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「四国コンテンツシンポジウムin徳島」
≪コンテンツ発信のための権利処理と取組事例について学ぶ≫

 四国総合通信局は、四国コンテンツ協議会及び四国情報通信懇談会との共催で、平成28年7月8日(金)、徳島市において「四国コンテンツシンポジウムin徳島」を開催しました。
 シンポジウムでは、4名の講師をお迎えし、海外へのコンテンツ発信のための権利処理や取組事例についてお話いただきました。

会場の様子

 

 はじめに、一般社団法人 放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)の事務局次長 渡辺 圭史(わたなべ けいじ)氏より、「海外展開における著作権戦略の基礎」と題して、これまでの御経験を踏まえてのお話がありました。
 まず、BEAJがおこなっている業務について、日本の放送コンテンツの国際競争力の向上を促進するため、放送コンテンツの海外展開にあたり、海外放送局の時間枠確保やコンテンツ権利処理のサポートを行い、「クールジャパン」、「ビジットジャパン」に結びつく地域の体制づくりや地方再生を支援するものであると説明。
 海外展開ビジネスの基本モデルとしては、「共同制作」、「海外番組販売」、「フォーマット販売」などがあるとし、それぞれについて説明がありました。
 「共同制作」については、BEAJが関わった総務省の補助事業による放送コンテンツの海外展開事例が紹介されました。
 平成26年度に日本テレビと住友商事が手を組み、マレーシアにおいて展開した事業は、日本全国10地域を鉄道で旅する紀行番組であったが、ただ放送番組を流すだけでなく、マレーシアの伊勢丹と組んで日本産品の流通を促すなど、流通の確保が重要なポイントであると指摘。番組を御覧になった方が、地元のデパートなどへ行ったのに物がないと興醒めになってしまうため、放送と流通の連動が重要であると説明されました。
 次いで、平成27年度に北海道の放送局5局が共同制作したタイ向けの番組「Let’s Go to Hokkaido」の企画の素晴らしさに触れ、海外ではほとんど紹介されていない十勝や道東、利尻・礼文などを広く紹介するものであり、地方から海外への展開を模索している酪農家との出会いは、非常に大きな情報収穫であったとのことでした。
 「海外番組販売」については、番組を海外に販売する際には、メインキャスト以外にも他のキャスト、ナレーター、作家、メインテーマ作曲家、エキストラ、小道具など、著作権に気を遣わねばならないことが多岐にわたっているため、番組制作時における権利処理が重要であり、制作部門においても海外番販への理解を深めることが必要との説明がありました。
 「フォーマット販売」については、番組販売とフォーマット販売との違いに注意すべきと指摘。ドラマフォーマットは著作権保護の対象となっているが、バラエティフォーマットは基本的に著作権の保護対象外であるため、販売先の選定が重要で、信頼のおける大手の放送局、制作会社などと取引をすることが必要であるとのアドバイスがありました。
 また、原作や作家に対する注意点として、原作とドラマのどちらが基礎なのかを確認することが重要で、漫画が原作であるにも関わらず、ドラマを販売してしまうとトラブルにつながってしまうことや、ドラマは海外の制作現場で脚本が変わるケースが多々あるため、ドラマの内容の変更を認めない場合は、そのような契約を結ぶ必要があるとの説明がありました。
 権利処理に関する各国の状況は、国ごとに制度が異なっていることを紹介。歴史的背景や宗教の違いなども含め、国ごとの状況を把握することはコンテンツの流通を促進する上で重要との説明がありました。
 最後に、ビジネス展開にあたっては、海外マーケットに関する有用な情報の入手は必須であること、海外とのビジネスでは費用対効果を高く保ち、大きなリスクは取らないこと、そして、最後はマーケットなどで会って確かめることが大事、との貴重なアドバイスをいただきました。

一般社団法人 放送コンテンツ海外展開促進機構
事務局次長  渡辺 圭史(わたなべ けいじ)氏

 

 続いて、株式会社テレビ新広島 業務推進局 コンテンツ営業開発部 森 星嘉(もり としひろ)氏から、「ローカル局発海外発信ビジネスの取り組みと課題」と題して、ローカル局において積極的にチャレンジされている海外発信事業の取組について、御紹介いただきました。
 まず初めに、テレビ新広島と制作会社TSSプロダクションが製作し、フランス、タイ、国内で放送している番組、「Japan in Motion」の概要について説明。本番組は、「外国の人にもっとニッポンを好きになってもらいたい」という思いで、2007年にプロダクションの新規事業としてスタート。YouTubeなどもまだそれほど普及していない、本格的なネット動画時代の到来が迫っている時に、新たなメディアをつくろうと立ち上げ、2009年にフランスでの番組放送「NOLIFE」が始まるまでの経緯が紹介されました。
 フランスでは、ただ番組を放送するだけではなく、WEBやSNS、Facebookなどを積極的に活用し、動画のアーカイブ化、番組で取り上げた観光スポットやイベント出演者の紹介、プレゼントの募集などを行うほか、事前アンケートを実施してマーケティングに活用するなど、様々な取組を展開する中で、広島県へのフランス人観光客数の増加につながっていることが報告されました。
 2014年には、「Japan in Motion」と「行きたがリーノ」という、2つの番組をもってタイに乗り込み、そこで目にしたのは想像以上の韓流ブーム。「これは、まずい」と、タイでは自治体や企業と連携して、観光地の魅力やサービスを番組で伝えることで外国人誘致とインバウンドにつなげる側面と、地域産品を番組で紹介して、現地のイベントでテストマーケティングしたり、現地ディストリビューターとの商談の機会を設けたりすることで、日本各地域の産品の海外販路拡大と、日本に訪れた際の消費拡大を狙うという側面で展開した取組が紹介されました。
 フランスと同様に、タイでも番組を放送するだけではなく、WEBやSNS、Facebookを積極的に活用。東南アジアでは日本以上にSNSが盛り上がっており、タイではFacebookユーザーは人口の3分の1にあたる2,400万人で、アクティブユーザーが多いのが特徴。そのような中で、数百万人レベルのフォロワーを持つタレントの力を借りることは、東南アジアで事業を展開する場合は非常に重要な戦略になってくるとのアドバイスがありました。
 最後に、これまでの御経験を踏まえ、海外発信事業を展開する上でのポイントが3つ紹介されました。
 1つ目は、商慣習の違いを理解し、柔軟な対応が取れるスケジューリングと体制をつくること。「海外発信事業においては、思い通りにいかない、思いがけないことが起こるもの、という前提で、様々なプランを設計しなくてはいけない。」との助言がありました。
 2つ目は、マーケットイン+プロダクト(コンセプト)アウト。「現地ニーズを把握することは勿論大事だが、『相手国の人にこれは受けるであろう』という視点だけで番組をつくるのではなく、自分たちが本当に面白いと思うもの、いいと思うものを見つけて届けていくことが重要。」と話されました。
 3つ目は、自前主義にこだわらないこと。「弊社でこの海外事業に携わっているのは4人だけ。多くの人員を割いてもらえない中でやっていくためには、国内でも海外でもできるだけ多くの協力者を得て、チームで取り組んでいくことが大切。」とのアドバイスがありました。
 最後に講師から、「海外との仕事ではトラブルは当たり前。相手は日本のことが好きで、興味を持ってくれていて、一生懸命日本のことを伝えようとしてくれている人たち。人口減少が進む日本の未来にとって、本当に大事なパートナー。そう思う気持ちが大事である。」と、海外での事業を展開する上で、心に刻んでおくべきコメントをいただきました。

株式会社テレビ新広島 業務推進局
コンテンツ営業開発部 森 星嘉(もり としひろ)氏

 

 最後に、「テレビメディアと連動事業で効果的に地域産業の海外展開を支援≪伝統文化「藍染」を中心としたテレビ番組の活用で地域事業活性化≫」と題して、四国放送株式会社の編成局 テレビ編成部長 武知 浩史(たけち こうじ)氏と、報道技術局 報道情報センター部長 芝田 和寿(しばた かずひさ)氏から、平成27年度に四国放送が台湾で実施した、放送コンテンツの海外展開事業について説明がありました。
 台湾での事業展開はゼロからのスタート。事業にあたり、日本企業と台湾企業のビジネスアライアンスを支援する機関である「台日産業連携推進オフィス」などを通じて、放送、文化、経済面において、台湾の各種団体との大きな連携が築かれたことが紹介されました。
 放送にあたっては、台湾No.1ケーブルテレビ局の一つである「三立電視」と共同制作体制を構築。
 共同制作した番組では、「湾生(わんせい)」の歴史などから徳島と台湾のつながりを紐解くことで、台湾の方に徳島に対する親近感を深め、本藍染という徳島の文化を取り入れることで、番組内容の深みが増したとの説明がありました。
 また、テレビ番組を通して、徳島県の魅力を広くアピールし、徳島県と台湾の経済連携の後押しにもつながったことなどが報告されました。
 番組制作で実感されたこととしては、「日本で制作した番組に単に中国語訳の字幕スーパーを入れるだけでは、台湾の人に馴染みやすいテイストの番組に仕上がらない」、「細かな作業を繰り返し行い、放送する国のテレビ視聴文化に即した番組としなければ、視聴者に興味を持ってもらえる番組にはなりにくい」といった点を挙げ、日本語では5秒かかるコメントも中国語に訳すと1秒で終わってしまうことがあるため、元来の意味を変えない範囲で台湾側においてコメントフォローを入れ、文字数の差を埋めるなどの工夫をしたことが紹介されました。
 また、番組制作とあわせて、テレビと連動した藍染製品の共同制作やイベントを実施。コラボ作品の制作にあたり、台湾で制作した布を徳島へ送り、徳島の藍染職人により様々な藍染に仕上げ、これを台湾側で商品化したほか、徳島側と台湾側の職人が制作した藍染製品の展示・販売なども実施するなど、職人同士の交流が数多く生まれたことが紹介されました。
 藍染のワークショップには、木工やデザイン、企業の商品開発者まで様々な分野の「若者たち」が集まり、ものづくりの新たな可能性の創造と後継者の育成に力を注ぐ、台湾の戦略を垣間見ることができたとのお話がありました。
 このような連動事業をきっかけとして、台湾のプロジェクトに参加している学生が、日本の藍染文化を研究し、どのような形で台湾の客家文化と結びつけるかを課題として、藍染職人のもとを訪れることが決定するなど、両国の新たな文化的交流が動き始めたことが紹介されました。
 講師からは、「現地での取材等を通じて、徳島の地域産業の支援に向け、今後もテレビメディアとして海外と組んで何かできないか、ということを強く感じた」とのコメントがありました。

四国放送株式会社 編成局
テレビ編成部長 武知 浩史(たけち こうじ)氏

四国放送株式会社 報道技術局
報道情報センター部長 芝田 和寿(しばた かずひさ)氏

 

 四国総合通信局は、コンテンツの発信による四国への観光客誘致、地域産業の海外展開、地域経済の活性化等を更に促進するため、今後も関係機関と連携した取組を続けてまいります。


表:四国コンテンツシンポジウムin徳島 講演資料
内容 演題 講師 資料ダウンロードURL
講演1 「海外展開における著作権戦略の基礎」 一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)
事務局次長
 渡辺 圭史(わたなべ けいじ)氏

 

資料(PDF 2.1MB)PDF

講演2 「ローカル局発海外発信ビジネスの取り組みと課題」 株式会社テレビ新広島 業務推進局
コンテンツ営業開発部
 森 星嘉(もり としひろ)氏
資料(PDF 5.3MB)PDF
講演3 「テレビメディアと連動事業で効果的に地域産業の海外展開を支援
<伝統文化「藍染」を中心としたテレビ番組の活用で地域事業活性化>」
四国放送株式会社
編成局 テレビ編成部長
 武知 浩史(たけち こうじ)氏
報道技術局 報道情報センター部長
 芝田 和寿(しばた かずひさ)氏
資料(PDF 884KB)PDF

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