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第2部 ICTが拓く未来社会
第4節 オリンピック・パラリンピックとICT

2 2020年東京大会に向けて

このようにICTはオリンピック・パラリンピックを支えるインフラとして不可欠なものになっている。

これまでの大会からみても、オリンピック・パラリンピックは新たなイノベーション創出の契機となる。2020年東京大会も、我が国の2020年以降の持続的な成長の実現に向けた非常に重要な機会であり、世界各国への我が国先端ICTの貴重なショーケースの場となる。そのため、総務省では、2014年11月から「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」を開催し、関係機関、関係省庁とも連携し、2020年東京大会以降の我が国の持続的成長も見据えた、社会全体のICT化を推進するための産学官のアクションプランを検討している(図表4-4-2-1)。

図表4-4-2-1 懇談会の体制図

2020年東京大会での活用が期待されている技術の一つとして、現在のフルハイビジョンと比べ大幅に高精細な映像が実現できる4K・8K映像技術がある。2014年9月に総務省が公表した「4K・8K推進のための新たなロードマップ」では、2016年にBSによる4K・8K試験放送を開始、2018年までの可能な限り早期にBS等による実用放送を開始し、2020年の東京大会開催時には、4K・8Kが普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K番組を視聴できる環境を整備することを目標としている(図表4-4-2-2)。

図表4-4-2-2 2020年東京大会に向けた4K・8Kの推進
(出典)「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合中間報告(平成26年9月)」を基に作成

以上、ICT分野の最近のトレンドをヒントとして、ICTの更なる進化が暮らしに及ぼすインパクトを探ってきた。ここでは、検討の結果得られた示唆のいくつかを整理してみよう。

第1節でみたウェアラブルデバイスをはじめとする新たなICT端末の普及は、スマートフォンによって実現したインターネットのモバイル化を更に一段と推し進め、誰もが意識せずにネットワークに接続する「インターネットの空気化」とでも呼ぶべき事態を実現するかもしれない。これは、分析可能なパーソナルデータの飛躍的な増大につながり、医療・健康をはじめとする多くの分野で新たなイノベーションを引き起こすだろう。

第2節でみたように、ソーシャルメディアの急速な普及はシェアリング・エコノミーという新たな経済活動を生み出しつつある。この動きは現在はまだ萌芽的なものだが、中長期的には、企業が従業員を通じて消費者にサービスを提供するという現在の経済活動の仕組み自体を根底から変える可能性を秘めている。将来的にはサービス業の構造は、グローバルな巨大企業がビッグデータの解析を通じて均質でコストパフォーマンスに優れたサービスを提供する経済圏と、個人が個人に対して他所では得られないユニークなサービス経験を提供する経済圏とに、二極分化していくかもしれない。

第3節でみたように、ICTは私たちのワークスタイルも変えつつある。テレワークをはじめとしたICTによる柔軟なワークスタイルの普及は、第1節でみたパートナーロボットの普及とも相まって、子育てや介護と仕事との両立を助け、マクロでの労働参加率向上に資するとともに、個人が持つポテンシャルを最大限発揮できる社会の構築につながっていく。場所にとらわれない働き方の普及は、故郷や自然豊かな地域で働きたい人々のニーズに応える形で、地域活性化にもつながるだろう。

2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会

「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」(以下、「2020年東京大会」)は、我が国全体の祭典であるとともに、ICTに関わるサービスやインフラの高度化を図り、優れたICTを世界に発信する絶好のチャンスとして期待されている。また、国際オリンピック委員会(IOC)に提出された立候補ファイルにおいても、2020年東京大会については、日本の優れたICTを活用して実施していく旨を表明している。これらを踏まえ、総務省は、2020年東京大会以降の我が国の持続的成長も見据えた、2020年に向けた社会全体のICT化の推進の在り方(図表1)について検討を行うことを目的として、2014年11月から、総務大臣主宰の「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」7を開催している。

本懇談会では、無料公衆無線LAN環境の整備、「言葉の壁」をなくす多言語音声翻訳システムの高度化、日本の魅力を海外に発信する放送コンテンツの海外展開、4K・8Kやデジタルサイネージの推進、第5世代移動通信システムの実現、オープンデータ等の活用、サイバーセキュリティ対策等の実現を図るべく、社会全体のICT化の推進に向けたアクションプランの検討を行っている。

図表1 2020年に向けた社会全体のICT化全体像


7 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/2020_ict_kondankai/index.html別ウィンドウで開きます

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