昭和62年版 通信白書

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2 情報化の進展

 社会経済の発展・複雑化に伴って,情報化の進展は著しく,情報に対するニーズも高度化・多様化している。
 情報化を定量的にとらえる指標としては種々のものがあるが,ここでは,我が国の情報化を情報流通の動向,家庭の情報化,企業の情報化及び経済の情報化の局面から概観する。

(1)情報流通の動向

 流通する情報量の把握による情報化の定量的な分析として,郵政省では「情報流通センサス」を毎年実施している。
 51年度を基準とした供給情報量等の推移は第1-1-20図のとおりである。以下,61年度情報流通センサスの算出結果について概観する。

 ア 供給情報量
 供給側が受信側に対して消費可能な状態で提供した情報の総量である総供給情報量は61年度は3.92×1017ワードで,前年度に比べ10.3%増加し,51年度の1.93倍であった。
 メディアグループ別に対前年度比増加率をみると,電気通信系は10.4%(51年度比1.94倍),輸送系は2.6%(同1.49倍),空間系は1.5%(同1.16倍)であった。
 61年度の総供給情報量の内訳は,電気通信系が3.88×1017ワード(全体の99.0%),輸送系が1.88×1015(同0.5%),空間系が2.09×1015(同0.5%)であり,放送系を含む電気通信系が高い割合を示している。
 中でもテレビジョン放送のウェイトが高く,総供給情報量の75.6%を占めている。
 パーソナル・メディアのみを取り出してみると,供給清報量は,前年度に比べ1.8%増加の2.12×1015ワードで,51年度の1.18倍であった。
 また,全体の中でウェイトの高い放送系を除いてみると,供給情報量は,前年度に比べ2.2%増加し,51年度の1.31倍であった。
 通信系のメディアの増加率をみると,特に伸び率が高いのは,ビデオテックス(対前年度比増加率146.8%),公衆交換系データ通信(同60.3%),移動電話(同46.4%),ファクシミリ(同37.9%)等である。
 ビデオテックスを除いて企業間通信で主に利用されるものであり,最近の情報化は,企業において急速に進んでいることを示している。逆に,電報及びテレックスの供給情報量は近年減少傾向にあり,前年度と比較するとテレックスは5.9%減,電報は0.9%減となっており,メディアの代替が進行しているといえよう。

 イ 消費情報量
 実際に消費された情報の量である総消費情報量は1.97×1016ワードで,前年度に比べ2.3%増加,51年度の1.11倍となった。
 61年度の総消費情報量の構成比は,電気通信系が64.5%,空間系が32.5%,輸送系が3.0%である。総供給情報量の構成比と比べて,空間系の占める割合が大きくなっている。
 パーソナル・メディアのみを取り出してみると,消費情報量は,前年度に比べ1.6%増加し,51年度の1.17倍であった。
 また,全体の中でウェイトの高い放送系を除いた場合,消費情報量は,前年度に比べ1.2%増加し,51年度の1.15倍となった。

 ウ 情報消費率の推移
 情報消費率は,供給された情報量のうち,どの程度の情報が実際に消費されたかを示す指標であり,総消費情報量/総供給情報量で計算される。
 情報消費率は情報化の進展とともに年々低下する傾向にある。61年度は前年度と比較して0.4ポイント低下の5.0%であった。これは,総供給情報量の4分の3を占めるテレビジョン放送のチャンネル数は年々増加し,かつ,総放送時間数が増加しているのに対し,テレビジョン放送の視聴時間がそれほど増加していないことが主な原因である。
 情報消費率の低下は,換言すれば,情報の選択の幅が広がっていることを意味するものである。
 情報消費率の逆数を情報選択指数とすると,情報選択指数は51年度の11.4から61年度の19.8へ伸びている。
 放送をはじめとするマス・メディアは言論,文化の多様性を確保する上で,重要な役割を果たしている。供給情報量の増大による情報選択指数の上昇は,人々の自由な選択と自由な意思交換を示すものである。テレビジョン放送の発達は,量的には国民の多様化する情報ニーズにこたえ,我が国の言論,文化の多様性を確保していることを示しているものといえよう。

 エ 一人当たり供給情報量と消費情報量
 一人当たり総供給情報量と総消費情報量の推移は第1-1-21図のとおりである。
 61年度の一人当たり総供給情報量は3.22×109ワー1ド(200ページの文庫本に換算すると1日当たり162冊)で,51年度の1.80倍であった。一方,61年度の一人当たり総消費情報量は1.62×108ワード(同8.2冊)で,51年度の1.03倍であった。
 この数字は,人々の日常生活においてのみならず,企業や官公庁等の職場での一切の情報流通を意味するものであるが,高水準の情報活動が行われていることを示しているといえよう。
 パーソナル・メディアを取り出してみると,61年度の一人当たりパーソナル・メディア供給情報量は,1.85×107ワード(200ページの文庫本に換算すると1日当たり0.9冊)で,51年度の1.07倍であった。

(2)家庭の情報化

 今日,情報に対するニーズは家庭においても高まっている。ここでは,総務庁の「家計調査年報」により,家庭の情報化を支出面から概観する。

 ア 情報関係支出の推移
 61年の全国,全世帯(平均世帯人員3.69人,世帯主の平均年齢47.7歳)の消費支出は,1世帯当たり331万6,493円(1か月平均27万6,374円)で,前年に比べ,1.2%の増加であった。
 このうち,「情報通信支出」と「情報通信支援財支出」から成る「情報関係支出」についてみると,対前年比3.5%増の16万768円(1か月平均1万3,397円)で,消費支出全体に占める割合は4.8%であった(第1-1-22表参照)。
 情報関係支出を年間収入五分位階級別にみると,第1-1-23図のとおりである。最も収入の多い第<5>階級は,第<1>階級の1.89倍となっており,消費支出全体(2.38倍)ほどの差はみられない。これは,情報関係支出のうちウェイトの高い電話電報料,新聞等において所得による差が小さい(電話電報料が1.62倍,新聞が1.37倍)ことによるものである。
 また,情報関係支出の推移の内容をみると,通信費や新聞・書籍等の情報通信支出の伸びは10年間で1.8倍と消費支出の伸びを上回っているが,電気音響機器(テレビジョン受信機等)等の情報通信支援財支出の伸びは消費支出の伸びを下回っている。これは,電気音響機器の価格の低下によるところが大きいと考えられる。

 イ 情報通信支出の推移
 情報を直接提供し又は提供を受けるための家計からの支出である情報通信支出は,61年は,1世帯当たり12万9,561円(1か月平均1万797円)で,前年に比べ2.6%の増加であり,10年前の1.8倍である。
 (通信費の動向)
 通信費を中心とする情報関係支出の推移は,第1-1-24図のとおりである。
 郵便関係支出(はがき及び他の郵便料)は4,933円(1か月平均411円)で,10年前に比べて1.6倍の伸びとなっている。これは,56年1月に大幅な料金改定があったことによるところが大きく,その後は大きな変化なく推移している。しかし,その内容をみた場合,はがきと他の郵便料(手紙等)のウェイトがこの10年で逆転していることが特徴である。
 電話電報料は,6万280円(1か月平均5,023円)で,10年前に比べて2.2倍の伸びとなっている。電話料の数次にわたる遠距離料金の値下げにもかかわらず,値下げの実施された当該年度及び次年度においても電話料支出は増加を続けており,このことは,需要の価格弾性値が1を上回っていることを示唆している。
 また,宅配等の他の通信・運送料は,前年に比べ,2.9%の増加で順調な伸びを示している。
 なお,通信費を都市規模別にみると,都市規模が大きいほど通信費の支出は大きくなっており,消費支出全体と類似した傾向を示している。
 (新聞・書籍等)
 新聞に対する支出は,2万8,138円(1か月平均2,345円)で,10年前の1.6倍の伸びとなっている。これは,新聞価格の上昇幅とほぼ同様であり,家庭における新聞ニーズは安定していることが分かる。
 新聞を除く書籍等に対する支出は2万3,456円(1か月平均1,955円)で,10年前の1.2倍にすぎず,低い伸びである。

 ウ 情報通信支援財支出
 情報を直接提供し,又は提供を受けるために使用する物的財に対する家計からの支出である情報通信支援財支出は,61年は,対前年比7.3%増の3万1,207円(1か月平均2,601円)であった。消費支出全体に占める割合は0.94%である。
 このうち,電気音響機器(ラジオ,テレビジョン受信機,ステレオ機器,テープレコーダ及びVTR)に対する支出は,対前年比3.7%増の1万7,716円となった。
 機器別にみると,テレビジョン受信機に対する支出は,都市規模による格差が小さく,また,世帯主の所得階級別にみても,第<5>階級の支出は第<1>階級の支出の2.10倍と,消費支出全体における格差(2.38倍)よりやや小さくなっている。
 ステレオについてみると,第V階級の支出が,第I階級の支出の5.80倍と大きな格差がある。
 また,VTRについては,60年から独立した支出項目として取り上げられたが,61年は,対前年比11.6%増の5,239円であった。消費動向調査によれば,VTRの普及率は,33.5%であり,VTRは,現在普及が進みつつある段階にあることが分かる。

 エ 家庭の情報化の進展
 今日,電話やテレビジョン受信機は,新聞とともに,十分に普及しており,国民生活に欠かせないものとなっている。
 電話やテレビジョン受信機は,比較的高価であるにもかかわらず広く普及していることは,情報の迅速な入手,伝達が可能であり,また,多様な情報を大量に入手し得るという電話あるいはテレビの効用が,国民に高く評価されていることによる。このようにメディアの効用によっては広く国民に受け入れられるということは,今後のニューメディアの普及促進において参考となるものである。
 なお,今日では,家計調査からうかがわれる以上に情報化が進展していると思われるが,これは,電気音響機器等については相対価格が低下しており,情報通信支援財の比重が相対的に低下していること,また,民間放送等の受信には支出を要しないことなどによるものである。

(3)企業の情報化

 情報化の進展は,企業活動の合理化に始まり,さらには産業構造の変化,経済のソフト化を推進している。産業分野における一層の情報化の進展は,今後の我が国の中長期的な安定成長と内需主導型への転換に寄与すると考えられる。

 ア 情報化の進展と企業の情報化
 (産業の情報化)
 今日,我が国では,社会経済のあらゆる分野で情報に対するニーズが高度化・多様化し,情報の価値や情報の利用が高まってきている。
 産業の分野においては,各企業が生産部門だけでなく事務・管理部門をも含めて業務の合理化を図るため,あるいは高度化・多様化する消費者ニーズに対応した商品開発体制を確立し,意思決定の迅速化,的確化を図るなどの理由から,情報化についての積極的な取組がみられる。
 (企業活動における情報化の動き)
 企業では,生産部門,販売・流通部門あるいは事務・管理部門において,作業・業務等の効率化を図るため,コンピュータ,ワード・プロセッサ,ファクシミリ等の情報通信機器,事務機器等の導入を進めている。例えば,コンピュータの導入状況についてみると,通商産業省の「電子計算機納入下取調査」によれば,61年3月末の汎用コンピュータの実働台数は約22万台で,この5年間で2.8倍になっている(第1-1-25図参照)。また,通商産業省の「情報処理実態調査」によれば,60年3月末時点におけるオンライン化率は,58.0%となっている(第1-1-25図参照)。
 また,情報を迅速に伝達し処理するため,通信に対するニーズも高度化・多様化しつつ増大しており,このため,各種情報関係機器をシステム化するとともに各部門を結ぶ情報通信のネットワーク化が進められている。通信回線数の推移をみると,DDX網の利用契約数は,回線交換網,パケット交換網ともに大幅な伸びを示している(第1-1-26図参照)。また,専用回線数も,この10年間で約2倍に増加している(第1-1-27図参照)。
 さらに,近年では,販売情報を的確に把握し商品開発や商品企画を早期に行い,また,受発注業務の効率化等を図るため,企業内利用を超えて製造業・小売業・運送業等の関連企業を結ぶ,生産・流通・販売ラインのネットワーク化が進められている。
 (金融の分野におけるネッワーク化)
 金融機関では,早くからコンピュータやデータ通信システム等の導入が進められている。
 さらに,近年では,取引先とのネットワークを構築し,残高照会,自動振替等の事務作業の効率化のみならず,情報提供等のサービスの提供並びに資金移動取引が行えるエレクトロニック・バンキング化が進んでいる。
 データ通信が発達した今日,金融機関相互間の為替取引は,そのほとんどが全国銀行データ通信システム(以下「全銀システム」という。)を利用している。全銀システムを利用した為替件数は年間4億件を超え,この10年間で約4倍になっている(第1-1-28図参照)。
 産業の分野では,金融業,製造業,運送業等業界を結ぶネットワークや,ホームバンキング,ホームショッピングのような企業と家庭を結ぶネットワークが形成されていき,今後,情報化が一層進展していくものと予想される。

 イ 企業の情報化とネットワーク化
 (ネットワーク化の歩み)
 ネットワーク化は,座席予約,為替決済等のシステムが産業界を中心に40年代から始まった。50年代になると,同一の企業内に閉じたシステムから企業間を結ぶネットワークへと展開した。この流れは,60年4月の電気通信制度の変革を契機として一層加速され,大企業から中小企業,教育・行政機関あるいは家庭をも含めた総合的なネットワークへと進みつつある。
 (ネットワーク化指標)
 データ通信のネットワーク化の進展度合いを,普及率,業務処理率,ネットワーク情報量,対外接続度及び端末装備率の五つの面から把握し,ネットワーク化指標等としてみると,全般的にネットワーク化が進展していることが分かる(第1-1-29図参照)。
 ネットワーク化指標によれば,何らかの業務でデータ通信のネットワークを利用している事業所は,全事業所の10.3%(対前年度比14.2%増)である。また,その利用事業所で取り扱っている業務のうち,データ通信のネットワークで処理されている業務量の割合は,12.4%(対前年度比6.4%増)である。さらに,その利用事業所の1事業所当たりの平均回線容量は,35.7kb/s(対前年度比32.2%増)である。
 データ通信のネットワーク化指標のうち,利用面の代表的指標である業務処理率と,設備面の代表的指標であるネットワーク情報量(共に普及率を乗じたもの)による業種別ネットワーク化進展度は,第1-1-30図のとおりである。これによれば,ネットワーク化が最も進展しているのは,金融・保険業である。サービス業では,特に設備面での進展が顕著である。それ以外の業種では,利用面を中心に,ネットワーク化が進展している。また,業種によって格差が生じていることが分かる。
 さらに,データ通信のネットワークの地域的広がりを,端末の設置状況によりみると,第1-1-31図のとおりであり,ネットワーク化においても地域間格差が生じていることが分かる。
 (ネットワーク化の質的変化)
 企業間のネットワーク化は,企業間取引の効率化を目的として構築されたものであるが,次第に異業種間の情報交流を通して新たな利用価値を生み出した。生産業者が,流通業者とのネットワーク化により,売れ筋情報のフィードバックを行い,需要の把握とこれに沿った商品開発を実現している。また,中小企業や地場産業がネットワーク化により販路の開拓を行い,事業拡大,雇用機会の増大を図っている。このようにネットワーク化は,ネットワーク化により体系化された情報そのものに価値を見出し,新たなビジネス市場を創造するとともに,地方の活性化,中小企業における雇用拡大に重要な役割を果たしている。
 (ネットワーク化が与える影響)
 今日の我が国は,厳しい経済環境の中で,活力ある効率的な経済社会を維持しつつ,世界に開かれた経済社会の構築を行うため,産業構造の転換が求められている。情報化は,事業の効率化・合理化を促進するとともに,情報の高度利用により,一層付加価値を高めるものである。情報化の推進により,内需主導型の経済セクタが拡大されることで,国際社会と調和の取れた産業構造の構築を実現する必要がある。
 ユーザ企業においては,ネットワーク化により,既存業務の効率化を図るとともに,情報の利活用を通して新規事業分野の開発に努めるなど,機動的・弾力的経営が求められている。このようなネットワーク化の経営戦略手段としての活用に遅れをとる企業は,産業構造の変化に取り残されるおそれもある。

(4)経済の情報化

 ここでは,産業連関の手法を用い,50年から60年までの産業連関表及び延長産業連関表等を基に,我が国の情報化の進展を経済的側面からとらえることとする。

 ア 情報通信経済の構造
 情報通信経済の構造が,情報通信部門(注1),情報通信支援財部門(注2),非情報通信関係部門(注3)と,情報通信支援財部門及び非情報通信関係部門における情報関係部門である組織内情報通信部門(注4)の4部門から成り立っているものとして分析を行った。

 イ 部門別粗付加価値額の推移
 部門別粗付加価値額の推移は,第1-1-32図のとおりである。
 経済全体の粗付加価値額の推移は,50年の152兆円から60年には321兆2千億円(61年度白書の暫定値を更新した。)に増加している。
 50年から60年までめ年平均伸び率は7.8%であった。また,前期(50年から55年)の年平均伸び率は10.5%であったが,後期(55年から60年)では経済の低成長化により5.1%であった。
 (情報通信関係部門)
 情報通信部門,情報通信支援財部門及び組織内情報通信部門の総計である情報通信関係部門の粗付加価値額は,50年の49兆9千億円(粗付加価値総額に占める割合は32.8%)から57年に101兆円と初めて100兆円を超え,60年は131兆5千億円(同41.0%)であった。
 50年から60年までの年平均伸び率は10.2%となっている。また,前期の年平均伸び率は11.8%であったが後期は8.6%と伸びは低くなっている。しかし,粗付加価値総額に対する情報通信関係部門の弾性値は,前期では1.06,後期では1.18であり,経済の情報化は着実に進展している。
 (情報通信部門)
 情報通信部門の粗付加価値額は,50年の14兆9千億円(粗付加価値総額に占める割合は9.8%)から52年には20兆4千億円,(同10.6%)となり初めて粗付加価値総額の1割を超えた。60年は37兆5千億円(同11.7%)であった。
 50年から60年までの年平均伸び率は9.7%となっており,粗付加価値総額の伸びを上回っている。また,前期の年平均伸び率は12.3%,後期は7.0%とそれぞれ粗付加価値総額の伸びを上回っている。
 粗付加価値総額に対する情報通信部門の弾性値は,前期では1.09,後期でも1.09であり,ほぼ等しくなっている。
 (情報通信支援財部門)
 情報通信支援財部門の粗付加価値額は,50年の3兆8千億円(粗付加価値総額に占める割合は2.5%)から60年には9兆1千億円(同2.8%)に達した。
 50年から60年までの年平均伸び率は9.3%であった。また,前期の年平均伸び率は12.0%であったが後期では6.6%であり,後期では情報通信関係部門のうち最も低い伸びであった。また,粗付加価値総額に対する情報通信支援財部門の弾性値は,前期1.07,後期1.07とほぼ同水準であった。
 しかし,この部門ではIC等にみられるように,相対価格の低下が著しく、名目額以上に情報化の進展に果たしている役割は大きいものがある。
 (組織内情報通信部門)
 組織内情報通信部門は,情報通信支援財部門及び非情報通信関係部門内にあって,組織内に情報を提供する部門であり,組織における意思決定に寄与している。
 組織内情報通信部門の粗付加価値額は,50年は31兆2千億円(粗付加価値総額に占める割合は20.5%)であったが,54年に50兆円を超え,60年には84兆9千億円(同26.4%)に達している。情報通信関係部門に占める割合は60年では64.5%であり,この部門が経済の情報化の中核をなすものであることを示している。
 50年から60年までの年平均伸び率は10.5%であり,全部門で最大の伸びであった。また,前期の年平均伸び率は11.5%と情報通信関係部門の中で最低の伸びであったが,逆に後期では9.6%と全部門のうち最高の伸びとなっている。
 さらに,粗付加価値総額に対する組織内情報通信部門の弾性値は,前期の1.05から後期には1.23と大きくなっている。前期より後期の弾性値が大きく伸びており経済の情報化に与える影響は,情報通信関係部門に対するシェアの大きさとあいまって,近年強まっている。
 (非情報通信関係部門)
 非情報通信関係部門の粗付加価値額は,50年の102兆1千億円(粗付加価値総額に占める割合は67.2%)から60年には189兆7千億円(同59.0%)となり,シェアは8.2ポイントも低下している。
 50年から60年までの年平均伸び率は6.4%であった。また,前期の年平均伸び率は9.8%,後期は3.1%となっており,前期,後期とも粗付加価値総額の伸びを下回っている。
 さらに,粗付加価値総額に対する非情報通信関係部門の弾性値は前期では0.97,後期では0.91であり,経済全体に占める非情報通信関係部門のウェイトが低下し,情報通信関係部門と非情報通信関係部門の比率は50年の3対7から60年には4対6と接近しつつある。

 ウ 情報化係数
 部門別情報化係数(注5)の推移は,第1-1-33図のとおりである。
 産業全体の情報化係数は,50年の19.4%から60年の25.0%へ5.6ポイント上昇している。60年の費用内訳をみると,情報労働費用が15.4%(50年は12.1%),情報中間財費用が8.3%(同6.4%),情報資本費用が1.3%(同0.9%)であった。情報労働費用の増大は,経済活動の中で情報通信活動の占める割合が大きくなるとともに,情報通信活動が雇用の拡大に寄与していることを示している。
 (情報通信部門)
 情報通信部門の情報化係数は,50年の64.3%から60年の64.8%とほぼ同水準,高水準で安定的に推移している。60年の費用内訳をみると、情報労働費用が41.9%(50年は41.3%),情報中間財費用が19.6%(同19.3%),情報資本費用が3.3%(同3.7%)であった。総費用のうち情報労働費用が4割を占めておりこの部門の労働集約性の高さ示している。
 (情報通信支援財部門)
 情報通信支援財部門の情報化係数は,50年の34.1%から60年の44.5%へ10.4ポイント上昇しており,情報化係数の伸びは全部門のうち最も高くなっている。60年の費用内訳をみると,情報中間財費用が33.3%(50年は27.6%),情報労働費用が9.3%(同5.2%),情報資本費用が2.0%(同1.3%)であり,情報通信部門及び自部門からの中間投入が多いことが分かる。
 (非情報通信関係部門)
 非情報通信関係部門の情報化係数は,50年の15.1%から60年の19.3%へ4.2ポイント上昇している。60年の費用内訳をみると,情報労働費用が13.2%(50年は10.1%),情報中間財費用が5.1%(同4.4%),情報資本費用が1.0%(同0.6%)であった。費用項目の全部の比率が50年よりも上昇しており,非情報通信関係部門においても情報の占める割合が増大している。
 以上のことから,情報通信支援財部門の情報化係数の伸びが産業全体の情報化係数の伸びをリードしていることが分かる。
 (60年の主要産業の情報化係数)
 60年の主要な産業の情報化係数は,第1-1-34図のとおりである。
 50年から60年までの間で情報化係数が15ポイント以上上昇した産業は,郵便(24.6ポイント上昇),その他の通信サービス(24.0ポイント上昇),電子計算機・同付属装置(22.5ポイント上昇),電気通信機械及び関連機器(19.5ポイント上昇),農業サービス(16.6ポイント上昇),その他の電子応用装置(15.7ポイント上昇),事務用品(15.2ポイント上昇)の7産業である。
 情報化係数の上昇を理由別にみると,中間財投入部分で主に増加したのが,電子計算機・同付属装置(17.9ポイント),電気通信機械及び関連機器(17.5ポイント),事務用品(15.2ポイント),その他の電子応用装置(12.4ポイント)である。労働投入部分で主に増加したのは,郵便(23.1ポイント),農業サービス(17.6ポイント),その他の通信サービス(14.2ポイント)である。

 エ 情報関係労働者数
 経済の情報化は,情報関係労働者(情報通信部門の労働者,組織内情報通信部門の労働者の合計)数の増加をもたらしている。
 全労働者数は,50年の3,881万人から60年には,761万人増(19.6%増)の4,642万人であった。このうち,情報関係労働者数は,50年は1,740万人,60年には,385万人増(22.1%増)の2,125万人である。情報関係労働者の増加数の全労働者の増加数に占める割合は50.6%であり,増加労働者の過半数が情報関係労働者であった。また,全労働者数に占める情報関係労働者数の割合も50年の44.8%から60年の45.8%へ1.0ポイント上昇している。
 情報関係労働者数の内訳をみると,情報通信部門の労働者数は,50年の381万人から60年には195万人増(51.2%増)の575万人であった。情報通信支援財部門の組織内情報通信部門で働く情報労働者は,50年の40万人から60年には28万人増(71.5%増)の68万人であった。非情報通信関係部門の組織内情報通信部門で働く情報労働者数は,50年の1,320万人から60年には162万人増(12.3%増)の1,482万人であった。


第1-1-20図 総供給情報量等の推移

第1-1-21図 一人当たり総供給情報量等の推移

第1-1-22表 情報関係支出の内訳(61年)

第1-1-23図 所得階級別情報関係支出(61年)

第1-1-24図 情報関係支出の推移

第1-1-25図 汎用コンピュータの実働台数及びオンライン化率の推移

第1-1-26図 DDX網サービス契約回線数の推移

第1-1-27図 専用回線数の推移

第1-1-28図 全銀システムを利用した銀行間為替件数の推移

第1-1-29図 ネットワーク化指標(61年度)

第1-1-30図 業種別ネットワーク化進展状況

第1-1-31図 地域別ネットワーク端末設置状況(61年1月〜2月調査)

第1-1-32図 部門別粗付加価値額の推移

第1-1-33図 部門別情報化係数の推移

第1-1-34図 主要産業の情報化係数(60年)

 

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