総務省トップ > 政策 > 白書 > 27年版 > 新興国でのICT利活用の高度化
第1部 ICTの進化を振り返る
第3節 地球規模でのICT利活用の波及

(2)新興国でのICT利活用の高度化

以上のような順調なインターネットの普及を背景に、中国やインド、ASEAN諸国といった新興国ではICT利活用が高度化している。ここではその例として、スマートフォンの普及、ソーシャルメディアやメッセージングアプリの利用拡大、eコマースの進展について紹介する。

ア スマートフォンの普及

世界的なスマートフォンの浸透とともに、中国、インド、ASEAN諸国といった新興国でもスマートフォンは急速に普及しつつある。2014年時点でのスマートフォン稼働台数をみると、中国が約9億台、インドが約1億台、インドネシアが約1億台に達している。2019年には中国が13億台、インドが7億台、インドネシアが2億5千万台を超えると予想されている(図表2-3-2-3)。

図表2-3-2-3 中国、インド及びASEAN主要国でのスマートフォン稼働台数
(出典)IHS Technology

携帯電話出荷台数に占めるスマートフォンの割合も年々上昇傾向にあり、米調査会社IDCによると、2014年第4四半期の時点で、ベトナムでは43.2%、インドでも35%に達している(図表2-3-2-4)。

図表2-3-2-4 ベトナムとインドにおける携帯電話出荷のうち、スマートフォン及びフィーチャーフォンの占める割合の推移
(出典)IDC発表資料を元に作成12、13

また、新興国で最近出荷されているスマートフォンのメーカー別シェアをみると、Samsung等のグローバルメーカーだけでなく、各国の地場メーカーの製品が大きなシェアを占めていることがわかる(図表2-3-2-5図表2-3-2-6図表2-3-2-7)。要因としては、スマートフォンのコモディティ化が進みつつある中、廉価な端末を求める新興国消費者のニーズに応える製品を地場メーカーが提供していることに加えて、各国政府が政策的に国内ICT製造業の振興を図っていることが挙げられる。

図表2-3-2-5 インドにおける2014年Q4のスマートフォン出荷メーカー別シェア
(出典)IDC発表資料を元に作成
図表2-3-2-6 フィリピンにおける2014年のスマートフォン市場シェア
(出典)IDC発表資料を元に作成14
図表2-3-2-7 インドネシアにおける2014年Q4でのスマートフォン市場シェア
(出典)Counterpoint発表資料を元に作成

こうした中、Googleが、各国の地場メーカー等と連携し、新興国ユーザー向けスマートフォン「Android One」の提供を開始し、注目を集めている。Googleでは、「Android One」を、新興国を中心にまだスマートフォンを持っていない「次の50億人(next five billion)」に低価格なスマートフォンを提供するためのものと位置付けている15。「Andoroid One」は各国の地場メーカー等により製造・販売されるが、Googleが設計や部品調達等に関与することで性能の標準化が図られている。

「Android One」に対応した最初のスマートフォン端末は、2014年9月、インドの地場メーカーMicromax、Karbonn、Spiceの3社から6,399インドルピー(約105ドル)で販売開始された。インド最大手の通信事業者Airtelと提携することで、通信料金の低廉化も図られている。

「Andorid One」はその後、バングラデシュ、インドネシア、フィリピン等でも各国の地場メーカーにより販売が開始されている(図表2-3-2-8)。

図表2-3-2-8 Android One
(出典)Google提供資料
イ ソーシャルメディアやメッセージングアプリの利用拡大

スマートフォンの普及にも促されつつ、新興国では、ソーシャルメディアやメッセージングアプリの利用も広がっている。Facebookへの月間アクティブ利用者数をみると、総数13億9,300万人のうち、アジア太平洋地域が4億4,900万人、その他の地域(欧米、アジア太平洋以外)が4億3,600万人と全体の63.5%を占めており、新興国でも着実に利用者が増加していることが伺える16図表2-3-2-9)。

図表2-3-2-9 Facebookの地域別月間アクティブユーザー数
(出典)公開資料を元に作成
「図表2-3-2-9 Facebookの地域別月間アクティブユーザー数」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

また、インターネット利用者の中で、Twitterに1か月に1回以上アクセスしたことがある人の割合は、2014年には全世界平均で24.4%だったが、その割合は新興国ほど高くなっている。たとえば、インドネシアで61.7%、インドで56.9%となっており、新興国でTwitterが活発に利用されていることがわかる(図表2-3-2-10)。

図表2-3-2-10 Twitterの国別アクセスの割合の推移と予測(赤色が新興国)
(出典)eMarketer2014年5月発表資料を元に作成

新興国ではこれまでオンラインでのテキストのやりとりはショートメッセージ(SMS)が中心であったが、スマートフォンの普及に伴い、WhatsAppやLINE等のメッセンジャーアプリへの移行が進みつつある。たとえば、Global WebIndexによると、インドではメッセンジャーアプリ利用者は2013年から2014年には113%増加した17。またインドでのメッセンジャーアプリはWhatsAppの人気が非常に高く、インドでメッセンジャーアプリを利用している人のうち半数の52%がWhatsAppを利用している(図表2-3-2-11)。WhatsAppは2013年8月にはインドでの月間アクティブユーザー数が2,000万人だったが、2014年10月に7,000万人まで拡大した18図表2-3-2-12)。同社によると、世界のインターネット利用者のうちの40%、アジア太平洋地域のインターネット利用者のうちの46%がメッセンジャーアプリを利用している。このようにインドをはじめ新興国ではメッセンジャーアプリが新たなコミュニケーションのプラットフォームとして、その地位を確立していることがうかがえる。

図表2-3-2-11 インドで利用されているメッセンジャーアプリの利用者の割合
(出典)GlobalWebIndex発表資料を元に作成
図表2-3-2-12 インドでのWhatsAppのアクティブユーザー数の推移
(出典)公開情報を元に作成
「図表2-3-2-12 インドでのWhatsAppのアクティブユーザー数の推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら
ウ eコマースの進展

スマートフォンの急速な普及と、それに伴うインターネットへのアクセスによって人々の消費行動も変わってきた。その1つがeコマースの登場と発展である。日本では1990年代後半から2000年代初期にかけてインターネットの普及とともに多くのeコマースのサービスが登場してきたが、現在の新興国ではその時の日本や欧米先進国のように、新たに登場したeコマースによって人々の生活が変わろうとしている。

調査会社のフロスト&サリバンは2014年7月、東南アジアのeコマース(電子商取引)市場は2013年から2018年にかけて年平均成長率37.6%で成長する見通しとなり、世界で最も速いペースで成長を遂げる地域の一つとなるとの予測を発表した19。東南アジア6か国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)におけるB2Cのeコマース市場規模は、2013年の70億米ドルから2018年には345億米ドルに到達すると予測している。

同社の調査によると、2013年の中国における小売全体の売上におけるeコマース売上は全体の7.8%を占めており、アメリカや欧州、日本よりも高い割合である。これに対し、東南アジアについては、シンガポールは5.1%あるものの、マレーシアの1.2%以外は、まだ小売全体の売上の1%未満であり、今後大きな成長余地があることがわかる(図表2-3-2-13)。

図表2-3-2-13 小売全体の売上におけるeコマース売上の割合(2013年)
(出典)フロスト&サリバン発表資料を元に作成

またコンサルティング会社のA.T.カーニーは、2015年4月にeコマースの市場規模、消費者動向、成長性、インフラの4つの観点から全世界でのeコマースの指標上位30か国を公開した20。それによると、上位にはアメリカ、英国、日本、ドイツ、フランス、韓国等の先進国が続いたが、中国がアメリカに次ぐ2位となっており、新興国からも17位にメキシコ、21位にブラジルがランクインした。同社の分析によると、メキシコはアメリカに隣接している地の利があることからアメリカや海外のサイトから購入している。ブラジルはソーシャルメディアの人気が高く、それらを上手に活用しているeコマースの人気が高い。

また、同社では、各国において過去3か月間にeコマースで商品を購入した人の割合を調査したところ、下記のような結果となった。国によってeコマースで購入する商品の傾向は異なるものの、総じて、電子機器や家電製品、ファッション、書籍はeコマースでの購入率が高いことがわかる(図表2-3-2-14)。

図表2-3-2-14 eコマースで過去3か月間に商品を購入した人の割合(商品別)
(出典)ATカーニー, Connected Consumer Studyを元に作成

その一方で、東南アジアのeコマース市場の成長を抑制するいくつかの要因として、東南アジアの一部の国では、クレジットカードの所有率が10%に満たないことがあげられる。また、同地域の50%を超える人々が銀行口座を所有していないため、支払手段の確立が大きな課題となっている。さらに、インターネット詐欺もインドネシアをはじめとする東南アジアの複数の国々で問題となっている。また他にはロジスティック(物流)の改善なども今後求められてくるだろう。



12 IDC(2015) 12th Mar 2015, “Vietnam Smartphones Increase by 57% in 2014, Heats Up by Budget Models, Says IDC”
 

13 IDC (2015)24th Feb 2015, “India Smartphone Market Contracts in Q4 2014, Says IDC”
 

 

14 IDC (2015)23rd Mar 2015, “Pulling Ahead of Vietnam, Philippines Now the 3rd Largest Smartphone Market in Southeast Asia, Says IDC”
 

15 Google(2014) 15 Seop 2014, “For the next five billion: Android One”
 http://googleblog.blogspot.jp/2014別ウィンドウで開きます /09/for-next-five-billion-android-one.html

16 Techcrunch(2015) 28th Jan 2015, “Facebook’s Powerful Ad Tools Grew Its Revenue 25X Faster Than User Count”
 http://techcrunch.com/2015/01/28/epic-ad-measurement/別ウィンドウで開きます

17 “113% Increase in the Number of Indians Using Mobile Messaging Apps Since 2013: GlobalWebIndex Research”
 http://www.technuter.com/breaking-news/113-increase-in-the-number-of-indians-using-mobile-messaging-apps-since-2013-globalwebindex-research.html別ウィンドウで開きます

 

18 “WhatsApp Growth In India: 20 Million To 70 Million Users In Just One Year !”
 http://dazeinfo.com/2014/11/03/whatsapp-growth-india-20-million-70-million-users-just-one-year/別ウィンドウで開きます

19 フロスト&サリバン(2014年7月4日)「東南アジアのeコマース市場が2018年までに年平均成長率37.6%で成長、市場規模は345億米ドルに到達」
 http://www.dreamnews.jp/press/0000095652/別ウィンドウで開きます

20 ATKearney, “Global Retail E-Commerce Keeps On Clicking The 2015 Global Retail E-Commerce Index”
 

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