昭和60年版 通信白書

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4 拡充する放送

(1)全国放送網の充実

 放送は,即時かつ同時に,しかも経済的に情報の伝達が可能なことから,代表的マス・メディアの一つとして,今日,国民生活に不可欠なものとなっている。
 (放送の種類及び放送事業者の拡大)
 我が国の放送は,大正14年の中波放送開始以来60年を迎えた。この間,昭和28年にはテレビジョン放送,35年にはテレビジョン放送のカラー化,44年にはFM放送がそれぞれ開始され,さらに最近では,57年にテレビジョン音声多重放送,58年にはテレビジョン文字多重放送(実用化試験放送),59年には衛星放送(試験放送)が開始されるなど,目覚ましい発展を遂げてきた。
 また,放送事業者については,25年のいわゆる電波3法(電波法,放送法,電波監理委員会設置法)の施行によって,NHKのほか民間放送事業者による放送の実施が可能となり,59年度末現在,民間放送事業者数は129社に達している。
 (テレビジョン放送の多局化の進展)
 テレビジョン放送の全国普及のため,郵政省では,順次多局化を進めており,59年度においては,これまで民間放送3チャンネル地域であった長野県及び熊本県を4チャンネル化した。
 59年度末現在,民間放送4チャンネル以上,NHKと併せて6チャンネル以上見られる世帯は,全国全世帯の約80%となっている。
 (FM放送の新展開)
 FM放送については,クリアな音質が得られステレオ放送が可能であることから,この特質を生かした放送が全国的に実施できるよう周波数の割当てを行ってきた。
 その結果,NHKについては,全国で聴取できるようになっている。
 一方,民間放送については,60年6月末現在,41都道府県について周波数割当てを行っている。このうち,16都道府県で放送が実施されており,さらに60年内に5県で放送が開始される予定である。また,残りの20県でも順次放送が実施されることになっている。
 なお,まだ周波数の割当てが行われていない6県については,できる限り早期に放送が実施できるよう検討を進めている。
 また,今後,周波数事情,経営基盤,放送需要,さらには音声放送の全体的な在り方等を考慮しつつ,FM放送の多局化を進めていくこととし,差し向き大都市地区等における多局化を図ることとしている。
 (放送局数の増加と難視聴解消の進展)
 NHKのテレビジョン放送は27年度末に開始され,翌28年度末には,局数は3局,カバレージは33%にまで引き上げられ,32年度末には,局数は18局と増加し,カバレージも57%となった。NHKは,30年代から40年代にかけて3次にわたる長期計画の下に置局を進め,39年度末には,カバレージは90%に達した。その後,50年代にはいっても,局数は着実な増加を続け,59年度末現在6,916局となっている。
 一方,民間放送のテレビジョン放送は,28年8月の放送開始以来,毎年ほぼ順調に置局が進められ,特に,50年代にはいってから,急激な増加を示し,59年度末現在6,068局となっている。
 こうした置局の拡充の結果,59年度末現在,地上テレビジョン放送の辺地難視聴世帯数は,NHKについては約42万世帯,民間放送については約108万世帯と推定されており,10年前に比べそれぞれ49万世帯,122万世帯減少している。
 なお,NHKのテレビジョン難視聴については,衛星放送により全国的規模で解消を図ることとし、59年5月,試験放送が開始されたところである。
 また,中波放送については,大正14年に放送が開始されて以来,国民生活に不可欠なものとして置局が進められてきている。59年度においては,外国放送による混信等の難聴を解消するため,郵政省は,NHK及び民間放送の19局に関し,中継局の開設,周波数の変更等が可能となるよう措置するとともに,小電力中継局の導入に向けて調査研究を開始した。

(2)国民生活に定着する放送

 (放送時間と視聴時間)
 1日当たり平均放送時間についてみると,NHKのラジオ(中波第1放送)は放送開始以来、急速に伸び,昭和30年代の初めにおいて,現在と同じ水準の19時間に達している。一方,テレビジョン(総合)は,ラジオ以上に急激な伸びを示し,48年の石油危機の影響を受けて一時若干の短縮があったものの,現在,ほぼ18時間となっている。
 また,民間放送においても,60年現在(1〜3月平均),ラジオ放送(中波放送,短波放送及びFM放送の平均)が22時間24分,テレビジョン放送が18時間22分となっている。
 このように,現在,生活時間のほぼあらゆる時間帯において放送が行われており,いつでも放送に接し得る状況にある。
 一方,NHKが59年11月に行った「全国視聴率調査」によれば,テレビジョン放送(NHK及び民間放送)に対する国民の接触者率(テレビジョン放送を少しでも見た人の割合)は,平日89%とほとんどの国民が何らかのかたちでテレビジョン放送を見ていることを示している。また,1日の平均視聴時間も,3時間6分となっており,国民生活において大きな位置を占めている。
 ラジオ放送に対する国民の接触者率は,平日31%であり、テレビジョン放送に比較して国民の接触者率は低く,聴取時間も40分と少ないが,聴取者態様の変化に対応することによって,安定した聴取状態を保っている。
 (移り変わる放送番組)
 第2-2-19図は,テレビジョン放送の放送時間に占める報道番組の割合の推移をみたものである。報導番組に対する国民のニーズは大きく,この10年間,NHKは高い割合を維持している。また,民間放送はほぼ一貫して上昇傾向がみられる。

(3)緊急警報放送システムの導入

 (緊急警報放送システムの概要)
 放送は,災害情報の伝達に極めて有効なものであり,これまでも大きな役割を果たしてきた。緊急警報放送システムは,こうした災害情報の伝達における放送の効用を一層高めるために開発されたものである。
 その概要は,受信者が緊急警報受信機を用意し,あらかじめ待受受信の状態にしておけば,ラジオ放送(中波,短波,FM),テレビジョン放送あるいはテレビジョン音声多重放送による災害に関する放送の前に放送局が緊急警報信号を送ることにより,自動的に警報音が発生し引き続く放送が受信できるものである(第2-2-20図参照)。
 郵政省は,57年12月に電波技術審議会(現在の電気通信技術審議会)からシステムの技術的条件について答申を受けて以来,防災関係機関,放送事業者を含めて運用の在り方を検討してきたが,60年6月,導入のための制度面の整備として関係省令を改正し,実用化への途を開いたところであり,9月1日,NHK及び一般放送事業者の一部により運用が開始された。
 本システムの導入によって,放送終了後の深夜や,日中でも視聴者が放送を視聴していないときにおける災害情報に関する放送の受信がより確実なものになると期待される。
 なお,郵政省では,緊急警報受信機の良好な動作を確保し,災害に関する放送のより確実な受信に資することを目的として「緊急警報受信機に関する推奨基準」を明らかにしたところであり,今後,関係機関とともに受信機の普及を促進していくこととしている。

(4)放送大学学園が放送開始

 (スタートした放送大学)
 高度情報社会における生涯教育・学習機関として,放送大学学園法に基づき56年7月に設立されれ放送大学学園は,59年11月1日から60年3月31日までの間,放送大学の概要紹介,授業科目,担当教員,入学手続等に関する番組を予告放送として実施した後,60年4月1日から,1万7千人の学生を受け入れて関東地方を対象に授業放送を開始した。
 放送大学は,だれでも大学教育を身近に受けることができるよう,専用のテレビジョン放送局,ラジオ放送局(FM)を使って授業を行うほか,印刷教材による学習や通信指導,学習センターにおける面接授業等を総合して効果的な大学教育を行うこととしている(第2-2-21図参照)。
 (放送局及び授業放送の対象地域)
 放送大学学園は,東京及び群馬に放送局を開設して,テレビジョン放送及びFM放送の2系統で放送を行うこととし,59年11月1日に東京テレビジョン放送局(第16チャンネルUHF)及び東京超短波放送局(77.1MHz)を,60年1月1日に前橋テレビジョン放送局(第40チャンネルUHF)及び前橋超短波放送局(78.8MHz)を開局した。その電波の到達する範囲が対象地域となっており,おおむね第2-2-22図のとおりである。
 (学生の受入れ状況)
 放送大学学園の60年度第1学期の学生受入れ状況は,男女ほぼ半々となっている。また,年齢別,職業別にみても,学生は広い範囲に及んでいる(第2-2-23図参照)。(5)国際放送の拡充
 国際放送は,我が国の政策,国情等について正確な情報を諸外国に提供し,我が国に対する正しい理解と認識を深めるための有力な手段となっており,また,在外邦人にとっては我が国からの情報を得る手段として重要な役割を果たしている。
 我が国の国際放送は,NHKにより実施されているが,昭和10年に当時の社団法人日本放送協会により,海外放送として北米西部・ハワイ向けに1日1時間の放送を開始したのが最初であり,その後,第二次大戦後の中断を経て,27年2月に再開し今日に至っている。
 NHKの行う国際放送は,郵政大臣の命令によるものとNHKの業務として行うものからなっており、放送に当たっては両者を一体として行い,放送効果の向上を図っている。
 (放送番組等の充実)
 放送の再開当時,5区域であった放送区域は,その後順次拡大され,59年度現在,18区域に向けた「地域向け放送」と世界全区域に向けた「一般向け放送」が行われている。また,使用言語についても,日本語及び英語の2言語であったものが,21言語となっており,放送区域に合わせたきめ細かな番組の編成がなされている(第2-2-24表参照)。
 (送信体制の拡充強化)
 国際放送の果たすべき役割は,国際社会における我が国の地位役割の向上に伴い,ますます大きなものとなってきている。このため,59年4月からは,一般向け放送の放送時間を1日3時間延長し16時間30分として,地域向け放送と併せて1日40時間に拡充した。また,54年10月からはポルトガルのシネス送信所を利用して1日1時間,59年4月からはガボン共和国のモヤビ送信所を利用して1日6時間の中継放送を行っている。
 これらの施策に加えて,送信体制の強化を図るため,59年度から4か年計画でKDD八俣送信所の国際放送専用設備の整備拡充を図っているところである。(5)国際放送の拡充
 国際放送は,我が国の政策,国情等について正確な情報を諸外国に提供し,我が国に対する正しい理解と認識を深めるための有力な手段となっており,また,在外邦人にとっては我が国からの情報を得る手段として重要な役割を果たしている。
 我が国の国際放送は,NHKにより実施されているが,昭和10年に当時の社団法人日本放送協会により,海外放送として北米西部・ハワイ向けに1日1時間の放送を開始したのが最初であり,その後,第二次大戦後の中断を経て,27年2月に再開し今日に至っている。
 NHKの行う国際放送は,郵政大臣の命令によるものとNHKの業務として行うものからなっており、放送に当たっては両者を一体として行い,放送効果の向上を図っている。
 (放送番組等の充実)
 放送の再開当時,5区域であった放送区域は,その後順次拡大され,59年度現在,18区域に向けた「地域向け放送」と世界全区域に向けた「一般向け放送」が行われている。また,使用言語についても,日本語及び英語の2言語であったものが,21言語となっており,放送区域に合わせたきめ細かな番組の編成がなされている(第2-2-24表参照)。
 (送信体制の拡充強化)
 国際放送の果たすべき役割は,国際社会における我が国の地位役割の向上に伴い,ますます大きなものとなってきている。このため,59年4月からは,一般向け放送の放送時間を1日3時間延長し16時間30分として,地域向け放送と併せて1日40時間に拡充した。また,54年10月からはポルトガルのシネス送信所を利用して1日1時間,59年4月からはガボン共和国のモヤビ送信所を利用して1日6時間の中継放送を行っている。
 これらの施策に加えて,送信体制の強化を図るため,59年度から4か年計画でKDD八俣送信所の国際放送専用設備の整備拡充を図っているところである。

窮2-2-19図 テレビジョン放送の放送時間に占める報道番組の割合

第2-2-20図 緊急警報放送システムの概要

第2-2-21図 放送大学の概要

第2-2-22図 授業放送の対象地域

第2-2-23図 学生の属性別分布状況

第2-2-24表 一般向け放送番組時刻表例

 

 

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