『平成23年度第1回地域力創造セミナー』開催概要

開催日

平成23年5月26日(木)

参加者数

45名  (自治体職員、地方議会議員、団体職員等)

次第

10:30〜10:40
主催者挨拶
総務省 地域力創造グループ 地域自立応援課長  野村 善史
10:40〜12:10
基調講演・事例報告
基調講演
テーマ:グルメと映画のまちおこし〜地域発信型映画の取り組みと地域の活性化〜
講 師:株式会社 地域活性プランニング 代表取締役 藤崎 愼一 氏
事例報告
テーマ:「十日町市を有名にし隊(ごったく)」の活動状況
報告者:財団法人 十日町地域地場産業振興センター 振興事業課 課長補佐 庭野 方資 氏
12:10
閉会
※閉会後、名刺交換会(情報交換会)を開催(12:10〜12:30)

概要

<基調講演> グルメと映画のまちおこし 〜地域発信型映画の取り組みと地域の活性化〜
藤崎 愼一 氏 (株式会社 地域活性プランニング 代表取締役)
 地域活性に必要なのは、リピート率を高めること、つまり来てくれた人に喜ばれる「おもてなし」である。おもてなしは「人」がやること。したがって地域住民がこの基本をしっかり理解して実行することが大切だ。
 また、地域活性の取組みでは、誰が何を何時までにやるかを決めて実行することも重要だ。千葉県成田市の事例では、市、商工会、青年会議所の若手有志で「トレジャーハンター成田空援隊」を立ち上げ、できること・面白そうなことを話し合って自ら動くことで「成富うどん」の開発や18件のロケ誘致を実現した。愛知県豊橋市では、官民で広域市町村のロケ応援団を結成し、問合せには丁寧に素早く対応した。ひとつのまちで対応できなくても広域なら対応できることも増える。この結果、映画「ちゃんと伝える」や「宇宙戦艦ヤマト」の誘致に成功するとともに、豊橋のもてなしを訴えたいということから「豊橋カレーうどん」の発想が若手から生まれた。
 このグルメ、ロケ誘致は地域活性の一つの手法にすぎない。大切なのはシティセールス、まちを売り込むことだ。このためにも、チームのメンバーは地域活性の目指すべき姿を共有し成果をあげるべく取り組む。面白いこと・話題性のあるものであればマスコミは積極的に取り上げてくれ、自然に報道の機会や媒体が増える。B級グルメで有名なまちも、グルメで儲けることを目的としているのではなく、まちの知名度を上げるために、やる気のあるメンバーが集まって、自分たちが面白いと思うことを連携して、外部に情報発信しながらやっている。そして、そこで得た収益をまちづくり活動の資金として循環させている。
 地域活性化は、よく「よそ者」、「わか者」、「ばか者」が必要だといわれる。心底地元を愛し地域内に新しい風を起こそうとするが往々にして異端児扱いされて賛同者がいない場合が多い「ばか者」、年齢を問わず熱意は誰よりもある「わか者」、外部の視点で会議の軌道修正を行うファシリテーター役の「よそ者」である。
 行政は、あくまでも仕組みと調整によって市民のやる気を促す程度に留めるほうがよい。子どもの宿題を見る親のように行政が市民を全面的にバックアップしてはいけない。






<事例報告> 「十日町市を有名にし隊(ごったく)」の活動状況
庭野 方資 氏 (財団法人 十日町地域地場産業振興センター 振興事業課 課長補佐)
 「十日町市を有名にし隊(ごったく)」は、平成21年度の総務省地域力創造アドバイザー事業をきっかけに地元有志22名が集まった地域おこしグループ。アドバイザーの助言のもと、「十日町市の強みと弱み」、「十日町市のあるべき姿と課題」など、まずは自分たちの住むまちを良く知ろうというところからスタートした。
 話し合いを重ねる中で、十日町市は「“こだわり”を持って何かをするまち」だということに気付き、「自然が育んだこだわりのまち」を活性化のキーワードとした。
 現在、「ごったく」は「特産品部会」、「広報部会」、「ロケ応援団」の3つで構成されている。新しい特産品としては、これまでに米粉を蒸して作る「ぺたんこあんぼ」、苧麻を粉にして練り込んだ「からむし麺」、「ごったくコロッケ」など郷土食や地域産品を素材に開発した。この開発ではフェスタなどの大試食会を実施して市民の反応を確かめた。また、商品概要の紹介や関わる人の思いだけではなく、消費者にとってどんな購入メリットがあるかということも合わせて説明・発信するようにしている。人を呼ぶために実施しているロケ応援では、今回の沖縄国際映画祭で上映された地域発信型映画「雪の中のしろうさぎ」のサポートを行った。
 「ごったく」を立ち上げる際は、商工会、青年会などのメンバーのほか、事務局が「ばか者」を探して呼びかけを行った。ただし、話し合いを重ねる中、やる気のない人、ただ批判的な人は脱落し、やる気がある人のみが自然に残っていった。そして、行政に頼ることなく、活動全てをメンバーで役割分担しており、全員が主体的に動いている。事務局や行政はお互いに連絡を密にして、議事録作成や事務調整など彼らが動きやすい環境づくりや裏方役に徹している。




<パネルトーク・会場質疑>

庭野氏:「強み」、「弱み」については十日町でもいっぱい出したが、どれも強くなかった。たとえば、雪はどこにでもあるし、特産品の着物も京都の方が強い、コシヒカリは隣の六日町が本場など、どれも強くなかった。しかし、コシヒカリを筆頭に非常に“こだわり”を持って何かをやる「まち」だということに気がついた。これが「自然が育んだこだわりのまち」というキャッチコピーにつながり、現在では全ての事業にそのキャッチコピーをつけて展開している。

藤崎氏:原点を見ることと、考え続けること、やり続けることが大事。答えはすぐ出ない。「強み」、「弱み」は考えるきっかけで、「これでいいのかな」と検証してみることが大切だ。特に、多くの人に聞いてみることで最大公約数が見えてくる。その最大公約数は、そんなに的をはずしていない。
 あと大切なのは「人を活かすこと」。人にはそれぞれ得意なことがあり、先頭に立ってやりたい人に補助役を頼んでもフラストレーションが溜まるし、サポートに喜びを感じる人にアイデアを出せと言ってもなかなかできない。それぞれの人に適した役割分担=コーチングが大切である。

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