2 令和4年度の地方財政

(1)令和4年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「令和4年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、令和3年12月23日閣議了解、令和4年1月17日閣議決定された。この中で、以下の令和3年度の経済動向、令和4年度の経済財政運営の基本的態度及び令和4年度の経済見通しが示された。

(ア)令和3年度の経済動向

我が国経済は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響の下にあるが、令和3年9月末の緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除以降は、厳しい状況は徐々に緩和されており、このところ持ち直しの動きがみられる。

ただし、オミクロン株を含めた新型コロナウイルス感染症による内外経済への影響、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意するとともに、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

こうした中、政府は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止、「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保を柱とする「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定。以下「経済対策」という。)を策定し、令和3年度補正予算を編成した。

新型コロナウイルス感染症に対しては、最近の感染拡大を含め、最悪の事態を想定した上で各種の対応に万全を期すとともに、経済対策を迅速かつ着実に実行することを通じて、足元の経済の下支えを図り、景気下振れリスクに対応し、感染拡大に際しても国民の暮らし、雇用や事業を守り抜き、経済の底割れを防ぐ。また、「新しい資本主義」を起動し、「成長と分配の好循環」を実現して、経済を自律的な成長軌道に乗せる。

こうした下で、令和3年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は2.6%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は1.7%程度となり、GDPは令和3年度中に感染拡大前の水準を回復することが見込まれる。また、消費者物価(総合)変化率はマイナス0.1%程度と見込まれる。

(イ)令和4年度の経済財政運営の基本的態度

経済財政運営に当たっては、ウィズコロナの下で、社会経済活動の再開・継続を図りつつ、安全・安心を確保していくとともに、経済対策を迅速かつ着実に実施し、公的支出による下支えを図りつつ、消費や設備投資といった民需の回復を後押しし、経済を民需主導の持続的な成長軌道に乗せていく。

最大の目標であるデフレからの脱却を成し遂げる。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期する。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。

経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組んでいく。

その上で、岸田内閣が目指すのは、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとする新しい資本主義の実現である。

成長を目指すことは極めて重要であり、その実現に全力で取り組む。しかし、分配なくして次の成長なし。成長の果実をしっかりと分配することで、初めて次の成長が実現する。

具体的には、「科学技術立国の実現」、地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」、「経済安全保障」を3つの柱とした大胆な投資とともに、デジタル臨時行政調査会における規制・制度改革等を通じ、ポストコロナ社会を見据えた成長戦略を国主導で推進し、経済成長を図る。また、賃上げの促進等による働く人への分配機能の強化、看護・介護・保育等に係る公的価格の在り方の抜本的な見直し、少子化対策等を含む全ての世代が支え合う持続可能な全世代型社会保障制度の構築を柱とした分配戦略を推進する。

加えて、東日本大震災からの復興・創生、高付加価値化と輸出力強化を含む農林水産業の振興、老朽化対策を含む防災・減災、国土強靱化や交通、物流インフラの整備等の推進、観光や文化・芸術への支援など、地方活性化に向けた基盤づくりに積極的に投資する。年代・目的に応じた、デジタル時代にふさわしい効果的な人材育成、質の高い教育の実現を図る。2050年カーボンニュートラルを目指し、グリーン社会の実現に取り組む。

これまでにない速度で厳しさを増す国際情勢の中で、国民を守り抜き、地球規模の課題解決に向けて国際社会を主導するため、外交力や防衛力を強化する等、安全保障の強化に取り組む。

これまでの政府・与党の決定を踏まえた取組を着実に進めるとともに、財政の単年度主義の弊害を是正し、科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備などの国家課題に計画的に取り組む。

日本銀行には、感染症の経済への影響を注視し、適切な金融政策運営を行い、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

(ウ)令和4年度の経済見通し

令和4年度については、「令和4年度の経済財政運営の基本的態度」に基づき、経済対策を迅速かつ着実に実施すること等により、実質GDP成長率は3.2%程度、名目GDP成長率は3.6%程度と見込まれる。GDPは過去最高となることが見込まれ、公的支出による経済下支えの下、消費の回復や堅調な設備投資に牽引される形で、民需主導の自律的な成長と「成長と分配の好循環」の実現に向けて着実に前進していく。また、消費者物価(総合)変化率は、0.9%程度と見込まれる。

ただし、引き続き、感染症による内外経済への影響、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意するとともに、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

イ 国の予算

「令和4年度予算編成の基本方針」(令和3年12月3日閣議決定)及び「令和4年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて、同月24日、令和4年度一般会計歳入歳出概算が閣議決定された。

令和4年度予算は、以下のような基本的な考え方により編成された。

(ア)令和4年度予算の基本的な考え方

a 我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和されつつあるものの、引き続き持ち直しの動きに弱さがみられる。先行きについては、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、足元では新たな変異株の出現による感染拡大への懸念が生じていることから、新型コロナウイルス感染症による内外経済への影響や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。

b このように先行き不透明な中、岸田内閣では、最悪の事態を想定しつつ水際対策を行うなど、喫緊かつ最優先の課題である新型コロナウイルス感染症対応に万全を期し、感染症により大きな影響を受ける方々の支援等を速やかに行うべく必要な対策を講じるとともに、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現すべく精力的に取り組んでいるところである。

c まず、新型コロナウイルス感染症対応については、これまでも、感染状況や、企業や暮らしに与える影響に十分に目配りを行い、予備費なども活用して必要な対策を柔軟に行ってきているが、今般、新型コロナウイルス感染症の拡大防止、「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保を柱とする経済対策を策定したところであり、これを速やかに実行に移していく。

d 経済財政運営に当たっては、最大の目標であるデフレからの脱却を成し遂げる。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期する。経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない。まずは、経済をしっかり立て直す。そして、財政健全化に向けて取り組んでいく。

e その上で、岸田内閣が目指すのは、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとする新しい資本主義の実現である。

成長を目指すことは極めて重要であり、その実現に全力で取り組む。しかし、分配なくして次の成長なし。成長の果実をしっかりと分配することで、初めて次の成長が実現する。

具体的には、科学技術立国の実現、地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」、経済安全保障の推進を3つの柱とした大胆な投資により、ポストコロナ社会を見据えた成長戦略を国主導で推進し、経済成長を図る。また、賃上げの促進等による働く人への分配機能の強化、看護・介護・保育等に係る公的価格の在り方の抜本的な見直し、少子化対策等を含む全ての世代が支え合う持続可能な全世代型社会保障制度の構築を柱とした分配戦略を推進する。

f 加えて、東日本大震災からの復興・創生、高付加価値化と輸出力強化を含む農林水産業の振興、老朽化対策を含む防災・減災、国土強靱化や交通、物流インフラの整備等の推進、観光や文化・芸術への支援など、地方活性化に向けた基盤づくりに積極的に投資する。年代・目的に応じた、デジタル時代にふさわしい効果的な人材育成、質の高い教育の実現を図る。2050年カーボンニュートラルを目指し、グリーン社会の実現に取り組む。

これまでにない速度で厳しさを増す国際情勢の中で、国民を守り抜き、地球規模の課題解決に向けて国際社会を主導するため、外交力や防衛力を強化する等、安全保障の強化に取り組む。

これまでの政府・与党の決定を踏まえた取組を着実に進めるとともに、財政の単年度主義の弊害を是正し、科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備などの国家課題に計画的に取り組む。

(イ)令和4年度予算編成についての考え方

a 令和4年度予算編成に当たっては、新型コロナウイルス感染症への対応に万全を期すとともに、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現に向けて、上記の基本的な考え方を踏まえる。

b 具体的には、新型コロナウイルス感染症の克服に向け、国民を守る医療提供体制や検査体制の確保、変異株を含む新たなリスクに対する万全の備えのためのワクチン・治療薬等の研究開発、雇用・事業・生活に対する支援等を推進する。

c また、「コロナ後の新しい社会」を見据え、成長と分配の好循環を実現するため(ア)eに掲げる成長戦略、分配戦略などに基づき予算を重点配分する。また、(ア)fのとおり、東日本大震災を始め各地の災害からの復興・創生や防災・減災、国土強靱化等に対応するとともに、現下の国際情勢に的確に対応し、国家の安全保障をしっかりと確保する。

d あわせて、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18日閣議決定。以下「骨太方針2021」という。)における令和4年度予算編成に向けた考え方に基づいて、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、メリハリの効いた予算とする。また、いわゆる「16か月予算」の考え方で、令和3年度補正予算と、令和4年度当初予算を一体として編成する。その中で、単年度主義の弊害是正のため必要に応じ新たに基金を創設する等の措置を講じていく。加えて、EBPMの仕組み等を活用し、適切かつ効果的な支出を推進する。

このような方針に基づいて編成された令和4年度一般会計歳入歳出概算の規模は107兆5,964億円で、前年度当初予算と比べると9,867億円増(0.9%増)となった。

また、東日本大震災復興特別会計の予算規模は8,413億円で、前年度当初予算と比べると905億円減(9.7%減)となっている。

財政投融資計画の規模は18兆8,855億円で、前年度計画額と比べると22兆201億円減(53.8%減)となっている。

(2)地方財政計画

令和4年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、地域社会のデジタル化や公共施設の脱炭素化の取組等の推進、消防・防災力の一層の強化等に対応するために必要な経費を計上するとともに、地方団体が行政サービスを安定的に提供できるよう、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上等を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととする。また、歳入面においては、基本方針2021等を踏まえ、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、令和3年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生じることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとする。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとする。

なお、地方財政審議会からは、平成3年5月21日に「感染症を乗り越えて活力ある地域社会を実現するための地方税財政改革についての意見」及び同年12月10日に「今後目指すべき地方財政の姿と令和4年度の地方財政への対応等についての意見」が提出された。

以上を踏まえ、次の方針に基づき令和4年度の地方財政計画を策定している。

ア 通常収支分

(ア)地方税制については、令和4年度地方税制改正では、商業地等に係る令和4年度分の固定資産税等の税負担の調整、法人事業税の付加価値割における給与等の支給額が増加した場合の特例措置の拡充等、個人住民税における住宅借入金等特別税額控除の延長等の税制上の措置を講じることとしている。

(イ)財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとし、所要の法律改正を行う。

a 令和4年度の財源不足見込額2兆5,559億円については、令和2年度に講じた令和4年度までの間の制度改正に基づき、従前と同様の例により、次の補填措置を講じる。その結果、国と地方が折半して補填すべき額は生じないこととなる。

(a)建設地方債(財源対策債)を7,600億円増発する。

(b)地方交付税については、国の一般会計加算(地方交付税法附則第4条の2第1項の加算)により154億円増額する。

(c)地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を1兆7,805億円発行する。

b 交付税特別会計借入金については、令和4年度から令和6年度までは各年度5,000億円を償還、令和7年度から令和10年度までは償還額を1,000億円ずつ増額し、令和11年度から令和36年度までは各年度1兆円を基本に償還するよう、償還計画の見直しを実施する。

c 上記の結果、令和4年度の地方交付税については、18兆538億円(前年度比6,153億円、3.5%増)を確保する。

(ウ)地方債については、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方団体が緊急に実施する防災・減災対策、公共施設等の適正管理及び地域の活性化への取組等を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

この結果、地方債計画(通常収支分)の規模は、10兆1,799億円(普通会計分7兆6,077億円、公営企業会計等分2兆5,722億円)とする。

(エ)地域社会のデジタル化や公共施設の脱炭素化の取組等の推進、消防・防災力の一層の強化、地方創生の推進、地域社会の維持・再生、住民に身近な社会資本の整備、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 「地域デジタル社会推進費」については、引き続き2,000億円(前年度同額)計上する。

b 「まち・ひと・しごと創生事業費」については、引き続き1兆円(前年度同額)計上する。

c 「地域社会再生事業費」については、引き続き4,200億円(前年度同額)計上する。

d 投資的経費に係る地方単独事業費については、公共施設の脱炭素化の取組等を推進するため、「公共施設等適正管理推進事業費」について対象事業を拡充した上で、5,800億円(前年度比1,000億円、20.8%増)を計上することとしており、全体で前年度に比し1.6%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

e 「人づくり革命」として、幼児教育・保育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

f 社会保障・税一体改革による「社会保障の充実」として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革等に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

g 一般行政経費に係る地方単独事業費については、社会保障関係費の増加等を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

h 消防力の充実、防災・減災、国土強靱化の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策に対し所要の財政措置を講じる。

i 過疎地域の持続的発展のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ)地方公営企業の経営基盤の強化を図るとともに、水道、下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(カ)地方行財政運営の合理化を図ることとし、行政のデジタル化、適正な定員管理、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、直轄・補助事業に係る地方負担分等を措置するため、1,069億円を確保する。また、一般財源充当分として4億円を計上する。

b 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

この結果、地方債計画(東日本大震災分)における復旧・復興事業の規模は、15億円(普通会計分9億円、公営企業会計等分6億円)とする。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、地方自治法に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費並びに地方税法等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費2,987億円を計上する。

(イ)全国防災事業

全国防災事業については、地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜令和5年度)による地方税の収入見込額として768億円を計上するとともに、一般財源充当分として254億円を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した令和4年度の地方財政計画は、第60表のとおりとなっており、その規模は、通常収支分は90兆5,918億円で、前年度と比べると7,858億円増(0.9%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が2,987億円で、前年度と比べると341億円減(10.2%減)、全国防災事業が1,023億円で、前年度と比べると67億円減(6.1%減)となっている。

また、令和4年度の地方債計画の規模は、通常収支分が10兆1,799億円(普通会計分7兆6,077億円、公営企業会計等分2兆5,722億円)で、前年度と比べると3兆4,574億円減(25.4%減)となっている。東日本大震災分は、復旧・復興事業が15億円(普通会計分9億円、公営企業会計等分6億円)で、前年度と比べると4億円増(36.4%増)となっている。

(3)公営企業等に関する財政措置

ア 公営企業

(ア)通常収支分

公営企業については、経営基盤の強化を図るとともに、水道、下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

このため、令和4年度においては、次のような措置を講じることとしている。

公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆4,349億円(前年度2兆4,430億円)を計上する。

公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆5,722億円(前年度2兆3,965億円)を計上する。

各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 公営企業会計の更なる適用の推進について、重点事業としている下水道事業及び簡易水道事業について、人口3万人未満の地方公共団体においても令和5年度までに公営企業会計に移行するなど、公営企業会計の適用が円滑に実施されるよう、適用に要する経費や、市町村に対して都道府県が行う支援に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じる。なお、簡易水道事業における高料金対策及び下水道事業における高資本費対策に係る地方交付税措置について、人口3万人以上の地方公共団体は令和3年度から公営企業会計の適用を要件に加えている。

b 水道事業については、多様な広域化を推進するため、各都道府県において令和4年度末までに「水道広域化推進プラン」を策定するよう要請しており、同プランの策定に要する経費や、広域化に伴う施設の整備費等について、引き続き地方財政措置を講じる。

また、簡易水道事業を統合した上水道事業について、適切な更新投資を行うことが経営上困難とみられる場合、必要な更新投資を可能とし、持続的な経営を確保するため、旧簡易水道施設の建設改良事業について、引き続き地方財政措置を講じる。

c 下水道事業については、施設の統廃合をはじめとした広域化を推進するため、各都道府県において令和4年度末までに「広域化・共同化計画」を策定するよう要請しており、公共下水道・集落排水の流域下水道への統合や同一下水道事業内の処理区の統合に係る施設の整備費等に対する地方財政措置を拡充するとともに、事業統合を行なった下水道事業に対する高資本費対策に係る地方交付税措置について、統合後の激変緩和措置の適用期間を拡充する。このほか、「広域化・共同化計画」の策定に要する経費について、引き続き地方財政措置を講じる。

d 病院事業については、令和3年度末までに「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」を策定し、地方公共団体に対して、令和4年度又は令和5年度中の「公立病院経営強化プラン」の策定を要請する予定である。また、地方公共団体が「公立病院経営強化プラン」に基づき公立病院の経営強化に取り組めるよう、公立病院の機能分化・連携強化に伴う施設・設備の整備費等に係る病院事業債(特別分)を拡充・延長するとともに、公立病院等の医師派遣等に係る特別交付税措置について、看護師等医療従事者の派遣及び診療所への派遣の追加、派遣元病院に対する措置の拡充を行う。

併せて、公立病院等の施設整備費に対する地方交付税措置の対象となる建築単価の上限を引き上げるとともに、令和3年度に講じた不採算地区病院等に対する特別交付税措置の拡充を令和4年度においても継続する。

(イ)東日本大震災分

公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対しては、その全額を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において0.33億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分6億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険制度については、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」に基づき、都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となったが、国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)都道府県が、都道府県内の市町村の財政の状況その他の事情に応じた財政調整を行うため、国民健康保険法第72条の2に基づき、一般会計から当該都道府県の国民健康保険に関する特別会計に繰り入れられる都道府県繰入金(給付費等の9%分)については、その所要額(6,187億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)国保被保険者のうち低所得者に係る保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,389億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)国保被保険者のうち未就学児に係る保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(40億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(2,590億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(1,295億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)高額医療費負担金(3,682億円)については、都道府県国保に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、都道府県国保1/2)を負担することとし、地方負担(920億円)について地方交付税措置を講じる。

(カ)国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(キ)国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国保被保険者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(476億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、都道府県国保1/3)を負担することとし、地方負担(159億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である後期高齢者医療広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)ため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(3,412億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)高額医療費負担金(3,723億円)については、後期高齢者医療広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、後期高齢者医療広域連合1/2)を負担することとし、地方負担(931億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金(201億円)に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、後期高齢者医療広域連合1/3)を負担することとし、地方負担(67億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)後期高齢者医療広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。

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