平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

4 人にやさしく、ゆとりある生活環境の実現

 

(1)  消費者重視の視点に立った政策の推進


 ア 総合的な消費者行政の推進
 郵政省が所管する電気通信行政・郵政事業は、国民生活に密着したものであり、行政・事業の実施において、消費者重視の視点が求められるところである。また、情報化の進展等を背景に、消費者の選択機会は増大し、商品知識が豊富になるなど、国民生活、消費者ニーズは、従来に増して多様化、高度化してきているところである。
 そこで、6年度においては、このような消費者ニーズの変化に迅速、的確に対応した行政や事業を実施していくため、全省的・統一的視点から総合的に消費者行政を行うための所要の組織改正を実施したほか、省の消費者政策の総合的な実施体制づくりの場として「消費者政策会議」を設置し、消費者政策の充実を図っている。
 イ 電気通信サービスモニター制度の推進
 郵政省では、電気通信サービスに関する消費者の意見や要望を幅広く把握し、今後の電気通信行政に反映させていくため、6年度から「電気通信サービスモニター制度」を発足させた。
 全国 960名の消費者に電気通信サービスモニターを委嘱し、電気通信サービスに関するアンケート調査を行うとともに、6年12月に全国11か所で第1回の電気通信サービスモニター会議を開催し、電気通信サービスに関して日頃感じている点、利用者として改善してほしい点等について意見・要望の把握を行った。
 ウ 郵便局モニター制度の推進
 郵政省では、郵便、為替貯金及び簡易生命保険事業の制度、サービス内容等に対するお客様の意見及び要望を聴取し、サービスの改善や新サービスの開発に役立てるとともに、郵政事業についての理解を深めてもらうため、元年度から「郵便局モニター制度」を実施しており、全国 4,000名のお客様にモニターを委嘱している(個人モニター 3,000名、事業所モニター 1,000名)。
 6年度においては、従来と同様にアンケート調査を実施したほか、初めて全国の郵便局モニターが参加するテレビ会議を7年1月に開催し、モニターと郵政大臣及び本省幹部職員との直接対話の中から郵政事業の制度、サービスの内容等に関する生の意見を聴取した。
 

(2)  高齢化社会への対応と福祉社会の実現


 ア 通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進
 社会経済の情報化が急速に進展するなかで、身体に障害をもつ人々の通信・放送サービスの利用の機会を確保することの必要性が増大している。このような現状を踏まえ、身体障害者がテレビ等の通信・放送サービスを十分に受けられるようにするため、5年9月に施行された「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」に基づいて、字幕番組、解説番組の制作、身体障害者向けの情報提供サービス等の「通信・放送身体障害者利用円滑化事業」への支援が通信・放送機構を通じて実施されている。
 イ 高齢化社会における情報通信の在り方の検討
 郵政省では、高齢化社会における総合的な情報通信施策の策定に資することを目的として、6年3月から「高齢化社会における情報通信の在り方に関する調査研究会」を開催し、7年1月、最終報告書が取りまとめられた。本報告書の主な内容は次の通りである。
<1> 情報長寿社会
 情報通信の活用によって個々の高齢者が必要な支援を受け、安心して積極的に生活できる環境を実現した社会「情報長寿社会」が我々の目指す社会像であり、情報長寿社会に向け、遠隔医療相談システム、生涯学習支援ネットワーク等の情報通信システムを導入すべき。
<2> 高齢者支援情報通信システムの整備目標
 高齢者支援情報通信システムの整備は、次の通り光ファイバ網の全国整備に対応して進められるべき。
[1]2000年まで
 光ファイバ網が十分に整備されるまでの補完的・前段階的システムとして、現在のインフラ・技術で実現可能なアプリケーション・システムを実用化。
[2]2005年まで
 全国の高齢者支援施設を中心とした光ファイバ網による総合的な高齢者介護支援ネットワークの構築、機器、アプリケーション開発の推進。
[3]2010年まで
 光ファイバ網の整備完了、必要な機器・アプリケーションサービスの開発・普及の完了、高齢者の生活全般における情報通信有効利用の環境の実現。
<3> 情報長寿社会の実現に向けてとるべき施策
 情報長寿社会の実現には、関係各方面との協力等により、情報長寿社会に関する将来ビジョンの明確化と制度改善の推進、在宅高齢者・介護家族支援のための情報通信システム整備の推進等を総合的に取り組む必要がある。
<4> 有望システムの有効性の検証
 現時点で実現性及びニーズが高いシステムとして「徘徊(はいかい)老人保護システム」、「遠隔健康相談システム」の実験を行い、その有効性を確認した(第2-2-3-12図参照) 。
 今後は本報告書を踏まえ、来る情報長寿社会に向けて、郵政省として各種施策の検討・実施を行うこととしている。
 ウ 視聴覚障害者向け専門放送システムの開発
 情報化が著しく進展する中で、視聴覚障害者はその障害のため、十分な情報の享受の機会を得ることが困難な状況にある。このため、郵政省では、字幕放送等の充実に取り組んできたが、通常の放送にサービスを付加する形態では、内容・技術的側面において限界がある。
 そこで、郵政省では、7年度に、「視聴覚障害者向け専門放送システムの開発調査」を実施し、視聴覚障害者向け専門放送サービスの実現の可能性、実施に当たって整理すべき課題等を検討するとともに、システム開発のための実証実験を行い、サービス実現のための環境整備を図ることにより、障害を持つ視聴者を含むすべての国民が豊かな暮らしを実感できる社会の実現に資することとしている。
 

(3) ボランティア支援に対する取組


 7年1月に発生した阪神・淡路大震災の際には、パソコン通信によるボランティアネットワーク等ボランティア活動による救援活動がクローズアップされたところである。
 7年2月、「ボランティア問題に関する関係省庁連絡会議」が関係省庁申合せによって設置されたところであるが、郵政省としてもボランティア問題に積極的に取り組んでいくため、同月、「ボランティア支援に対する省内連絡会議」を設置し、ボランティア支援方策等について検討している。


電気通信サービスモニター会議模様(石川県金沢市)

郵便局モニター会議模様

第2-2-3-12図 遠隔健康相談(在宅ケア)システムの概念図
 

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