我が国の65歳以上の人口は2010年には23.0%であったが、2060年予測では39.9%と世界のどの国でもこれまで経験したことがない少子高齢化が進むことが見込まれている11。また、15〜64歳の生産年齢人口は2013年10月時点で7,901万人と32年ぶりに8,000万人を下回ったことに加え、2013年12月時点では7,883万人まで減少しており、今後の予測では2060年には4,418万人まで大幅に減少することが見込まれている(図表4-1-2-1)12。
一方で、我が国の非労働力人口13における就業希望者は2013年平均で428万人であり、内訳をみてみると、女性が約315万人とおよそ4分の3を占めており、その女性の理由として最多なのは「出産・育児のため」が105万人、次いで「適当な仕事がありそうにない」(97万人)、「健康上の理由」(38万人)、「介護・看護のため」(16万人)となっている。また「近くに仕事がありそうにない」は男女計で29万人となっており、多くの国民がこれらの理由により働きたくても何らかの事情で働くことができない状況にある。また、女性の潜在的労働力14を見てみても、20〜49歳においては実際の就業率に比べ10〜15%程度高くなっており、働く意欲はあるものの就業に結びついていない者が多く存在していることがうかがえる状況となっている(図表4-1-2-2、図表4-1-2-3)。
また、女性の労働力人口比率が20〜30歳代を中心に低下するいわゆるM字カーブ問題も指摘されている。これは結婚や出産、子育てを機に、女性が退職することによって、年齢別にみると20〜30歳代の女性の労働力人口比率が窪みM字を描くことからこのように言われている。
ただ、このM字の傾向は近年数字上では改善している状況にあり、また最も窪んでいる位置も昭和50年は25〜29歳だったが、平成25年では35〜39歳と徐々に右側にシフトしつつある状況にある(図表4-1-2-4)。このことは女性の労働力人口比率が改善したと言える側面もあるが、近年進みつつある晩婚化・晩産化に伴う影響等も指摘されている(図表4-1-2-5)。
前述のM字カーブに関連して、女性が考えるライフステージにおける理想と現実との差異も指摘されている。女性が考える希望の働き方に関するアンケート調査によると、子供が3歳以下までの期間は子育て等に専念するため、就業希望は低い傾向にある。しかし、子供が4歳以降になってくると、「家でできる仕事」や「短時間勤務」の希望は高まっている傾向にある。また、全体を見ると約9割の女性が「結婚しても子どもがいない場合」まで及び「子供が小学生」以降で何らかの形の就業を希望していることも着目すべきところである。
一方現実では、子供が3歳以下まで「働いていない」が多いのは希望と大きく変わらないが、子供が4歳以降では希望では高かった「在宅ワーク・内職」は殆どおらず、必ずしも希望通りの働き方ができていない状況にある(図表4-1-2-6)。
このことは、女性のライフイベントごとの就業形態の変化を見てみても同様で、結婚後に27.7%、第1子出産で更に36.0%が離職しており、結婚と出産を契機に6割強の女性が退職を選んでいることからも、就業継続ができない要因としてこの2つは女性にとって大きいことを示している(図表4-1-2-7)。
もう1つの課題として、図表4-1-2-1でも述べた少子高齢化に伴う介護者の増加が挙げられ、65歳以上1人を支える生産年齢人口は、2010年時点で2.77人だったが、2060年に1.28人となることが見込まれており、今後15〜64歳の世代が高齢者や要介護者を支えなければいけないケースが急速に増えることも懸念されている(図表4-1-2-8)。
また、同居の主な介護者のうち、介護時間が「ほとんど終日」の当事者は、現状では72.8%が女性であり、内訳では「両親の実子(子)」が介護を行う場合は男性12.0%、女性15.6%と大きな差は無い一方、「子の配偶者」が行う場合は、男性0.3%に対し女性は17.2%と顕著に差があり、夫の両親の介護を妻が担うケースが多い状況にある(図表4-1-2-9)。
これら介護における課題は、前述の子育てと大きく異なる点があり、1点目として子育ては子供の小学校入学・卒業といった区切りのタイミングがある一方、親の介護は何年必要になるか終わりがみえないことも多く、必要になった就業者にとって今後の見通しが立てにくいことが挙げられる。
2点目として、自分の親が75歳以上になり介護が必要になってくるケースが増加してくる時期15は、本人は40〜50歳代の中堅・管理職クラスの社員であることが多く、親の介護のために企業の重要な役割を担う社員において、就業継続が困難になるケースが増えることも想定される。また、イで述べた晩婚化・晩産化が今後進んだ場合、子育てと親の介護の間の期間が近づいていくことも予想され、場合によっては両者が時期的に重なり、大きな負担になりうる可能性も懸念される(図表4-1-2-10)。
我が国においては、近年共働きが増加している中で「団塊世代」が70歳代に突入し、要介護になる可能性が高まることに伴い、前述のとおり働き盛り世代で企業の中核を担う労働者が介護に直面するケースが増加すると見込まれている。アンケート結果においても男女ともに7割以上の勤労者で介護に対する何らかの不安を抱えている状況にあり、意に沿わない介護離職を防ぐことは男女労働者双方の課題となっている(図表4-1-2-11)。
また、前述の少子高齢化等を背景に我が国のワークスタイルにも変化が求められており、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を意識した取組が各所で広まっている。内閣府においても「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されており、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」の実現を目指すこととしている17。
11 平成25年版 高齢社会白書 第1章第1節5(2)
12 平成25年10月1日時点の我が国の人口は3年連続で減少し1億2729万8千人となった。また、65歳以上の高齢者割合は25.1%となり初めて総人口の4分の1を超えた。
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2013np/index.htm
13 非労働人口は15歳以上の人口のうち、「就業者」と「完全失業者」以外の者
14 潜在的労働力率=(就業者+完全失業者+就業希望者)/人口(15歳以上)
15 平成24年版高齢社会白書において、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇すると指摘されている
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/s1_2_3_02.html
16 厚生労働省「人口動態統計」における第1子出生時の母の平均年齢(1980年26.4歳、2012年30.3歳)を元に作成
17 内閣府:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html