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第2部 ICT が拓く未来社会
第2節 地域の雇用とICT

(4)ICTによる雇用創出効果

ここまでICTが雇用を代替する効果について職種別に検証してきた。その結果、事務従事者や製造・制作作業者等の職種でICTが雇用を代替しており、専門的・技術的職業従事者においてICTは雇用を代替し難いことを確認した。

以下では、ICTが雇用を創出する効果についてアンケート調査をもとに検証を行う。2では、マクロデータを用いたモデルをもとに、情報資本ストックが蓄積することで経済が成長し雇用が増加する効果を試算しているが、既に述べたように、新たな雇用創出効果については、必ずしもモデルでは捉えきれない部分もある11。そのため、ビジネスモニターを対象としたアンケート調査12を実施し、ミクロデータを用いてICTによる雇用の創出効果を確認する。

本アンケート調査では、事業所におけるICTの利用状況、及び、既存事業の成長の状況、新規事業の創出状況、雇用の状況を尋ねた。プレ調査と本調査の二段階調査を行い、都道府県(内訳として政令指定都市を含む)別に、2012年経済センサス調査における事業所数の分布に従う形で割り付けを行い収集した。総回答数は、プレ調査の段階で9,316サンプル、本調査の段階で2,171サンプルである。

本アンケートの分析に際して、事業所のICTの利活用の度合に応じて、ICT進展度が高いグループとICT進展度が低いグループの2つのグループに分けている。ICT進展度は、事業所におけるネットワークの整備状況、端末の従業員への貸与状況、クラウドの利用状況、ICTシステムの利用状況、データの活用状況に応じてスコア化を行い作成した。図表3-2-1-10には、ICT進展度スコアの項目を示した13

図表3-2-1-10 ICT進展度スコアの項目
(出典)総務省「ICTによる地域雇用創出に向けた課題と解決方策に関する調査研究」(平成27年)

このアンケート結果によると、ICT進展度が平均より高いグループと低いグループでは、既存事業の成長及び新規事業の創出に差がみられる。図表3-2-1-11には、ICT進展度の高低別に、既存事業の成長の有無を示しているが、ICT進展度が平均より高いグループの方が、成長している既存事業があると回答している事業所の割合が26.4ポイント高い。また、図表3-2-1-12をみると、ICT進展度が平均より高いグループの方が新規事業を創出している事業所の割合が16.5ポイント高い。

図表3-2-1-11 ICTの進展と既存事業の成長
(出典)総務省「ICTによる地域雇用創出に向けた課題と解決方策に関する調査研究」(平成27年)
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図表3-2-1-12 ICTの進展と新規事業創出
(出典)総務省「ICTによる地域雇用創出に向けた課題と解決方策に関する調査研究」(平成27年)
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加えて、既存事業の成長及び新規事業の創出に伴い正規社員数が増加したとする事業所は、ICT進展度が平均より高いグループの方が、それぞれ、14.6ポイント(既存事業の成長、図表3-2-1-13)、18.2ポイント(新規事業の創出、図表3-2-1-14)も高い。

図表3-2-1-13 既存事業の成長に伴う正社員数の変化
(出典)総務省「ICTによる地域雇用創出に向けた課題と解決方策に関する調査研究」(平成27年)
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図表3-2-1-14 新規事業の創出に伴う正社員数の変化
(出典)総務省「ICTによる地域雇用創出に向けた課題と解決方策に関する調査研究」(平成27年)
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これらの結果から、ICTの利活用が企業の成長を促し、雇用創出に対して効果のあることが分かる。新規事業を創出している事業所に対して、新規事業創出の要因としてICTがあげられるかを尋ねたところ、1割を超える事業所が、コンピューター処理能力の向上、パソコンやスマートフォンのアプリケーションの活用、スマートフォン/タブレット端末の普及、通信ネットワークの高度化を要因としてあげている(図表3-2-1-15)。

図表3-2-1-15 既存ビジネス成長、新規事業創出の要因
(出典)総務省「ICTによる地域雇用創出に向けた課題と解決方策に関する調査研究」(平成27年)
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11 2のモデルでは、ICTが資本や労働以外の成長要因となる全要素生産性を向上させて成長に寄与する部分は考慮されていない。

12 アンケートの実施条件の詳細については巻末付注3を参照。

13 各項目について「利用している」と回答した事業所に対して、1ポイント与える形でICTの進展度合いをスコア化している。

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