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ICT利活用による防災・減災シンポジウムを開催
≪災害時における情報伝達手段とリスクコミュニケーション≫

 四国総合通信局は、ICTを活用した地域の課題解決に向け、国立大学法人愛媛大学との連携を強化する取組として、9月2日(火)、松山市の愛媛大学 南加記念ホールにおいて、災害時における情報伝達手段とリスクコミュニケーションを向上することで、愛媛県の防災力を高めることを目的に、「ICT利活用による防災・減災シンポジウム」を開催しました。

 主催者を代表して、愛媛大学 柳澤 康信(やなぎさわ やすのぶ)学長から、災害時に大切なものは「一番は命。その次はお金ではなく情報」と言われた東日本大震災の話から、災害時における被害を減らす上で不可欠なものは、まずは避難するための情報、さらには復旧するための情報を確実に伝達する手段をつくることが必要であると述べられました。
 また、愛媛県においてはLアラート(災害情報共有システム)や緊急速報メールなど積極的な導入取組が既にあり、これらを含めた先進的な取組を紹介する本シンポジウムがひとりひとりにとって有益な情報交換の場となることを期待すると挨拶がありました。

 元岡 透(もとおか とおる)四国総合通信局長からは、愛媛県は全国以上に急速に進展する少子高齢化や近い将来に発生が想定される南海トラフ巨大地震に起因して、経済、社会、教育などの分野でさまざまな課題を抱えており、地理的不利な条件を克服でき、地方の見方になる万能ツールであるICT利活用について理解を深めていただき、新しい連携が進むことを期待していると述べられました。
 また、愛媛大学が取り組まれている地域の発展を牽引する人材の育成、地域産業の活性化や知の成果を社会に還元し、地域社会の発展に資する活動をより効果的なものとするため、「四国総合通信局×愛媛大学」、「ICT×知の成果」の総合力により、今後も愛媛県の抱える様々な分野における地域の課題解決に取り組んでいきたいと挨拶がありました。

 最初に、総務省大臣官房 武井 俊幸(たけい としゆき)総括審議官から「防災・減災対策とICT」と題した特別講演がありました。
 東日本災害時は防災行政無線やテレビなど情報伝達手段が途絶え、24市町村が開設した臨時災害FM局で壁新聞の内容を放送したことは大変有効であったことなどが話されました。
 また、急速に普及しつつあるスマートフォンは、住民等が発信するSNS情報等の活用で更に可能性が高まることなど、あらゆる災害をクリアできるひとつのシステムはなく、状況に応じICTを有効活用する地域の力、地域関係者の連携が重要であることが述べられました。

写真:総務省大臣官房 武井 俊幸(たけい としゆき)総括審議官

総務省大臣官房
武井 俊幸(たけい としゆき)総括審議官

【資料1】防災・減災対策とICT(PDF 9.4MB)PDF

 次に、愛媛大学防災情報研究センター 准教授 二神 透(ふたがみ とおる)氏から、「地域の防災力を高めるためのICTによる地震火災・津波避難シミュレータの構築」と題した講演がありました。
 研究の背景となっている避難率が低い現状を受けて、地域で、住民、行政、専門家が一体となって防災力を高めるためにはICTを活用して災害リスクを認識、避難行動をイメージすることが重要であること。リスクコミュニケーションの合意形成を行うテクニックとして紹介された「CAUSE」モデルにおいては、「信頼」を中心に「気づき」「理解」「賛同」及び「実行」をキーワードに計画をたてることが大事であると話されました。
 また、火災延焼及び津波避難シミュレーターについて、避難経路や交差点・道路あるいは阻害ポイントなどの設定方法やシミュレーション結果などの紹介があり、地域におこりうる様々な災害に対して、事前に万一に備えるためのツールとしてICTを活用し、地域の中で連携コミュニケーションが進むことが大切であることを学びました。

写真:愛媛大学防災情報研究センター 准教授 二神 透(ふたがみ とおる)氏

愛媛大学防災情報研究センター
 准教授 二神 透(ふたがみ とおる)氏

【資料2】地域の防災力を高めるためのICTによる地震火災・津波避難シミュレータの構築
01(PDF 6.4MB)PDF 02(PDF 10MB)PDF

 次に、宇和島市 総務部 危機管理課 課長 山下 真嗣(やました しんじ)氏から、「コミュニティFM放送を活用した防災対策」と題した講演がありました。
 コミュニティFM局の開局に至るまでの経過や割込音声告知システムの概要、その媒体の1つである全世帯に無償配布した防災ラジオや広範囲屋外拡声器の特徴などが紹介されました。
 また、コミュニティFM局は防災専用の放送設備ではないが、設備費用の面あるいは臨時災害放送局へのスムーズな移行ができること、また、平時から親しんでもらっている媒体であることから、市民の自主性を深め防災意識を高めること、市民とのリスクコミュニケーションを図ることにつながり、防災減災に向けた情報伝達手段の1つとして有効であることが述べられました。

写真:宇和島市 総務部 危機管理課 課長 山下 真嗣(やました しんじ)氏

宇和島市 総務部 危機管理課
課長 山下 真嗣(やました しんじ)氏

【資料3】コミュニティFM放送を活用した防災対策(PDF 4.1MB)PDF

 次に、四国総合通信局 大野 真(おおの まこと)無線通信部長から、「四国における情報通信伝達手段の整備について」と題した講演がありました。
 四国総合通信局では平成26年度の重点目標として「四国の元気と安全をICTでつくります」をテーマに「ICTによる地域の防災力向上」を1つの柱として取り組んでいる中、住民に情報提供する面から、防災行政無線の整備状況や支援策、情報伝達手段の多重整備に向けて普及促進を図る緊急速報メールの導入状況が紹介されました。
 また、避難所等における住民が情報発信する面からは、NTT西日本による特設公衆電話の事前設置に係る自治体の導入促進、安否情報や生活情報などの提供にインターネット上のソーシャルサービスが有効であった教訓から、地方公共団体が整備する無線LANについて情報共有を行い、平時、災害時も利用できる「多様化」、「多重化」をキーワードにシステムを構築することが必要であることが述べられました。

写真:四国総合通信局<br />大野 真(おおの まこと)無線通信部長

四国総合通信局
大野 真(おおの まこと)無線通信部長

【資料4】四国における情報通信伝達手段の整備について(PDF 6MB)PDF

 最後に、独立行政法人情報通信研究機構 執行役 細川 瑞彦(ほそかわ みずひこ)氏から、「NICTにおけるソーシャルICT研究の推進と防災減災」と題した講演がありました。
 東日本大震災発生時の通信ネットワーク被害とその影響から、災害時に頼りになる情報通信インフラの早期実現が求められている中、昨年設置された「耐災害ICT研究センター」をはじめとする各センターの紹介及び災害に強い無線メッシュネットワークや短時間で高分解な観測を可能とした電磁波センシング技術にかかる研究成果が紹介されました。
 また、社会と融合し役立つ研究を促進するためには、各地域の課題解決に向けた取組を重視し、しっかりとニーズをつかみ応えることが大切であり、皆様の声を教えていただきたいと話されました。

写真:独立行政法人情報通信研究機構 執行役 細川 瑞彦(ほそかわ みずひこ)氏

独立行政法人情報通信研究機構
執行役 細川 瑞彦(ほそかわ みずひこ)氏

【資料5】NICTにおけるソーシャルICT研究の推進と防災減災(PDF 5.8MB)PDF

 本シンポジウムには約200名が参加し、防災減災に向けたICTの利活用について理解し、それぞれの立場から機関連携による取組が必要であるとの認識を深めることができました。
 なお、当日は会場前のスペースにて、情報通信研究機構が超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)用小型車載地球局を展示し、多くの方が見学していました。

写真:超高速インターネット衛星<br />「きずな」(WINDS)用小型車載地球局

超高速インターネット衛星
「きずな」(WINDS)用小型車載地球局

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