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第2部 情報通信の現況・政策の動向
第11節 海外の動向

(4) 韓国の情報通信政策の動向

ア 科学技術・ICTと他産業の融合促進

2013年3月の省庁再編で新設された科学技術・ICT主管庁の未来創造科学部(「部」は日本の省に相当)が、朴槿恵政権の成長戦略「創造経済」の主導的役割を果たしている。政権の戦略として、科学技術・ICTと他産業の融合促進による社会問題解決と成長戦略を目指すことから、これまでにICT利活用促進につながる政策が相次いで打ち出されている。

未来創造科学部が2013年6月に、成長戦略の青写真としてまとめた「創造経済実現計画」は、科学技術・ICT融合促進のための政策として、「創造経済ビタミンプロジェクト」、「情報通信振興及び融合活性化等に関する特別法(ICT特別法)」制定等を盛り込んでいる。

(ア)創造経済ビタミンプロジェクト

創造経済ビタミンプロジェクトとは、疲労回復に役立ち活力を与えてくれるビタミンのように、科学技術・ICTを活用することで各省庁の懸案事項を解決し、事業の高度化に寄与するという国民幸福・創造経済実現に向けた政策である。

2013年11月に未来創造科学部は「創造経済ビタミンプロジェクト」の詳細実施計画に当たる「創造経済ビタミンプロジェクト推進計画」をまとめ、重点7分野(農水畜産物、文化観光、保険医療、主力製造業、教育学習、中小企業・創業支援、災害安全SOC(System on a Chip))での科学技術・ICT融合プロジェクトを進める計画を発表した。ビタミンプロジェクトは単独省庁ではなく複数省庁の協業を基に政府横断で進められ、未来創造科学部はプロジェクトの総括省庁として各省の支援体系が一貫してスムーズに進むようにプラットフォーム的な舵取りの役割を担う。

2014年度ビタミンプロジェクト予算は前年比5倍増の1,000億ウォンとされ、個別実施プロジェクトは2014年度中に30以上、今後3年間で合計120以上と事業規模が大幅拡大された。さらに、2014年5月に情報通信戦略委員会がまとめた「情報通信振興及び融合活性化基本計画」により、プロジェクトの対象がエネルギー・交通・環境等のサービス産業等にも拡大された。今後は成果が検証されたモデルの大規模事業化・民間移譲でICT融合本格化を目指す。

(イ)ICT特別法制定でICTコントロールタワー復活へ

前政権発足時に情報通信部を解体したことでICT政策機能が4省庁に分散され、ICTコントロールタワー機能が不在となってしまった。ICT融合促進のために省庁間のスムーズな連携が必要なため、未来創造科学部をICT融合で実質的なICTコントロールタワーとする目的で、ICT特別法が2013年8月に制定、2014年2月に施行された。これにより、政府横断的ICT政策を統合・調整するICTコントロールタワーとして、国務総理を委員長として11省庁のトップと民間委員の25名で構成される情報通信戦略委員会が2014年5月に発足した。戦略委員会の幹事は未来創造科学部長官が務める。

ICT特別法では、ICT融合新製品の迅速な事業化のため、「原則許容、例外禁止」の臨時許可制度を導入しており、認証手続き簡素化などのICT融合品質認証制度が施行される。これにより、例えばスマートフォン利用の血圧・糖尿測定アプリ等、根拠法が未整備のICT融合サービスの迅速な事業化も可能になる見通しである。

イ 国家情報化基本計画 ―ICT利活用促進がメインテーマ―

韓国では1990年代以降、国家情報化の青写真として5年ごとに国家情報化基本計画がまとめられ、早期にブロードバンド網整備や電子政府化を実現してきており、朴槿恵政権期間中のICT政策の根本政策は、2013年12月に、未来創造科学部がまとめた「第5次国家情報化基本計画(2013〜2017)」となる。過去20年に渡る国家情報化基本計画を通じ、韓国はICT先進国の地位を占めたが、ICT利活用とICT発展に伴う弊害の解決ではさらに政府レベルの持続的努力を必要としている。

今回の基本計画は「国民幸福のためのデジタル創造韓国実現」をビジョンとして、①情報化を通じた創造経済牽引(Creative Economy)、②国家社会の創意的ICT活用(Optimized Society via ICT)、③国民の創造力量強化(Renewed Human Capacity)、④デジタル創造韓国インフラ高度化(Enhanced ICT Infrastructure)、の四つのCORE戦略と15課題を盛り込んでいる。ICT利活用がキーポイントとなるため、上述の「創造経済ビタミンプロジェクト」と連携して進められる。

ウ ICT新産業の育成

新産業創出の取組として、未来創造科学部は2013年10月、現政権の今後5年(〜2017年)でのICT分野におけるR&D政策及び方向性を盛り込んだ「ICT R&D中長期戦略(ICT WAVE戦略)」をまとめた。今後5年間でICT R&Dに総額8兆5,000億ウォンを投じ、戦略分野となるICT中核技術10種と未来型サービス15種を指定し、これを通じ、生産誘発12兆9,000億ウォン、付加価値創出7兆7,000億ウォン、雇用創出18万人等の効果を目指している。

エ オープンデータ・ビッグデータ活用・縦割り行政解消をめざす「政府3.0」

朴政権では、開放、共有、コミュニケーション、協力の価値を国政運営全般に拡大しようとする政府革新の政策として、政権公約の中核課題の一つである「政府3.0」を進めている。2013年6月に安全行政部によりまとめられた「政府3.0推進基本計画」で、オープンデータ、ライフサイクルにあったカスタマイズド型行政サービス提供、省庁縦割り方式解消などを進める方針が発表された。

「政府3.0」の取り組みの一つに電子政府高度化が盛り込まれており、安全行政部の2014年度業務推進計画では、クラウドとビッグデータ活用による電子行政高度化を進める方針を盛り込んでいる。

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