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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第1節 様々な価値を生み出すビッグデータ

(3) 諸外国におけるビッグデータ関連政策

ビッグデータの活用に係る動きは、我が国のみならず世界各国で活発化しているところであるが、政府における政策立案の動向としては、2012年(平成24年)以降、主要国政府がビッグデータの活用の促進に言及するようになった。2013年(平成25年)には、さらに具体的政策発表や政府プロジェクト実施といった動きが見られるようになった。

ア 米国

米国におけるビッグデータ関連政策は、大統領府の科学技術政策局(OSTP)が主導している。OSTPは、2012年(平成24年)3月に、5年間で総額2億ドル超の研究開発予算を6つの政府機関に割り当てる「ビッグデータ研究開発イニシアティブ2」を公表した。予算の割当てを受けた各政府機関は、民間企業や学術研究機関等に対して、ビッグデータ関連の研究開発プロジェクトに資金を提供している。

OSTPは、2013年(平成25年)5月に、ホワイトハウス・ビッグデータ・パートナー・ワークショップとデータ共有とメタデータ・キュレーション(Data Sharing and Metadata Curation)に関するワークショップを開催、産官学の関連組織間での連携や議論の深化を図っている。その他、国立標準技術研究所(NIST)でも、ビッグデータ技術開発のロードマップ策定に向け、同年9月に、ビッグデータ・パブリックワークショップが開催された。

イ フランス

フランスでは、2010年(平成22年)からの先端産業育成計画「未来への投資」の一項目として、ビッグデータ技術・サービス開発プロジェクトへの助成が実施されている。

「未来への投資」の主要9分野に「デジタル経済」があり、この分野の2017年(平成29年)までの予算は45億ユーロ、うち22億5,000万ユーロがICT関連企業の利活用・サービス開発プロジェクトへの助成に充てられる。ビッグデータに関するプロジェクトの第1回の公募は2012年(平成24年)3月に開始、2013年(平成25年)4月には、7つのプロジェクトに対する合計1,150万ユーロの助成が決定した。2014年(平成26年)2月には、第2回の公募が開始した。応募プロジェクトのテーマは、大規模データ処理に関するソフトウェア開発、あるいはeヘルスやスマートシティ等、応用分野における利活用モデルの構築とされている。選出されたプロジェクトに対する助成金額は、企業の規模により、プロジェクト費用の25%から45%とされている。

2012年(平成24年)5月に就任したオランド大統領は、ビッグデータへの関心を強めており、2013年(平成25年)9月に発表した企業の技術開発活性化計画「新産業フランス」でも、重要分野の一つにビッグデータを挙げている。「新産業フランス」では、2023年(平成35年)までの国際競争力強化のうえで、最も重要なのは、①非炭素エネルギー利用、②医療、③デジタル関連にかかわる34分野であるとしており、この34分野にかかわる企業が48万の新規雇用を実現し、450億ユーロ(うち40%が輸出による)の売上高を挙げることを目標としている。ビッグデータの属する③については、他にもコネクテッド・オブジェクト、非接触型カード、サイバーセキュリティ等が重要分野に挙げられている。

ウ 韓国

韓国では、2012年(平成24年)11月に政府横断の基本計画として、国家情報化戦略委員会3が「スマート国家具現のためのビッグデータ・マスタープラン」をまとめ、公共分野主導でビッグデータ活用を促進する方針を発表した。同プラン実施のための予算は2016年(平成28年)までに官民合わせて5,000億ウォンと発表され、これを受け、2013年(平成25年)から2014年(平成26年)にかけ、次々と各省がビッグデータ戦略を策定した。

ICTと科学技術分野を所掌する未来創造科学部は関係省庁と合同で、ビッグデータ活用促進と関連産業育成のための「ビッグデータ産業発展戦略」を2013年(平成25年)12月にまとめた。医療や交通・物流等の有望6業種でのビッグデータ活用プロジェクトを進め、データ仮想化や分散技術など7つの中核技術開発を進める。戦略推進により、2017年(平成29年)までに国内ビッグデータ市場を2倍以上に拡大、7分野で中核技術開発による技術競争力向上、5,000人以上の高級人材確保、10社以上のグローバル専門企業育成といった効果が期待される。

安全行政部は2014年(平成26年)1月、行政全般のビッグデータ活用を本格化するためのビッグデータ活用拡大対策をまとめた。2017年(平成29年)までに97のビッグデータ活用事業を進め、関連サービスの提供拡大を目指す。特に、安全行政部と未来創造科学部の重点支援課題となっている、国民生活・安全、雇用創出、国政課題関連の23事業には予算が優先的に充てられる。

エ 中国

中国において、ビッグデータはクラウド・コンピューティング、モノのインターネット及びモバイルインターネットに次ぐ新興産業として位置付けられており、中央政府をはじめ多くの地方政府もその発展を積極的に推進する方針を明らかにしており、関連企業の誘致活動も活発化しつつある。背景には2012年(平成24年)秋に行われた中国共産党第18回大会で「工業化・情報化・都市化・農業の近代化」の推進という大きな方針が示され、その実現に向け、ビッグデータやオープンデータの利活用が期待されているからである。

例えば、工業と情報化の融合について、工業分野におけるビッグデータの利活用が強調されている。具体的な目標として、2013年(平成25年)9月に工業・情報化部によって発表された「情報化及び工業化の深度融合プロジェクト・アクションプラン(2013〜2018年)」では、2018年(平成30年)までに、大手企業においては、製造、サプライチェーンの管理、製品販売、アフターサービスといった各生産プロセスにおけるビッグデータの利活用による経営効率の向上を図ること、また中小企業に対して、正確なマーケティング販売やインターネット金融など生産性につながるサービスを提供するため、第三者によるビッグデータ・プラットフォームの構築を支援することが明記されている。

オ シンガポール

シンガポールでは通信速度1Gbps以上を誇る「次世代全国ブロードバンド網(NGNBN)」、2015年(平成27年)の開業が予定されている「データ・センター・パーク(DCP)」等のICTインフラの充実を背景に、ICT分野における専門職の育成を政策的課題として重要視している。また、情報通信開発庁(IDA)が2012年(平成24年)11月に公表した「情報通信技術ロードマップ4」ではビッグデータ分野が主要テーマの一つであり、データ解析の専門職を育成するための施策も実施に移されている。

IDAは組織内部に「データサイエンス・グループ」を設置、政府自体のデータ解析能力の強化に努めると同時に、企業との提携による「Company-Led Training (CLT)訓練プログラム」を数種設置、学生等の希望者に対し、実際の事業に参加しスキルを向上させるための機会を提供している。



2 http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/big_data_press_release_final_2.pdfPDF

3 2013年3月の省庁再編により廃止

4 http://www.ida.gov.sg/Infocomm-Landscape/Technology/Technology-Roadmap別ウィンドウで開きます

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