公害紛争の迅速・適正な解決を図るため、司法的解決とは別に公害紛争処理法に基づき、公害紛争処理制度が設けられています。公害紛争を処理する機関として、国に公害等調整委員会が、各都道府県に公害審査会等が置かれています。
これらの公害紛争処理機関とは別に、公害の苦情を迅速・適正に解決するために、都道府県及び市区町村には公害苦情相談窓口が設けられています。
公害に係る紛争が生じた場合に、その迅速かつ適正な解決を図るため、公害紛争処理制度では次の4つの手続を設けています。いずれも原則として当事者の申請に基づいて手続が開始されます。
なお、公害紛争事件のほとんどが「調停事件」又は「裁定事件」となっています。
調停委員会が紛争の当事者を仲介し、双方の互譲による合意に基づき紛争の解決を図る手続です。
委員3人から構成される調停委員会が、紛争当事者に出頭を求めて意見を聴くほか、必要に応じて現地の調査を行い、また、参考人の陳述、鑑定人による鑑定を求めるなどにより、適切妥当な調停案を作成・提示するなど、合意が成立するように努めます。なお、調停手続は原則非公開とされています。
調停の結果当事者間に合意が成立した場合には、民法上の和解契約(民法第645条以下)と同一の効力を持ちます。
当事者間の紛争について裁定委員会が法律的判断を行うことにより、紛争解決を図る手続です。裁定には、「原因裁定」と「責任裁定」の2種類があります。なお、裁定手続は都道府県にはなく、公害等調整委員会のみで扱う制度です。
公害に係る被害が発生した場合に、加害行為と被害との間の因果関係の存否に関し、法律判断を行うことによってその解決を図る手続です。
公害に係る被害が発生した場合に、損害賠償責任の有無及び賠償額の法律判断を行うことにより、紛争解決を図る手続です。
あっせん委員が紛争の当事者間に入り、交渉が円滑に行われるよう仲介することにより、当事者間における紛争の自主的解決を援助、促進する手続です。あっせんにより当事者間に合意が成立すれば、和解契約などが成立したこととなります。
紛争の当事者双方が裁判所において裁判を受ける権利を放棄し、紛争の解決を仲裁機関である仲裁委員会に委ね、その判断に従うことを約束(仲裁契約)することによって紛争解決を図る手続です。
「公害」は、環境基本法により、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる(1)大気の汚染、(2)水質の汚濁、(3)土壌の汚染、(4)騒音、(5)振動、(6)地盤の沈下及び(7)悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること、と定義されており、これら(1)から(7)までの7種類は「典型7公害」と呼ばれています。公害紛争処理制度の対象は、これらの典型7公害に関係する紛争です。
なお、「相当範囲にわたる」については、ある程度の広がりがあれば、被害者が1人の場合でもこの制度の対象となりますが、単なる相隣関係の問題については、対象とならないこともあります。
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