総務省トップ > 政策 > 白書 > 27年版 > デマンド交通サービスによる地域住民の移動手段確保(柏市「カシワニクル」)
第2部 ICT が拓く未来社会
第3節 地域の課題とICT

(3)デマンド交通サービスによる地域住民の移動手段確保(柏市「カシワニクル」)

近年、地域の公共交通サービスの衰退が指摘されており、2009年〜2014年の間にバス路線は約8,160kmが廃止され、鉄道路線は約105kmが廃止された13。既に2011年度には、バス停500m圏外かつ鉄道駅1km圏外である公共交通空白地域は、我が国の可住地面積の約3割に達している14

こうした公共交通空白地域における住民の移動手段として注目が集まっているのが、ICTを活用したデマンド型の交通サービスである15

千葉県柏市でも、路線バスの一部区間が2007年度に廃止された結果、公共交通空白地域が発生した。これを補完するため市が支援する形でコミュニティバス等を運行していたが、2013年から実証実験としてデマンド交通の運用を行い、2014年にはデマンド交通サービス「カシワニクル」の運行サービスを開始した。

「カシワニクル」は、同じ方向に行きたい人がいる場合、セダン型のタクシー車両(定員4名)に相乗りして目的地に向かうことができるサービスであり、予約制のサービスである(図表3-3-2-5)。カシワニクルは、地域住民の買物や通院等の日常生活、レクリエーションや観光等の移動手段となっている。運行エリアは2005年に柏市に編入合併された旧沼南町地域であり、400箇所程度の乗降場所がある(図表3-3-2-6)。運行時間は、月曜日から土曜日の午前8時半から午後7時までであり、運賃は、同一区域内は300円、別の区域へ移動する際は500円である。

図表3-3-2-5 カシワニクル車両
(出典)柏市提供資料
図表3-3-2-6 カシワニクルの運行エリア
(出典)柏市提供資料

デマンド交通のシステムは東京大学の大和裕幸研究室が中心となって開発したものを採用している。利用者が予約をすると、自動的に運行計画が作成され、車両への運行指示も行われるようになっている。柏市では予約は電話受付のみとしているが、システムとしては、利用者のスマートフォンやパソコンを通じたインターネットの予約フォームへの入力でも予約が可能となっている(図表3-3-2-7)。

図表3-3-2-7 東京大学のオンデマンド交通システムの仕組み
(出典)東京大学大学院 新領域創成科学研究科 大和研究室提供資料


13 交通政策審議会 交通体系分科会 地域公共交通部会 最終とりまとめ「地域公共交通の充実に向けた新たな制度的枠組みとその活用に関する基本的な考え方」(平成26年8月6日)

14 平成25年度 第1回(第9回)交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会「資料2 地域公共交通の現状等について」

15 総務省が2015年3月に全国2,000人のモニターを対象に行ったアンケートでオンデマンド交通の利用意向を尋ねたところ、「利用したい」あるいは「利用を検討してもよい」が約半数の51.2%となった。アンケートの概要は巻末の付注5を参照。

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