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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第1節 ICTの進化によるライフスタイル・ワークスタイルの変化

(2) ICT環境の浸透とテレワーク

ア 企業におけるICT環境の浸透

我が国の企業におけるICT環境の導入率推移を見てみると、インターネット利用は平成19年には99%に達し、平成25年末では99.9%とほぼ全企業で導入されており、その8割は光回線と高速インターネット環境も多くの企業で普及している。また、社外からのPC・携帯電話等の接続環境も過半数の企業で導入されており、クラウドコンピューティングの導入も33.1%と多くの企業においてICT環境が整ってきている状況である(図表4-1-2-12)。

図表4-1-2-12 我が国の企業におけるICTの導入率推移
(出典)総務省「通信利用動向調査」より作成
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イ 在宅型テレワークの普及と課題

他方で、育児と介護面の課題に対して希望の働き方に関するアンケート結果を見てみると、勤労者本人としては育児や介護ともに「テレワーク制度等を利用して場所や時間にとらわれず業務内容や業務量を変えない働き方がしたい」との希望が高い。管理職側の望む部下への働き方への希望も「短時間勤務」が高いものの、次いで「テレワーク制度等を利用して場所や時間にとらわれずに業務内容や業務量を変えず働いてほしい」が高い傾向にある(図表4-1-2-13)。

図表4-1-2-13 育児と介護における希望の働き方(本人と管理職)
(出典)NTTコム リサーチ/NTTデータ経営研究所「働き方に関する意識調査」(2013年)

また、国土交通省調査による在宅型テレワーカー18の人数は2011年から増加傾向にあり、最新の2013年推計では720万人に達している(図表4-1-2-14)。また同調査において、「週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー」の数についても2013年時点で260万人と推計されている19

図表4-1-2-14 在宅型テレワーカー人数の推移
(出典)国土交通省「平成25年度 テレワーク人口実態調査」(平成26年)
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さらに、アンケート調査にてテレワークに対する働き方へのニーズを聞いてみた結果、男女問わず過半数が「既に利用している」、「積極的に利用したい」、「必要のあるときに利用したい」と回答している(図表4-1-2-15)。その理由については「自由な勤務形態がとれる」が男女ともに75%以上で回答しており、「家族の面倒が見れる」については、女性が32.4%と男性の19.3%に比べ回答率が高く、その中でも特に専業主婦の層で56.2%と半数を超える層が回答している(図表4-1-2-16)。

図表4-1-2-15 テレワークに対する認識
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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図表4-1-2-16 テレワークを利用したい理由
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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これらのことからも、「育児」「介護」双方においてテレワークは休暇制度や時短勤務等とあわせ、取りうる選択肢の1つとして、一定のニーズがあるといえよう。

ウ テレワークにおける課題

このように勤労者側としては、育児や介護において共にテレワークに対する一定のニーズがある状況だが、企業側のテレワーク制度20の導入率で見てみると直近では10%前後で推移しており、在宅勤務においては平成25年末においては2.0%と、図表4-1-2-12の企業のインターネット普及率やクラウド導入率と比較しても低い状況にあり、必ずしも普及が進んでいない状況にある(図表4-1-2-17)。加えて、従業員規模別に比較してみると従業員1,000人以上の大企業に比べ、従業員1,000人未満の企業については導入率が低い傾向にある(図表4-1-2-18)。

図表4-1-2-17 企業におけるテレワーク勤務制度導入率の推移
(出典)総務省「通信利用動向調査」より作成
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図表4-1-2-18 従業員規模別の企業におけるテレワークの導入率
(出典)総務省「通信利用動向調査」より作成
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また、導入していない企業に対して、その理由を尋ねた結果では70%を超える企業が「テレワークに適した仕事がないから」と回答しており、次いで「情報漏洩が心配だから」という回答が多い(図表4-1-2-19)。

図表4-1-2-19 テレワーク制度導入しない企業の理由
(出典)総務省「通信利用動向調査」より作成
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一方で、消費者側の意識調査においては、テレワークを「利用したくない」、「あまり利用したくない」の理由として多いのは「必要性を感じない」が専業主婦層で最も多い。しかし、これは勤労者になると大きく減少していることから、いわゆる専業主婦志向がある層の傾向が出ているものと想定され、逆に女性の「勤労者」、「勤労者(パート・アルバイト除く)」においては、「勤務管理が曖昧になる」、「家では仕事ができない」が上位に入り、実際に仕事に就いている層ほどこれらを気にしている傾向にある。

また、「自宅に通信環境やPC等の仕組みが整っていない」は、男性及び女性全体で共に数%台であり、個人のインターネット普及率が8割を超えていること等も踏まえると21、消費者側にとってはICT環境の有無は大きな課題にはなっていないことがうかがえる(図表4-1-2-20)。

図表4-1-2-20 テレワークを不要と考える理由
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
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これらの結果を踏まえると、テレワーク導入における課題は大きく次の2つに分類することができる22図表4-1-2-21)。

図表4-1-2-21 テレワークのおもな課題
(ア)企業側・管理者側の課題:「テレワークに適した業務がない」「情報漏洩が心配だから」等

企業側の未導入理由で、「テレワークに適した業務がない」については、おもに企業や管理職が社員や自分の部下に業務を指示する際に意識される課題であり、ペーパーレス化が進んでおらず資料を自宅に持ち帰れなかったり、属人的になっている業務等が多くテレワークにて行う業務が限られてしまうのではないか等の懸念が考えられる。また「情報漏洩が心配だから」という課題については、詳細は後述の第3節でもふれるが、昨今の情報セキュリティ意識や顧客情報等の流出懸念の高まりに伴い、特に企業や管理者側に顕著な理由である。

(イ)共通の課題:「勤怠管理・業績評価」「コミュニケーション」「導入メリットがよくわからない」等

上司や管理者側から見ると、テレワークを行う部下がどのように業務を遂行しているかわかりにくく、評価が付けにくいという意識があり、利用者側としても、残業が申告しにくい、成果が評価されにくくなるのではないかといった懸念もあるところである。また、周囲の目が届かないため怠けてしまうのではないかという管理者側の懸念もある一方で、長時間残業でも上司や回りが気づきにくくなることから反対に過剰労働に繋がるリスクも指摘されている。加えて、打合せや同僚との会話など「コミュニケーション」がとりにくくなるといった課題も挙げられ、これらと前述(ア)の課題も背景に「導入メリットがよくわからない」にも繋がっていることも考えられる。

しかし、これら(ア)(イ)の課題について、テレワークを活用している企業においては、普及が進むクラウド環境や仮想デスクトップ・リモートデスクトップ等を活用し、自宅でもオフィスでも変わりない業務を遂行できる環境を整えていたり、個人PCに業務情報を保存させないようにするなどでセキュリティを担保する仕組みを導入している。また、勤怠管理についてもシステム管理する仕組みを導入している企業や、メッセンジャーソフトやテレビ会議システム等でコミュニケーションに支障がない仕組みも普及しつつある。



18 在宅型テレワーカーとは、普段収入を伴う仕事を行っている人の中で、仕事でICTを利用している人かつ、自分の所属する部署のある場所以外で、ICTを利用できる環境において仕事を行う時間が1週間あたり8時間以上である人であり、自宅(自宅兼事務所を除く)でICTを利用できる環境において仕事を少しでも行っている(週1分以上)人を指す。

19 週1日以上終日在宅勤務を行っている人かつ、週5時間以上テレワークを実施している人のうち、自宅(自宅兼事務所を除く)でICTを利用できる環境において仕事を少しでも行っている(週1分以上)人を対象としており、全労働者の4.5%にあたる。

20 モバイルワーカー(携帯電話やノートPC等を活用した場所にとらわれない働き方)等を含む

21 第5章3節 図表5-3-1-2「インターネットの利用者数及び人口普及率の推移」参照

22 平成22年版 情報通信白書 第1章3節1項「テレワークによるサステナブル社会の実現」も参照されたい。

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