昭和62年版 通信白書

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2 情報化の地域間格差


 前項で行った都道府県別の情報流通量の分析とは別に,ここでは,地域別情報流通センサスの現状分析を受けて,東京,大阪及び名古屋の三大都市圏とその他との対比で,供給情報量の格差について記述する。
 また,情報化の地域間格差をみる上では,情報量のほかに情報の内容の観点から分析する必要があるため,マス・メディアの情報内容について調べる。

(1)供給情報量の格差

 (総供給情報量の推移)
 60年度の三大都市圏における総供給情報量の全国に占めるシェアは,合計で57.0%であり,これは50年度の57.4%から0.4ポイントの低下である(第3-1-9図参照)。
 これを,三大都市圏別にみると,60年度における東京圏の総供給情報量は,33.0%であり,全国の3分の1を占めている。対50年度比でみると,東京圏の総供給情報量の伸びは1.82倍であるが,これは,全国平均(1.87倍)をやや下回っており,シェアでみても,50年度の33.5%から0.5ポイント低下している。また,大阪圏,名古屋圏のシェアは,横ばいとなっている。
 以上のように,三大都市圏のシェアは,いずれも相対的に横ばいで推移している。前項の都道府県別にみた場合は,東京のシェアが下がり,東京と地方との格差は縮小の傾向にあるとされていた。しかしながら,これは,東京という巨大都市が外延化し,千葉,埼玉等の東京圏に一部
がシフトしたことを示しており,大勢としては,著しい変動はないことが分かる。
 (放送系供給情報量の推移)
 60年度の三大都市圏における放送系供給情報量のシェアは,57.0%であり,総供給情報量のシェアと等しく,また,各大都市圏のシェアも同じであった。
 これは,総供給情報量の中に占める放送系供給情報量の比率が極めて高いので,両者は,同様の傾向となって現れるためである。
 (通信系供給情報量の推移)
 通信系メディアは,電話,データ通信,ファクシミリ等の企業通信において大量に使用されるメディアを含むため,地域経済の動向を的確に把握し得る指標である。
 60年度の三大都市圏における通信系供給情報量のシェアは,65.1%と全国の7割近くを占めている。50年度との対比でみると,59.2%から5.9ポイントと大幅な上昇となっている(第3-1-10図参照)。
 これを三大都市圏別にみると,東京圏は41.0%と,総供給情報量(33.0%)が全国に占める比率に比べても8ポイント以上高くなっており,圧倒的なシェアを占めている。これを個別メディアごとにみると,専用データ通信は46.5%,公衆データ通信は41.6%,ファクシミリは32.2%を
占めている。これは,東京において活発な企業・経済活動が展開されていることを表わしている。
 また,50年度との対比でみると,東京圏は5.4ポイントの上昇、大阪圏も17.2%から1.6ポイントの上昇であった。名古屋圏は6.5%から1.1ポイント低下であり,総供給情報量(7.4%)に比べても2.0ポイント低く,通信の面からみた経済活動における名古屋圏の相対的な地盤沈下がうかがわれる。
 (輸送・空間系供給情報量の推移)
 60年度の三大都市圏における輸送・空間系供給情報量のシェアは,52.6%と全国の半分以上を占めている。50年度との対比でみると,54.8%から2.2ポイント低下している(第3-1-11図参照)。
 これを各都市圏別にみると,東京圏が全国の3分の1近い30.9%を占めており,大阪圏の15.4%の約2倍になっている。また,名古屋圏は,6.4%であった。
 50年度との対比でみると,東京圏,名古屋圏はほとんど動きがないが大阪圏が17.0%から1.6ポイント低下している。
 (東京圏に集中する企業通信)
 現在の我が国における情報化をリードしている企業通信における情報の供給は,通信系供給情報量の4割以上が東京圏によって供給されていることからしても,圧倒的に東京圏に集中していることが分かる。

(2)地域における情報の独自性

 今日,情報の東京集中が言われているが,これは情報量の集中のほかに,流通する情報の内容においても,東京発信の情報が圧倒的に多く,地方からの発信が極めて少ないという点を含めて言われるものである。とりわけ,国民が接触する機会が最も多く,かつ世論形成に大きな影響を及ぼすマス・メディアについて,この傾向が顕著である。したがって,地域の情報化の進展を正確に把握するためには,前項で取り上げた情報量の分析とは別に,情報の内容面について分析する必要がある。
 ここでは,供給情報量の大半を占めるマス・メディアのうち,テレビジョン放送,新聞等における地域独自の情報比率についてみる。

 ア 東京に依存する地域のテレビジョン放送
 総供給情報量の約8割を占めるテレビジョン放送は,地域における民間放送事業の開局等により,地域の情報化に多大に寄与している。このテレビジョン放送について,東京,大阪,愛知及び佐賀(地域別情報流通センサスにおいて,テレビジョン放送の供給情報量が最も少ない県)
の4都府県における総放送時間に占める自局制作番組等の比率をみる。
 (NHK総合放送)
 61年度におけるNHK総合放送の自局編成比率(ここでは,全国各地の放送局が自局で編成する番組放送時間及び地域独自の番組放送時間の合計が総放送時間に占める比率をいう。)は,全局平均では13.7%である。これを各放送局別にみると,東京は全国放送を行っているNHKの番組制作の中心であるという性格から,80.8%と高い比率となっている。大阪は21.8%と東京に次ぐ比率ではあるが,反面,東京編成比率が69.1%を占めている。また,愛知は15.3%,佐賀は11.7%となっている
(第3-1-12図参照)。
 次に,自局編成比率の推移をみると,年度により増減はあるものの,61年度は対50年度比でみると,全局平均で3.1ポイント,大阪(4.2ポイント),愛知(3.9ポイント),佐賀(3.2ポイント)とも着実に上昇している。
 以上のように,NHKの総合放送については,各地の局とも総放送時間の7割近くは,東京で編成された番組を放送しているが,自局編成の番組比率は,着実に高まっていることが分かる。
 (民間放送)
 民間放送についてみると,総放送番組に占める自社制作番組の比率は,全社平均で17.7%となっている。このうち,在京5社の平均では,61.0%と在京キー局の自社制作番組の比率の高さが顕著である(第3-1-13表参照)。また,61年の自社制作比率(ここでは,それぞれの府県における民間放送局全社の総放送時間に占める自社制作番組の放送時間の比率をいう。)をみると,在京5社を除く全国平均では,21.9%である。在京5社では,そのレギュラー番組に限ってみると,自社制作比率が90%以上と極めて高い水準になっている。
 大阪の民間放送5社平均の自社制作比率は40.4%,愛知の5社では,25.4%,また,佐賀では,8.9%にとどまっている(第3-1-14図参照)。
 これを50年からの推移でみると,民間放送の全局平均(東京を除く。)では,19.2%から2.7ポイント上昇している。また,各地域における自社制作比率は,大阪では40%前後、愛知では25%前後で推移しており,ともにほとんど動きはない。佐賀は,50年では18.6%であったが,57年以降は10%以下の低い比率で推移しており,東京への依存がますます高まっていることが分かる。
 このように,民間放送の自社制作比率は,東京に次いで高い大阪でさえ東京制作の番組比率が約6割を占めており,佐賀においては9割以上となっていることから,放送番組の東京に対する依存は,民間放送において強いことが分かる。

 イ 全国紙に比し地域に密着している地方紙
 東京,大阪及び鳥取(地域別情報流通センサスにおいて,新聞の供給情報量の最も少ない県)における全国紙のそれぞれ1紙と鳥取における地方紙の1紙について5紙面(広告部分5テレビ・ラジオ欄を除く。)に
占める東京発信の記事と地方発信の記事の比率を調べる。
 全国紙についてみると,東京版では東京発信の記事比率が85.5%であるのに対して,大阪版は61.1%,鳥取版は60.8%とほとんど同様な比率である。次に,自府県発信の記事比率をみると,大阪版は22.2%,鳥取版は6.8%と,大阪はかなり高い比率である。全国紙の鳥取版は,その他の府県からの情報比率が32.3%と高いことが分かる。
 一方,鳥取の地方紙の紙面では,東京発信の記事比率が26.2%であるのに対して自県発信の記事比率が61.1%を占め,全国紙の鳥取版に比べ,地域独自の情報比率が非常に高くなっている(3-1-15図参照)。
 このように,新聞紙面においては,全国紙の府県版では,6割以上の情報を東京から得ており,テレビジョン放送と同様に東京に対する記事の依存が高い一方,地方紙においては,地域独自の情報である自県発信の比率が6割以上と高く,地域に密着したメディアであることが分か
る。

 ウ 東京に偏在する発行所
 書籍・雑誌等の発行所を所在する都道府県別にみると,61年度においては、全国の8割に当たる3,430社が東京に集中している(第3-1-16図参照)。
 これは,大阪の210社,愛知の54社と比較して圧倒的多数であり,出版による情報の多くが東京から発信されていることが明らかである。

 工 東京に集中するマス・メディア情報
 以上のように,テレビジョン放送,新聞等の我が国のマス・メディアにおいて供給されている情報の内容の多くは,東京から発信されている。マス・メディアが文化や世論の形成に大きな影響を与えるという重要性にかんがみるとき,情報量の東京への圧倒的集中と合わせて,数字に表れる以上に全国に与える東京の影響が大きいといえる。また,東京に次ぐ大都市圏である大阪においてさえ,その情報の大半を東京に依存している。これは,かつて我が国の有力な情報の発信地であった大阪圏でさえ地盤沈下をきたし,一地方圏としての役割にとどまっていることを端的に表している。

第3-1-9図 三大都市圏別総供給情報量の推移

第3-1-10図 三大都市圏別通信系供給情報量の推移

第3-1-11図 三大都市圏別輸送・空間系供給情報量の推移

第3-1-12図 NHK総合放送の局別編成時間比率の推移

第3-1-13表 民間放送の自社制作番組の比率

第3-1-14図 民間放送の自社制作番組放送時間比率の推移

第3-1-15図 新聞紙面における発信地別記事比率

第3-1-16図 都道府県別発行所数

 

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