総務省トップ > 政策 > 白書 > 26年版 > 地方公共団体・民間における取組事例
第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第2節 オープンデータの活用の推進

(2) 地方公共団体・民間における取組事例

オープンデータは、地方公共団体にとっても、住民が暮らしやすい街づくりや行政の「見える化」といった地域が抱える課題の解決にも貢献することが期待されている。また、地方公共団体が主体となった取組のみならずNPOや市民レベルでの活動も活発に行われている。

平成25年版白書では福井県鯖江市及び神奈川県横浜市における取組を紹介した。両市はオープンデータの先行団体として総務省の実証実験に参画する等、積極的な取組を進めているが、これら一部の団体において先行的に進められてきた取組が、最近では他の団体にも広がりを見せているところである。

なお、世界の各都市で一斉にオープンデータを活用したハッカソン9等のイベントを行う「第4回International Open Data Day」が本年2月22日に開催された。

ア 静岡県

静岡県では、都道府県初となるオープンデータのポータルサイト「ふじのくにオープンデータカタログ」を平成25年8月に開設している(図表3-2-1-5)。同年に世界文化遺産に登録された富士山をはじめ、ロケ地などに関する観光情報、気象観測点等の防災情報など、平成26年2月現在で90を超えるデータセットを公開している。また、同年11月には、静岡県裾野市が、同市の人口統計や医療機関、防災に関するデータを「ふじのくにオープンデータカタログ」に公開しているほか、民間データの掲載も始まっている。

図表3-2-1-5 ふじのくにオープンデータカタログ(静岡県)
(出典)静岡県ウェブサイト

富士山の世界文化遺産登録を契機として、富士山自然休養林ハイキングコースに関するコンテンツや「富士山ビューポイント」などに人気が集まっている。

さらに、静岡県は山梨県と連携して、平成26年1月には、位置情報付きで撮影した富士山の写真を投稿してもらい、投稿された写真をオープンデータとして公開する「富岳3776景」を開設している。

イ 流山市(千葉県)

千葉県流山市では市議会とともにオープンデータのトライアルサイトを立ち上げ、公共施設所在地、AED設置場所、災害用井戸設置場所、Wi-Fi設置場所などのデータをCSV形式やRDF形式10で公開し、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC-BY)で提供している。なお、同市は市民や市議会とオープンデータを推進する取組が評価され、オープンデータ流通推進コンソーシアムの勝手表彰及び第8回マニフェスト大賞において各賞を受賞している。

また、同市では地域防災におけるオープンデータの活用を推進しており、独立行政法人防災科学技術研究所との共同研究の一環として、平成25年4月よりオープンデータを活用した災害に強い地域づくり事業を開始している。

さらに、同市は同年11月にMPながれやま実行委員会の主催により「未来を担う子どもたちの愛郷心の喚起、流山市の自然や郷土に対する学習機会の提供」を目的として、小学生(親子)を対象にマッピングパーティーながれやま2013を開催(図表3-2-1-6写真1)したほか、市議会との共催により「優秀な提案を広く公開することで、市民の利便性向上と市政の「見える化」、市民参加の促進を図ること」を目的として、オープンデータを活用したWebアプリコンテストを開催した(写真2)。そして、平成26年2月にはCode for NAGAREYAMAの主催により「もっと魅力的なマチへ」を合言葉に「オープンデータの普及啓発」を目的とした「第4回 International Open Data Day」に参加し、同市の江戸川大学において「子育て」「自然環境」「防災」「広報」のテーマ別にワークショップ形式のアイデアソン11を開催(写真3)。同年3月には民間企業との共催で中学生及び高校生を対象としたハッカソン「HACK 4 GOOD TEENS」を開催するなど、次々に様々なイベントを企画して実施している(写真4)。

図表3-2-1-6 流山市におけるオープンデータの取組状況
(出典)マッピングパーティーながれやま2013ウェブサイト
(出典)流山市Webアプリコンテストウェブサイト
(出典)International Open Data Day 2014 @NAGAREYAMAウェブサイト
(出典)HACK 4 GOOD TEENSウェブサイト

地方公共団体が公開するデータを利活用したアイデアソンやハッカソンの開催が、住民参加型による新たな政策形成につながりつつある。これは「市民の声を政策に反映する」オープンガバメントの実験であり、その成果次第では全国の地方公共団体への展開が期待される。

ウ Where Does My Money Go?(税金はどこへ行った)

2004年(平成16年)に設立されたオープンデータを推進する世界有数の非営利団体Open Knowledge Foundation(OKFN)が取り組む代表的なプロジェクトで、地方公共団体のオープンデータを加工し、当該地方公共団体の支出状況を可視化するものである。これによって、住民が納めた税金が1日あたりどのように使われているか、税金が支える公共サービスの受益と負担の関係を理解できる仕組みとなっている(図表3-2-1-7)。

図表3-2-1-7 Where Does My Money Go? (税金はどこへ行った?)
(出典)Where Does My Money Go?(税金はどこへ行った?)(http://nagareyama.spending.jp/別ウィンドウで開きます
エ Open Knowledge Foundation Japan(OKFJ)

OKFNの地域グループの1つとして、平成24年7月に設立された非営利団体である。政府が保有するデータをはじめとする多様なデータの生成・公開・利用を支援しており、データの活用を通じて人の行動やシステムの挙動がより洗練され、経済、生活、学術研究、民主主義等の質が向上した社会の実現に貢献することを目的としている。具体的な活動としては、オープンデータに関係する者が議論できるような場の構築、International Open Data Day in Japanなど関連イベントの開催・支援、参加者の要望をとりまとめた意見表明や提言の発信などである。

オ Code for Japan

米国で2009年(平成21年)にオープンデータなどを活用した市民による行政向けWebサービスを開発するプロジェクトCode for Americaが始まったが、その取組は世界各地に波及している。日本では平成25年11月に市民参加型のコミュニティ運営を通じて、地域の課題を解決するためのアイデアを考え、テクノロジーを活用して公共サービスの開発や運営を支援していく非営利団体としてCode for Japanが設立された。



9 ハッカソン(Hackathon)とは、あるテーマに対して、アプリケーション・サービス開発のアイデアを出し合いながら実際に開発し発表しあうイベントで、特定のデータを対象にテーマを決めて短期間(例えば1日)で開催され、参加者は複数のチームに分かれて、実際にアプリケーションの作成を行う。Hack(ハック)をMarathon(マラソン)のように行うことになぞらえて、2つの語を組み合わせた造語である。

10 Resource Description Framework:Web上にある「リソース」(言及対象の事物)に関する情報を記述するための枠組み。RDFは主語(Subject)、述語(Predicate)、目的語(Object)の3つの要素でリソースに関する情報を記述する。

11 アイデアソン(Ideathon)とは、Idea(アイデア)とMarathon(マラソン)を組み合わせた造語であり、ハッカソンに先立ち、参加者がアプリケーション・サービス開発のアイデアを持ち寄り、お互いに検討しあうイベント。

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