平成7年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

2 ネットワーク化

 複数の人がそれぞれ離れた場所から各端末上で、共有の情報を利用することにより業務等を分散的に行うことができるシステムが、実用化され、または、実験が行われている。ここでは、関西文化学術研究都市で行われている広帯域ISDN実用化実験を紹介する。また、ネットワークを利用して時間・距離の制約を克服した在宅医療、地方から情報発信を行っている地域情報ネットワークを活用している例を紹介する。
 

(1)  建築設計においてネットワークを利用した遠隔利用実験


 関西文化学術研究都市で行われている広帯域ISDN実用化実験の1つとして、6年7月から、大手建設会社等が参加し、建築設計における高性能CGシステムの遠隔利用実験が行われている。
 この実験は、3次元高性能CGシステムを利用して、CG画像の高速伝送を行い、建築設計者同士が、遠隔地間でそれぞれの端末を操作しながら、建築物の景観デザインや周辺環境のシミュレーション等を行うものである。
 従来、建築物の設計は同一事務所内で設計者同士が打合せをしながら作業を進めていた。しかし、このシステムでは、設計者が同じ場所にいる必要はなく、ネットワークを利用して作業を進めることができる。具体的には、CGで作成したビル等について、離れた場所にいる設計者同士が、各自の端末を用い、相手と相談しながらビルの高さを変えたり、場所を移動させたりすることができる。また、端末の画面上において一定方向からだけではなく、さまざまな方向からビルをみることができ、周辺環境との調和を考慮しながらビルの設計が行える。
 

(2)  遠隔学習システムの実験


 また、広帯域ISDN実用化実験の1つに、外国語学校等が参加し、広帯域ISDNと映像データベース等を用いた効果的学習を目指した実験がある。
 近年、国際化の進展に伴い外国語に対する関心が高まり、外国人講師による外国語学校が人気を博している。しかし、地理的、時間的制約から実際に学校に通って受講することができない人も多い。そこで、この実験に参加している外国語学校が6年9月から11月にかけて、週2回の遠隔授業を実施した。講師側端末は、大阪市内にある外国語学校に設置し、生徒側端末を大阪市内の別の地区にある精密機器メーカー内に設置した。講師1人に対して生徒が3人という構成で、生徒がデータベースから動画の情報を引き出して学習したり、双方向映像通信を用いてリアルタイムの遠隔授業を行ったりした。ビデオやCD-ROMによる学習とは違い、発音等のチェックをその場で受けることができ実際に対面で授業を受けているのと同じような効果が実証された(第3-2-3-2図参照) 。
 

(3)  在宅医療支援システムの実験


 東京都にある小児病院では、ISDN回線を用いたテレビ電話を患者宅と結び、5年度から7年3月まで在宅医療の実験を行った。
 入院中の患者のうち、酸素吸入器や人工呼吸器(以下ここでは医療機器と呼ぶ)等の装置だけが必要なため入院している患者は、自宅に医療機器があれば、在宅医療が可能となる。そこで、この病院では、このような患者宅にテレビ電話を設置し、医療機器の使用方法が分らないときや医療機器にトラブルが発生したときのアドバイス、簡単な診察等に使用することにより在宅医療に取り組んできた。
 医療機器を体につけたまま通院しなければならず、通院のためには手間や時間、交通費をかけなければならなかった患者も、このシステムを利用することにより、遠くから通院する回数を減らすことができ、在宅でアドバイスを受けることができるので効果があった。また、医療機器に簡単なトラブルが発生したときも、同様に在宅でアドバイスを受けて、適切な対処を行うことが可能な例もあった。
 在宅医療の患者は、一般社会との交流が限られ孤独な場合が多い。しかし、このテレビ電話を使うことにより、同じ悩みを持つ患者同士がお互いの顔を見ながら話をすることにより励まし合うことができ効果をあげた。
 

(4)  地域情報ネットワークの活用例


 大分県にある地域パソコン通信ネットは、東京一極集中に対して、地方から情報を発信し、人と人との交流を大切にするコミュニケーション型のネットワーク作りを目指している。
 この地域パソコン通信ネットは、昭和60年にデータベースの勉強会を母体として発足し、後にコミュニケーション型の社会インフラとしてパソコン通信ネットワークを整備してきた。最初は、大分県内のネットワークを整備し、昭和61年頃から県知事に電子メールを出すことができるまでになった。
 また、他の地域ネットワークと連合して相互に接続することにより地域間の情報交流の場を作ることに役立ってきた。
 現在では、インターネットとも接続しており、地方から世界に向けて直接情報発信することが可能となっている。さらに、この地域パソコン通信ネットワークは、地方からの情報発信だけではなく、さらに進んで、地方間の情報交流の場をいかに作るかを目指している。


建築設計における高性能CGシステムの遠隔利用

第3-2-3-2図 遠隔学習システムの利用イメージ図

在宅医療支援システム

地域情報ネットワークのホームページ
 

第3部第2章第3節1 マルチメディア化 に戻る 3 インタラクティブ化 に進む