消費税、事業税の順となっている。

また、法人関係二税は4兆6,303億円で、道府県税総額に占める割合は25.2%となっている。

道府県税収入額の推移は、第26図のとおりである。事業税は、平成24年度以降増加傾向にあったが、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響等により減少に転じている。地方消費税は、地方消費税率の引上げにより、平成26年度、27年度及び令和2年度に増加している。

(イ)市町村税の収入状況

市町村の地方税の決算額に東京都が徴収した市町村税相当額を加えた市町村税の収入額は22兆4,570億円で、固定資産税が増加したものの、市町村民税(法人分)の減少等により、前年度と比べると、1.8%減となっている。

市町村税収入額の税目別内訳は、第27図のとおりであり、市町村民税が最も大きな割合を占め、次いで固定資産税となっている。

市町村税収入額の推移は、第28図のとおりである。市町村民税は、近年、増加傾向にあったが、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響等による法人分の減少により減少に転じている。

(ウ)法定外普通税

地方公共団体は、地方税法で規定されている税目のほかに、地方公共団体ごとの特有な財政需要を充足するため、法定外普通税を設けることができる。法定外普通税の収入額は477億円で、前年度と比べると2.0%減となっている。

(エ)法定外目的税

地方公共団体は、地方税法で規定されている税目のほかに、条例で定める特定の費用に充てるため、法定外目的税を設けることができる。法定外目的税の収入額は120億円で、前年度と比べると34.4%減となっている。

(オ)超過課税

地方公共団体は、地方税法で標準税率が定められている税目について、財政上その他の必要がある場合に、その税率を超える税率を定めることができる。この標準税率を超えて課税された部分である超過課税による収入額は5,945億円で、前年度と比べると、15.7%減となっている。

イ 地方譲与税

地方譲与税の決算額は2兆2,323億円で、前年度と比べると、法人関係の地方譲与税の減少等により、14.6%減となっている。

地方譲与税の主な内訳をみると、特別法人事業譲与税が1兆6,606億円(対前年度比皆増)、自動車重量譲与税が2,861億円(同0.3%減)、地方揮発油譲与税が2,258億円(同1.9%減)となっている。

ウ 地方特例交付金

地方特例交付金の決算額は2,256億円で、前年度と比べると、51.8%減となっている。なお、前年度の決算額から前年度限りの措置で廃止となった子ども・子育て支援臨時交付金の額を除いた額と比べると、13.3%増となっている。

地方特例交付金の内訳をみると、個人住民税減収補填特例交付金が1,751億円(対前年度比0.8%増)、自動車税減収補填特例交付金が436億円(同92.1%増)、軽自動車税減収補填特例交付金が69億円(同159.1%増)となっている。

エ 地方交付税

地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域においても一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障するための地方の固有財源である。また、その目的は、地方公共団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を損なわずに、その財源の均衡化を図り、地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方公共団体の独立性を強化することである。

地方交付税の決算額は16兆9,890億円で、前年度と比べると、1.5%増となっている。また、歳入総額に占める割合は13.1%となっている。

地方交付税の決算額を団体区分別にみると、都道府県においては8兆8,781億円で、前年度と比べると、2.9%増、市町村においては8兆1,109億円で、前年度と比べると、0.0%増となっており、その地方交付税総額に占める割合は、都道府県においては52.3%(前年度51.6%)、市町村においては47.7%(同48.4%)となっている。

令和2年度当初において地方公共団体に交付される通常収支分の地方交付税の総額は、地方財政計画において、前年度と比べると、4,073億円増(2.5%増)の16兆5,882億円とされた。その算定基礎は、第18表のとおりである。

また、国の令和2年度補正予算(第3号)により、令和2年度の国税収入の補正に伴う地方交付税法定率分2兆6,339億円の減については、全額を一般会計からの加算により措置することとし、令和2年度当初の地方交付税の総額を確保した。さらに、令和2年度当初に行うこととしていた交付税特別会計借入金の償還については、当該償還予定額から国の一般会計からの加算により償還財源を確保した分を控除した額(2,500億円)の償還を繰り延べるとともに、当該額を令和3年度当初の地方交付税の総額に加算することができることとした。

なお、基準財政需要額は47兆5,814億円(財源不足団体分42兆6,011億円、財源超過団体分4兆9,803億円)、基準財政収入額(*)は33兆3,223億円(財源不足団体分26兆9,867億円、財源超過団体分6兆3,356億円)で、財源不足額は15兆6,143億円となっている。

普通交付税の交付状況をみると、不交付団体は、都道府県では東京都の1団体である。市町村では前年度より10団体減少し、75団体となっている。また、災害等特別の事情に応じて交付する特別交付税の令和2年度の交付状況をみると、都道府県においては東京都を除く全団体に、市町村においては全1,718団体に、それぞれ交付されている。

さらに、東日本大震災分として、東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のため、震災復興特別交付税が、東日本大震災の被災地方公共団体等に4,007億円交付されている。

これらの結果、令和2年度の地方交付税の総額は16兆9,890億円となり、その内訳は普通交付税15兆5,926億円、特別交付税9,957億円、震災復興特別交付税4,007億円となっている。

オ 国庫支出金

国庫支出金の状況は、第19表のとおりである。国庫支出金の決算額は37兆4,557億円で、新型コロナウイルス感染症対策に係る補助事業の増加等により、前年度と比べると136.5%増となっている。

国庫支出金の内訳をみると、特別定額給付金給付事業費補助金等が最も大きな割合を占めており、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金、その他新型コロナウイルス感染症対策関係国庫支出金も含め、新型コロナウイルス感染症対策関連の国庫支出金の合計は20兆8,573億円となり、国庫支出金総額の55.7%を占めている。

また、その他の国庫支出金を前年度と比べると、普通建設事業費支出金、社会資本整備総合交付金、児童保護費等負担金、障害者自立支援給付費等負担金等が増加しており、生活保護費負担金、義務教育費負担金、児童手当等交付金等が減少している。

カ 都道府県支出金

市町村が都道府県から交付を受ける都道府県支出金の決算額は4兆5,698億円で、新型コロナウイルス感染症対策に係る支出金の増加等により、前年度と比べると9.7%増となっている。

都道府県支出金の内訳をみると、国庫財源を伴うものが65.6%、都道府県費のみのものが34.4%となっている。

都道府県支出金の主な内訳を前年度と比べると、国庫財源を伴うものについては、障害者自立支援給付費等負担金が4.6%増、児童保護費等負担金が17.9%増、児童手当等交付金が2.1%減、普通建設事業費支出金が3.7%減、新型コロナウイルス対策に係るものは皆増等となっており、また、都道府県費のみのものについては、普通建設事業費支出金が7.8%減、災害復旧事業費支出金が42.5%減、新型コロナウイルス対策に係るものは皆増等となっている。

キ 地方債

地方債の発行状況は、第20表のとおりである。地方債の決算額は12兆2,607億円で、臨時財政対策債が減少したものの、減収補填債や防災・減災、国土強靱化対策に係る地方債の増加等により、前年度と比べると、12.8%増となっている。

地方債の決算額を団体区分別にみると、都道府県においては6兆7,063億円で、前年度と比べると19.7%増、市町村においては5兆5,773億円で、前年度と比べると5.3%増となっており、法人関係二税の減収の影響が大きく、減収補填債の発行額が多い都道府県の増加率が高くなっている。

また、地方債依存度(歳入総額に占める地方債の割合)は9.4%で、前年度と比べると1.1ポイント低下している。

ク その他の収入

その他の収入の状況は、第21表のとおりである。決算額は20兆583億円で、新型コロナウイルス感染症対策に係る制度融資の増加等による貸付金元利収入の増加等により、前年度と比べると29.3%増となっている。

基金、公営事業会計等からの繰入金の決算額は3兆8,530億円で、前年度と比べると2.6%増となっている。そのうち、積立金の取崩し等による基金からの繰入金は3兆7,396億円となっており、繰入金総額の97.1%を占めている。

貸付金元利収入の決算額は7兆8,744億円で、新型コロナウイルス感染症対策に係る制度融資の増加等により、前年度と比べると115.3%増となっている。

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