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経済協力開発機構(OECD)

1 経済協力開発機構(OECD)における人工知能(AI)に関する取組の概要

 2016年(平成28年)4月に開催されたG7香川・高松情報通信大臣会合(日本語 / 英語 )において、高市総務大臣(当時)がAIネットワーク化の進展を見据えたAIの研究開発に関するガイドラインの策定を提唱し、参加国から賛同が得られた。

 その後、我が国においては、内閣府を中心に、「AI-Readyな社会」への変革を推進する観点から、政府統一のAI社会原則の検討を実施し、「人間中心のAI社会原則」(2019年(平成31年)3月決定)をとりまとめた。また、総務省では2016年(平成28年)よりAIネットワーク社会推進会議を開催し、「AI開発ガイドライン」(2017年(平成29年)7月公表)及び「AI利活用ガイドライン」(2019年(令和元年)8月公表)をとりまとめた。

 経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)は、2016年(平成28年)よりAIに関する国際的なガイドラインの策定を視野に入れた調査研究等の取組に着手。AIに関する国際カンファレンスの開催や分析レポートの作成、理事会勧告の策定(日本語PDF / 英語PDF )といった取組が進められてきた。また、総務省では、OECDの取組を主導・支援するとともに、専門家会合への参加等を通じて議論に積極的に貢献してきた。これまでのOECDにおける取組や総務省からの貢献に関する具体的な内容は以下のとおりである。

1-1 AIに関する国際カンファレンス “AI: Intelligent Machines, Smart Policies”(総務省・OECD共催)(2017年10月)

 総務省は、OECDとの共催により、2017年(平成29年)10月26日及び27日、フランス・パリにおいて、AIに関する国際カンファレンス「AI: Intelligent Machines, Smart Policies」を開催した。世界各国から300名を超える産学民官の関係者が一堂に会し、AIの研究開発の現状、AIの影響・リスク、政策の役割、国際協調の在り方等について報告が行われ、AIの発展・普及が社会経済にもたらす機会と課題について活発な議論が行われた。総務省がとりまとめた「AI開発ガイドライン」についても報告が行われ、パネルディスカッション等を通じ、各国関係者から広く理解と支持が得られた。

1-2 AIに関する分析レポート“AI in Society”(2017年11月〜2019年6月)

 OECDのデジタル経済政策委員会(CDEP)が中心となり、2017年(平成29年)11月より、AIに関する調査・分析が進められ、2019年(令和元年)6月、AIに関する分析レポート“AI in Society”が公表された。AI分野の研究開発の現状、開発や普及のトレンド、利活用の状況、政策担当者が留意すべき事項、各国のAIに関する政策動向等、AIに関する広範な現状分析の結果が取りまとめられている。我が国の取組については、AI開発ガイドラインやAI利活用原則案、人工知能技術戦略、人間中心のAI社会原則等が紹介されている。

1-3 AIに関する理事会勧告(2018年5月〜2019年5月)

 OECDは、2018年(平成30年)5月より、AIに関する理事会勧告の策定に向けた検討に着手。同年夏に専門家会合が設置され、世界各国から50名を超える産学民官の有識者や関係者が参加し、理事会勧告の内容を具体的に絞り込む議論が行われた。総務省は、有識者を会合に派遣するとともに、AI開発ガイドラインやAI利活用原則案、人間中心のAI社会原則等の内容を議論に反映する等、専門家会合の議論に大きく貢献してきた。

 OECDは、専門家会合の結果を踏まえ、AIについての最初の政府間のスタンダードとなる「AIに関する理事会勧告」を策定し、2019年(令和元年)5月にフランス・パリで開催されたOECDの閣僚理事会において採択・公表した。この勧告は、AIの関係者が共有すべき5つの価値観に関する原則と国際協力の推進を含む5つの加盟国政府等が取り組むべき政策で構成されている。 2019年(令和元年)6月に開催された茨城つくばG20貿易・デジタル経済大臣会合においては、「人間中心のAI」の考え方に基づき、AIの研究開発や利活用の在り方等について議論が行われ、G20としては最初のAIに関する合意文書となる「G20AI原則」を採択した。この原則はOECDのAIに関する理事会勧告が土台となっている。なお、G20AI原則については、同月のG20大阪サミットにおいても首脳レベルの議論が行われ、G20大阪首脳宣言の附属文書としても採択されたところである。

1-4 AI政策に関するオブザーバトリー

 OECDは、2018年(平成30年)5月よりAIに関する各国の取組の情報共有を進めるためのオンラインプラットフォーム「AI政策に関するオブザーバトリー」(OECD AI Policy Observatory、通称「OECD.AI」)の設置についての検討に着手し、2020年(令和2年)2月27日からその運用を開始した。オブザーバトリーは、各国の政策立案等の参考となるべく、AIに関する各種最新情報を比較できるようにすることを可能としたライブ型データベースである。各国・地域・団体等のAI戦略や個別政策やグッド・プラクティス等に加え、AIに関する指標及び計測手法を継続的に共有し、更新していくこととされている。
  オブザーバトリーでは、以下の4つのPillarから構成されている(2020年3月現在)。
  • Pillar 1:「AI原則」 OECDのAI原則及びプラクティガル・ガイダンス
  • Pillar 2:「政策分野」 公共政策分野ごとの各国の政策の取組や政策ニュース
  • Pillar 3:「トレンド及びデータ」 AIに関する各国のデータや指標
  • Pillar 4:「国及び取組」 AIに関する国家戦略や政策
 特にPillar1では、上記「AIに関する理事会勧告」に掲げられた各原則及び提言に対し、その履行に係るプラクティカル・ガイダンス(実務者向けガイダンス)が記載されており、AIネットワーク社会推進会議[(総務省)]で取りまとめられた「AI利活用ガイドライン」等の内容も反映されている。

2 ブロードバンドの接続に関する理事会勧告

 OECDは、経済・社会・文化の発展を加速させるものとしてのブロードバンドの役割に鑑み、2004年にOECDブロードバンド勧告を策定した。その後、昨今の市場の変化や技術の高度化、社会経済活動におけるインターネット接続の一層の必要性や重要性が認識される等、ブロードバントを取り巻く環境の変化を踏まえ、OECD通信インフラ・情報サービス政策作業部会(WPCISP)は2019年末より本勧告の改定に向けた検討を開始した。本勧告に関する有志のドラフティンググループに我が国も参加して原案作成に貢献するとともに、2020年秋に開催されたWPCISP及び総務省職員が議長を務めるデジタル経済政策委員会(CDEP)会合において議論し、2021年2月に理事会により採択された。
 新型コロナウィルス感染症の世界的な感染拡大に伴い、経済・社会活動の継続のため、ブロードバンドの接続の重要性が再認識される中、接続性を高め、ブロードバンドネットワークの質を向上させるために、政策立案者や規制当局が従うべき包括的な原則を提供するものとして、この勧告は、(1)ブロードバンドの展開における競争・投資・イノベーションの促進、(2)デジタルデバイドの解消、(3)強靭で、信頼性が高く、安全かつ大容量のネットワークの確保、(4)通信ネットワークの環境への負の影響の最小化、(5)接続性状況に関する定期的な評価の5原則及びその実現に向けた取組で構成されている。
□ OECDのブロードバンドの接続に関する理事会勧告(日本語PDF/英語PDF
 

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