平成7年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

2 我が国情報通信産業の課題

 マルチメディア時代に向けて、オープン化の流れは加速し、特定分野に秀でた技術力を持つ企業間の連携をもとにしたグループ形成による市場参入が、ますます一般的になるものと思われる。そうした場合に、情報通信分野での主導権を取り、有利な提携関係を結ぶには世界的にトップの位置を占める技術力を持つことが必要となってくる。そこで、我が国情報通信産業の研究開発における国際競争力を高めるための課題を整理すると以下のようになる。
 

(1)  機動的な研究開発体制への転換


 マルチメディアサービスの実現に向けては、これまでも産業の枠組みを超えた企業提携が行われているが、研究開発においても異業種・異分野における複数の研究機関が相互に連携・競争することがこれまで以上に必要となる。また、マルチメディア分野の研究開発に取り組む我が国の企業は、様々な分野を手掛ける総合メーカーが主であるため、経営資源を集中させたり、ユーザーニーズを的確に取り込んだり、機動的に対応したり、迅速に決定したりすることが難しくなっている。また、組織が大きいため、研究者のアイデアを実現するまで育てる体制を整えることが難しい面もある。
 

(2)  産・学・官の役割


 これまで我が国の基礎研究については、欧米に比べ手薄いことが指摘されているが、マルチメディア時代に向けた新しい技術の源として、今後は基礎研究を充実させることが必要となる(第3-3-4-1図参照) 。
 研究開発における産・学・官の役割を考えると、基礎研究は公的部門が積極的に推進し、応用研究は民間が行う図式となるが、民間においても基礎研究の体制の整備をより推進する方策が求められる。
 

(3)  グローバル市場への対応


 これまで我が国の企業は、国内市場を主な対象として捉えてきた。しかし、今後は競争力のある海外企業が日本市場への参入を目指し、一層力を入れてくるものと予想される。
 したがって、我が国としても各企業でグローバルな市場に対応可能な研究開発体制を整えることが必要となる。
 

(4)  インフラ整備の促進


 我が国では、新しい通信サービスの実施、CATV等のインフラの整備、各企業の情報化への取り組みが米国に比べ遅れていることが指摘されている。
 したがって、マルチメディアサービスの実施を可能とするインフラが整備されることで、各企業は新たなマルチメディアサービスの提供に合わせて研究開発を行い、また新しいサービスが積極的に利用されることで、企業の研究開発も一層促進するものと思われる。


第3-3-4-1図 基礎研究費の比較
 

第3部第3章第4節1 我が国情報通信産業の国際競争力 に戻る 第3部第4章 マルチメディアをめぐる情報通信産業の構造変革 に進む