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写真やデータで振り返る公害等調整委員会の50年(第2回 昭和50年代半ば頃〜平成10年代)

公害等調整委員会事務局


 公害等調整委員会の50年の歩みを、写真やデータから振り返ります。
 今回は、主に、昭和50年代半ば頃〜平成10年代までをご紹介します。

1 昭和から平成へ

中央省庁再編

 昭和の終わり頃から、行政機関の再編や公社の民営化等が進み、行政改革も大きく進みました。 平成10年6月には、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)が制定され、国の行政機関の再編成、行政組織の効率化等の改革が定められました。
 翌年、総務省設置法(平成11年法律第91号)が制定され、平成13年1月6日から総理府の外局であった公害等調整委員会は総務省の外局となり、現在に至っています。(同年4月に現在の所在地に移転。)
旧総理府庁舎 旧総理府庁舎
(写真)公害等調整委員会庁舎
 左:旧総理府庁舎(〜平成13年4月) 右:中央合同庁舎4号館(平成13年4月〜)

環境基本法の制定

 都市・生活型公害問題、廃棄物問題、地球環境問題などに適切な対策を講じていくため、平成5年には、公害対策基本法を発展的に継承し、環境の保全について基本理念を定め、国などの責務を明らかにし、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定める環境基本法(平成5年法律第91号)が制定されました。

2 公害等調整委員会が取り扱った主な事件

公害紛争事件の傾向

 昭和50年代半ば頃〜平成10年代始め頃は、新規受付事件数は減少しましたが、10回以上にわたる参加申立があった、複数回の調停を要したなど、長期化した事件もありました。

大阪国際空港騒音調停申請事件

 本事件は、昭和48年2月、大阪国際空港(伊丹空港)に離着陸する航空機の騒音、振動等に係る公害紛争に関し、同空港周辺の住民から、同空港を管理、運用する国(代表者運輸大臣(当時))を相手方として、公害等調整委員会に最初の調停申請がなされました。
 申請人の数が2万人を超える我が国の民事紛争史上まれなマンモス事件で、公共性が高い国際空港の管理、運用に係る先例のない事件でした。周辺住民10グループから、当初申請のほか23回に及ぶ調停申請、参加申立を受けました。うち、8グループについて、中間調停など複数回の調停を経て、昭和61年12月に最終調停が成立しました。
       大阪国際空港(伊丹空港)を離発着する航空機
       (写真)大阪国際空港(伊丹空港)を離発着する航空機
       (昭和50年撮影) 写真提供:豊中市


参考
公害等調整委員会HP「大阪国際空港騒音調停申請事件」
機関誌「ちょうせい」第107号「大阪国際空港騒音調停申請事件のその後」PDF

スパイクタイヤ粉じん被害等調停申請事件

 昭和62年4月、長野県在住の弁護士62人から、スパイクタイヤメーカー7社を相手方として、スパイクタイヤの使用によって生ずる粉じんの被害の発生を防止するため、スパイクタイヤの販売停止(後に製造・販売停止に申請内容を変更)を求める調停が、長野県知事に申請されました。
 その後、本事件は公害等調整委員会に引き継がれるとともに、東北6県及び北海道の弁護士等207人が参加人として加わり、調停が進められた結果、昭和63年6月に、一定期間後にスパイクタイヤの製造・販売を中止する等を内容とする調停が成立しました。
 スパイクタイヤをめぐる調停事件は、平成元年8月及び10月に国(関係省庁)を相手とするスパイクタイヤ使用禁止等に係る適切な措置を講ずることを求める調停申請がなされましたが、平成2年6月のスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律(平成2年法律第55号)の成立後、平成3年3月に取り下げられました。

スパイクタイヤにより削られた舗装道路の粉じんが舞い上がる街並み

小田急線騒音被害等責任裁定申請事件

 平成4年5月、東京都の住民から、鉄道会社を相手方として、受忍限度を超える騒音、振動等による生活妨害等に係る被害について、損害賠償金の支払を求める等の責任裁定が申請されました。
 裁定委員会は、27回の審問期日と2回の証拠調べ期日を開催し、平成10年2月に話合いによる解決の余地を残しながら審問を終結しました。
 裁定委員会は、申請人らにとって生活環境の悪化を改善することが真の問題解決につながることを考慮し、審問終結後の平成10年4月、職権で調停に付し自ら処理することとし、調停案の受諾を勧告しました。
 その結果、 平成10年5月、一部の申請人らについて調停成立、同年7月、その他の申請人らについて一部認容する裁定がなされ、事件は終結しました。

尼崎市大気汚染被害防止あっせん申請事件

 平成14年10月、兵庫県尼崎市の住民から、国(代表者国土交通大臣)を相手方として、あっせん(注1)を求める申請がありました。
 申請の内容は、大阪高等裁判所での尼崎大気汚染公害訴訟(注2)の和解条項により実施した道路交通量調査に基づき、本件地域における大型車の交通量低減のため大型車の具体的削減目標を設定し、大型車規制施策を個別具体的に検討する等、和解条項を誠実に履行することを求めるものでした。また、平成15年5月、同申請人らから、阪神高速道路公団を相手方として、同内容の申請がありました。
 公害等調整委員会では、あっせん手続を7回開催し、当事者双方から意見聴取等を行うとともに、当事者立会いの下に、あっせん委員による現地調査を実施しました。
 当事者双方の意見を吟味、しんしゃくした上、平成15年6月の第8回あっせん手続において、あっせん委員からあっせん案を提示したところ当事者双方が受け入れ、合意が成立し、事件は終結しました。

混雑する国道43号

       (写真)混雑する国道43号、大型車も多い五合橋(ごごうばし)交差点より西を望む
       (平成16年撮影) 尼崎市立歴史博物館  あまがさきアーカイブズ所蔵


参考
公害等調整委員会HP「尼崎市大気汚染被害防止あっせん申請事件」
平成15年度 公害等調整委員会年次報告別ウィンドウで開きます

注1)あっせん 公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)に基づく公害紛争処理手続の一つ。あっせん委員が紛争の当事者間に入り、交渉が円滑に行われるよう仲介することにより、当事者間における紛争の自主的解決を援助、促進するもの。
注2)尼崎大気汚染公害訴訟  昭和63年12月、尼崎市の住民が、国、阪神高速道路公団及び企業9社に対し、大気汚染物質の排出差止め等を求めた訴訟。平成11年2月に原告と被告企業との間で和解が成立。国及び阪神高速道路公団については、平成12年12月、控訴審である大阪高等裁判所で係争中に和解が成立。

2 都道府県公害審査会等が取り扱う公害紛争事件

公害紛争の傾向

 全国の都道府県公害審査会等が取り扱う公害紛争事件について、公害等調整委員会設置後の昭和48年度から昭和57年度までの10年と直近10年とを比較すると、次の傾向が見られます。
(1)新規受付事件数及び区分
 設置後10年は年平均22.7件でしたが、直近10年は年平均40.8 件で約2倍となっています。また、その内訳は、設置後10年は見られた「あっせん」がほとんどなくなり、ほぼ全ての事件が「調停」となっています。
新規受付件数
(2)公害の種類別
 申請事件に占める割合を典型7公害別に見ると、直近10年では、産業型公害が減少し、都市型・生活環境型公害が増加しているためか、大気汚染、振動が減少する一方、騒音、悪臭が増加しており、特に騒音に関する事件申請は全体の半数近くを占めています。
公害の種類別S48-57 公害の種類別S48-57
注)複数の公害種類を併せて事件申請する場合があり、1件当たりの公害種類(年平均)は、設置後10年では約1.8、直近10年では約1.6 となっています。

4 略年表

昭和50年代半ば頃から平成10年代まで、関係する主なできごとは次のとおりです。
年 月 事   項
昭和60年7月 公害紛争処理法の一部改正により、公害苦情相談員の設置義務緩和
従来、都道府県、政令指定都市には、公害苦情相談員を置くことが義務付けられていたが、設置は任意となった。
昭和61年12月 ○大阪国際空港騒音調停申請事件の最終調停成立(昭和48年当初申請、昭和61年最終調停成立)
昭和62年10月 ○長野県知事から、スパイクタイヤ使用禁止等調停申請事件を引継ぎ(平成3年再調停取下げにより終結)
平成2年6月 ○スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律(平成2年法律第55号)
公布
平成4年5月 ○小田急線騒音被害等責任裁定申請事件を受付(平成10年5月一部の申請人について調停成立、同年7月その他の申請人について一部認容する裁定により終結)
平成5年11月 ○環境基本法(平成5年法律第91号)公布
平成10年6月 ○中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)公布
平成11年7月 ○総務省設置法(平成11年法律第91号)公布
平成13年1月 中央省庁再編により、公害等調整委員会は総務省の外局となる。
平成14年10月 ○尼崎市大気汚染被害防止あっせん申請事件を受付(平成15年合意成立)
注)年表のうち、「○」は関係法令や関連する動き。
 

次回予定

 次回の「写真やデータで振り返る公害等調整委員会の50年」(第3回)では、平成10年代〜現在までの歩みの紹介を予定しています。引き続きご覧ください。

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