電波は相互に干渉しやすい性質があるため、免許を受けた無線局でも適正な運用がされていなかったり、免許を受けていない不法無線局がいると多くの利用者が効率的に電波を利用することができません。
電波は日常生活を支える公共機関や公益企業をはじめ、運輸、製造業、小売業、サービス業等様々な分野で利用されており、電波利用に混乱が生じた場合の社会的影響は非常に大きくなっています。
このため北海道総合通信局では、電波監視システム「DEURAS」や移動監視車両を活用して電波監視を実施し、安心・安全な電波利用環境の確保に努めています。
日常生活を支える公共機関や公益企業も電波を利用しています。
総務省では妨害を受けた時に社会的影響が特に大きい無線通信を「重要無線通信」と位置づけ、迅速な調査対応を行っています。
重要無線通信には警察、消防、救急、防災、海上保安、航空交通管制、電力、携帯電話等がありますが、これらに妨害が発生し、関係機関等からの通報を受けた場合はすみやかに調査を実施し、妨害を解消しています。
また、国賓等の要人の来道や国際会議の開催時には特別電波監視体制を組み、重要無線通信妨害に備えています。
会場付近での電波監視の様子
混信の原因は様々なものがあり、特定が難しい場合もあります。
最近では無線局によるもののほかに電子機器等が原因と思われる例も出ています。
<主な原因と事例>
○合法無線局によるもの
無線局は免許を受ける際の審査で他の無線局との位置関係や無線設備の仕様等から実際に電波が届く強度を技術計算し、混信妨害を与えないことを事前に確認しています。(移動する無線局を除く。)
しかし、事前に想定していない移動する無線局の電波を受けた場合や事前に申請された無線設備と異なる設備に変更した場合等で混信が発生することがあります。例えば会社が移転した場合に無線局の設置場所の変更申請をしないで移設したり、送受信機を電力の高いものに申請しないで変更した場合は他の無線局に混信を与えるおそれが高くなります。
また、大きなイベント等で特定の場所に多くの無線局が集中して運用する場合は、混信が発生しやすくなります。
○不法無線局によるもの
不法無線局が電波を発射すると電波の特性から他の無線局へ混信妨害を与えることがあります。
免許を受けた無線局は混信を避けるため、必要最低限の電力で免許されていますが、不法無線局はこれらの数百倍から千倍も強力な電波を出すことがあるため、他の無線局へ妨害を与える可能性は大幅に高くなります。
テレビ、ラジオ、オーディオ等にノイズや音声が入ったり、自動ドア、信号機等の誤動作を引き起こす場合もあります。
また、最近では外国規格等の無線機(FRS/GMRS、個人、一般企業には免許にならない無線機等)がインターネット上の通信販売サイト等で販売されていますが、多くが国内では使用できないため電波法違反となるだけでなく、同じ周波数や不要な電波の周波数の電波が、正常な無線局の通信や重要無線通信に妨害を与えるおそれがあります。
○無線局以外(電子機器等)の原因によるもの
・家庭用テレビブースターの故障によって電波を発射することがあります。(異常発振)
テレビアンテナの直下等の高い場所に設置されていることが多いため周辺の数kmの無線局に対して混信妨害を与えることがありますが、利用者は通常どおりテレビ放送を受信できていることが多いため、異常に気づくことはほとんどありません。
発射する周波数の範囲が不安定なこともあり、携帯電話、消防、ガス、水道等の重要無線通信をはじめとしてVHF、 UHF帯の広い周波数範囲の無線局に妨害を与えることがあります。
テレビブースターの例
・BSデジタル・110度CSテレビ放送の受信のために屋外に設置された分配器等から漏洩した電波が携帯電話基地局に妨害を与えることがあります。パラボラアンテナで受信した電波は、テレビまで伝送する際に減衰の少ない周波数にアンテナ内部で変換していますが、この周波数の一部が携帯電話と同じために外部に漏洩すると妨害となります。
受信信号を伝送する途中にある分配器等は内部の回路を鉄板で覆ったシールドタイプの機器を使用することが望ましいですが、電波が外部に漏洩しやすい構造の機器が使用されていることも多くあります。
BS・110度CSテレビアンテナの例
不法無線局とは無線局を開設するに当たり必要な手続きを行わず、免許を受けないで無線局を開設したものや免許があっても改造を加えて免許の要件を満たさなくなったもの、免許の有効期限が過ぎたものがあります。
不法無線局には免許基準に定める条件に合えば免許になるものもありますが、外国では免許になるものでも日本国内では電波の割当ができないため免許にならないものがあります。
本来は輸出用に製造されていた外国の規格の無線機が日本国内に出回ったもので、この無線機はそのままでは日本国内で使用することはできません。
国内で使用が認められている市民ラジオ(合法CB無線)は、出力0.5Wまで、周波数は27MHz帯8チャンネルで、アンテナが無線機と一体となっているものですが、不法CB無線機は市民ラジオに認められない周波数を多数装備し、出力も数Wのものから増幅器を使用して数kWにしたものもあり、テレビ、ラジオに混信するだけでなく、コンピュータなどの電子機器の正常な動作を妨げます。
不法CB無線機の例
不法CB無線機を設置した車内の例
頂環付きセンターロードアンテナ
免許なくアマチュア無線の運用を行うのが、不法アマチュア無線です。 一度も免許を取得したことがないものの他、免許の有効期間が満了し、失効したものがあります。
無線機はアマチュア無線用として一般に市販されているものが使用されますが、なかにはアマチュア無線が許される周波数から逸脱した周波数を発射できるよう改造したものもあり、自分勝手に周波数を選んで運用した結果、消防無線や警察無線に妨害を与える例もあります。
不法アマチュア無線機の例
アマチュア無線用アンテナの例
パーソナル無線は、平成 27 年 11 月 30 日をもって免許制度が終了しており新たに無線局の免許が付与されることはありません。
また、現在、すべてのパーソナル無線の免許期限が満了しており、有効な免許を持ったパーソナル無線は存在していません。
車両、船舶などに設置してあるパーソナル無線は、すべて不法パーソナル無線となります。
パーソナル無線に割り当てられていた900MHz帯の周波数は、現在、携帯電話に割り当てられており、不法パーソナル無線により携帯電話等に妨害を与えるおそれがあります。
不法パーソナル無線機の例
不法パーソナル無線用アンテナ
携帯電話の電波が届かない地下店舗やビル内で携帯電話の通話が可能となるように、「携帯電話中継器」等と称して販売されているもので、一部では「電波は微弱ですので電波法上の問題はありません」として販売されています。しかし、この装置は微弱な電波のレベルを越えているものが多く、携帯電話用基地局に妨害を与え、付近の携帯電話の使用を妨害する場合があります。
不法携帯電話中継装置本体
不法携帯電話中継装置アンテナ
免許不要の特定小電力トランシーバーと形状が似ており値段も安価ですが、これらの無線機は外国の規格で製造されているので、仮に日本製であっても使用する電波の周波数や出力は、日本の法令に合致していないため、他の無線局に妨害を与える可能性が高く日本国内では使用できません。
FRS/GMRSや個人、一般企業には免許にならない無線機の例
玩具用無線機等が使用する電波は、「著しく微弱」なものである等他の無線局に混信を与えないものについては、無線局の免許は不要です。しかし、アニマルマーカー(猟犬用発信器 等)やカーステレオに音を送信するFMトランスミッター、無線CCDカメラなどの中には、使用する電波の出力が大きく免許が不要なものには該当しない場合が多いので購入、使用には注意が必要です。
総務省では、発射する電波が電波法に定める著しく微弱の基準内にあるとして販売されている無線設備を購入して電波の強さの測定を行う取組(無線設備試買テスト)を実施し、その結果、著しく微弱の基準の許容値を超えることが明らかな無線設備に関する情報を公表しています。
FMトランスミッターの例
総合通信局では、独自に不法無線局の証拠を収集しています。また、捜査機関の協力を得て、不法無線局の共同取締りを実施しています。
共同取締りの様子