昭和62年版 通信白書

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1 地域における情報化の現況


 最近の供給情報量についての特徴は,地方におけるテレビジョン開局の影響により,総供給情報量では東京のシェアが低下し,情報の地域間格差が縮小している反面,企業活動において主に使用されている専用データ通信,ファクシミリ等のメディアにおいて大都市集中と地域間格差が拡大するという跛行性がみられることである。

(1)供給情報量

 ア 総供給情報量
 (総供給情報量の推移)
 昭和60年度の地域別総供給情報量は第3-1-2図のとおりである。
 60年度の地域別総供給情報量の上位3地域は,東京,大阪及び神奈川であった。上位3地域の総供給情報量に占める割合は,東京が13.7%(50年度は16.2%),大阪が8.8%(同8.7%),神奈川が8.2%(同8.0%)で3地域合わせて30.7%であった。東京では,シェアが50年度より2.5ポイント低下している(第3-1-3図参照)。
 一方,60年度の地域別総供給情報量の少ない地域は,概して供給情報量の多い大都市地域から距離的にも離れている,経済基盤も弱い佐賀,徳島,鳥取,沖縄,高知,福井等であった。これらの地域の総供給情報量に占める割合は,佐賀が0.3%(50年度は0.3%),徳島が0.4%(同0.4%),鳥取が0.4%(同0.5%),沖縄が0.4%(同0.5%),高知が0.4%(同0.5%),福井が0.4%(同0.5%)であった。
 地域別供給情報量の地域間格差をみるため,変動係数(注8)の推移をみると,50年度の1.35から60年度には1.25と小さくなっており,地域間格差が縮小していることが分かる。
 これは,総供給情報量の約8割を占めるテレビジョン放送の影響が大きい。
 例えば,総供給情報量の伸び率(60年度/50年度)の全国平均は85.1%であるが,テレビジョン放送が3チャンネル増加した香川及び岡山,同じく2チャンネル増加した静岡が,香川(177.1%),岡山(173.3%),静岡(161.1%)と高い伸び率を示しているのはその典型例である。
 総供給情報量の伸び率(60年度/50年度)の下位3地域は,鹿児島,青森及び鳥取であった。この3地域とも59年度の一人当たり県民所得が低く経済基盤の弱い地域である。
 (一人当たり総供給情報量の推移)
 60年度の地域別一人当たり総供給情報量は,第3-1-4図のとおりである。
 60年度の地域別一人当たり総供給情報量の上位3地域は,東京,神奈川及び京都である。ここで京都が入っているのは,近畿広域圏チャンネルプランの範囲に含まれているためである。東京は全国の情報の集中地点であり神奈川はその隣接地域であるため,一人当たり総供給情報量も多くなっている。一方,60年度の地域別一人当たり総供給情報量の少ない地域は,沖
縄,佐賀,鹿児島,宮崎等であり,これらの県は総供給情報量でみても少なかった地域である。
 地域別一人当たり総供給情報量の変動係数は,50年度及び60年度とも0.33であり変化はない。また,地域別総供給情報量の変動係数と比較すると一人当たりの変動係数は約4分の1と低くなっている。

 イ メディアグループ別供給情報量
 調査対象メディアを,放送系,通信系(電気通信系から放送系を除いたもの)及び輸送・空間系に分けて供給情報量を分析する。
 60年度のメディアグループ別供給情報量は第3-1-5図のとおりである。
 (放送系供給情報量の推移)
 60年度の地域別放送系供給情報量の上位3地域は,東京,大阪及び神奈川であり,下位3地域は佐賀,徳島及び鳥取であった。また,放送系供給情報量の変動係数の推移をみると,50年度の1.35から60年度の1.25へと着実に低下している。
 (通信系供給情報量の推移)
 60年度の地域別通信系供給情報量の上位3地域は,東京,大阪及び神奈川であった。60年度の通信系供給情報量に占める割合は,東京が30.5%(50年度は23.0),大阪が14.1%(同11.8%),神奈川が4.7%(同5.7%)であった。東京及び大阪の2地域だけで,44.6%であり,総供給情報量の場合と比較すると東京は2.2倍,大阪は1.6倍と相当高いシェアである。のみならず,東京のシェアはこの10年間で7.5ポイント上昇している。
 一方,通信系供給情報量の少ない地域には佐賀,島根,徳島,高知等があり,全国平均の15%にも満たない供給情報量であった。60年度の地域別一人当たり通信系供給情報量でみても,全国平均の供給情報量の5割に満たない地域が15地域もあり,通信系においては地域間格差がかなり大きくなっている。また,変動係数をみても,50年度の1.73から60年度は2.24へと大きくなっており,通信系供給情報量に関しては明らかに集中化が進み,地域間格差が広がっていることが分かる。
 (輸送・空間系供給情報量の推移)
 60年度の地域別輸送・空間系供給情報量の上位3地域は,これも東京,大阪及び神奈川である。60年度の輸送・空間系の総供給情報量に上位3地域が占める割合は,東京が16.4%(50年度は17.7%),大阪が8.9%(同10.0%),神奈川が6.3%(同6.0%)であり,東京及び大阪はそれぞれシェアが低下している。変動係数でみても,50年度の1.39から60年度の1.29へと小さくなっており地域間格差が縮小している。60年度の一人当たり輸送・空間系供給情報量が全国平均を上回っている地域は東京,大阪、京都及び神奈川だけであるが、供給情報量の少ない地域でも全国平均の7割を超えており,輸送・空間系の地域間格差は小さい。こ
れは,輸送・空間系供給情報量のシェアの約7割を占める新聞が全地域に普及していることによる。
 今までみてきたように,放送系及び輸送・空間系の供給情報量の地域間格差は縮小しているが,逆に,通信系供給情報量の地域間格差は広がっている。このことは,放送系及び輸送・空間系による全国的・一般的な情報供給の格差は縮小しているが,電話,データ通信等を通じて供給される個別情報の情報供給格差は広がっていることを表しているものである。

 ウ パーソナル・メディア供給情報量
 60年度の地域別パーソナル・メディア供給情報量の上位3地域は,東京,大阪及び神奈川となっている。パーソナル・メディアの総供給情報量に占める割合は,東京が30.5%(50年度は24.1%),大阪が13.9%(同11.8%),神奈川が4.7%(同5.4%)であった。東京及び大阪の2地域で44.4%となっており),シェアが8.5ポイント上昇した。
 60年度の地域別一人当たリパーソナル・メディア供給情報量をみても,全国平均の供給情報量の5割に満たない地域が14地域あり,地域間格差は大きいといえよう。また,変動係数でみても,50年度の1.79から60年度の2.23へと大きくなっており,地域間格差が広がっている。

 工 地域間格差の著しいメディア
 パーソナル・メディアには地域間格差の著しいメディアが多い。そのうち特に格差の大きい専用データ通信,ファクシミリ,郵便(はがき及び手紙)について分析する(第3-1-6図参照)。
 (専用データ通信供給情報量)
 三つのメディアのうち、専用データ通信の格差が最も大きくなっている。例えば,専用データ通信の供給情報量の多い地域のシェアをみると,60年度は東京が37.3%(50年度は40.2%),大阪が15.9%(同15.3%)であった。これに対し,経済基盤が弱く専用データ通信を利用する
ような事業所の少ない佐賀,島根,徳島及び高知のシェアは,佐賀が0.1%(50年度は0.0%),島根が0.1%(同0.0%),徳島が0.1%(同0.1%),高知が0.1%(同0.1%)であった。専用データ通信は特に東京集中が著しいメディアである。
 (ファクシミリ供給情報量)
 ファクシミリ供給情報量の多い地域のシェアをみると,60年度のシェアは,東京が19.2%(50年度は22.2%),大阪は12.2%(同12.3%)であった。これに対し,ファクシミリ供給情報量の少ない地域である,沖縄は0.2%(50年度は0.2%),佐賀は0.3%(同0.3%),徳島は0.3%
(同0.3%),鳥取は0.3%(同0.2%),高知は0.3%(同0.3%)であった。
 (郵便供給情報量)
 郵便供給情報量の多い地域のシェアをみると,60年度のシェアは,東京が31.0%(50年度は30.4%),大阪は10.7%(同11.3%)であった。これに対し,郵便供給情報量の少ない地域である,鳥取は0.3%(50年度は0.4%),佐賀は0.4%(同0.4%),徳島は0.4%(同0.4%),沖縄は0.4%(同0.3%),島根は0.4%(同0.5%),高知は0.4%(同0.5%),福井は0.4%(同0.5%)であった。郵便は専用データ通信に次いで地域間格差が大きい。
 (地域間格差の是正と地域経済)
 専用データ通信及びファクシミリを利用しているのはほとんど事業所であり,郵便についても差出しの8割以上を事業所が占めている。
 このように、事業所による経済活動において利用される代表的な3メディアの東京集中が著しい。経済活動と最も密接に結び付いている,これらのメディアが東京に集中していることは,情報の東京集中,あるいは情報の地域間格差と経済的格差の関係を,最も端的に示すものであ
る。見方を変えれば,総供給情報量のみを見ているだけでは表面化しない問題を提起するものである。
 供給情報量の伸びでみても,専用データ通信やファクシミリは急速な伸びを示している。この両メディアは,情報の大量伝達,情報の処理,図面の送付等により企業の経営管理,販売管理,生産管理を容易にすることで,企業の経理,営業,生産活動等に大きく貢献し、本社〜支社・工場,企業〜企業という距離と組織を超えた経済活動を容易にするもの
である。
 このことは,これらメディアが全国的に整備されることにより,企業や工場の地方進出に資し,地域経済の活性化に寄与することが可能であるということを示すものである。
 郵便については,その利用の約半数が金銭関係あるいはダイレクトメールであるように,いわば取引の決済,営業の推進に使われるメディアである。このことを考えれば,郵便に関してみても情報量と地域の経済力との関連性は高いといえよう。

(2)消費情報量

 ア 総消費情報量
 60年度の地域別総消費情報量は第3-1-7図のとおりである。
 60年度の地域別総消費情報量の上位3地域は、東京,大阪及び神奈川である。上位3地域の総消費情報量に占める割合は,東京が9.7%(50年度は9.8%),大阪が6.69%(同7.2%),神奈川が6.0%(同5.5%)となっており,シェアの変動はほとんどない。上位3地域への集中度は,総供給情報量におけるそれよりも低くなっている。
 一方,60年度の地域別総消費情報量の下位3地域は,鳥取,島根及び沖縄であった。下位3地域の総消費情報量に占める割合は,鳥取が0.5%(50年度は0.6%),島根が0.6%(同0.6%),沖縄が0.7%(同0.7%)であった。
 変動係数も,50年度の0.89から60年度の0.90とほとんど変化はない。
 60年度の地域別一人当たり総消費情報量でみても,全国平均を100とした場合,最高の徳島の121から最低の沖縄の69までの間に全地域が入っており、一人当たり総消費情報量に関しては地域間格差は小さいといえる。
 地域別一人当たり総消費情報量の変動係数の推移は,50年度及び60年度とも0.10であり,変動係数自体も極めて小さく,地域間格差はあまりないことが分かる。

 イ メディアグループ別消費情報量
 調査対象メディアを,放送系,通信系及び輸送・空間系に分けて消費情報量を分析する。
 60年度の放送系消費情報量の上位3地域は,総消費情報量の場合と同じで,東京,大阪及び神奈川であった。下位3地域は鳥取,島根及び沖縄であった。放送系の消費情報量の変動係数は,50年度の0.88から60年度の0.89とほとんど変化はない。
 60年度の地域別一人当たり放送系消費情報量は,テレビジョン受信機等の保有率が高く,放送局も各地に開局してきたことなどにより,ほとんどの地域が全国平均の8割以上あり,地域間格差は小さいといえる。
 通信系については,定義上,供給情報量=消費情報量であるので供給情報量の分析と同じ結果になる。
 60年度の輸送・空間系消費情報量の上位3地域は東京,大阪及び神奈川であり,下位3地域は鳥取,福井及び島根であった。
 一人当たり輸送・空間系消費情報量をみると,放送系と同じように最低の地域でも全国平均の70%あり,地域間格差は小さい。
 これは,放送系,輸送・空間系メディアの代表であるマス・メディアのテレビジョン放送,新聞が主に家庭を対象に情報を提供するものであり,家庭における情報化が全国的にほぼ同水準であることを反映している(第3-1-8図参照)。

第3-1-2図 地域別総供給情報量

第3-1-3図 地域別総供給情報量シェアの推移

第3-1-4図 地域別一人当たり総供給情報量(60年度)

第3-1-5図 メディアグループ別供給情報量(1)

第3-1-5図 メディアグループ別供給情報量(2)

第3-1-5図 メディアグループ別供給情報量(3)

第3-1-6図 地域間格差の著しいメディア(1)

第3-1-6図 地域間格差の著しいメディア(2)

第3-1-6図 地域間格差の著しいメディア(3)

第3-1-7図 地域別総消費情報量

第3-1-8図 地域別情報通信関係支出

 

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