通信の秘密(電気通信事業法第4条)FAQ

電気通信事業法(昭和59年法律第86号。以下「法」という。)第4条及び関連規定のFAQを掲載しています。
本FAQにおいて「通信の秘密」とは、他法令への言及がなければ法第4条に定める「通信の秘密」をいいます。

目次

1. 総論

問1-1 :通信の秘密の保護の概要と趣旨を教えてください。
答 :
・「通信の秘密」は、憲法上の基本的人権の一つとして憲法第21条第2項後段において保障されているところ、同規定を受け、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密」については法第4条において保護され、法第179条に罰則が規定されています。
・「通信の秘密」を保護する趣旨は、通信が人間の社会生活にとって必要不可欠な意思伝達手段であることから、表現の自由の保障を実効的なものにするとともに、個人の私生活の自由(プライバシー)を保護することにあります。通信当事者は、電気通信事業においてこのような通信の秘密が保護されているという信頼の下に通信を行っており、この信頼は社会的に保護の必要性の高いものといえます(最高裁令和3年3月18日第一小法廷判決・民集75巻3号822頁参照)。
・電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密として保護されない場合であっても、憲法上の通信の秘密の保護の規定を受け、有線電気通信の秘密(有線電気通信法(昭和28年法律第96号)第9条、第14条等)、無線通信の秘密(電波法(昭和25年法律第131号)第59条、第109条等)として保護される場合があり、その他、日本郵便株式会社の取扱中に係る信書の秘密(郵便法(昭和22年法律第165号)第8条、第80条等)が保護されています。
 
問1-2 :「通信の秘密」に関する他の法令との適用関係について教えてください。
答 :
・電気通信の伝送の過程において、「電気通信事業者の取扱中」(問2-2参照)に該当すれば、電気通信事業法に定める通信の秘密の保護の対象となります。それ以外の有線電気通信や無線通信については、有線電気通信法第9条、電波法第59条等の保護の対象となる場合があります。
 

2. 適用対象と保護の範囲について

問2-1 :通信の秘密の保護の適用対象について教えてください。
答 :
・電気通信事業者に限るものではなく、「何人も」電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵してはならないとされています。電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵した者は刑罰の対象となり(法第179条第1項)、電気通信事業に従事する者については刑が加重されます(法第179条第2項)。
※法第164条第1項各号に掲げる電気通信事業を営む者(いわゆる「3号事業者」を含む)の取扱中に係る通信についても、法第4条は適用され、この通信の秘密を侵した者は刑罰の対象となります(法第164条第3項、法第179条第1項)。
 
問2-2 :「電気通信事業者の取扱中」の意味内容を教えてください。
答 :
・発信者が通信を発した時点から受信者が当該通信を受信する時点までの間をいい、電気通信事業者の管理支配下にある状態のものを指します。
・例えば、通信当事者の自宅内における親機から子機への伝送過程の通信や、企業の社内LANにおける通信は、電気通信事業者の管理支配下にあるものではなく、「電気通信事業者の取扱中」に該当しません。(問1-2参照)
・「取扱中に係る通信」とは、情報の伝達行為が終了した後も、電気通信事業者の管理支配下にある情報は保護の対象となる趣旨であり、例えば、通信終了後に電気通信事業者が記録・保存している通信に関する記録は、通信の秘密の保護の対象となります。
・電気通信事業者の管理支配下にない、通信当事者が管理する通信端末等に保存されているメール、チャット等の記録、通話の録音記録等については、「電気通信事業者の取扱中」に該当しませんが、それらを通信当事者の有効な同意なく取得・利用・提供等する行為については、不法行為責任等が生じる場合があります。
 
問2-3 :通信の秘密の保護の範囲を教えてください。
答 :
・通信の秘密の保護の範囲は、通信の内容のほか、個別の通信に係る通信の日時・回数、発受信場所、通信当事者の氏名・住所・電話番号等を広く含むと解されます。
・例えば、インターネット接続サービスの通信履歴や電話の通話履歴は、通信の秘密の保護の対象となり得ます。

【参考】
○(前掲)最高裁令和3年3月18日第一小法廷判決・民集75巻3号822頁(抄)
「(以下、電気通信の送信者の特定に資する氏名、住所等の情報を「送信者情報」という。)(中略)送信者情報は、通信の内容そのものではないが、通信の秘密に含まれるものであるから、その開示によって電気通信の利用者の信頼を害するおそれが強いというべきである。」
○東京地裁平成14年4月30日判決(抄)(ほか、東京高裁昭和54年2月14日判決等に同旨判示あり)
「「通信の秘密」には、通信の内容のほか、通信当事者の住所・氏名・電話番号、発受信場所、通信の日時・時間・回数なども含まれると解すべきである。けだし、通信の秘密を保障する趣旨は個人のプライバシーの保護、ひいては個人の思想、表現の自由の保障を実行あらしめることにあるところ、通信の相手方の住所・氏名・電話番号などを人に知られることによっても、個人の思想、表現の自由が抑圧されるおそれがあるからである。」
 

3. 通信の秘密の侵害行為について

問3-1 :「通信の秘密の侵害」に該当し得る行為について教えてください。
答 :
・通信の秘密の侵害に該当し得る行為については、(1)知得(通信当事者以外の第三者が積極的意思をもって知ろうとすること)、(2)窃用(通信当事者の意思に反して利用すること)、(3)漏えい(他人の知り得る状態に置くこと)の三つに分類されます。
 
問3-2 :「通信の秘密の侵害」に該当し得る行為について、どのような場合に適法となりますか。
答 :
・「通信の秘密の侵害」に形式的に該当する行為についても、通信当事者の有効な同意がある場合又は違法性阻却事由(刑法第35条、第37条第1項本文等)がある場合には、法第4条の規定に違反しないと解されます。
・有効な同意の取得については、原則として通信当事者の個別具体的かつ明確な同意が必要とされています。詳細は「同意取得の在り方に関する参照文書別ウィンドウで開きます」を参照ください。
・正当行為(刑法第35条)について:
正当行為には、(i)法令に基づく行為(法令行為)及び(ii)正当業務行為があります。
(i) 法令行為として違法性が阻却される行為には、例えば、裁判官・裁判所の発付する令状に基づく通信情報の提供、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年法律第37号)の傍受令状に基づく通信傍受、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)に基づく発信者情報の開示等が挙げられます。
(ii) 電気通信事業者による通信の秘密の侵害に該当し得る行為について、正当業務行為として違法性が阻却されるためには、電気通信役務の円滑な提供を確保する観点から、目的の正当性、行為の必要性、手段の相当性が認められることが必要であると解されています。電気通信事業者による行為が正当業務行為として認められ得る例として、課金・料金請求目的での通信履歴の記録・保存、電気通信事業者による経路制御等が挙げられます。
・緊急避難(刑法第37条第1項本文)について:
緊急避難として違法性が阻却されるためには、現在の危難があり、これを避けるために、法益の権衡(生じる害が避けようとする害の程度を超えないこと)、補充性(危難を避けるために他にとるべき方法がないこと)が認められる行為である必要があります。緊急避難として認められ得る行為には、例えば、児童ポルノサイトのブロッキング、自殺を示唆する書込みに係る発信者情報を公的機関に提供する行為等が挙げられます。
 

4. 通信の秘密の漏えい報告と業務改善命令について

問4-1 :どのような場合に通信の秘密の漏えい報告(法第28条第1項第2号イ)の対象となりますか。
答 :
・電気通信事業者は、自らの電気通信業務に関し通信の秘密の漏えいに係る事故が生じたとき、総務大臣に対し、報告する義務があります。事故や犯罪等の電気通信事業者に帰責性がない事由による漏えいであっても、報告しなければなりません。
・通信の秘密の漏えいに係る報告手続についてはこちら(総務省|電気通信消費者情報コーナー|電気通信事業における通信の秘密の漏えい事案の報告別ウィンドウで開きます)を参照ください。
・特定利用者情報の漏えいに係る報告手続についてはこちら(総務省|特定利用者情報の適正な取扱いに係る規律別ウィンドウで開きます)を、個人データの漏えいに係る報告手続についてはこちら(総務省|電気通信消費者情報コーナー|電気通信業における個人データの漏えい等事案の報告別ウィンドウで開きます)を参照ください。
 
問4-2 :どのような場合に業務の改善命令(法第29条第1項第1号)が発動されますか。
答 :
・電気通信事業者の業務の方法に関し、通信の秘密に係る情報の取扱いが不適切であるなど、通信の秘密の確保に支障があると認められる場合には、総務大臣が、当該電気通信事業者に対し、利用者の利益又は公共の利益を確保するために必要な限度において、業務の方法の改善その他の措置をとるべきことを命ずることができます。
・詳細は「通信の秘密の確保に支障があるときの業務の改善命令の発動に係る指針別ウィンドウで開きます」を参照ください。
 

5. 電気通信事業者が取り扱う利用者に関する情報について

問5 :電気通信事業者が取り扱う利用者に関する情報について教えてください。
答 :
・電気通信事業者が取り扱う利用者に関する情報としては、通信の秘密(法第4条)に該当する情報及び個人情報(個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条)が挙げられます。
・更に、法第27条の5に基づき、利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信役務を提供する者として指定を受けた電気通信事業者は、特定利用者情報(同条第1号及び第2号:通信の秘密に該当する情報及び利用者を識別することができる一定の情報)についても適正な取扱いの確保が求められます。
・これらの情報に関する適用関係については、こちら(総務省|特定利用者情報の適正な取扱いに係る規律別ウィンドウで開きます 1特定利用者情報について)を参照ください。
 

参考資料

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