平成25年5月に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、いわゆる番号法とその関連法案が成立、公布された。このマイナンバー制度は、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり、社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための極めて重要な社会基盤である。現在、平成27年10月の個人番号及び法人番号の通知、平成28年1月の個人番号及び法人番号の利用開始、個人番号カードの交付、平成29年1月の情報提供ネットワークシステム(地方公共団体における運用開始は平成29年7月)及び情報提供等記録開示システムの運用開始に向けて、国、地方公共団体等による準備が進められている(図表4-2-1-1)。
我が国では、これまで個人を識別する統一的な番号は存在せず、年金における基礎年金番号、医療保険における被保険者証記号番号のように、個人の情報を特定する番号が制度、組織ごとに多数存在している。そのため、各種手当の申請を行うに当たっては個人が関係機関を回って証明書類を入手し、それを添付することが必要であるなど国民に過重な負担が生ずる一方で、行政機関内部での情報連携が不十分であることから、本来受けることができる給付を受けられない者がいる反面、本来給付を受けることができないにも関わらず不正に給付を受けている者がいるなど、社会保障分野における公正の確保が万全でない状況が生じている。
今回、マイナンバー制度が導入されることにより、社会保障、税、防災の分野において、国の行政機関、地方公共団体等が保有する個人の情報が同一人の情報であるという確認を行うことが可能となるほか、それらの機関同士が情報照会、提供を行うことが可能となる。その結果、社会保障給付等の申請を行う際に必要となる情報について、申請者が窓口で提出する書類が大幅に削減される等、国民の利便性が向上することが見込まれるほか、社会保障や税に係る行政事務の効率化が図られることとなる。また、番号の活用でより正確な所得把握が可能になることから、社会保障・税分野の給付と負担の公平化が図られることとなり、福祉給付において真に手を差し伸べるべき者を見つけることが可能になるほか、災害時における被災者等への積極的な支援への活用も期待されるところである(図表4-2-1-2)。
マイナンバー制度においては、①全ての個人、法人等に対し悉皆性のある唯一無二の番号を導入し、②複数の機関の間での情報連携を可能とするとともに、③番号とそれを記載した個人番号カードの活用により本人確認を行うことのできる仕組みを構築する(図表4-2-1-3)。
市町村長は、住民票に住民票コードを記載したときは、速やかに個人番号(12桁)を指定し、通知カードによって本人に通知しなければならない。個人番号の付番対象者は住民票コードが住民票に記載されている全ての住民である。個人番号を指定するに当たっては、市町村長はあらかじめ、番号生成機関(地方公共団体情報システム機構)に対し、指定しようとする者に係る住民票コードを通知し、個人番号とすべき番号の生成を求める。一方、法人等に対しては、国税庁長官が法人番号(13桁)を指定し通知する。
個人番号の利用分野は、番号法別表第1に規定される社会保障、税、災害対策の分野における行政事務と、社会保障、地方税、防災、その他これらに類する事務で市町村が条例で定めた事務に限定される(図表4-2-1-4)。一方、法人番号については利用分野の制限はなく、官民を問わず様々な分野での利活用が可能である。
複数の機関間において、それぞれの機関ごとに管理している個人の情報を紐付けし、相互に活用するための情報提供ネットワークシステムを整備する。情報提供ネットワークシステムを活用した情報連携の対象として機関間で情報照会ができる事務や提供ができる特定個人情報は番号法別表第2に限定列挙されている。
また、自分の情報がいつ、どの機関からどの機関に対して、どのような事務のために情報照会・提供されたのかを国民が自ら確認できる情報提供等記録開示システムを設置することとしている。この情報提供等記録開示システムには、情報提供等記録の開示機能のほか、行政機関が保有する自分の個人情報について確認する機能(自己情報表示機能)や、行政機関等からのお知らせを受け取る機能(プッシュ型サービス機能)の導入を検討している。
市町村長は、個人からの申請により、顔写真の付いた個人番号カードを交付する。この個人番号カードは、本人確認や番号確認のために利用が可能である。個人番号カードには、本人の顔写真のほか、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号等が券面に記載される予定であるが、あわせてカードに格納されたICチップにも券面記載事項等が記録されることとなり、個人番号カードのみで本人確認と個人番号の真正性の確認を行うことが可能となる。
また、ICチップの空き領域を活用して、市町村が地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務に活用することが可能であることから、市町村の創意工夫によって、個人番号カードの活用場面は飛躍的に拡大する可能性がある。
なお、個人番号カードに搭載される公的個人認証サービスによる電子証明書については、現行の電子申請等の際に活用されている署名用電子証明書に加え、インターネット上の安全なログイン手段として、情報提供等記録開示システムのログイン手段としても活用が想定される利用者証明用電子証明書の機能を新たに搭載する予定である。
平成26年1月に、特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の適正な取扱いに関する指導・助言等を任務とする特定個人情報保護委員会が、独立性の高い第三者機関として設置された。特定個人情報保護委員会は、行政機関や地方公共団体、民間事業者などの個人番号を取り扱う者に対し、個人番号の適正な取扱いに関して必要な指導・助言を行うほか、法令に違反した場合には勧告・命令や、必要な限度で立入検査を行うことができる権限を有している。
また、個人情報保護措置の一つとして、国の行政機関や地方公共団体等が、特定個人情報を取り扱う前に、個人のプライバシー等の権利利益に与える影響を分析し、適切な保護措置を講じているかを自己評価する「特定個人情報保護評価」の仕組みも導入された。これは、諸外国で行われているプライバシー影響評価(PIA)に相当する。
IT総合戦略本部では、マイナンバーによる事務効率化、公平で利便性の高いサービスの実現、国・地方・民間の共通インフラとしての個人番号の活用、及び情報提供等記録開示システムを中心に民間サービスと連携した国民一人ひとりのニーズに応える利便性の高いオンラインサービスを多様なチャネルで利用可能とする「マイガバメント(仮称)」の実現に向けて必要な専門的調査・審議等を行う趣旨で、平成26年2月に新戦略推進専門調査会の下にマイナンバー分科会を設置した。
同分科会では、①情報提供等記録開示システム/マイガバメントの在り方、②個人番号カードの利活用の推進、③個人番号・法人番号の利活用等について検討を行い、同年5月に今後の検討の方向性等について中間とりまとめを行った。