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7 地方行政をめぐる動向と地方分権改革の推進

(1)第33次地方制度調査会の発足

令和4年1月に第33次地方制度調査会が発足しており、内閣総理大臣の諮問に基づき、社会全体におけるデジタル・トランスフォーメーションの進展及び新型コロナウイルス感染症対応で直面した課題等を踏まえ、ポストコロナの経済社会に的確に対応する観点から、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の関係その他の必要な地方制度のあり方について、現在、調査審議が行われている。

(2)多様な広域連携の推進

第32次地方制度調査会答申(令和2年6月26日)を踏まえ、2040年頃にかけて顕在化する人口構造等の変化やリスクに的確に対応し、持続可能な形で行政サービスを提供していくため、地方公共団体間の多様な広域連携を推進する。そのためには、地方公共団体が、それぞれの地域における長期的・客観的な変化・課題の見通し(「地域の未来予測」)を作成し、これを踏まえ、定住自立圏・連携中枢都市圏や、相互補完的・双務的な役割分担に基づく連携など、地域の実情に応じた広域連携を検討していくことが考えられる。

ア 定住自立圏構想の推進

「定住自立圏構想」とは、人口5万人程度以上の中心市と近隣市町村が連携・協力し、「生活機能の強化」、「結びつきやネットワークの強化」及び「圏域のマネジメント能力の強化」を行うことにより、圏域全体で必要な生活機能を確保し、地方圏への人口定住を促進する政策であり、平成21年度から全国展開を行っている。

令和4年1月現在では、140市が中心市として圏域を形成する意思を宣言し、130の圏域(延べ545市町村)が形成されるなど、全国で着実に定住自立圏構想による取組が進んでいる。

イ 連携中枢都市圏構想の推進

「連携中枢都市圏構想」とは、地域において、相当の規模と中核性を備える圏域の中心都市が近隣の市町村と連携し、コンパクト化とネットワーク化により「経済成長のけん引」、「高次都市機能の集積・強化」及び「生活関連機能サービスの向上」を行うことにより、人口減少・少子高齢社会においても一定の圏域人口を有し活力ある社会経済を維持するための拠点を形成する政策であり、平成26年度から全国展開を行っている。

令和4年1月現在では、36市が中心都市として圏域を形成する意思を宣言し、34の圏域(延べ330市町村)が形成されるなど、全国で着実に連携中枢都市圏構想による取組が進んでいる。

ウ 定住自立圏・連携中枢都市圏以外の市町村における広域連携の推進

核となる都市がなく、規模・能力が同程度の市町村が複数存在するような地域においても、共同で「地域の未来予測」を整理すること等を通じ、安定的・継続的な広域連携の取組によって必要な行政サービスを提供していくことが重要である。

そこで、定住自立圏・連携中枢都市圏以外の核となる都市のない地域等においても、相互補完的・双務的な役割分担に基づく広域連携を進めやすくするため、その前提となる「地域の未来予測」について、広域連携を目指す複数の地方公共団体が共同で作成するための経費や、それに基づく施設の共同利用等に向けた取組に要する経費について、令和4年度から特別交付税措置を講じることとしている。

(3)地方公務員行政に係る取組

ア 定年の引上げ

地方公務員の定年の引上げは、少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少する我が国において、複雑高度化する行政課題へ的確に対応するために、能力と意欲のある高齢期の職員が、知識・経験を活かして活躍できるようにすることで、若手を含めた全ての職員が能力を存分に発揮できる環境を整えるとともに、質の高い行政サービスを維持していくことを目的に実施するものである。

地方公務員の定年については、令和3年6月に成立した「地方公務員法の一部を改正する法律」(令和3年法律第63号)により、国家公務員と同様、令和5年4月1日以降、60歳から65歳まで段階的に引き上げられることに合わせ、役職定年制や定年前再任用短時間勤務制の導入など、国家公務員と同様の措置を講じることが予定されている。

各地方公共団体においては、役職定年制等に係る条例等の規定の整備や、今後増加する高齢期職員の活躍のあり方の検討等の準備を進め、円滑な制度施行に取り組む必要がある。

イ 働き方改革

地方公務員の働き方改革は、多様な人材の確保や質の高い行政サービスの提供のためにも重要であり、それぞれの地方公共団体において取組が進められている。今後も、時間外勤務の上限規制の適切な運用や職員の健康確保措置の強化に取り組むほか、育児休業や各種休暇などの取得促進やテレワークの導入・活用による柔軟な働き方の推進などの取組をより一層推進していく必要がある。

ウ その他

地方公務員の給与水準及び職員数については第1部で述べたとおりであるが、地方公共団体の厳しい財政状況の下、住民への説明責任を果たす見地からも、給与情報等公表システムにより給与及び定員の公表を行うなど、給与の適正化や適正な定員管理などの取組を行っている。

また、令和2年度に導入された会計年度任用職員制度に係る任用や給与決定などの施行状況については、任用根拠の明確化や勤務条件の改善など、概ね、制度の趣旨に沿った運用が図られているが、一部にまだ対応が十分でない地方公共団体もあり、こうした団体においては、必要な適正化を図る必要がある。

(4)地方分権改革の推進

ア 地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和に係る取組

地方分権改革については、「地方分権改革推進法」(平成18年法律第111号)による地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。いわゆる「第1次地方分権一括法」)以降、地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)について、具体的な改革が積み重ねられてきた。

平成26年には、これまでの成果を基盤とし、地方の発意に根差した新たな取組を推進することとして、「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成26年4月30日地方分権改革推進本部決定)により地方分権改革に関する「提案募集方式」を導入し、地方に対する事務・権限移譲や規制緩和に関する地方からの提案を受け付けている。これまで、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成27年法律第50号。いわゆる「第5次地方分権一括法」)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第44号。いわゆる「第11次地方分権一括法」)までの一括法により、地方側の長年の懸案であった農地転用許可の権限移譲や地方版ハローワークの創設をはじめとするさらなる事務・権限の移譲等を行うなど、国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革が推進されている。

また、政府の地方分権改革の推進体制としては、内閣総理大臣を本部長とする地方分権改革推進本部が政策決定機能を担い、地方分権改革担当大臣の下に開催されている地方分権改革有識者会議が調査審議機能を担っている。さらに、地方分権改革有識者会議の下で、提案募集検討専門部会等を開催し、専門的な見地から検討が行われている。

地方分権改革における主な取組は、以下のとおりである。

(ア)事務・権限移譲

地方分権改革においては、地方公共団体、特に住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、地方公共団体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担うことができるようにすることが必要不可欠である。

これまでの地方分権一括法等により、国から地方公共団体への事務・権限の移譲については、看護師など各種資格者の養成施設等の指定・監督等の国(地方厚生局)の事務・権限を都道府県へ移譲する改正や、自家用有償旅客運送の登録、監督等の国(地方運輸局)の事務・権限を希望する市町村へ移譲する改正等が、都道府県から基礎自治体への事務・権限の移譲については、都市計画に関する事務を市町村へ移譲する改正や、県費負担教職員の給与等の負担、定数の決定等に係る権限を道府県から政令指定都市へ移譲する改正等が行われた。

以上のような事務・権限の移譲により、窓口の一本化等による住民の利便性向上、地域課題の解決に資する独自の取組、総合行政の展開による行政の効果的・効率的な運営が進んでいる。

(イ)地方に対する規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)

地方分権を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けを行ってきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施することができるように改めていく必要がある。

義務付け・枠付けの見直しについては、累次にわたる地方分権一括法等により、これまで法令により全国画一的に定められていた保育所や放課後児童クラブの設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任すること等により、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

イ 令和3年の地方からの提案等に関する対応方針

令和3年12月、地方分権改革推進本部及び閣議において、「令和3年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和3年12月21日閣議決定。以下「令和3年対応方針」という。)が決定された。

令和3年対応方針においては、現場の課題に基づく地方からの提案等にきめ細かく対応し、都道府県から市町村への事務・権限の移譲、規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)等を推進することとされている。

令和3年対応方針に盛り込まれた事項のうち、主なものは第111図のとおりである。

第111図 令和3年の地方からの提案等に関する主な対応

令和3年対応方針に盛り込んだ事項のうち、法律の改正により措置すべき事項については、所要の一括法案等を第208回通常国会に提出することを基本とし、現行規定で対応可能な提案については、地方公共団体に対する通知等により明確化することとされている。

地方公共団体に対して一定の方式による計画の策定等を求める手法を用いた国の働きかけの在り方については、地方の自主性及び自立性を高めるための検討を引き続き行う。

また、地方公共団体において、移譲された事務・権限を円滑に執行できるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講じるとともに、マニュアルの整備や技術的助言、研修や職員の派遣などの必要な支援を実施することとされている。

今後とも、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革を着実かつ強力に進めていくこととされている。

ウ 地方税財源の充実確保

各地方公共団体が自らの発想で特色を持った地域づくりを進めていくためには、その基盤となる地方税財源の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を進めることが重要である。

なお、令和4年度税制改正については、令和3年11月16日に、地方財政審議会から、「令和4年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」が提出されるとともに、同年12月24日に「令和4年度税制改正の大綱」が閣議決定された。

以上を踏まえ、地方税制の改正を行うため、第208回通常国会における地方税法等の改正等の所要の措置を講じることとしている。

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