昭和62年版 通信白書

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1 テレトピア指定地域の現状

 テレトピア構想は,ニューメディアの導入による地域社会の高度情報社会への移行を目的として,58年8月に郵政省が提唱した総合的な施策である。
 本構想は,モデル都市に指定された地域の地方自治体を中心に地域情報化施策として積極的に進められており,多くの地域において情報通信システムの構築など,具体化が進められている。

(1)各指定地域の目標とするテレトピアタイプ

 (指定地域の追加)
 60年度までに指定地域となった53の地域に加え,61年3月に整備推進地域となった10地域のうち,7地域が61年11月に,3地域(第3-2-1表参照)が62年3月に2次指定地域として追加指定された。61年度末現在,63地域がテレトピア指定地域となっている。
 これらの地域のうち60地域はすでに事業計画とシステム計画から成る実行計画を策定し,情報通信システム等の導入準備を進めている。
 テレトピア指定地域の63地域を人口規模別にみると,県庁所在地級の中核都市が多く,約4割を占めている(第3-2-2図参照)。これは,このクラスの都市が高度情報化推進に必要な設備や人的資源など,情報化のための基盤をある程度持っており,かつ,地域の文化・経済の中心として情報化を波及させていく役割をすでに担っているためと考えられ
る。
 (目標とするテレトピアタイプ)
 テレトピア構想では,各地域において推進する高度情報化の型について,「テレトピアタイプ」として分類している。このテレトピアタイプに基づき,各地域から最大五つまでの目標とするタイプが示されている。
 各地域が目標とするテレトピアタイプで地域数が最も多いものは,地域情報の提供,行政サービスの向上,教育・文化活動の推進等を目的とするコミュ二ティ・タウン型であり,52の地域が目指している。
 これに続くのが,商業・流通機能の強化を目的とする物流・商流型(23地域),地域産業に先端技術の導入等を図る先端産業型(22地域),観光振興,スポーツ・レクレーションの充実を目的とする観光・レクレーション型(22地域)等である。
 各指定地域が目標とするテレトピアタイプを都市規模別にみると,コミュ二ティ・タウン型,物流・商流型及び先端産業型は,大都市・地方都市圏を問わず多くなっている。また,国際交流型と研究学園型は,大都市圏で多いのに対し,観光・リクレーション型,福祉医療型及び伝統・地域産業型は地方郁市圏で多くなっており,情報化に対する各地域のニーズの差が顕著に現れている(第3-2-3図参照)。

(2)各指定地域で計画されている情報通信システム

 (情報通信システムの稼動状況)
 各地域で構築が計画されている情報通信システムの数は合計で260システムであり,1地域平均4.1システムとなっている。61年度末現在で32地域66システムが稼動しており67年度までに全体のシステム数の90%に当たる235システムが運用を開始する予定である(第3-2-4図参照)。
 (情報通信システム構築の費用)
 各地域で計画されている情報通信システムの構築予定費用は,全体の約4割に当たる106のシステムが1億円以下となっている。大都市・地方都市圏別でもこの傾向は変らないが,地方都市圏で30億円以上の投資を必要とする大規模システムが7システム計画されてお
り,地域の情報化は内需拡大にも貢献しているといえよう (第3-2-5図参照)。
 (情報通信システム導入の目的)
 地域の情報二ーズを把握するために,各地域の情報通信システムの導入目的をみると,生活情報・地域情報の提供(50システム),教育サービスの充実および地域文化活動の支援(27システム),商業流通機能の強化(27システム)等の目的が多く挙げられている(第3-2-6図参照)。
 これを都市規模別にみると,上記の目的のほか,大都市圏の指定地域の中では,先端産業の技術情報データベースの構築や国際交流のための拠点形成等が多いのに対し(第3-2-7図参照),地方都市圏の指定地域の中では観光振興の支援,健康管理・医療サービスの充実,地場産業の活性化等が多くなっている(第3-2-8図参照)。
 (情報通信システムの事業主体)情報通信システムを運用する事業主体として,207団体が設立される予定である。そのうち,59団体が官民共同出資法人である,いわゆる第三セクターの形態をとっており,地方自治体(56団体),民間企業(34団体)よりも多くなっている(第3-2-9図参照)。

(3)情報通信システムに導入されるニューメディア

 各地域で構築される情報通信システムには,それぞれの機能にふさわしいニューメディアが導入されようとしている。最も多いのがデータ通信(115システム)で,構築が計画されているシステムの半数近くに達している。次いで,ピデオテックス(77システム),CATV(39システム)が多く,その他,フ-アクシミリ,テレビ会議等もみられる(第3-2-10図参照)。
 導入目的別にみると,データ通信は,行政・教育サービスの効率化等を目的としたシステム(24システム),技術情報のデータベース構築を目的としたシステム(19システム),商業機能の強化を目的としたシステム(16システム)等を中心に,幅広い目的で導入が計画されている。
なお,大都市圏で計画されている情報通信システムの大半がこのデータ通信によるものである。ビデオテックスは,画面を通じての生活・地域情報の提供に適しているため,地域情報の増大(20システム),観光の振興(20システム)を目的としたものに多い。
 また,CATVは自主放送チャンネルを通じての地域情報の提供を目的としたシステム(21システム)が多いが,災害時に災害情報を提供するシステムもみられる。

(4)今後のテレトピア政策の動き

 郵政省はテレトピア構想を積極的に推進するため,次のとおり支援措置及び推進政策を展開している。

 ア 指定地域に対する支援措置の拡充
 (62年度補正予算における無利子融資制度の創設)
 「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」が62年8月に成立し,公共事業やテレトピア事業,民活法施設整備事業等の民活事業に対する無利子融資制度が創設された。
 テレトピア事業に対する無利子融資は,地方公共団体(その出資され,又は拠出された金額の全部が地方公共団体により出資され,又は拠出されている法人を含む。)の出資又は拠出に係る法人が行う事業であり,62年度においては,非公共事業の枠から580億円の範囲でテレトピア事業及び民活法施設整備事業に対し無利子融資が行われる。
 (基盤技術研究促進センターからの出資)
 基盤技術研究促進センターからは60年度2億5,600万円,61年度4億3,400万円が出資された。62年度については同センターの出資額173億円の内数として出資が行われる計画である。
 (北海道東北開発公庫及び日本開発銀行からの出融資)
 テレトピア構想に基づき,情報通信システムを構築・運用する事業体の設備投資に対する出融資については,62年度,日本開発銀行からは3大都市圏に対し情報化促進枠から865億円,それ以外の地域には地域開発枠から1,100億円の範囲で融資が行われる計画である。また,北海道東北開発公庫からは1,350億円の範囲で出融資が行われる計画であり,既に62年7月,秋田市の事業体に対し2,500万円の出資が行われた。
 (テレトピア基金の設立)
 テレトピアの情報通信システム構築のための研究開発,債務保証,利子補給等を支援するテレトピア基金については,新潟テレトピア振興協会,(財)山口県ニューメディア推進財団により基金の募集が進められている。なお,この基金については,民間からの基金への出捐について
全額損金算入の特例措置が可能となっている。
 (NTTによる協力)
 郵政省ではテレトピア指定地域の支援措置の一環として,NTTに対しても協力を要請している。これをうけ,NTTは,テレトピア指定地域で構築されるビデオテックス網を優先して,NTTの全国ビデオテックス網と接続し,合わせて地域の情報通信ネットワークの拡充を積極的に進めることとしている。

 イ テレトピア推進政策の新たな展開
 (モデル地域間でのビデオテックス・ソフトの交換)
 テレトピア地域間における情報ソフトの交換を進めるため,62年4月,地域ビデオテックス全国協議会が設立された。今後,同協議会においてテレトピア推進地域間でのビデオテックス・ソフト等の全国的な交換について検討が行われる予定である。
 (テレトピア指定地域に対する新たなメディアの導入)無利子融資制度の創設等,テレトピア構想に対する支援措置が強化されたため,現在,テレトピア構想の中で主として利用されているビデオテックス,CATV,データ通信等に加え,ハイビジョン及びコミュニティ型移動無線電話について,優先的なテレトピア指定地域への導入が期待されている。

 ウ テレトピア指定地域の追加指定
 テレトピア指定地域については,現在,63地域を指定しているところであるが,指定地域への無利子融資制度,新たなメディアの優先的導入等の支援措置の強化により,積極的に地域情報化政策を進めている地方自治体から,指定に対する強い要望が出されている。このような動きを受けて,今後,郵政省では熟度の高い情報化計画を立てている地域を対象に,若干の追加指定を検討することとしている。

第3-2-1表 追加指定されたテレトピア指定地域の概要(1)

第3-2-1表 追加指定されたテレトピア指定地域の概要(2)

第3-2-2図 テレトピア指定地域の人口規模別分布

第3-2-3図 テレトピア指定地域の目標とするテレトピア・タイプ

第3-2-4図 情報通信システム年度別運用開始数

第3-2-5図 情報通信システム構築費の金額別分布

第3-2-6図 地域の情報通信システムニーズ

第3-2-7図 大都市圏の情報通信システムニーズ

第3-2-8図 地方都市圏の情報通信システムニーズ

第3-2-9図 情報通信システムの事業主体

第3-2-10図 情報通信システムに導入されるニューメディア

 

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