総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和4年版地方財政白書(表紙) > 第3部 > 2 デジタル田園都市国家構想等の推進

2 デジタル田園都市国家構想等の推進

国においては、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)が策定され、令和3年9月にデジタル庁が発足した。また、目指すべきデジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年12月24日閣議決定)が策定された。今後、地域社会全体のデジタル変革を加速させ、活力ある地方を創るためには、「デジタル田園都市国家構想」や地方公共団体のデジタル・トランスフォーメーション(以下「DX」という。)等を推進していく必要がある。

(1)デジタル田園都市国家構想の推進

高齢化や過疎化などの社会課題に直面する地方にこそ、新たなデジタル技術を活用するニーズがあることに鑑み、デジタル技術の活用によって、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するデジタル田園都市国家構想の推進が必要である。

このため、令和3年11月には、内閣総理大臣を議長、関係閣僚及び有識者を構成員とする「デジタル田園都市国家構想実現会議」が設置され、同年12月末には、同構想の実現に向けた当面の具体的施策及び中長期的に取り組んでいくべき施策の全体像が取りまとめられた。

この全体像においては、<1>デジタル基盤の整備、<2>デジタル人材の育成・確保、<3>デジタル実装による地方の課題解決及び<4>誰一人取り残されないための取組の4つの柱を重点に据えて、同構想の実現に向けた取組を進めることとされており、今後、同会議においてさらに議論を行い、令和4年春に具体的な構想を取りまとめることとされている。

また、令和3年度補正予算(第1号)において、デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けて支援する200億円の「デジタル田園都市国家構想推進交付金」が新設され、令和4年度予算において、「地方創生推進交付金」について、新規事業を対象として、デジタル技術の活用・普及を要件として追加等することとしている。

地方公共団体が、地方が抱える課題をデジタル実装を通じて解決し、すべての地域がデジタル化によるメリットを享受できる地域社会のデジタル化を一層推進できるよう、令和3年度に創設した「地域デジタル社会推進費」について、令和4年度においても、引き続き地方財政計画に2,000億円計上している。

さらに、総務省においては、各地方公共団体が地域社会のデジタル化に係る取組を検討・実施する際の参考となるよう、令和3年12月に、医療・福祉・健康、農林水産業など取組分野ごとに、各地方公共団体における取組事例や工夫点等をとりまとめた「地域社会のデジタル化に係る参考事例集」(第109図)を公表している。

第109図 「地域社会のデジタル化に係る参考事例集」(概要)

(2)地方公共団体のDXの推進・マイナンバー制度の利活用の推進等

ア 地方公共団体のDXの推進

総務省が策定した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(令和2年12月25日、以下「自治体DX推進計画」という。)では、地方公共団体が取り組むべき主な重点取組事項として、<1>地方公共団体の情報システムの標準化・共通化、<2>マイナンバーカードの普及促進、<3>地方公共団体の行政手続のオンライン化、<4>地方公共団体のAI・RPAの利用促進、<5>テレワークの推進、<6>セキュリティ対策の徹底を示している。DX推進のために地方公共団体が取り組むべき事項を着実に実施するためには、各地方公共団体において、司令塔としての役割を果たすDX推進担当部門を設置するなど、全庁的・横断的な組織体制の整備やデジタル人材の確保・育成等、推進体制を構築することが望ましい。デジタル人材の確保について、総務省においては、市町村における外部デジタル人材の募集情報を収集の上、総務省ホームページで公表するとともに、協力企業に対し、随時情報提供を実施している。令和3年度からは、市町村がCIO補佐官等として外部人材の任用等を行うための経費について、特別交付税措置を講じている。

また、地方公共団体が、自治体DX推進計画を踏まえて着実にDXに取り組めるよう、「「自治体DX推進手順書」の作成について」(令和3年7月7日付け総務省自治行政局地域情報化企画室長・デジタル基盤推進室長通知)により、DXを推進するに当たって想定される一連の手順を示すほか、自治体DX推進計画等で目標時期等が設定されている情報システムの標準化・共通化及び行政手続のオンライン化については、全地方公共団体において確実に取組を進めることができるよう、詳細な手順を示した。さらに、同通知において、DXの推進体制の整備等について、先行的に行っている地方公共団体の取組事例や工夫点等をとりまとめた「自治体DX推進手順書参考事例集」も周知している。

イ 地方公共団体の情報システムの標準化・共通化

地方公共団体の情報システムの標準化・共通化については、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)に基づき、基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、目標時期である令和7年度までに、同法第5条に基づく基本方針の下で所管府省が作成する標準化基準に適合した「ガバメントクラウド」上に構築されるシステムへ移行できるよう、その環境を整備することとし、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴いて進めることとされている。

また、各地方公共団体がシステムの移行の際に必要となる準備経費や移行経費について、令和7年度まで国が補助を行うこととしている。

ウ マイナンバー制度及びマイナンバーカードの普及・利活用の推進

(ア)マイナンバー制度の意義

マイナンバー制度は、行政の効率化、国民の利便性の向上及び公平・公正な社会を実現するデジタル社会の基盤である。すなわち、所得把握の精度が向上し、真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障の充実、負担・分担の公平性がより一層確保されるとともに、行政の効率化が図られ、限られた行政資源を住民サービスの充実のために、より重点的に配分することが可能となる。

今後、各地方公共団体において業務のICT化などを進め、質の高い行政サービスを効果的・効率的に提供する業務改革に取り組んでいくに当たっては、マイナンバーシステム(マイナンバー制度と関連の各システム)が提供する様々な機能を積極的に活用していくことが不可欠である。

(イ)マイナンバーを活用した情報連携の円滑な運用

マイナンバー制度の重要な根幹が、平成29年11月から本格運用が開始された情報連携である。「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)に基づきデジタル庁が設置・管理する情報提供ネットワークシステムを用いて、国の行政機関や地方公共団体がそれぞれ管理している同一個人の情報をオンラインで情報連携し、相互に活用することが可能である。これにより、令和3年12月時点で児童手当の申請など約2,300の事務手続で情報連携による提出書類等の削減が実現し、行政手続のペーパレス化やワンストップ化の進展に寄与しており、今後も順次、対象事務が増えていくことが予定されている。

(ウ)マイナンバーカード(公的個人認証サービス等)の普及と利活用の推進

マイナンバーカードは、券面による本人確認機能に加え、ICチップに搭載された電子証明書を利用してオンラインでの安全・確実な本人確認を可能とする、デジタル社会の基盤となるツールであり、政府全体で、令和4年度末までにマイナンバーカードが、ほぼ全国民に行き渡ることを目指して取り組んでいる。普及に当たっては、市町村における申請促進や交付体制の強化などの取組が重要となることから、国として、そうした取組に必要な経費に対する支援を行っている。

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、マイナンバーカードの利活用・利便性向上に向けた具体の取組方針と工程表が示され、今後は、これらに基づき、取組を着実に進めることとされている。

また、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)に基づくマイナポイント第2弾(マイナンバーカードを活用して、幅広いサービスや商品の購入などに利用できるマイナポイント(1人当たり最大2万円相当)を付与)について、令和3年度補正予算(第1号)に計上し、マイナンバーカードの普及やキャッシュレス決済の利用拡大を図りつつ消費を喚起し、さらに健康保険証利用や公金受取口座の登録も促進することでデジタル社会の実現を図ることとしている。

(エ)マイナポータルの利用拡大

マイナポータルは、「マイナンバーカードをキーにした、わたしの暮らしと行政との入口」として、地方公共団体へのオンライン申請や、行政機関等が保有する本人情報の閲覧・取得、お知らせの通知などのサービスを提供している。

令和3年5月に、国において全ての地方公共団体がLGWAN(総合行政ネットワーク)を経由してマイナポータルのオンライン申請サービスを利用できる機能を実装した上で、さらには、子育て、介護等の手続について、地方公共団体が独自に申請様式を作成しなくても、あらかじめ登録された申請様式を利用できるようにしており、同サービスの積極的な利用が期待される。

また、マイナポータルを活用した子育て、介護等のオンライン申請の導入を促進するため、市町村において必要となる経費に対し、令和4年度まで国が補助を行うこととしている。

(3)地方創生の推進

地方創生は、出生率の低下によって引き起こされる人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的としており、主な取組は以下のとおりである。

ア 地方創生の取組

(ア)地方創生の動き

将来にわたる活力ある地域社会の実現と、東京圏への一極集中の是正を目的として、平成26年に国の第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成26年12月27日閣議決定)が策定され、これを受け、地方公共団体が「地方版総合戦略」を策定し、地方創生の取組が進められてきた。こうした取組の結果、地方の若者の雇用の改善など、一定の成果が現れてきたものの、依然として東京圏への一極集中の傾向は続いていることから、第1期の成果と課題の検証を踏まえ、第2期(令和2年度から令和6年度まで)の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(令和元年12月20日閣議決定)が策定された。

その後、新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の2020改訂版(令和2年12月21日閣議決定)が策定された。今般の感染症が都市部を中心に拡大したこともあり、東京圏等への人口集中のリスクが改めて浮き彫りになり、地方への移住や就業に対しての国民の関心が高まるとともに、東京圏から地方へのひとの流れが見られるようになっており、地方創生の観点から、今後こうした動きを持続的なものにすることが重要であるとされた。

地方公共団体においても、第2期における地方版総合戦略が策定され、各地域の実情に即した切れ目ない地方創生の取組が推進されている。

(イ)地方の取組への支援

このような中、国においては、地方版総合戦略に基づく地方公共団体の取組を支援している。

令和3年度補正予算(第1号)においては、460億円の地方創生拠点整備交付金等が計上された。

また、令和4年度予算においては、地方創生推進交付金について引き続き1,000億円が計上されるとともに、一定の条件下で東京23区に在住又は通勤する者が東京圏外に移住した場合に支給される移住支援金について、18歳未満の子を帯同して移住する世帯に対する加算を新たに行うこととされている。

さらに、地方公共団体が地域の実情に応じ、自主的・主体的に地方創生に取り組むことができるよう、平成27年度以降、地方財政計画に計上している「まち・ひと・しごと創生事業費」について、令和4年度においても引き続き1兆円を計上している。

イ 活力ある地方創り

新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中で、東京圏等への人口集中のリスクが改めて浮き彫りになるとともに、テレワークが新しい働き方として広く認知されたこと等により、地方への移住に対する関心も高まるなど、国民の意識・行動に変化が生じてきている。この機を捉え、地方への新たな人の流れを強化し、子どもを産み、育てやすい、支えあう地域社会を実現するとともに、自立分散型地域経済の構築を図ることにより、活力ある地方を創出するため、特に以下の施策を推進することとしている。

(ア)地方への新たな人の流れの強化

a 地域おこし協力隊による地域への人材還流の促進

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住し、一定期間以上、当該地域に居住して、地場産品の開発・販売・PRなど地域おこしの支援に向けた各種の地域協力活動に従事する取組である。令和2年度には、全国1,065の地方公共団体で5,560人の隊員が活動している。

こうした中、令和6年度に隊員数を8,000人とする目標の達成に向け、令和3年度には、隊員希望者が2週間から3ヶ月間実際の地域協力活動に従事することができる「地域おこし協力隊インターン」を創設するなど、地域おこし協力隊制度の拡充を行っている。

さらに、令和4年度から、新型コロナウイルス感染症の影響により、十分に活動が行えなかった隊員を対象に、その活動に要する経費に係る特別交付税措置の対象期間を2年延長し、5年を上限とすることができることとしている。また、任期終了後の起業・事業承継に要する経費については、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、特別交付税措置の対象期間を、令和3年度から1年間延長したところであるが、令和4年度も引き続き同様の措置を講じることとしている。

b 地域活性化起業人

地域活性化起業人制度は、地方公共団体が、三大都市圏に所在する民間企業等の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る取組に要する経費について特別交付税措置を講じるものであり、引き続き、制度の活用を推進していくこととしている。

c 地域プロジェクトマネージャー

地域活性化に向けたプロジェクトを実施する際には、外部専門人材、地域、行政、民間などが連携して取り組むことが不可欠だが、令和3年度から、そうした関係者間を橋渡ししつつプロジェクトをマネジメントできる「ブリッジ人材」を、地方公共団体が「地域プロジェクトマネージャー」として任用するための経費について特別交付税措置を講じており、引き続き、制度の活用を推進していくこととしている。

d 関係人口の創出・拡大

特定の地域に継続的に多様な形で関わる関係人口の創出・拡大に向けて、令和3年度からは、「関係人口ポータルサイト」等を通じて、先進的な取組を通じて得られた知見の横展開を図るとともに、地方公共団体の関係人口創出・拡大の取組に対して地方交付税措置を講じることにより、全国各地での取組の実装化を図ることとしている。

e 若者定着に向けた地方大学の振興等

若年層を中心として地方から東京圏に人口が流出している中、地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくるため、平成27年度から内閣官房、総務省、文部科学省が連携し、「奨学金を活用した大学生等の地方定着の促進」及び「地方公共団体と地方大学の連携による雇用創出・若者定着の促進」を実施している。前者については、令和4年度からは、過疎地域等の条件不利地域を含む市町村については、若年層人口が流入超過の都道府県の区域内においてもそれ以外の区域と同水準の特別交付税措置となるよう、拡充を行うこととしており、取組の更なる普及を推進することとしている。

(イ) 地域資源を活かした自立分散型地域経済の構築

a ローカル10,000プロジェクト

「ローカル10,000プロジェクト」においては、地域の金融機関から融資を受けて事業化に取り組む民間事業者が、事業化段階で必要となる初期投資費用に対し、地方公共団体が助成を行う経費の全部又は一部を国が補助することとし、産学金官連携による取組を推進している。

令和4年度からは、新たに、脱炭素に資する地域における再生エネルギーの活用等に関連する事業について、重点支援の対象に加え、国費による補助を拡充している。

b 分散型エネルギーインフラプロジェクト

「分散型エネルギーインフラプロジェクト」では、バイオマス、廃棄物等の地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げるマスタープランを策定する地方公共団体を支援している。

令和2年度末までに58団体がマスタープランを策定しており、引き続き、関係省庁タスクフォースと連携して、マスタープランの策定支援や、事業化までのアドバイスを実施するとともに、令和4年度からは、地域に不足している専門家の紹介、その専門家を招へいする際に必要となる費用を支援するなど、事業化に向けた支援を行うこととしている。

c 特定地域づくり事業の推進

「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」(令和元年法律第64号)に基づき都道府県の認定を受けた特定地域づくり事業協同組合の運営費等を支援する地方公共団体を対象に、国が補助を行うとともに、これに伴う地方負担等について特別交付税措置を講じることとしている。令和3年12月末時点において、全国で30組合が認定を受けている。

ウ 過疎対策の推進

過疎地域は、食料、水及びエネルギーの安定的な供給、自然災害の発生の防止、生物の多様性の確保その他の自然環境の保全、多様な文化の継承、良好な景観の形成等の多面にわたる機能を有し、これらが発揮されることにより、国民の生活に豊かさと潤いを与え、国土の多様性を支えている。

東京圏への人口の過度の集中により大規模な災害、感染症等による被害に関する危険の増大等の問題が深刻化する中、過疎地域の担うべき役割は一層重要なものとなっている一方、人口減少、少子高齢化の進展等他の地域と比較して厳しい社会経済情勢が長期にわたり継続し、地域社会を担う人材の確保、地域経済の活性化、情報化、交通機能や医療提供体制の確保、教育環境の整備、集落の維持、農地、森林等の適正な管理等が喫緊の課題となっている。

令和3年3月、過疎地域の持続的発展に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」が第5次過疎対策法(令和3年法律第19号)として制定され、同年4月から施行されている。同法に基づき、「人口要件」及び「財政力要件」を満たす市町村が過疎地域とされ、過疎対策事業債や国庫補助率の嵩上げ等の特例措置が講じられている。

令和3年4月1日現在、過疎関係市町村は820市町村、過疎関係市町村の全市町村に占める割合は47.7%となっている。なお、令和4年度より、令和2年国勢調査結果に基づき過疎地域の追加が予定されている。

令和4年度においては、過疎対策事業債について、公共施設の老朽化対策の推進等のため、地方債計画に対前年度200億円増の5,200億円を計上するとともに、過疎地域における人材の育成や、ICT等技術を活用した取組等を支援する過疎地域持続的発展支援交付金について、対前年度0.2億円増の8.0億円を予算計上している。

ページトップへ戻る