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子どもの健やかな成長を支え
地域住民の命を守る学校の情報化

写真:鳴門教育大学遠隔教育プログラム推進室長 大学院学校教育研究科准教授 藤村 裕一(ふじむら ゆういち)氏

藤村 裕一(ふじむら ゆういち)
(鳴門教育大学遠隔教育プログラム推進室長
大学院学校教育研究科准教授)

1 子どもの学びを支える授業の情報化

 一昔前、学校の情報化と言えば、小学生が年に数回パソコン教室で学んだり、中学校の技術家庭科でコンピュータやインターネット等について学んだりという程度でした。
 しかし、学習指導要領の改訂により2003年から高等学校で普通教科「情報」が必修化され、誰もがコンピュータやインターネットなどのICTや情報モラル・情報化社会の在り方について学ぶようになりました。
 さらには、2009年度には補正予算による「スクールニューディール」構想によって、すべての普通教室にパソコンを接続可能な50インチ以上の大画面デジタルテレビと校内LAN、学校に1台の電子黒板、教員に1人1台の校務用パソコンが全国の多くの地域で整備されました。これにより、学校の情報化が一気に進むことになったのです。先生方は、これらのICT機器を活用し、「楽しくよくわかる授業」を行い、子どもたちの学力を向上させようと努めています。

写真:電子黒板、デジタル教科書、実物投影機が整備された足代小の教室

電子黒板、デジタル教科書、実物
投影機が整備された足代小の教室

写真:1人1台配布されたタブレット端末を活用して学ぶ子ども

1人1台配布された
タブレット端末を活用して学ぶ子ども


 上の写真は、平成22年度から3か年にわたって、総務省がおこなった「フューチャースクール推進事業」の実証校・徳島県東みよし町立足代小学校の様子です。すべての児童が1人1台のタブレット端末を使い、全教室で電子黒板、実物投影機、デジタル教科書等を使って教育の質的改善に大いに寄与しました。
 しかし、表1のように全国から四国に目を転じてみると、各県・市町村で大きな差があることがわかります。さて、皆さんの地域の学校にはこれらがちゃんと整備されているでしょうか。もし、まだの地域がありましたら、これらのICT機器をお住まいの地域の子どもたちや先生方が使ってよりよい学びが実現できるよう、教育委員会や学校を応援していただければ幸いです。

表1 四国の小学校における県別ICT整備状況
(「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」文部科学省平成25年3月1日現在)

表:都道府県別「コンピュータの設置状況」及び「インターネット接続状況」の実態(小学校)(平成25年3月1日現在)
都道府県別 学校数 教育用
コンピュータ
総台数
教育用
コンピュータ
1台当たりの
児童生徒数
一学校あたりの
電子黒板の
整備台数
電子黒板の
ある
学校の割合
(小学校) 人/台 台/校
徳島県 190 8,164 4.7 3.2 88.9%
香川県 176 9,315 5.8 1.9 88.1%
愛媛県 322 11,580 6.4 1.7 94.7%
高知県 208 5,604 6.5 1.4 76.0%
合計 20,791 890,349 7.5 2.2 81.2%

都道府県別 普通教室の
LAN
整備率
インターネット
接続率
(光ファイバ回線)
インターネット
接続率
(30Mbps以上
回線)
教員の校務用
コンピュータ
整備率
(小学校)
徳島県 97.0% 70.0% 67.9% 91.1%
香川県 95.2% 77.3% 63.6% 107.2%
愛媛県 79.4% 96.3% 91.0% 119.7%
高知県 50.0% 65.9% 90.9% 106.3%
合計 82.5% 76.1% 74.8% 105.8%

 
注1)「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」とは、平成24年5月1日現在の児童生徒数を「教育用コンピュータ総台数」で除したものである。
注2)「普通教室のLAN整備率」は、全普通教室数のうち、LANに接続している普通教室数の割合としている。
注3)「教員の校務用コンピュータ整備率」は、「教員の校務用コンピュータ台数」を教員数で除したものである。
 

2 地域住民の命を守る学校の情報化

 2011年の東日本大震災をきっかけに、四国地方が東海・東南海・南海の3連動地震で被災する可能性が高いことがクローズアップされてきています。東日本大震災の際には、学校が広域避難場所となり、地域住民の命と生活を守ってきました。

写真:避難所の重要な情報源・大画面テレビ

避難所の重要な情報源・大画面テレビ
  

 
 たとえば、多くの学校が電話の音声通話で連絡しようにも電話がつながらず数日たっても安否確認できなかったのに対して、教職員の業務を情報化する「校務支援システム」の一環として携帯メールにも対応した「緊急連絡網システム」を導入していた学校では、非常時でも携帯メールは利用可能であったために、その日のうちに児童・生徒と家族の安否を確認することができました。各教室に設置されていた大画面デジタルテレビは、避難者の貴重な情報源となりました。
 また、被災直後家族を探すためには避難所となった学校等を徒歩で回って手書きの避難者名簿を探すしかありませんでしたし、被災後しばらくたってからは「紙おむつや下着、生理用品などが欲しいのに、毛布や飲料水ばかりが届く」など、いわゆる「支援物資のミスマッチ」などといった問題も発生しました。
 

 そこで、普段から学校ホームページを誰でもワープロ感覚で更新できるCMS(Contents Management System)が整備されていれば、電源復旧後すぐに避難者名簿を公開できますし、必要な物資も発信することができます。

写真:津波で端末・書類が流出した職員室

津波で端末・書類が流出した職員室
  

 
 電源についても、西宮市では阪神大震災の教訓を生かし、すべての学校に非常用発電機を設置していますし、最近では学校の屋上を民間事業者に貸し出してソーラー発電機を設置させ、非常時には学校でそれを非常用電源として利用できる契約を結んで、非常用電源を確保しようとする動きもあります。
 また、これらの「校務支援システム」のサーバを従来のように各学校に設置すると、地震や津波、火災等によって破壊・流出・焼失する恐れがあるため、現在では香川県立学校の「校務支援システム」のように、地震・津波・火災にも耐え、高度なセキュリティも確保されたる民間の強固なデータセンターで運用する「教育クラウド」を利用するようになってきています。
 
 さらには、学校にWebカメラを設置し、災害対策本部で被災状況や避難所の様子を把握できるようにしているところもあります。
 このように、広域避難所である学校を情報化することは喫緊の課題です。しかし、それらの情報システムを災害時しか使わないのはもったいなく思われますが、学校ではそれらの情報システムを、平常時は学校教育で有効活用することができます。
 教育予算だけでなく、防災予算も使って学校のICT環境を整備し、「非常時は学校の情報システムを避難所として活用」し、「平常時は学校教育で有効活用」するというのが、今後の有効な整備像となるでしょう。
 「子どもの健やかな成長を支え、地域住民の命を守る学校の情報化」を、お住まいの地域でも積極的に進めていただければ、誠に幸いです。

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