平成7年版 通信白書

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第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

7 バーチャル化

 ネットワーク上での結びつきを中心に形成され、展開されるコミュニティや企業活動等のバーチャル化の例として、複数の企業の販売・製造等の組織間をネットワークを介して接続し、あたかも単独の企業であるかのように機能させ、事業を展開しているバーチャル・コーポレーションの例と遠隔地とのコミュニケーションや協同作業を支援するバーチャルリアリティ会議システムの開発事例を紹介する。
 

(1)  バーチャル・コーポレーション


 米国のあるマルチメディア製品の開発会社では、自社の機能を開発とマーケティングに特化させ、それ以外の製造・販売等の機能については、他社との提携等を行い、ネットワークを介して緊密なコミュニケーションを図り、各社の得意分野と特色をいかした企業体(バーチャル・コーポレーション)を形成して事業を展開している。これは、市場や技術の急激な変化に対応していくためには、企業の枠を超えて最適な機能とスタッフを柔軟に組み合わせて、短期間に製品の開発と事業化を進めることが必要になってきているためである。
 同社では、製造はカリフォルニア州とフロリダ州の2社と、販売は米国、英国等の企業と提携している。このような形態の企業運営では、コミュニケーションと情報の共有化が非常に重要になるため、各企業との間では、電子メール等を利用して密接な連携を図っており、ATM-LANとISDN回線を接続したデスクトップタイプのテレビ会議システムの導入も検討されている。
 

(2)  バーチャルリアリティ会議システムの開発


 遠隔地に離れていながら、あたかも現実に対面して対話をしているような感覚で会議や協同作業ができるバーチャルリアリティ会議システムの開発が、(株)エイ・ティ・アール通信システム研究所において行われている。
 このシステムでは、3地点間をISDN回線で結んで、3次元CGを利用して作成した人物や立体構造物の映像をリアルタイムに共有することにより、あたかも同じ場所にいて会議をしているような臨場感を得ることができるようになっている。
 利用者は、センサーの組み込まれた特殊な手袋をはめた手を動かすことにより、立体映像化された物体を仮想的につかんで、回転や移動をさせたり、部品に分解したり、組み立てたりすることができる。これを応用して、遠隔地間で立体構造物の3次元映像を共有し、様々な視点から眺めたり、色、形、デザイン等に変更を加えたりしながら、立体構造物の設計やデザイン等をリアルタイムに進めることができると期待される。
 また、このシステムでは、音声認識の技術を応用して、特定の命令を音声で指示することによって、立体映像の移動や回転、分解や組立てを行うことも可能となっている。


ATR研究所の外観

バーチャルリアリティ会議システムの実験風景
 

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