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公害等調整委員会設立50周年記念シンポジウム「50年を迎える公害等調整委員会」(第3回 パネルディスカッション(2): 公害に関する紛争処理の将来展望)

公害等調整委員会事務局

 前回に引き続き、昨年5月19日に開催された「公害等調整委員会設立50周年記念シンポジウム」の模様をご紹介いたします。
 第3回は、パネルディスカッション(2)『公害に関する紛争処理の将来展望』です。
 なお、第1回(基調講演)の模様はこちら、第2回(パネルディスカッション(1))の模様はこちらからご覧いただけます。
 

全体写真

パネルディスカッション(2)『公害に関する紛争処理の将来展望』

プログラム

【栗田奈央子(公害等調整委員会事務局次長)】
 ディスカッションも終盤に入ってまいりまして、2つ目の討議テーマに移りたいと思います。
 公害紛争は、その時々の社会情勢や、近年の新型コロナウイルス感染症の拡大などによる国民の生活様式や環境意識等を反映して、その在り方を変化させております。そうした変化も踏まえまして、公害に関する紛争処理の将来展望について御発言をお願いしたいと存じます。
 まずは荒井様、よろしくお願いいたします。
荒井委員長
【荒井 勉(公害等調整委員会委員長)】
私からは、将来展望として、本制度の利用を促進するにはどうしたらよいかという観点と、公害紛争、さらには、先ほどお話がありました環境をめぐる紛争が将来どういうふうな状況になって、それにどのように対応していくべきなのか、そういう観点から3点述べたいと思います。
 1点目はIT化ということでございます。現在、当委員会の手続でも可能な限り電話会議とかウェブ会議をしておりますし、最近では電子メールによる準備書面の提出ができるように規則改正するというようなこともしております。今後は、さらに当事者の負担を軽減し、かつ効率的な進行に資するように、IT化を進める必要があると考えております。裁判所でも民事手続の本格的なIT化を進めつつある。昨日、法案が成立したという報道がされておりますが、そうした裁判手続の状況も参考にしながら進めてまいりたいと考えています。
 当委員会の制度は行政型ADRでございます。アメリカなどではオンラインを利用したADRというものが活用されて、ODRと呼ばれているということでございます。我が国でもそうした検討が進められているとお聞きしております。公害紛争という性質、あるいは本人申立てが多いというようなことから、なかなか一足飛びにそうした進んだ制度に向かうということはできないと思いますけれども、そこら辺まで視野に入れて、少しでも国民が利用しやすくなるような方向でIT化を考えていきたいと考えております。
 2点目は運用の改善ということでございます。日々事件を処理して感じることは、先ほど北村先生のお話にありましたように、公害紛争処理手続は設立当初の産業型公害を念頭に置いてつくられた制度でございますので、近年の小規模な都市型・生活環境型の事案にこの手続をそのまま適用するということがふさわしいのだろうかということをよく考えます。現在の手続運用は近時の紛争実態からすると少々重過ぎるように思われ、事案に応じて、もっと柔軟で、もっと軽量であってもいいのではないかと感じるところがございます。
 最近、裁判所から受ける原因裁定嘱託については、こうした観点から運用の見直しをいたしまして、少しでも手続を軽くして、効率化を図れるようにしようというようなことを工夫しているところでございますので、このような見直しを裁定手続全般に広げて、現在の手続の中で運用を改善して、紛争の実態に合った手続、事案に応じた軽量化した手続を工夫していくということが必要であろうと。それによって審理期間をさらに短縮することができ、ひいてはこの制度をさらに利用してもらうことにつながるのではないかと感じているところでございます。
 運用の改善ではなく法改正でやれというのがお隣の北村先生の御議論だろうと思いますけれども、私ども実務をやっている立場からすると、今の法の枠内で可能な運用の改善を考えるというスタンスになってしまいます。
 3点目ですけれども、将来のニーズを踏まえた在り方を内部的に進めていきたいということでございます。私どもは、法を運用する、定められた法規の枠の中で事件を処理するということに注力してまいりましたので、制度論や立法論ということになりますと、私どもが積極的にそれを提案していく立場ではないと、そういう思いから、これまでやや超然としていたと、そういう側面があることは否定できないかなと思っております。
 本日、北村先生からのお話あるいはパネラーの方々からもいろいろなお話を伺っておりますので、これからは、これからの環境紛争をどのように捉えていくべきなのか、典型7公害以外にどのような類型が考えられるのか、そして、どのような制度の在り方が社会のニーズに応えることになるのかといったような点について部内でじっくりと研究、検討していきたいと考えております。地方自治体で担当しておられる皆様からも実情をお伺いしたり、率直な意見交換をしていきたいと考えております。
 私どもがそういった制度論を打ち立てて外部に提言するというようなことではなくて、将来のそうした議論に備えて内部において検討を進めていく、それは必要ではないかと思っております。先ほども北村先生からの御紹介にありましたように、2015年には、北村先生を座長とする、研究者の方々や弁護士の方々から懇談会報告書をいただいておりますし、私どもの委員会内部の勉強会に、環境法の学者である六車先生にお越しいただいて、将来展望についてのお話を伺ったりということはしているところでございますので、こうした将来の紛争や制度の在り方を視野に入れた検討を今後も継続的に積み重ねて、新たな制度を含めた将来の様々な状況の変化にもしっかり対応できるように準備をしてまいりたいと考えております。
 私は以上でございます。
【栗田】ありがとうございました。
 続きまして、北村様、よろしくお願いいたします。
北村先生
【北村 喜宣(上智大学大学院法学研究科長・教授)】
 荒井委員長には、あと一月ちょっとですので、ぜひともリーダーシップを発揮して、道筋だけでもつけてお辞めいただきたいと期待したいです。
 我々が関心を持っております、あるいは使っております公害紛争処理法の第1条のフレーズに「迅速かつ適正な解決」があります。この迅速かつ適正な解決というのを全法令検索かけますと、7つの法律がヒットします。そのうちの3つが公調委関係なのです。公害紛争処理法と公害紛争処理の規則と、それと総務省の設置法です。このように公害紛争処理というのは迅速かつ適切なと、あとはスポーツ基本法とかそういうところになって、大体紛争処理絡みのところに規定されているのですけれども、やはり数というと、圧倒的に公調委、この組織に関するものが多いのです。
 先ほど、裁定が産業型みたいなのを念頭に置いているから、やや重装備になってきているとおっしゃいました。これは示唆的ですね。と申しますのは、この法律というのは、1条の目的を達成するためにどうしましょうかというつくりになっているはずなので、そのつくりのほうが合わなければ変えていくしかないのです。その目的を現在的に達成しようと思えばです。立法論をする場ではないというのはおっしゃるとおりですので、このあたりは私どものような外野席の者が、憲法の下でこの制度がどういうふうにあるべきなのかということを踏まえた議論をすべきだなと改めて確認をいたしました。
 先ほど来、三ツ橋さんなんかは本当に現場でお困りだ、松田先生もそうおっしゃいました。かなり地域密着型になってきているというのは顕著な傾向のように見えるところです。それでは、これは都道府県なのかというと、多分市町村なのだと思います。都道府県でも、恐らく今日御参集の方々のところには、環境基本条例に基づく環境基本計画があるはずです。しかし、本当に地域の生活のルールとかマナーとかのレベルの話は、そこで書き切れないですね。そうすると、これは市町村の環境基本条例に基づく環境基本計画にどのようなことが書いてあるのかと。住民参加してつくったことになっているはずなので、地域合意がそこに書いてあるはずです。しかしながら、事業者や市民はあまりそういうことを知らないものですから、これはそのルールの存在、すなわち、合意されたルールを踏まえた他者への配慮ということをいま一度思い起こす必要があるのかなと考えました。
 「適正な解決」の適正とは何か、非常に難しい。結局、不調になったというのは適正じゃなかったのかと言われると、そういうわけでも多分なさそうな気が私はしていまして、これは弁護士の立場からの御意見も後で頂戴できればと思っております。50周年、元に戻って、1条目的の観点からもう一度この制度の全体像あるいは運用をこの時点で見直すと、そして将来を見詰める。こういう作業が私自身にとっても大事だなということを今日改めて感じたところでございます。
【栗田】ありがとうございました。
 次に、倉片様、よろしくお願いいたします。
倉片先生

倉片先生投影資料
投影資料はこちらからPDF[PDF 0.2MB]

【倉片 憲治(早稲田大学人間科学学術院教授)】
 将来展望ということで、やはり私からは騒音のお話をと思うのですけれども、また要点のスライドをお出しいただけますか。
 皆様お感じのとおり、騒音の苦情というのが減らないのですよね。あるいは、むしろ増えているぐらいかなと思います。さらに、恐らくまた皆さんもお感じだと思うのですけれども、騒音といいましても、明らかにうるさい騒音という例は少なくて、極端な場合、何が騒音源なのだか分からないというような事例というのも訴えとしてございませんでしょうか。
 それはどうしてなのだろうかと不思議に思うのですけれども、一つ私感じますのは、本来、それは騒音自体が問題なのではなくて、この原因はネットの情報にもしかしてあるのかもしれません。特に低周波音関係ですね。誤ったネットの情報で言わば苦情が拡大再生産されてしまっていると。あれも低周波だ、これも低周波だと、何か分からない現象があったら、これは低周波問題じゃないかというふうにして苦情を訴えられるなんていう事例、お聞きになっているのではないかなと思います。
 そこで将来どうしよう、これからどうしようかというところなのですが、まず一つ、私、考えるべきかなと思うのは、そういった誤った――専門家から見ると、誤った知見です。そういう誤った知見あるいは事例というのを何とか公式に訂正するなり否定するなりという手段が取れないものかなというのを感じます。例えば公調委としましては、公害として申請はあったのだけれども、さんざん調べたけれども、やはりこれは騒音問題として認められないというような事例があった場合に、今、事例は紹介されていますけれども、それが一体何が本当の理由だったのかとか、あるいは何が技術的に認められなかったのかという、もう一歩、二歩踏み込んだ分析結果というものをまとめて出す機会があったらいいのではないのかなと。そこまで分析するのは公調委の仕事ではないのかもしれないですけれども、そういうところまで考えてもいいのではないかなというふうにまず一つ思います。
 あと、騒音に関しまして今後のことを考えますと、私、一つ意識すべきかなと思いますのが、苦情の件数が減らないことには、社会の高齢化、人口の高齢化というのが、非常に強く関係しているのではないかなと思います。そこに目を向けるということですね。よく知られた騒音問題としましては、例えば工場で後継者がいないので廃業して、そこは工場が空き地になったと。そこに住宅ができて、住み始めた人が、まだ残っているほかの工場との間で騒音問題、いさかいを起こすなんていう事例とか。あるいは別のパターンとしましては、相続に当たって売却された土地、そこにアパートなり、あるいは保育園ですね。保育園が新しく住宅街の中で建てられることになって、それでやはり旧来からの住民との間でいさかいを起こすなんていうのはよくある話かなと思います。
 そういった具体的な事例だけではなくて、これは私の直感なのですけれども、長い間いろいろ騒音、近隣騒音の問題を担当していて感じるのですが、訴えている側の方の訴えというのが、恐らく加齢による、年齢による心・体の変調、その原因を誤って騒音にあるのだと、騒音が原因なのだと。あるいは、振動とか悪臭もそういうことがあるかもしれません。間違って自分の心身の変調の原因と結びつけてしまっている、そういう事例なのではないかなというのを感じることがあります。よく訴えとしてありますのが不眠ですよね。睡眠障害とか、あるいは手足がしびれるとか、耳鳴りがするという苦情ですよね。そういった不眠とか手足のしびれとか、あるいは耳鳴りというのは、年を取ると誰にでも多かれ少なかれ発生する症状なのですよ。ただ、年を取ったらどうなるかというのはみんな誰もが初めて経験することですので、自分に何が起きているのかというのが分からないのですよね。そのときにたまたま何か音がした、あるいはたまたま何か振動を感じたというときに、私が寝られないのはあの音のせいだ、手足がしびれるのはあの振動のせいだというふうに間違って、原因と関連づけてしまっているのではないのかなという感じがいたします。なので、その証拠となるかどうか。そういった苦情を訴えられる方というのは決まって中高年の方なのですよね。単に音が聞こえてうるさいというのであれば、むしろ聴力のよい若い人が苦情を訴えそうなものなのですが、そういう事例というのは非常に少なくて、年配の方が多い。実際、音を聞いて手足がしびれるというのは、私が知っている限り、実験的にそういう現象というのは確認されていないですね。やはり何か原因を間違えているのではないのかなというのが私の直感です。
 もう一つ、いろいろな事例を見聞きし、担当しておりますと感じますのが、今の加齢の問題だけではなくて、特に騒音、低周波音の問題では、訴えの内容というのがお互いに非常によく似ていますね。相談を受けますと、事件を担当しますと、またその音ですか、あるいは、またそういう症状ですかということがよくあります。そういった同じような事件、同じような訴えというのが繰り返し繰り返し起こるというのを見ていますと、私は研究者ですので、研究者としましては、何かそこに共通の原因あるいは共通の背景があるのではないかなということをどうしても考えたくなります。ですので、一つ一つの事件に着々と対処していくのは大切なのですけれども、騒音の根本的な解決ということを今後考えるのであれば、その共通の原因あるいは背景というものは何なのかということもやはり併せて考えていかないといけないのではないかなという感じがします。
 先ほど来から委員長や北村先生がいみじくもおっしゃっていますように、公害は起きてから対処するのではなくて、やはり起きる前、未然に防げるというのが理想なわけですので、我々、日々の案件を担当するに当たって、やはり方向性としては、そういうことを考えながら対処していくべきではないかなと思います。そのための分析に必要な事例とかデータとかいうものは、公調委のほうに地方公共団体のほうからの報告も含めてたくさん集まっているはずです。これもやはり公調委の仕事じゃないと言われるかもしれないですけれども、せっかくそういうデータがあるのですから、それをうまく活用して本当の原因を究明し、公害を未然に防ぐという手だてがこれからの視点として欲しいなと感じます。そうしますと、将来的には公調委に訴えられる、申請される件数というのも減ってくるかと思いますし、皆様のところ、市区町村の役場に持ち込まれる苦情の数というのも減るのではないかなと思います。先ほど三ツ橋アドバイザーから、現場がてんてこ舞い、疲弊しているようなお話もありましたけれども、本来、市区町村の役場のほうで担当すべきもっと重要な案件に人的なリソースとか、あるいは予算、経済的な資源というのを割けるような方策というのが将来的にできれば理想ではないかなと考えています。
 以上です。
【栗田】ありがとうございました。
 次に、松田様、よろしくお願いいたします。
松田先生
【松田 康太郎(静岡県公害審査会会長)】
 典型7公害につきましては、国の施策等が奏功して件数が減少しているということは、先ほどの事務局の報告でもデータ的にも示されております。そのこと自体は非常にいいことだなと思っております。ただ、先ほど触れた日弁連の意見書のとおり、典型7公害以外の環境問題などについては法的な解決が難しい事案が多いわけですが、私自身も公害等調整委員会ないし公害審査会などがこの役割を果たすことが望ましいと考えております。
 倉片先生がおっしゃるように、公調委には地方公共団体からいろいろなデータが送られてきて、豊富な材料があるということで、どこがやるかというと、やはり公調委になってしまうのではないかなというのは私も意見として持っております。ただ、分析する際、どういうふうな切り口でやるかというのが非常に難しくて、環境問題を無制限に扱うということもできませんし、どういうふうに類型化して、どういう要件でやるかというのを議論していくというのはかなりしんどい作業になるだろうなと思っております。北村先生が風のない中でとおっしゃっておりましたが、確かにそのような状況下の中で国会や政治が主導で動くということはあり得ないと思いますので、その前提となる機運をつくるのは公調委だろうと私も考えております。
 公害等調整委員会が担う役割というのはもう一つあると思っております。これは三ツ橋先生の先ほどの発言にも関連しますが、地方自治体の担当者の方が精神的に非常に参ってしまうという問題です。これにはいろいろな要素がありますが、一つには対処法が分からないという問題が大きいと思います。この事案にどのように対処したらよいのかというところで悩むと、すごくストレスを抱える原因になります。そこをどうしたらよいかというのを少し考えたほうがいいと思います。
 公害等調整委員会は、公害紛争処理法第3条において、地方公共団体が行う公害に関する苦情の処理について指導等を行うとなっております。各自治体において公害紛争等の処理については検討していると思いますが、知識やノウハウが各自治体で一様ではないというような状態の中で、その知識やノウハウを公調委が補強するというのが重要になってくると思っています。近年は、コロナ禍で、そのプラス面としてウェブ研修が盛んになっております。先ほど事務局からの報告がありましたとおり、幾つかの自治体やブロックに対する研修、それからウェブでの研修、そういうのを提供されていると説明がありましたが、ウェブ研修であれば、コストの問題、会場費や交通費を削減した中で効果的な研修を実施することができるのだろうと思っております。だから、公調委でもウェブ研修を活用して、研修を充実させていただきたいというのが一つです。
 ただ、昨年この場にいらっしゃった方は御存じだと思いますが、ウェブ会議を昨年は実施しました。予算的な制約の中で仕方がないとおっしゃっていたのですけれども、カメラとマイクは良いものを用意する必要があります。聞いている者が非常につらい状態で、今日もちょっと眠くなられている方もいらっしゃるかもしれませんけれども、話している人の話が聞こえにくいというのは、それだけで眠くなる要因になりますので、ここはぜひとも良いカメラとマイクを調達していただきまして、ウェブ会議を充実させていただきたいと思います。国の予算は無限にあるわけではないということは私も知っておりますが、こういうことを言う人がいないと、そういうところに予算が回らないということも知っておりますので、この場を借りてそういう発言をさせていただきたいと思っております。
 以上です。
【栗田】ありがとうございました。
 最後に、三ツ橋様、よろしくお願いいたします。
三ツ橋先生
【三ツ橋 悦子(社会福祉法人品川区社会福祉協議会事務局次長)】
 将来展望ということで、様々な先生方からいろいろな御意見をいただいていると思うのですけれども、やはり現場サイドとしては、困っている人がいるから苦情や相談、申立てがある。つまり、その方々を何とかして円満解決していきたいというのが私はとても思っているところで、その円満解決の方法というのは、もちろん騒音のこと、振動のこと、土壌汚染、また大気汚染、様々なことを、知識はもちろん勉強して、どんどん、条例、法、様々なことは中で勉強しないといけないと思うのですけれども、一つ一つ、目の前の現場に対して、本当に心のある対応をしていくのがまず大事なのかなと思っております。これは、将来展望というのは、この苦情対応だけではないとは思うのですけれども、今、社会福祉協議会の福祉部門にいるので余計感じているのかもしれませんけれども、やはり一人一人と対応、また何人かかもしれませんけれども、その対応はきちんと丁寧にやるべきなのかなと思っています。
 また、先ほど先生方もお話しされていましたように、環境部門だけでは解決できないものもたくさんありますので、関連部署の例えば保健センター、保健所、また環境以外の、例えば土木関係の部署とか、様々あると思うのですよね。その方と対応していきながら、また、先ほども言いましたように、23区との連携。どこどこの区の人は特にこの部分がたけているとか、様々あるのですけれども、そういう情報共有、情報交換が大事なのかなと思っております。公調委のもちろん制度というのは、制度設計はすごく大事だと思いますし、その下に、法や条例の下に私どもが対応していくというのはもう大前提にありますので、どうか、1つでも苦情がなくなるといいなと思っております。
 以上でございます。

会場の様子

【栗田】ありがとうございました。
 それでは、討議はここまでといたしまして、この後、次第では御参加の皆様からの質疑をお受けする予定としておったのですが、既に予定されていた終了時刻を若干過ぎているという状態でございます。お時間の許す方で、もしぜひという方がいらっしゃいましたら若干名、お一人若しくは2人ぐらい御質問をお受けできるかなと思いますので、挙手をお願いできますでしょうか。
 よろしゅうございますでしょうか。それでは、質疑応答はこれで終わりという形にさせていただきまして、パネルディスカッションも締めに入りたいと思います。パネリストの皆様から、御感想や言い足りなかったことがあれば、壇上向かって右から順に、お一言ずつお願いいたします。まず、三ツ橋様から。
【三ツ橋】ほとんど伝えましたので、最後に、今コロナ禍だと思いますけれども、やはり対応がまた若干変わってきているとは思いますけれども、本当に苦情相談の対応の現場の皆様が少しでも元気になるように、気持ちを高められるような方法を取っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
【栗田】松田様。
【松田】静岡県内の自治体に寄せられた苦情の件数というのは、平成6年からいいますと、1,000件あったのですが、3,000件まで、1,000件から3,000件までいろいろばらつきがあります。このうち大気汚染や騒音、悪臭が多くて、次いで水質汚濁、それから土壌汚染や地盤沈下はほとんどないというような状態で、ただ、典型7公害以外の苦情については、平成6年度が173件で約12%、それが令和元年度に804件で35%となっております。これは先ほどの事務局の全国的な傾向とちょっと異なるのですけれども、したがって、たまたまなのかもしれませんが、平成25年度以前は数%から15%だったものが、平成26年度以降は20%を超えているという状況になっております。その原因まで分析された資料を入手することができないので、日弁連の意見書のとおり、典型7公害以外の問題についても対応していってほしいと思います。先ほどの発言につながりますが、公調委の担うべき役割というのは大きいと思いますので、ますます期待しております。
 自治体が受ける公害苦情のうち、典型7公害以外の相談について、どのように類型化するかについては大変難しい問題ですが、内容を詳細に把握できるのは、先ほども申し上げたとおり、公調委しかありませんから、その役割は大きいと思っております。
 それから、公調委の回し者ではありませんけれども、『ちょうせい』という機関誌が出されております。皆様御存じかと思います。ここに書かれている記事、それぞれ興味深いものが多いのですけれども、各自治体の公害苦情相談窓口担当者の生の声が載っておりまして、担当者の皆様には非常に参考になるのではないかなと思います。各自治体の担当者の方は、バックナンバーも御覧になっていただいて、勉強していただければと思っております。
 以上です。
【栗田】倉片様。
【倉片】最後ということで、私は漠然とした印象になりますけれども、いろいろお話を伺っていたり自分なりに考えたりしてみますと、やはり公害というものは本来なくなるべきものなのだよなというのが素朴な印象です。私の子供の頃、1970年代ですけれども、ちょうど4大公害病が世の中で問題になっていた、盛んだった頃の話になります。私の小学校の社会科の授業というと、ほとんど公害の話なのですよね。先ほどの水俣湾の猫の話も、授業中に先生から聞いた話です。その頃子供だった私も、将来自分が大人になった頃にはきっとこういう公害問題というのは全部解決されていて、きっといい世の中になるのだろうなと漠然と当時は思っていました。けれども、ああいった公害病はなくなりましたけれども、公害はやはりゼロにはならないのですね。
 北村先生の基調講演の最初のお話ではありませんけれども、本日は設立50周年シンポジウムということでしたが、この後さらに50年たって、設立100周年シンポジウムなんていうものをもし仮に華々しく開くことになった場合に、我々はそれを喜んでいいのか悲しんでいいのか、非常に複雑な感じがいたします。ですので、先ほども申しましたけれども、公害として訴えられたもの、申請のあったものを一つ一つ丁寧に扱っていく、対処していくというのは日々の業務として大切だとは思うのですけれども、それに忙殺されながらも、長期的な視点を持って、公害をなくすにはどうしたらよいのか、そのために何ができるのか、我々は今何をすべきなのかということを常に頭に置きながら、私も専門委員としてこれからの業務に当たっていきたいなと改めて思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【栗田】北村様。
【北村】ADRである以上、迅速かつ適正な解決というのは、これは永久のテーマです。その中において、委員長おっしゃいましたとおり、何とか運用でその目標に近づけたいという御努力は非常に貴重だと思います。さはさりながら、どこまで引っ張っていけるのかということもあります。プチンと切れる前に対応してもらいたいという気持ちを強く持っております。そのためには、現在公調委がされていることを第三者の目でちゃんとチェックして、「よし」、「ちょっとこれは」というようなことがあっても恐らくいいはずです。より良い制度をお互いにつくっていくという観点から、組織的な御検討をなさっていただければいかがか。このように最後に感じました。
【栗田】荒井様。
【荒井】今日は、北村先生の基調講演、それからパネリストの皆様からも本当に貴重な御意見を多々いただきまして、本当にありがとうございました。今後考えていく上で、大きな方向性、大きな示唆をいただきました。公調委に対する様々なオーダーもいただきまして、大変だなと思ったりもしております。そういう意味も込めまして、50周年にふさわしい充実したシンポジウムになったのではないかと思っております。皆様に心から感謝を申し上げる次第でございます。今日のこの議論も踏まえて、公調委としては今後も不断の検討を続けてまいりたいと思っておりますので、引き続き御支援をどうぞよろしくお願いいたします。
【栗田】改めまして、パネリストの皆様、どうもありがとうございました。(拍手)
 それでは、お話は尽きないところではございますが、本日の公害等調整委員会設立50周年記念シンポジウムは終了とさせていただきたいと思います。
 それでは、パネリストの皆様、会場並びにオンラインで御参加の皆様、本日は誠にありがとうございました。(拍手)

おわりに

 公害等調整委員会設立50周年記念シンポジウム「50年を迎える公害等調整委員会」は本稿で完結します。3回にわたる連載をご覧いただきありがとうございました。

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