総務省トップ > 政策 > 白書 > 27年版 > プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(兵庫県神戸市)
第2部 ICTが拓く未来社会
第3節 ICTによる新たなワークスタイル―テレワークの可能性

(2)プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(兵庫県神戸市)

ア 全社員を対象とした理由不問の在宅勤務制度を導入

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社は、洗剤、シャンプー、紙おむつなどの製品を世界180か国で提供しているグローバルな日用消費財メーカーの日本法人である。同社では、20年以上にわたり、多様性に富んだ社員の個性を尊重する「ダイバーシティ」への取組を進めている。その一環として同社では柔軟な勤務形態を導入し、ワークライフ・バランスの実現を目指している。

同社では、対象を子育てや介護などを行っている社員に限定してはいたが、原則週に1日、条件によっては最大で2日までの在宅勤務制度を導入していた。2008年10月からは対象を広げ、一部の職種を除く役員から一般社員までの全社員が、理由を問わず週に1日の在宅勤務を行える制度を導入した。在宅勤務をするにはあらかじめ曜日を指定しておく必要があるが、必要に応じて変更することも可能である。また、上司の了承の下、臨時の在宅勤務や、在宅での時間短縮勤務が行えるなどの柔軟な運用もされている。

しかし、導入当初、在宅勤務の利用者数は想定したほどには増えなかった。そのため同社では、まず管理者を対象に積極的に在宅勤務を啓発した。また、社長や役員といったトップマネジメントが率先して在宅勤務を実践し、その成果を全社員にメールで紹介した。

このような取組により在宅勤務の取得率は上昇し、現在では役員や管理職を含む多くの社員が、週に1回の在宅勤務を利用するようになっている。その結果、在宅勤務を行うことはもはや特別なことではないという風土ができている。

イ 在宅勤務を支えるICTインフラ

オフィス外で仕事をしても業務効率が下がることがないよう、同社ではICTを積極的に活用している。2008年にはビデオ会議システムを導入、2011年にはPC上で互いの顔を見たりパワーポイントで作成した資料を共有したりしながら会議を行えるシステムを導入した。仕事に必要な資料は全てクラウドストレージに保管されているため、自宅からであってもいつでもアクセスできるようになっている。また、上司や同僚とのコミュニケーションはPC上のチャットシステムを通じて行える(図表4-3-4-2)。

図表4-3-4-2 パソコンの会議システムを使ったコミュニケーション
(出典)プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社提供資料

これには、同社がグローバルに展開する外資系企業であり、元々国境を超えたチームで仕事をしたり、世界各地から電話会議に同時参加したりする機会の多いことも影響している。同社にとっては、社員が世界中どこにいても、問題なく仕事をすることができることが重要であり、そのためのインフラ整備が重点的に進められていた。

このような充実したICTインフラを活用することで、オフィスの外からでも、通常の業務を支障なく行えるようになっている。

ウ 在宅勤務とダイバーシティの経営への効果

在宅勤務制度を初めとする柔軟で働きやすい職場環境を整備し、ダイバーシティを積極的に推進してきた結果、同社では、役員に占める女性比率が57.1%、管理職では34.0%と、国内他企業に比べて高い水準に達している(2014年7月時点)。

また、多様性を尊重し異なる意見を受け入れる社風は、数々の革新的な商品や販促手法を生み出すための経営戦略の基盤に位置付けられており、日本法人の売上は、ダイバーシティに注力するようになって以降も拡大しており、以前と比べて1.5倍以上に拡大する要因の一つとなっている。

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