昭和62年版 通信白書

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3 飛躍する電気通信サービス

(1)国内電気通信事業への新規参入状況

 ア 第一種電気通信事業への参入
 国内第一種電気通信事業分野における新規参入事業者は,62年9月30日現在,60年度に許可を受けた5社を加え,24社である(第1-2-10表参照)。
 (専用,電話サービスの開始)
 企業等を対象とした専用サービスは,61年8月から11月にかけて,第二電電(株),日本テレコム(株),日本高速通信(株)の3社が,首都圏,中部圏,近畿圏を中心とする地域で,また東京通信ネットワーク(株)
が首都圏において開始した。その後も62年3月,大阪メディアポート(株)が大阪市及び周辺9市を対象に専用サービスを開始した。また,通信衛星を利用しての全国的な専用サービスの準備も進められている。
 一方,国民生活に深くかかわる電話サービスは,62年9月から第二電電(株),日本テレコム(株)及び日本高速通信(株)の3社が首都圏,中部圏,近畿圏でNTTとの相互接続による市外電話サービスの提供を
開始した(第1-2-11図参照)。今後は,これら各社によるサービス提供地域の拡張が予定されており,NTTを含めた4社の電話サービスの選択が全国的に可能となる。
 なお,これら3社の新規参入事業者が提供する市外電話登録サービス(通常の電話番号に4けたの事業者識別番号を付与して利用するサービス)に加入するためには,保有する電話機が接続されているNTTの加入者線交換機が電子交換機等(電子交換機又は利用者識別信号送出機能付クロスバ交換機)である必要がある。しかしながら,電子交換機等の設置比率は,サービスを提供する地域の全加入者線交換機のうち46%に、また,この電子交換機等を利用できる加入者は,当該地域の全加入者の72%にとどまっている。
 今後は,NTTの加入者線交換機の電子交換機等への早期切替えが望まれる。
 また,米国では,アメリカ電話電信会社(AT&T)の分割により,AT&Tは長距離通信事業のみを提供するという形にし,他の事業者との公正競争の確保が図られているが,我が国では,NTTが長距離と市内の両方のサービスを提供するため,NTTと新規事業者との公正競争の確保を図り,有効な競争が行われるよう,新規事業者とNTTとの接続に関する問題等については適切に対処する必要がある。
 (移動体通信の進展)
 移動体通信の分野においても,新しい技術基準が定められて以来活発な参入が続いている。
 無線呼出しサービスでは,9月30日現在,(株)九州ネットワークシステム,中部テレメッセージ(株),東京テレメッセージ(株)等15社が事業許可を受けている。このうち,(株)九州ネットワークシステムが9月1日からサービスを開始しているほか,62年10月以降,残りの各社も順次,無線呼出しサービスを開始する予定である。このように,国内第一種電気通信事業への新規参入の動向は,現在,主に無線呼出しサービスに集中している。
 また,自動車電話についても首都圏,中部圏,近畿圏等で事業を行うべく事業化準備が進められている。

 イ 第二種電気通信事業への参入
 第一種電気通信事業者から回線設備を借りてサービスを行う第二種電気通信事業分野においても,多数の企業が参入している。62年9月30日現在,特別第二種電気通信事業を行うことについて登録を受けたものが
12社,一般第二種電気通信事業を行うことについて届出をしたものが422社に上っている。
 (特別第二種電気通信事業の動向)
 特別第二種電気通信事業者を業種別に分類すると,従来からデータ処理サービスを行っているもの,通信機器等のメーカまたはその子会社及びデータ通信を行うために新たに設立されたものに大別される(第1-
2-12表参照)。これらの事業者は,いずれも全国規模で,パケット交換サービスや電子メールサービス等のデータ伝送役務を提供しているほか,事業者によってはそのほかに電話サービス等の音声伝送役務を提供するものがある。
 (一般第二種電気通信事業の動向)
 一般第二種電気通信事業者は,その3分の2がデータ伝送役務を提供しており,プロトコル変換,フォーマット変換,データ処理をあわせて一体化した複合的サービスを提供する事業者が50社程度ある。また,音声伝送サービスとしては,ボイスメールや専用線ネットワークによる電話交換サービスが代表的なものとなっている(1-2-13表参照)。

 ウ 国内電気通信分野の課題
 以上のように,電気通信事業は,各分野において新規参入が相次いでおり,競争体制の中での柔軟性の確保と民間活力の発揮を柱に健全な発展を促すという制度改革の成果は,徐々に上がりつつある。
 今後は,第一種電気通信事業分野においては,NTTと他の事業者との間の公正かつ有効な競争条件の確保等の課題に適切に対処する必要がある。また,NTTについては,従来から高いと各方面から指摘を受けている3分400円の遠距離料金をはじめとして,料金全般の低廉化を図るため,今後,より一層の経営の効率化・合理化努力が求められてい
る。さらに,第二種電気通信事業においては,経営基盤の整備,サービス機能の拡充,技術者の確保等の課題に対する施策を引き続き講じる必要がある。

(2)国際電気通信事業分野の充実
 近年の国際電気通信分野は,海底ケーブル・衛星通信等の技術革新を背景として,高速・大容量の通信が可能となった。また,サービス需要も,音声,ファクシミリ等に加えて,ボイスメールサービス,メールボ
ックスサービスや異機能端末間をつなぐメディア変換サービス等の新しいサービスへの需要が高まっている。
 一方,産業界における通信ネットワークは,従来の企業内ネットワークの段階から企業間・業種間を結ぶネットワーク,さらには海外拠点,海外企業とを結ぶネットワークへと移行しつつある。
 このような情報通信ニーズの高度化・多様化を背景として,国際電気通信分野は,第一種電気通信事業への新規参入,第二種電気通信事業者が営む新たな形態での事業の開始等大きく変容しようとしている。
 (第一種電気通信事業への新規参入の動き)
 国際電気通信分野は,これまでKDDによって一元的に運営されてきたが,60年4月の制度改革により,競争原理が導入された。
 これにより,61年7月,日本国際通信企画(株)が,また11月には国際デジタル通信企画(株)が,それぞれ企画会社として設立された。
 これら両社は,KDDとの有効な競争を実現するため等から,一本化のための調整を行ってきたが不調に終わった。その後,両社は,それぞれ事業会社へ移行し,第一種電気通信事業を開始するための所要の準備を進めてきたが,9月21日に日本国際通信(株)が,9月30日に国際デジタル通信(株)がそれぞれ事業開始のための許可申請を行った。
 郵政省は,電気通信事業法の趣旨にかんがみ,今後とも適切な処置を行うこととしている。
 (第二種電気通信事業の国際通信分野への展開)
 国際電気通信分野では,従来,CCITTのD1勧告による国際専用回線の利用制限等もあって,第二種電気通信事業者がネットワーク構築上の柔軟性が高く,経済的にも有利な専用回線を利用して行う高度な国際電気通信事業は,実現していなかった。
 一方,近年の社会・経済の急激な国際化に伴い,国際通信に対する需要も高度化・多様化し,第二種電気通信事業者が行う国際電気通信サービスの実現が利用者である産業界のみならず,第二種電気通信事業者か
らも強く要望されており,また,60年3月,米国から,日米MOSS協議において,この実現が市場開放問題の重要な課題として提起されていたこともあって,郵政省は,外資系企業の代表を含む「国際第二種電気通信事業問題研究会」を開催するなど検討に着手し,61年9月に実現方策に関する検討結果を取りまとめた。
 その後も日米間において,現行の国際通信法制下における日米間の新事業の実現方策について引き続き協議を行った結果,62年3月,合意に至った。
 郵政省は,この日米合意内容を受けて更に検討を進め,その検討結果を基に,62年6月,概要以下の項目を内容とする電気通信事業法の一部改正が行われ,9月1日,施行された。
[1] 条約遵守義務の担保
  第二種電気通信事業者が国際的に認められた私企業として認知されるためには,当該事業者が関係条約等国際約束を遵守することを担保する必要がある。そのため,当該事業者が当該義務を誠実に履行していないと判断された場合には,郵政大臣が改善命令を発動し得る規定を設けた。
[2] 約款外役務の新設
  第一種電気通信事業者は,郵政大臣の認可を受けた契約約款以外には回線を貸すことが禁止されており,これが国際回線設備の利用制限等付加価値サービスの発展を阻害する一つの要因となっていた。このため,第一種電気通信事業者は,郵政大臣の認可を受けた上で,第二種電気通信事業者に対して,契約約款とは別の契約に基づいた回線の提供を可能とした。また,第一種電気通信事業者から第二種電気通信事業者に対する約款外役務の提供が,公正かつ妥当に行われるよう措置し,公益上特に必要な場合には約款外役務の提供を保証する規定を設けた。
[3] 電気通信網の公平な相互接続
  第二種電気通信事業者が行う国際電気通信サービスの開始を一層効果的なものとするためには,国際通信事業を単独で行うほどの需要がない国内通信事業者と他の国際通信事業者との接続を可能にしたり,複数の国際通信事業者が通信の相手国を補完しあうといった措置が必要である。このため,第二種電気通信事業者を電気通信設備の接続の主体とするとともに,公正な相互接続を担保し,公益上特に必要であると認められる接続(当事者の一方又は双方が一般第二種電気通信事業者であるもの及び当事者の双方が国内特別第二種電気通信事業者であるものを除く。)については,その締結を命ずることができるという規定を設けた。
 この法改正により,わが国では,第二種電気通信事業者が第一種電気通信事業者との個別の契約により調達した回線を利用して,現在,国内で提供されているメールボックス,プロトコル変換等の多彩なサービスを行うことが,今後,国際間で可能となった。これにより,高度化・多様化する国際通信需要に対応し得る多彩なサービスの展開と新たな国際
通信需要の喚起が期待できる(第1-2-14図参照)。
 当該事業の登録を行っている特別第二種電気通信事業者は,9月30日現在,5社である(第1-2-12表参照)。
 また,今後は,多数の国々との間でも同様のサービスが可能となることが期待されており,これが,国際通信の自由化と世界的な電気通信市場の開放の大きな契機になると思われる。

(3)移動通信分野の動向
 (航空機公衆電話)
 61年5月に開始された航空機公衆電話サービスは,飛行中の航空機から全国6か所に設置された無線基地局と全国4か所に設置された交換局を経て,地上の電話等と通話ができるものである。
 この航空機公衆電話の設置状況は,62年6月末現在,航空機数では49機,公衆電話機数では69台である。また,今後の設置計画をみると,63年3月末の見込総数では,航空機数が68機,電話機数が94台となっており,その普及が期待される。
 (自動車電話・無線呼出し)
 自動車電話及び無線呼出しについては,61年8月に技術基準の改正が行われ,大容量の自動車電話,文字表示等高度な機能を持った無線呼出しの導入等一層のサービスの高度化・多様化が図られている。
 自動車電話は,61年度末の契約数が対前年度末比53.2%増の9万5,132契約となった。また,無線呼出しの契約数は,61年度末には前年度比15.4%増の248万7,946契約となるなど,著しい増加を示している。
 (MCAシステム・パーソナル無線)
 業務用,個人用等の自営無線通信の分野でも移動体通信の伸びは著しく,移動体通信用の無線局数(アマチュア無線局を除く。)は,61年度末現在,約320万局であった。
 貨物運送事業等の事業用に用いられているMCAシステムは,61年度末では,全国19地域で運用されており,その局数は,対前年度比46.5%増の11万2,287局であった。また,一般個人が使用できるパーソナル無線の局数は,61年度末現在,136万4,032局に達している。
 (新陸上移動無線電話システム)
 近年の社会・経済活動の多様化,広域化,モータリゼーションの進展等に伴い,陸上移動通信に対する需要は,急速に増加してきている。特に,最近の自動車等移動体から一般加入電話への通信をだれでもが手軽
に利用できる安価なシステムに対する需要にこたえるシステムとして,新陸上移動無線電話システム(コンビニエンス・ラジオ・フォーン)が考えられている。
 郵政省は,このコンビニエンス・ラジオ・フォーンに関する技術的条件を策定するため,62年7月,「簡易移動無線電話通信を行う無線局の無線設備に関する技術的条件」を電気通信技術審議会に諮問した。
 コンビニエンス・ラジオ・フォーンは,陸上移動局と通信する基地局を一般加入電話網に接続し,基地局側で移動局に対して位置登録,ゾーン間制御等の複雑な制御を行わない簡易で経済的なシステムであり,基本的には,自動車からの発信主体のシステムとなる(第1-2-15図参照)。
 また,これは,MCA,自動車電話等既存のサービスの未整備地域におけるニーズに対応するものとして有効と考えられる。
 今後は,システムの仕様等を確定した上,当面,テレトピア指定地域を中心とした地域に導入を促進することとしている。
 (地域防災無線通信の実用化)
 現在,災害対策用の無線通信としては,災害時における被害を最少限に押さえるため,都道府県防災行政無線,市町村防災行政無線等があり,住民に避難勧告等を伝達したり,災害現場からの情報を収集するための無線回線として活用されている。しかしながら,これらの防災行政無線は,交通及び通信手段の途絶した孤立集落からの情報収集や,病院,学校等の生活関連機関との通信機能がなく,それらの通信を可能とする通信システムの確立が求められていた。
 そこで,既存防災行政無線を補完するものとして,市区町村におかれる災害対策本部の下に,これら生活関連機関と防災関係機関とが災害時において住民や地域に密着した情報を相互に交換できる耐災害性及び経
済性に優れたシステムとして開発されたのが地域防災無線通信である(第1-2-16図参照)。
 郵政省は,今後,この地域防災無線通信を行う無線局の免許方針を策定することとしている。

第1-2-10表 新規参入第一種電気通信事業者の概要(62年9月30日現在)(1)

第1-2-10表 新規参入第一種電気通信事業者の概要(62年9月30日現在)(2)

第1-2-10表 新規参入第一種電気通信事業者の概要(62年9月30日現在)(3)

第1-2-11図 相互接続通話概念図

第1-2-12表 特別第二種電気通信事業者の概況(62年9月30日現在)

第1-2-13表 一般第二種電気通信事業者の電気通信役務の種類(62年9月30日現在)

第1-2-14図 電気通信事業法の改正による国際通信分野の変化

第1-2-15図 コンビニエンス・ラジオ・フォーンの概念図

第1-2-16図 地域防災無線網の概念図

 

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