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(別記1) 大阪国際空港騒音調停申請事件の一部調停について

大阪国際空港騒音調停申請事件の一部調停について
公害等調整委員会調停委員会
昭和50年9月8・9日

 申請人らの本件調停申請事項の趣旨は、第1に本件空港のいわゆる撤去を、第2に本件空港に係る航空機騒音の軽減を、そして第3に一部の申請人を除き損害賠償金の支払いをそれぞれ求めるものであるが、これらを一括して早急にその解決を図ろうとすることは以下に述べる諸事情により極めて困難な実状にあるものと考えられる。
 ところで当委員会は、申請人らにとって、現に受けている航空機騒音の影響をできるだけ早く軽減することが現時点において何よりも緊要であると思料し、調停申請事項のうち第1と第3の事項をしばらくおき、第2の事項である本件空港に係る航空機騒音の軽減について調停を行うこととした。以下これを具体的に述べる。

(1)本件調停申請事項の第1である本件空港のいわゆる撤去の問題については次の事情が存在する。
 ア 申請人らの受けている航空機騒音の影響を抜本的に解決することに関連して、新関西国際空港の位置及び規模について航空審議会から答申(昭和49年8月13日)がなされ、被申請人は当該答申の主旨に沿って諸種の調査特に環境事前評価のための調査を進めているが、これにはなお相当の時日を要するものであり、更にその後における空港及び関連諸施設の完成に要する相当長期にわたる期間を考慮すれば、新空港の開港の目途については現段階において、にわかに明確にすることができない状況にある。
 イ 近畿圏において国際空港の性格をもつ空港が広域根幹施設として必要であることは何人といえども否定できず、現状においてその役割を果たしているものはほかならぬ本件空港であることは明らかである。したがって、今日多数の住民から本件空港の立地条件に欠陥があるとして空港の撤去、航空機騒音軽減等を求める調停申請が当委員会になされており、本件空港とその地域住民の生活環境との調和を可及的速やかに図るべく国が特段の対策を施さなければならない状況にあるとはいえ、そのことだけで新空港の設置の目途がつかないままで本件空港を比較的短期間内に廃止することを現時点において結論づけようとすることは、本件空港の現に果たしている役割に鑑みても無理な状況にある。
 ウ 新関西国際空港と本件空港の将来のあり方との関連について、被申請人は、「新空港の開設時点でこれを撤去することをも含めて検討すること」としているが、この問題は、新関西国際空港の機能、今後のわが国経済の進展、国民生活の向上発展等あるいは京阪神地域を中心とする近畿圏におけるそれらの事情とも密接に関連し、更には国全体としての総合交通体系全般の問題とも関連するので、周辺地域における望ましい生活環境との調和の可能性を考慮しつつ、言わば高度の政治的課題として地域住民の意向をも含めて国民的合意によって決定しなければならない性質のものである。当委員会としては、これらの諸事情を総合的に勘案するとき、申請人らの主張について十分考慮を払いつつも、本件空港の撤去要求について迅速かつ適正な解決を図るべき諸要素が現状では未だ揃っていないと判断せざるを得ない。

(2)本件調停申請事項の第3である損害賠償の問題については、申請人らは、深刻な航空機騒音公害により健康で文化的な生活を営むことが阻害されているので、被申請人は因って生じた精神的損害を賠償する義務があると主張し、被申請人は損害賠償をしなければならないような被害は与えておらず民事責任はないと主張し、その対立はにわかに解けそうにもみえず、したがって、現状では互譲による早期解決の見込は極めて少ないものと認めざるを得ない。

(3)本件調停申請事項の第1及び第3の問題をめぐる諸事情については以上のとおりと判断されるので、本件調停申請事項の第2の問題をこれらと一括して解決しようとするときは、徒らに日月を経過するのみであって、これにこだわれば当委員会の所期する当事者間の了解の下における航空機騒音軽減対策の実施が遠のくものと認められる。
 当委員会は、以上の諸般の事情に鑑み、本件空港周辺の申請人らが受けている航空機騒音を可及的速やかに軽減することの緊要性を重視し、ここに航空機騒音の軽減について、一部調停を行うこととしたものである。
 この際、当委員会は、本件空港に関係ある府県知事に対しては、申請人らを含む地域住民の航空機騒音障害を一日も早く軽減すべく、昨年発足した大阪国際空港周辺整備機構が実施する空港周辺対策の基本となる周辺整備計画の具体的実施計画を適正かつ速やかに策定することを強く要望するとともに、申請人らが居住する空港関係市に対しては、この策定に協力するのは勿論、航空機騒音障害の防止その他の空港対策の実施に要する費用に充てるために譲与されている航空機燃料譲与税の使途について一段と工夫をこらし、航空機騒音軽減施策を充実し、もって民生安定に資するよう強く要望する。
 また、被申請人に対しては同機構がその業務を実情に沿って運営できるようその体制を整備し強化すること、及び、真剣に航空機騒音対策予算の増額に取組むことを強く要望するものである。
 これらのことがもし遅々として進まないときには、申請人らが長期間にわたり航空機騒音に曝されることを余儀なくされることは見やすき理である。
 よって当委員会としてはこれらの要望の実現に重大な関心をもつものである。

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