1985年に日本電信電話公社が民営化され、電気通信市場への参入が自由化されました。民営化により誕生した日本電信電話株式会社(NTT)には、国民生活に不可欠な電話の役務をあまねく日本全国に安定的な供給を確保する責務が課されました。
なお、1999年にNTT再編が行われた後も、この義務は引き続き、NTT東西・NTT持株会社に課されています。
第3条
会社及び地域会社は、それぞれその事業を営むに当たつては、常に経営が適正かつ効率的に行われるように配意し、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与するとともに、今後の社会経済の進展に果たすべき電気通信の役割の重要性にかんがみ、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与し、もつて公共の福祉の増進に資するよう努めなければならない。
その後、下図のとおり、地域通信市場における競争の進展により、NTTの経営努力のみでは電話役務の「あまねく」提供が確保できなくなるおそれがあるとされ、1996年2月の電気通信審議会答申では、「ユニバーサルサービス確保のための基金を設立するといった新たな制度」の検討の必要性が言及されました。
固定電話参入事業者数の推移
出典:電気通信事業分野における競争状況の評価2007 図表I−12(P34)(体裁を一部修正)
2000年7月の電気通信審議会答申では、「ユニバーサルサービスの提供を確保するための新たな枠組みを早急に整備する必要がある」とされたことから、電気通信事業法等の関係法令の改正等が行われ、基金方式による電話のユニバーサルサービスの提供を確保するための新たな枠組みとして、電話のユニバーサルサービス制度が2002年6月から導入されました。
しかし、電話のユニバーサルサービスのコストが収益を上回り、赤字となることが補填の前提であるところ、2004年度までは、赤字とはならなかったことから、制度は実際に稼動せず、補填はなされませんでした。
制度の創設の際の改正法令では、電話のユニバーサルサービス制度の詳細については、制度創設後2年を目途に見直すこととされていたため、2004年11月、情報通信審議会に制度の在り方について諮問を行い、同審議会の2005年10月の答申を踏まえ、電気通信事業法施行規則等の関係法令の改正が行われ、2006年4月から施行されました。主な改正点は次のとおりです。
○ 補填額の算定方法は、制度創設時は、「相殺型の収入費用方式」(不採算地域の赤字を採算地域の黒字で相殺し、相殺できない部分を補填額とする方式)でしたが、見直しにより、「ベンチマーク方式」(ある地域の回線あたりのコストが、全国平均費用の一定割合(ベンチマーク)を上回る場合に、そのコストを補填する方式)に変更されました。なお、現在、ベンチマークは、「全国平均費用+標準偏差の2倍」ですが、見直し当時は、「全国平均費用」とされていました。
○ 負担事業者の負担金の拠出方法については、制度創設時は、負担事業者の「売上高」を拠出比率の算定基準としていましたが、見直しにより、負担事業者が使用している「電話番号数」に変更されました。